夜半。4月24日から、25日へと日付も変わろうという頃。
ふとラウラは目を覚ました。ベッドが眠り辛かったのでも、夢を見たのでも、まして男子からの不埒な気配を感じたのでもない。ただ本当に、ふっと目が覚めたのだ。
それは、第六感が囁いたからかもしれない。
カーテンの隙間からは、雲一つない夜空が垣間見えている。満天の星空だ。月光も星光も、今日は静かに降り注いでいる。静かだ。部屋の中で聞こえるのは、皆の寝息が三つだけ……。
(……三つ?)
静かに目を右に向ける。
ベッドの順番は壁際から、リィン、エリオット、カタナ、自分、アリサ。
ラウラの右には、昼間以後、調子を崩したカタナが寝ている筈だ。
しかし予想に反して見えた光景に、彼女は目を疑った。
ベッドは空だった。
あの後。ライモン氏からの依頼を解決し、戻った後に、夕食になった。
カタナは起きてこなかった。声をかけたら『食欲がない』と休んだままだった。
レポートを書く時に、ようやっと皆の元に顔を出した。受け答えはしっかりとしていて、少しだけ笑ってもいたから、一同は無理しない様にと促しながら、作業を進めていった。
カタナは、表情が顔に出る。物凄く出る。
その彼女が微かに笑っていたから、皆は『大丈夫なのだろう』と判断をしたのだ。
マゴット女将に夜食用のスープを用意して貰い、それを飲みながら、全員で記録を纏めていく。
この辺りの領邦軍と大市運営者の確執。それによる民間人が受けるダメージ。
依頼の最中に体験した魔獣の性質や被害状況。
大市内部で取引されている品物について、等々。
互いに分担しレポートを終えた時には、21時を回っていた。
明日は朝6時の起床だ。トリスタまでの列車が21時過ぎまであるとはいえ、時間は有限。
出来る限り早く起きての行動になる。だからさっさと一同は寝る事にしたのだ、が。
(布団が冷たい。抜け出てから結構な時間が経っている……。洗面所でも、ないな)
静かに立ち上がって、カタナの布団を調べる。
荷物は部屋に置いてあった。勝手に実習を放り出して逃げた、という線はない。
思えばスケイリーダイナの討伐から彼女はどこかおかしかった。
だがまさか、姿を消す程に彼女が追い詰められていたとは思いもよらなかった。
ダイナの攻撃で受けたダメージより、ラウラの問いで受けた精神的ショックの方が、大きかったのではないか?
もしもそうならば、ラウラは彼女に謝らなければならない。
(リィンの事とて、そうだ。私は――)
リィンに問いかけた『何故、全力を出さないのか』という言葉を思い出す。
ラウラ・S・アルゼイドという少女は、剣の様に真っすぐだ。
出来る事を全力でやる。すべき事があるならする。手を抜くことも無く、絶えず自分自身を客観的に見つめる。気を緩めることがあったとしても、それは次の鍛錬への休息期間。常に自分を、より良い自分にする努力を惜しまない。
得難く、誰にでも出来る訳ではない『努力する才能』を、彼女は持っている。
だからこそリィンに疑問を抱いた。
『名前を汚しているのは分かる。でもこれが俺の限界だ』――リィンはそう返事をした。
……本気になれないことを、責める気は無いのだ。
努力をしても形にならない時期はある。上手くいかない時もある。壁を越えられない事もある。
トラウマや、過去の背景が重なって全力が出せない――それ自体は十分にあり得る話だ。そうした悩みがあるからこその停滞で、何れ悩みが消えれば自ずと壁を越えられよう。
リィンの中にある才能が覚醒すれば、きっとラウラを越えていく。
だが、カタナのあれは――
本気になりたいのに、なれない。
あるいは、本気になってはいけない中で、本気になろうとしている。
行動と心の中が食い違っている。人間は、心技体が揃ってこそ優れたパフォーマンスを発揮するというが、あの彼女は体と心がばらばらだ。
スケイリーダイナの戦いで、彼女は、ミスをした。
でも違ったのだ。ラウラが問いかけた時、彼女の顔には、意図的だったという自覚があった。
だが彼女はそれを否定した。ミスだったと言い張った。
ラウラが何よりも気になるのは、そう言い放ったカタナの顔が、酷く泣きそうだった事だ。
虚勢を張って、何事もない様に貫いた。
きっとアレは、カタナの弱点だ。ラウラのあの時の詰問は、きっとカタナを傷付けたのだろう。彼女自身がどう思っているかは兎も角、ラウラは気にする。当然の様に気にした何気のない一言は、彼女を苦しませたのではないかと思う。
入学式の時からだ。彼女は言葉一つ一つを受け止めていた。
隣で見ていたから知っている。
学院に来てから楽しんでいたことも知っている。
列車でケルディックに来るまではしゃいでいたのも知っている。彼女は楽しんでいた。
楽しんでいたのに、此方の知らぬ場所で、勝手に無理をして、勝手に泣きそうになっている。
そんな様子、そんな矛盾した姿を見て、どうして黙って居られよう?
