カタナ、閃く   作:金枝篇

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投稿が遅れた理由:『ものすっごい忙しかった』。
すっかり夏ですね……。皆様も体調には十分ご注意下さい。

花嫁トワ会長は引けませんでした。
ワンピースユウナも水着サラも水着ミュゼも引けてません!悲しい!
さておき『暁の軌跡』ネタも出来るだけ入れていきたいと思う作者です。
特にレミフェリア回りにガッツリと触れているので、是非反映させたい。

『創の軌跡』発売も迫ってますね。
「3と9」コンビとかも、どっかで触れれたら良いなと思います。
あの2人が『結社』でも別組織でも、カタナとは立場的に絶対仲良くなれる奴です。

今回は前々から張っていた伏線を回収する話。
これでユーシス&マキアスとも絆が深まるでしょう。
そうでなければ、乗り越えられない。

では、どうぞ。


ビタースイート・ピロートーク

 子供は親を選べない。親は子供を選べない。

 両者の関係が良くないというのは……この帝国では、よくある話だ。

 実を言えば、私も親との関係は良くない。母との関係はまだ……マシというか、互いに年に数度手紙のやり取りをする程度には関係が維持されているが、父親は存在すら認知していない。

 

 『アルビー』という家名は、両親のどちらの物でもないのだ。

 あの眼鏡(ワイスマン)とか『保護者(ブルブラン)』が、手配した物。

 『結社』とも関係が深い、鉄血宰相を経由して、皇帝陛下から賜った物だ。

 私の実親と、私の持つ家柄の間に、繋がりはない。

 ……繋がってない方が、個人的には楽だ。気楽だし、安心できる。

 

 唯、少しだけ未練がましい事を言うならば――。

 ――実の親と同じ苗字で、同じ家があり、同じ物を背負える立場は……少し、良いな、と思う。

 羨ましいとまではいかないが、私に無い物を持ってる人には、大事にして欲しいと思うのだ。

 

 バリアハートでの実習一日目。その夜。

 車での見送りを拒否し、《貴族街》から徒歩で移動してきたとはいえ、ここまで拘束されるとは思っていなかった。

 私は実習中の学生だっていうのに、ゲルハルト氏の態度は中々頑固であった。

 ようやっと『ホテル・エスメラルダ』に戻って来たのは、もう21時を過ぎるという頃だった。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 「……た、ただいま、戻りました」

 「お帰りなさい。……お疲れのようですね?」

 

 部屋に荷物を置き、着ていた夜会の礼服から制服に着替え、男子の部屋へと足を踏み入れる。

 化粧っけを落としたいが、シャワーは後だ。汗の臭いはしない筈。工作員に体臭はご法度だし。

 エマを含めた全員が机に向かい、今日のレポートを書いている最中だった。

 

 「つ、疲れたよ。のらりくらりと受け流すのにも、げ、限界が、ある」

 「顔に愛想笑いが引っ付いたままだぞ」

 「おっと……」

 

 ユーシスからの指摘で、緊張がまだ抜けていないのを自覚。

 さぞかし固まったままの、薄っぺらい笑顔を貼り付けていたのだろう。

 頬を掌で捏ねて、額やこめかみ、瞼も指でぐりぐりとマッサージする。

 これで、少しはマシになったかな。

 乾いた愛想笑いよりは、ほけーっとしたアホ面の方が良いだろう。

 

 「まさかカタナの方に指名が飛ぶとはな」

 「ホ、ホントにね。まあ、それでも、ログナー家とその身近な人だけで、良かったよ」

 

 一歩間違えれば、何かタイミングが違えば、一番立派な翡翠の館に逗留させられていた。

 その場合、ゲルハルト氏の招待を受けるより、更に面倒になっていただろう。

 

 私に一体何があったのかと言えば、単純だ。

 オーロックス砦のトラブルを終え、無事にバリアハートに戻って来た私達。

 《ピンクソルト》の報告やら、消耗品の補充やらをしていた時に、声が掛かったのだ。

 

 『アルビー嬢に昼間の礼をしたい。夜で良いので、集まりに顔を出してはくれないだろうか』

 

 ゲルハルト・ログナー氏から、そんな要請を受けたのである。私を直接の指名だった。

 勿論最初は『士官学院の実習で来ているので』と丁寧に断った。

 しかし、飽くまでもログナー氏と、彼が懇意にしているバリアハートの貴族だけの夜会で、本当はユーシスを誘いたかったのだが、という言葉を聞いては、しぶしぶとでも頷くしかない。

 怪我人である彼を社交界に送り出すのは、気が引ける。

 まあ、その分の成果は……零じゃなかったが……。

 

 ――なんか良いように利用された気もするなぁ。

 

 テロ事件に遭遇して、その晩での招待。

 詳しい調査を領邦軍に投げているとは言っても、ちょっとばかり不用心に思える。

 その旨をさりげなく尋ねたら『あの程度で予定を変えるのは癪だ』と返って来た。

 不安なことなど無い、脅しには屈しないと言われては、私が文句を言えるはずもない。

 

 まあ、ゲルハルト侯爵と良い関係を作れたのは収穫だ。

 ただ、アルビー家の娘がゲルハルト氏を助けた、という事実。

 そして私が、ログナー家の一人娘(アンゼリカ先輩)と親しくしている、という事実。

 これらの情報はそう遠くない内に、貴族の中で流れるだろう。

 

 ……気を付けないと、強引にでも『貴族派』に組み込まれかねないということでもある。

 

 今迄殆ど情報が出ていなかったアルビー家の()()()に、参加者は関心し、挨拶にやって来た。

 今日一晩だけで幾つの家と顔馴染みになったのか、数えるのも面倒くさい。

 覚えたけどね! 頭の中には顔と名前が一致して入ってるけどね!