「……出入口は鍵がかかって居る……であれば……窓、か……」
念のためにリィンに言伝だけをして、静かに部屋を出た。
階段を降り、《風見亭》の扉を確かめる。施錠されたままだ。
店の人間が使うだろう勝手口や搬入口を通った可能性は低い。
ここはケルディックの宿酒場だ。遅くまで営業し、マゴット女将はそれ以上に遅くまで起きて、備蓄整理や、売り上げの記帳を続けているだろう。密かに部屋を出たなら、発見される危険性は、彼女なら犯すまい。
カタナの身軽さならば、最悪二階の窓を開けただけで、十分に出入りが出来る。
昼間の騒がしさも、夜になってしまえば見違えるほどに穏やかだ。静寂に包まれている。
幸い、星明りで視界は効く。物音に気を付けてラウラは歩き、慎重に窓を確認していく。
やがて、店の出入り口から一番に遠い、壁際の窓が施錠されていないのを見つけた。
ラウラは静かに、窓から抜け出した。
「カタナ。其方は、何処で泣いている?」
○ ○ ○ ○ ○
目の前に、巨獣が居る。
《痩せ狼》ヴァルター。《
数字は8。冠するアルカナは『力』。
そのコードネームが表す通り、彼は獣だ。《痩せ》という形容詞は似合わない。その体格は鍛え抜かれた鋼――と、《鋼》と呼ばれるお方は別にいるが――を思わせる。痩せているではなく、飢えているの間違いだ。
東方武術『泰斗流』の達人にして、その他多くの武芸武術を身に着けた、執行者屈指の肉体派。
そしてその技を人殺しに使う事を躊躇わない「殺人拳」の使い手。
強者との戦いの為ならば弱者を踏み躙る事も平気でやる、かなりの外道だ。
……いや《
だが一定以上の強さを持つ人間には、それなりに敬意を払う事も確かだ。
故に『結社』の中ではマシな部類に入るのだろう。
周囲が自分に負けず劣らずの腕利きだから楽しく日々を過ごしている。
その彼は、どうやら《怪盗紳士》から誘われてケルディックに来たらしい。
「東方に《
『今行っても面倒になるだけだ。エステル君や《漆黒の牙》、果ては《殲滅天使》まであの場所に居る。これ以上は止めておこうではないか』――とのこと。
親切心ではないな。ほぼ間違いなく、別に愉快なイベントがあると分かっての行動だ。
ヴァルターを制止させた上で、本人はしれっと予告状を出す、アイツはそういう奴だ。
「奴自身は、俺にそう言って用事放り投げたくせに怪盗しに行きやがったがな。……くくく、だがまあ、クソガキの情けない姿を見れたのは、ある意味じゃあ収穫だ。なあ、エカターニャ・N・アルビー?」
ふー、と煙草の煙を私に浴びせるように吐き出した狼は、私を見て嗤う。
ケルディックの西側。街道に出てすぐ左に見える大樹の下で、私はヴァルターと対峙していた。
いや、対峙というのは間違いだ。身長にせよ実力にせよ精神状態にせよ、対等とは程遠い。
「ば、馬鹿にしに来ただけなら、私、帰る、……帰り、ます、よ」
狼の返事は笑いだった。虚勢は見通しているとばかりに、鼻で笑われた。
……分かってる。帰っても何かが変わるわけじゃない。今日と同じように、やるしかない。
サラ教官への恐怖に、己の醜さに、皆と過ごす罪悪感に、成果を上げなければという強迫観念に苛まされている。精神が焦げるような軋みで痛んでいるが、他に方法がないじゃないか。
「好きにしろよ。俺がお前をここに呼び出したのは、俺自身に用事があったからじゃねえ。頼まれたんでな。……ほら、受け取れ」
ヴァルターはぽいっと何かを投げてよこす。
それは『髪留め』だ。ARCUSとの同調が今も上手くいかない
同じ形の物だ。型は同じだが、新品だった。
「そいつならお前らの……ARCUSだったか? それとも同調するとかいう話だ。俺をパシリにするとは良い度胸だが、ブルブランだけじゃねえ、ルシオラの奴からも頼まれちゃあ仕方がねえ」
「ル、ルシオラさん……。生きて、らっしゃった、んですか」
「あ? 仮にも『執行者』だぞ。あんな程度の高さから落下して死ぬかよ。あいつは風属性アーツの使い手、自分で自分に《エアリアル》使って飛ぶとか、式神召喚して跳ぶとか、方法は幾らでもあんだろ」
言われてみればそりゃそうだ。納得しかない。
『
『
彼らと合流すれば脱出は難しくない。
「そっから崩壊までの間にグロリアスにもどりゃ無事なんだよ。俺もブルブランもそうだった。……あいつもレンも戻んなかったがな。……テメエ、この前クロスベルに行ったんだって?」
「み、耳が速いことで」
「お前は知らなかったようだが、ルシオラは今あの遊園地で占い師やってるんだよ。……マリアベル・クロイスが許可を出してな。ルシオラの奴はテメエを気に入ってたから、ブルブランとIBCと共謀して俺に運び屋を指名しやがった。くそったれ」
言葉と同時に、煙草を吐き捨てた。地面に吸い殻が落ちる。
対して私は、話を聞き少しだけ、荒れた心の中が凪いだ気がした。
私に化粧を教えてくれた彼女。死んだものかと思っていたけれども、そうじゃなかった。
生きていたんだ、ルシオラさん。
『影の国』で出会った姿は偽物だったから、今の情報は――。
「なあ、おい、クソガキ。――なんでそんなに
指摘に、私は顔を抑える。
私は――喜んでいる? 安心している? この、状況で?
己の所業を省みて、信頼を得ようとしている中で?
半ば愕然としながら、私は己の頬を確認する。
確かにその頬は
「……ああ、……あー、なるほどなぁ。くっくっく、そうか、そういうことか」
確かに面白いものが見れんじゃねえか、とヴァルターは笑う。
そして獣の眼光と共に、牙を剥く。
「お前」
刹那。私は三つの行動をした。
左腕で喉と心臓を、右腕で腹をカバー。覚悟をした瞬間に
その瞬間、カチッという音。景色が流れていく。私の身体に食い込んだ拳は、その全エネルギーを叩きこまれるよりも早く、私を弾き飛ばす!
辛うじて地面に着地。痺れる感覚に息を吐く。
一撃が、重い。
唐突なまでの暴力。だがこれは彼の平常運転だ。その場で殺す殺さないの判断が切り替わる。
「本当は、気付いてるんだろうが?」
「何、を」
これじゃ準備運動にもならねえ、と軽く肩を回すヴァルターは、私が無事なことを知って笑う。
痛いが、意識はまだ大丈夫だ。
今の一瞬、私は自分から跳んだ。拳が叩き込まれる方向に、高速でバックステップをしたのだ。威力は僅かに減衰した。受け身は取ったし、衝撃も出来る限り殺したが、両腕が重い。
緊張感で息が荒い。なのに私の心は。
ヴァルターが掌に気力を集める。呼吸と共に練られた功夫が、私のいた場所に飛ぶ。
『遠当て』が地面を抉り、土煙を舞い上がらせる。視界が覆われる中、咳き込む音。
私、ではない。勿論ヴァルターでも、ない。
「だ、誰――」
判断するよりも先に、ヴァルターの言葉と技が迫る。
凶悪な圧力を前に、体に刷り込まれ、訓練で仕込まれた戦闘技術が否応なしに目覚めていく。
私の心は、冴えていく。
あれ程に焦れていた感覚を忘れている。恐れも、軋みも、不安も、どれもが押しやられている。
それは否応なく、私に真実を突き立てる。
「誤魔化すなよ。――お前は
構えた私の視界、その隅に、ラウラの姿が見えた。
○ ○ ○ ○ ○
「なん、だ、カタナ、この、男、は――」
「下がって!」
ヴァルターを見たラウラの顔は、蒼白だ。
ほんの一瞬の目撃で、彼女は悟っている。目の前の男は、己より遥かに強いと。
時間稼ぎにもならない事を承知で、地面にあった石を蹴り飛ばし、ヴァルターに。
それを一瞥した狼は、私の声で兎に角、まず動き始めたラウラを視界に捉え。
「らぁ!」
次の瞬間、ヴァルターは地面に踏み込んだ。
たった一歩。だが鍛え抜かれた一歩は、地面に亀裂を生じさせ、めくり上げ、衝撃で石を弾く。
昼間ラウラが行った『地烈斬』を、丸ごと広範囲に広げたような暴力。それを震脚だけで。
――分かっていたけど、執行者は、化け物だ!!
寸勁でグランセルの大門を破壊した姿を知っている。
その威力と体力に、私は勝てるはずがない。それも分かっている。心の底から承知している。
だけど。だけどその時、私は――前に出ていた。
そして、混乱しているラウラに延ばされたヴァルターの手を捉、え――。
――るよりも早く、蹴り飛ばされていた。
「ッカ、……ッキュ、ヒュ……」
完全に見えていない位置からの蹴りが背中に。嫌な音がして、呼吸が狂う。
だがワンアクションだけは遅らせた。
ギリギリで飛び退いたラウラが、冷や汗を流しながら、構える。私を庇う様に。
それは強がりでしかなかったが、ヴァルターの足を止めさせるには十分だ。
「止めとけ。俺はそっちのクソガキと話をしてるんだ。割り込んで良い状況じゃねえぞ?」
――実力は分かってるんだろう? 割り込むとお前が死ぬぞ?
――武術家に武器を向ける意味は分かるな?
親切心ではない。くく、と獰猛に挑発している。ラウラがそう言われて『はいそうですか』と引き下がれないことを、この男は知っている。知っていて、敢えてそう言ったのだ。
「さ、さがって、ラウラ、だめ」
「……其方を、放置は、出来ない」
「か、勝てないから! だから! 下がって!」
「分かっている!」
私の言葉を、ラウラが一刀両断する。声は真剣だった。
「私と、其方が力を合わせても、勝ち目はない。そんなことは、分かっている! だが――」
額に冷や汗を滲ませながら、彼女は何時ものような顔を浮かべた。
如何なる敵を相手にも意気軒昂と笑って立ち向かう、不敵な笑顔を。
絶対に勝ち目がないと分かっているのに。
「其方が、立ち上がれるくらいまで時間を稼がなければ、一緒に逃げることも出来まい!」
私の為に、私を庇ってくれていた。
その言葉が、輝くように私の中に吸い込まれて行って。
実感として言葉に出るよりも、ラウラが細やかな抵抗をするよりも。
ヴァルターの方が早かった。
鎧袖一触とは、きっとこういう意味なのだ。
言葉や覚悟では、越えられない壁が存在する。ヴァルターはまさにそれだった。
信じられない程の速度で動いた巨躯が、全力で警戒をしていたラウラの背後を、容易く取る。
私の眼でも一瞬、追いきれない。間違いなくリベル・アークの時より、強く速くなっている!
「!?」
そしてそのまま、獣の腕が、ラウラを確保。
武骨な身体からは想像できない程に流麗な動きで、関節を固め、後ろ手で拘束する。
完璧な関節技だった。僅かでも力を籠めれば、ヴァルターの力は、ラウラの腕を小枝の様にバキバキに折れる。背中の痛みを堪えながら立ち上がった私は、彼女を盾に佇む狼を、見る。
それ以上は、今は起きまい。
少なくとも戦場で女の肌に手を伸ばすような奴じゃないことだけは、助かる。
――勝てない。勝てない、けど、なら、どうする。
『執行者』を相手の鍛錬。僅かでも気を抜けば怪我じゃ済まない。何回も経験済みだ。
身体が、精神が、嫌でも当時に巻き戻っていく。
「その眼だ。懐かしいじゃねえか。テメエが、あのワイスマンの元で、使い魔みたいにチョロチョロ暗躍してた時の眼だ」
「……カタナ、そんな顔、を」
そして、顔も、嫌いな、おぞましい表情になっているのだろう。
ラウラの私を見る目が、辛い。だが直せない。直す余裕がない。
私の目付きに、彼は懐かしむように続ける。
「テメエが当時をどう思ってるかはどうでも良い。だがあの時のお前は『強かった』ぜ? ただの道具が『強い』ってのは表現に合わねえから、使い勝手が良いとでもいうか。……確かにワイスマンが死んで、テメエは目つきはマシになったのかもしれねえ。だが――
「――……っ!」
余計な抵抗が出来ない私を、言葉が穿った。
ラウラは私以上に何もできない。何か動いただけで、己の腕が壊されると確信しているからだ。
むしろ圧倒的な強者に生殺与奪を握られていて、パニックにならずに、聞いている――先程から今のこの状態の変化において、それだけでラウラの気質と精神力を、褒めるべきだろう。
彼女は私とヴァルターの会話を、聞いている。
言葉が私を抉った。サングラス越しの、獰猛な獣の瞳が、捉えて離さない。
ラウラよりもずっと鋭く、危険で、私の心を飲み込むような覇気を纏った眼光。
穏やかな夜だというのに寒気が脚から背中に、抜ける。
『結社』の強さを彷彿させる状況が、私の記憶を起こしていく。
――あるいは、もっと、別の――■への■■が――。
オリエンテーリングで、《Ⅶ組》に参加する時、頭に過った思考。
――……なのかな……それとも……もっと別の……
旧校舎の探索を済ませて、リィン達と夕食を囲んだ時に、過った思考。
「…………違、う。私、は」
「いいや、違わねえな。お前はさっき喜んでたじゃねえか」
私は、ルシオラさんが生きていたことを喜んだ。それを否定できない。
自覚してしまえば、なし崩しに、心がどんどんと疑問に覆いつくされてく。
「
ワイスマンを唾棄しているにも拘わらず、今も『家庭教師』と表現してしまうのは何故だ?
いいや、そもそも、ジェニス王立学園ではなく、帝国に来た本当の理由は何だ?
お前は本当に贖罪をしたかったのか?
お前はリベールで図々しく振る舞えなかっただけなのか?
全ての疑問は、たった一言で答えられる。
私は『■』に『■■』があるのだ。
私は『蛇』に『未練』があるのだ。
だからこうして、嘗ての候補生時代のように『執行者』と立ち会うと、心が落ち着いていく。
何も考えずに機械的に動く――蛇の道具としての私が目覚めて、色々な悩みを消していく。
帝国に居れば、何れ――なし崩し的に、『結社』の皆と、関われると、知っている。
「………く」
歯噛みした私の心の中に、ふつふつと沸き上がって来る感覚があった。
自覚したくなかった感情が、表に出てきて、暴れそうになる。
トールズという場所が眩しくて――嫉妬していた。
クラスメイトの皆との交流が楽しくて――羨望を抱いていた。
せめて少しでもサラ教官からの信頼を得ようと頑張っていた。
それは――己が彼女を信じることが出来ていないという意味だ。
自暴自棄だったのは――どうせ自分が許されないなら、という投げやりな感情の裏返しだ。
「……わ、私に、自覚をさせて、何のつもり……!」
「決まってるだろうが。目の前の獲物が強くなるってのが面白くなくて、なんだ?」
狼は牙を剥く。
この男の狙いは、幾つかあると言った。その一つは、私への補助導力器。では他は。
忘れてはいけない。『執行者』は須らく冥府魔道に落ちても不思議ではない闇を抱えている。
嘗てツァイスの地脈を活性化させた時も、この男は笑顔で、エステル達がやって来るのを待ち構えていたのだ。親切心では、断じてない!
お使いの
くくく、と嗤う。餓えた獣が嗤う。
ヴァルターが私を見る目は、獲物を怒らせ、強さを引き出すやり方そのままだった。
窮鼠猫を噛む。死にかけの獲物が最も猟師を殺す。そしてそれを承知で、最も脅威が高まる瞬間を心待ちにして、返り討ちにすることを楽しむ闘争家。
獲物を最も肥え太らせ、喰う楽しみを最大限にする為、
だからこその《痩せ狼》!
挑発に乗ったら終わりだ。此方から喧嘩を売らなければ、向こうは拍子抜けする。
落ち着け。頭の中にある、ぐるぐるとした、蛇への未練はそのままに、落ち着け。
この場を無事に切り抜けることだけ、考えろ!
整理するのも、説明するのも、後で良い!
だが、その思考は、あっさりと途切れた。
「さて、アルゼイドの小娘か。他より少しは腕が立っても《光の剣匠》には遠く及ばねえ。……仮にこいつの死体を家に投げ込んだらどんな反応をするか楽しみだな」
――頭の中で、何かが弾けた。
○ ○ ○ ○ ○
「……めて」
「あん?」
《痩せ狼》の言葉は、嘘ではない。こいつはやる時になったら本気で殺す。ラウラを此処で殺してレグラムの池に死体を放り込む。それくらいやる男だ。
頭の中に、その景色を幻視して、私の中は塗りつぶされた。
ヴァルターの先程までの問いかけと対峙で、余計な物が抜けていた。
この実習で成果を上げないといけないとか。
蛇への未練が多いが故のエレボニア帝国来訪だとか。
秘密を知られてしまって如何しようかという不安だとか。
ヴァルターに逆立ちしても絶対に勝てないという情報だとか。
この状況で攻撃をすれば、ラウラは盾にされた上に彼女の腕が折れるなとか。
そうしたあらゆる情報の全てが、頭から消えた。
代わりに思い出したのは、昼間のラウラの眼。
どうしてあんな真似をしたのだと、私を心配する目があった。
その後、言葉を濁して逃げ出した私を、それでも良いと追及しないでくれた目があった。
そしてさっき、私を庇った顔があった。どんな時も真っすぐで、私を信じた目があった。
私に彼女は言っていた。
『そんな目をするな』と。
気付けなかった。気付く余裕がなかった。
だけど奇しくもヴァルターとの対峙で――思考が過去に戻っていた。
機械的に、何も考えず、ただ動くだけのシステムに、思い出は鮮やかで強すぎる。
ヴァルターと同じ、私を観察する目。
だけど正反対の、温かい目。
だからこそ、私は――叫ばずにいられなかった。
「止めて! 止めてください! 彼女は私の、友達なんです!!」
「――は」
その言葉に誰よりも驚いたのは、ヴァルターでもラウラでもなく、私だ。
今まで胸を張って言えなかった言葉が、自然と出た。
身体は勝手に動いていた。
『使う』。私の言葉に驚いたヴァルターの腕にしがみつくように加速。
鋼のような筋肉を掴みながら、そこを支点にして蹴りを放った。右爪先をサングラスへ。
同時に、シャコ、という音。
――慎重に準備をした、靴の音。
鉄板の中に仕込んであった隠し刃。爪先を叩き付ければ、刃が肉を貫くだろう。
ほんの僅かで良い。僅かだけでも当たれば良い。
幾ら達人でも、眼球が肌より頑丈とは思えない!!
微かに刃が鈍く輝いているのは、毒を塗布してあるからだ。
僅かに体内に入れば良い!
「あめえよ馬鹿が!」
その足が、カウンターされた。
肉と肉がぶつかる音がして、右足が弾かれた。
ヴァルターは首を振る。軽く首を振って、角度とタイミングを合わせ
それだけだ。それだけで、靴の刃が砕け散った。勿論、毒も通りすらしていない。
「……っぐ」
片足が痛みで動かない。たった一撃でこの威力。
痛みが私に告げる。
何故激昂をした! 何故無謀にも飛び掛かった!
お前じゃ逆立ちしても勝ち目が無いことくらい、知っているだろうに!
心の中の疑問に叫び返す。
知らねえよ! 勝手に体が動いたんだよ!
ほんの一か月も経っていない間に手に入れた何かが、囁いたんだよ!
「……てめえ」
ヴァルターが笑う。やりやがったな、という顔だ。
そのままラウラを離す。いや、離さざるを得なかったのだ。
彼は片腕を抑え、無言で“それ”を引き抜く。
蹴った瞬間、彼の腕――ラウラを捕まえていた方の手首の関節に、針を突き刺したのだ。
「蹴りもフェイントか。神経を狙うとは、相変わらず姑息な奴だ」
針を抜き、軽く手を振って感覚を確かめる。一時的に痺れるくらいの効果しかない。
だがその一瞬でラウラは抜け出せた。ならばそれで良い。
認める。認めざるを得ない。私は蛇に未練がある。
だけど! だけれども! ここでこの狼に食い殺されるのだけは、嫌だ!
だってそうだろう。それをしたら、私は――私は、逃げたことになる。
サラ教官からの視線にも、そして私を心配してくれた皆からの視線にもだ!
気付いてしまった以上、無視なんか、出来るかよ。
「だ、だから、何? それが、なんだって……? と、友達に――ラウラに、これ以上は、何も、させない、から!」
本来は、彼の肌や筋肉を貫くことは出来ない。
だがラウラを掴んでいた腕だけは、どうしたって慎重になる。力が込められていないならば、不意を突けばいける。……二回目はまず通用しないだろうけど。
そもそも暗殺用に使う代物で、残りはあれ一本だけだ。同じことは出来ない。
「……カタナ」
距離を取ったラウラが、決められていた関節を確かめながら、私の横に並んでくれる。
折れてはないらしい。きっと私の言葉が、それほど意外だったのだ。そう思おう。ヴァルターが加減したとか思いたくない。先ほどまでの挑発は紛れもなく本気だったのだから。
「礼を言う。其方のお陰で、腕は守れた」
「まだ、守れて、ないよ」
「――そうだな。では、一緒に逃げようか」
二人でヴァルターに対峙する。
先程までの、私の顔と態度を見ていた筈なのに、ラウラの笑顔は今までと同じだ。
「お、怒らない、の?」
「そんな余裕はないのでな……。――泣いている友人に対して大事なのは、叱責よりも、慰めだ。そうだろう?」
「に、逃げるのも、大変。私が足止め、してるから――」
「其方は馬鹿だな!」
ラウラが断言した。
「この状況で自分を犠牲にとは昼間と全く同じではないか。そこの大男との会話で、何かを自覚したのではなかったのか? 半端なまま適当なことを言うな。――自分の価値を下げるな」
相手との実力差が縮まった訳ではないのに、ラウラの言葉が、すっと染み込んできた。
ヴァルターからの威圧感が減った気がする。
私は無言で、ラウラの横に並ぶ。
様子を見ていた向こうは、暫く黙っていたが、やがて口を開いた。
「……「おともだち」。それは、お前に価値があんのか?」
「分かり、ません。です、けど。何か意味を、見つけます。う、失いたく、ありません……! 私の、……新しい、強さの、源は、きっと、ここに――あり、ます!」
私は叫んだ。吼えていたかもしれない。その時、どんな顔をしていたのか。分からない。
だけど『逃げていた』顔では無かったと思う。だってラウラの顔が満足そうだった。
「……どっかの
《痩せ狼》はそう告げた。
別に、ジンさんの事を思って言ったわけじゃない。偶然だ。
一歩何かが違えば、この男は私もラウラも殺していた。
そちらの方が面白い、というだけの理由で。
殺人をするスイッチは、彼の中にあり、彼にしか分からない。
ミラで動く猟兵なんかより、見方によっては遥かに危険な獣。
だけど彼は、強さには、敬意を払う人間だ。
それがどれほどに下らないと思っていても、強さの源を見極め、獲物を狙う人間。
リベル・アークでの一件以来、小さな成長要素にも彼は目を配るようになった。
たとえ直結せずとも、遠回りな道であっても、それが成長に繋がるならばと切り捨てなくなった。
《不動》のジンに負けたからだ。
その『小さな積み重ね』をしてきた漢に、負けたからだ。
「そんな目をするか、クソガキ」
私の眼が、何を語っていたのか、ヴァルターは言わなかった。
ただワイスマン時代とも、昼間までの私の眼とも違う物だったのだろう。
「……テメエは天才じゃねえ、薄皮を重ねるよう鍛錬を積まないと育たねえ。10年以上候補生やって、結局『執行者』になれなかったのが証拠だ」
狼は苛立ちを隠さない。
出てきた肉料理が生焼けだったとでも言いたいような、態度だった。
「道中の寄り道、簡単だっつーから暇だからと請け負うんじゃなかったぜ。いっそ《紫電》のアマ公が居る時でも良いと言ってくれりゃ仕事も楽しめたってのに街道から出てって捕まえられねえし。半端な奴を食っても何にも満たされねえ」
ヴァルターは、懐から再び煙草を出して、ライターで火を付ける。
そして心底に面倒くさそうな仕草で背を向けると、ケルディックの町の方へ歩いていく。
私もラウラも、何も言わずに見送るしか出来ない。
《痩せ狼》は最後に振り返った。
「次会ったら少しは遊んでやるクソガキ。今度は見逃さねえし、死んだ目してようが強くなってようが道具に戻ってようが、癪に障ったら潰す。嫌ならそれまで精々功夫を積んでおけ。……――テメエの歩法を
一言残して、狼は去っていく。
その姿が消えたところで、私達は大きく息を吐いた。
「……カタナ。話してくれるな?」
「……。…………ん」
私は、頷いた。片足を抑える。骨は折れてない。
ケルディックの街からヴァルターが発したと思わしき喧嘩音が聞こえてきたが、気にしない。
ラウラに座るように促した。
今になってぐるぐると、ずきずきと、心が再び軋み始める。
昼間までの己の在り方と、今ラウラに見せてしまった姿と。
全部をひっくるめて、何から言えばいいのか分からなくなってくる。
同時に震えが来た。
心の中にあった恐怖より、もっと身近な恐怖だ。
――事情を話して、拒絶されたら、どうすれば良いのだろうか?
「カタナ」
ぐい、とラウラに引き寄せられる。
そのまま引き寄せられ、頭を抱えられた。胸に顔を埋める様な姿勢になる。
男子が見たら羨みそうな格好だ。とても暖かかった。
「まず話せ。まず行動をしてみろ。入学式に、語っただろう?」
経験がないことを恐れるのは当たり前。だから自分の手で、実行してみれば良い、と。
私は、口を開く。
○ ○ ○ ○ ○
「……まず……私は、学院に来る前に、――テロリストだったことを、伝えておく」
どこから話せば良いのか。内容が多すぎるので、出来る限り簡潔に私は口を開いた。
『結社』の全貌を話しても理解は及ばないだろうし、『執行者』だの《使徒》だのを語っても混乱させるだけ。本当に大まかな概要だけを伝える。『結社』がテロ集団と言えるかは微妙だが、間違ってはいまい。
少しずつ語っていった。
私はずっとテロリストとして各地で暗躍してきたこと。
テロ集団として、私が『リベールの異変』にも関与してきたこと。
それまでは『駒』だった自分に、少しずつ疑問を抱いて行ったこと。
遊撃士達に解決される中で、私の中に迷いが生まれて、一時的にテロを止めたこと。
解決の最中に縁があって出会った人の薦めで、トールズに来たこと。
サラ教官との関係だけは言えなかったが、話せるだけの話はした。
「……そうか。カタナ、其方が……妙に純真だと、誰もが言っていた。リィンも、アリサも、エリオットも気付いていた。其方が寝ている間に話になった。……其方は、駒や道具としての生き方を捨てたからこそ、自分の人生を感じていたのだな」
「そ、そんな立派な、話じゃないよ。でも、け、景色が――変わって見えているのは、そうだね、きっと、それが理由。『結社』を抜けて、気ままに見る世界と空は、昔よりずっと変わって見えたから」
心の持ち様で景色は変わる。
グロリアスの中で見上げた青空と、入学式で見た青空は、全く同じ空の筈なのに、違う。
私がテロリストだと話した時こそ、ラウラの顔は一瞬強張ったが、徐々に和らいでいった。
私は話を続ける。
先程のヴァルターは、組織の上級エージェントの一人。
だけど彼との会話で、帝国に来たのは、組織に未練があったからだと指摘されたこと。
そして話している最中、つい――カッとなって、反撃してしまったことを。
「私の為、だったのだろう?」
「分からない。……分かんないラウラ。ずっとね、ずうっと頭の中で、ぐるぐる回ってる」
皆の力になりたいのに、単純にそう思えない立場。
楽しく過ごしたいのに、素直に楽しめない罪悪感。
それらが塊になって押し寄せてきて、出来ることはただ一生懸命に盲目に走るだけだ。
「そうか、ならば、……そうだな、こう尋ねよう。其方は――その『結社』に戻りたいのか?」
「……未練は、ある」
未練があるのだと、自覚してしまった。
今までごちゃごちゃと言って来た帝国に来た理由は、『幻焔計画』を止めるためではない。
自分から彼らに接触して、自分の中の感情を、整理したかっただけなのだ。
確かにやっていることは犯罪だ。だけれども。
例えば色々な人に出会って教育を施されたこと。
難しい任務を任され無事に達成できたこと。
うるさい友人(暫定)と鍛錬を受けて、《鋼》の前に動けなくなったこと。
それらは、過去の所業と同じくらいに、私を作り上げてきた。
これから学院で学び、育つものと同じくらいに、価値がある物なのだ。
私の言葉に、ラウラは、ならばと続けた。
「……学生を辞める気があるのか?」
「それは、ない。――わ、私、まだまだだけど。やっと何か、此処で掴めそうな気がしている、から。此処で学ぶことがあるって、分かったから。だから、卒業までは、頑張る」
「そうか。じゃあ、それで良いのではないか?」
あっけらかんと、そう返事をした。
私は思わず、黙る。
「学生を辞める気はないのだろう? 無論、悪の道に走るというならば止めよう。私は全力で止める。他の皆も止めるだろう。だが夢を見るのは其方の自由だ。そして『幾つの夢』を同時に見るのも、其方の権利だ」
彼女は私に告げる。
何かを選ぶ必要なんかないと。
全部選べと、そう笑う。
「ならば、全部実行すれば良い。学院に通い、その後で、その『結社』とやらに戻っても良いのではないか?」
彼女は私に告げる。
欲張って、全ての悩みを、全部解決してしまえ。と。
「なんなら学生をしながら戻っても良い。其方は、そこに居るだけで、もう充分我らの友人として成立している。……な、カタナ。其方はもっと、欲張りになって良いのだ」
「――あ」
「私も欲張りだ。其方を助けたかったが、あの男には何も出来なかった。悔しいとも。負けたくない。本気で不甲斐ないと思っている!」
だが、とラウラは悔しいと言いながらも、私に微笑んだ。
「だが……今は例えば、同じくらいにこのケルディックの問題に立ち向かいたい。皆と課題をやりきりたい。部活動もモニカと仲良くやりたい。と、まあ私でもこんな風に色々な悩みがある。それを区別する必要なぞ、無いだろう?」
「――――」
ラウラがこっちを見てくれた。そのラウラの眼が、揺らいでいる。滲んでいる。
眼から、雫が流れてたことに、気付いた。
頬を伝う涙を見て、ラウラが私を引き寄せてくれる。
「胸が必要なら貸すぞ。こう見えて包容力には自信がある。……泣きたい時は、泣けば良い。フィーが、其方が妹だと言った理由が、分かった気がするよ。確かに其方は、幼子だ。それも飛び切りに純粋な――
「ひ、酷い……。わ、私の方が……フィ、フィーより、お姉さん、だもん……むぎゅぅ……」
断じて! 私は! 子供じゃない!
――だけど、説得力は無いのだろう。
――言葉には甘えさせてもらった。
――色々な何かに悩むのではなく、全部に立ち向えば良い。
――サラ教官の為に実習をするのではなく、蛇の為に帝国に来たのではない。
――何かの為にと言い訳なんかせずに、全部やってしまえば良い。
何かが解決をしたわけじゃない。
だけど混乱していた想いは、解き明かされた。
狭くなった視野は、大きく広がって、窮屈だった心は広がってくれた。
これならば――きっと、もっと自然体で、実習を送ることができる。
そしてサラ教官を相手にしても、ほんの少しだけでも我儘を言えるようになるかもしれない。
希望を教えてくれたラウラの言葉に、私は泣いた。
私とラウラのARCUSが、繋がるように、仄かに輝いていた。
○ ○ ○ ○ ○
翌日。ケルディックの大市にて。
盛大に破壊された二つの商店を前に、領邦軍達が説明をしている。
青い制服に身を包む彼らは、どことなく疲労して、負傷をしているようだ。
「住人たちに告ぐ! 我々領邦軍は、この惨状を引き起こした犯人を知っている!」
彼らは告げる。
「昨晩の事だ!ケルディックの中をうろつく不審な大男を我らは目撃した。その男は非常に狂暴かつ短絡的な、ならず者だった! 我らの静止を聞かず、男は大市へ門を超えて入りこみ、力に任せて暴れまわったのだ!」
私は面倒になったなと大きく息を吐く。
――おいヴァルター、お前、思いっきり濡れ衣を被せられてるぞ。
さて、どうしたものだろうね、この状況。
ラウラとの絆が強まりました。
Q:おや、カタナの将来が……?
A:皆さんご承知の通り『執行者』になれば計画の妨害も行っても許されます。
Q:補助導力器の入手。
A:これで自然公園でも安心! ……安心?
Q:サラ教官……。
A:パルム向かう前に何やってたんでしょうね、あの人。