 何とか夜会をのらりくらりと切り抜け、抜け出し、たった今戻って来たという事だ。

 あー面倒くさかった。

 

 「……疲れているのは分かるが、レポートは残ってるぞ」

 「そ、そっちも、把握してる。私の分、ちょーだい」

 

 全く、とこれまた面倒そうな溜息を吐きながらも何枚かの資料を渡してくれるマキアス。

 既にマーカーや付箋でチェックが付いており、レポート作成に必要な要点が纏まっていた。

 ……素直じゃない奴である。

 それでは、友人らに感謝して、さっさと今日の分のタスクを終わらせてしまおう。

 鉛筆を手に、レポート用紙に手を伸ばす。

 

 近隣の魔獣の生態系やら、バリアハートを支える主要産業やら、現在直面している問題やら、色々諸々。書くべき内容は幾らでもある。

 私の担当は『貴族派の財政について』だった。

 今日一日で学んだことをそのまま形にすれば良い、実にやりやすい課題だった。

 オーロックス砦に搬入された戦車らに、視察に来たゲルハルト氏を、頭に浮かべる。

 

 ――やっぱり影響力、意識してるんだろうなぁ……。

 

 そう、彼の発言通り、アルバレア家の人間は、夜会には参加していなかった。

 結果的に(ユーシスではなく)私が参加したというより、私を誘うためにユーシスを口実にした、とでも表現が出来るだろうか。

 ゲルハルト公曰く『ヘルムート公は別の夜会があり、今日は不参加だ』との話だったが……。

 ……つまり意図的に、アルバレア家の人間が居ない夜会を、開催したということだ。

 

 貴族派として、革新派に負けないように力を付けることは、重要事項。

 しかし貴族派と言っても幅が広い。その影響力は同一ではなく、一枚岩ではない。

 《四大名門》は互いに連携しているが、無条件で協力関係という訳ではない。

 庶民に対しての締め付けを強めず上手に立ち回るハイアームズ家があれば、税率を上げて貴族派での発言力を最大にしようと目論むアルバレア家もある。

 ログナー家は……強硬派でこそあっても、庶民を必要以上に苦しませるつもりはないようだ。

 この辺、若干のスタンスの違いみたいなものが感じ取れる。

 だからユーシスを誘い辛く、彼に影響がありそうな私を誘い、牽制した、ということだろう。

 

 ――……まあ、良いケドね。

 ――そーいう裏工作に情報収集は、お手の物だし。

 

 学生会館のサロンに足を運んでいる現状だ。向こうの思惑には素直に乗ってあげた。

 

 ――どっかでこの縁が役に立つこともあるだろうからね。

 

 そんな風に思考しながら手を動かしていると、気付けばレポート用紙の半分が埋まっていた。

 一通り確認し、誤字脱字が無いことを確認。大きく背伸びをする。

 顔に仮面の笑顔を浮かべて応対するのは何ということは無いが……学院での生活に慣れた自分ではちょっと面倒だった。肩が凝ったので深呼吸しながら関節を伸ばす。

 す、っと目の前に艶やかな模様のティーカップが差し出された。

 

 「眠気覚ましにしてください。気分がすっきりしますよ」

 「頂く……ありがとエマ……。……皆、ご飯は《ソルシエラ》で?」

 

 丁度頭の働きが鈍くなっていたタイミングだ。

 冷たいハーブティを飲むと、疲労感がするっと抜けていく。

 清々しい香りで、どことなく身体に溜まっていた倦怠感と眠気とが回復していく。

 

 「カタナが居ないのにレストランに、とは少し迷ったんだが……」

 「良いよ良いよ。夜会にはご馳走が並んでたし。摘まんできたから」

 

 リィンの申し訳なさそうな顔に、ひらひらと手を振って気にしないでと伝える。

 あんな場所で食べても味なんか大して分かりゃしないのだが、空腹は満たしている。

 お土産のハーブティで十分だ。食事は、何を食べるかも大事だが、誰と食べるかの方が()()大事。あんな貴族の集まりより、クラスメイトと一緒の方がずっと過ごしやすい。

 《ソルシエラ》の味を堪能するのは、明日以降でも余裕があるだろうからね。

 

 「も、もうちょっと気合入れる。す、すぐ終わらせる、よ」

 

 内容も難しくない。マキアスだけではなく皆がちょっとずつフォローしてくれたようだ。感謝。

 私が終わるまで寝ないで待っててくれるようだし。

 であれば、期待に応えなければ。

 それから30分。集中し、一気にレポートを書き終えた。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 書き終えたらすぐに休むつもりだった。

 明日も早い。だから夜更かしをするつもりはなかったのだ。

 

 ただ、私が投げた一言で――そのまま、会話が続いてしまった。

 ユーシスは――今日の一日で感じていた諸々を、吐き出したかったのだろう。

 

 「……そ、そうだ。聞いてなかった。ユーシス、怪我は……大丈夫、なの?」

 

 猛スピードで終わらせたレポートを、エマとマキアス、それぞれが目を通してくれる。

 細かいミスが無いかの確認だが……どうやら二人の眼から見ても、大きな問題は無い様子。

 

 ……ワイスマンのお陰で、レポートを書き上げる時間も相当に速い自信がある。

 ……偽装していた身分だったとはいえ、考古学者としての才能はマジで高いのは前々から話していた通り。必然、小間使いの私に要求する条件も高くなった。弟子としての信憑性の為『××の研究成果を出す』とかやらされた。分量もエグかった。

 まあそんなことは良いんだ。昔語りから舵を戻す。

 

 「カタナの処置以外にも……委員長に貼ってもらった薬草の効果もある。痛みもない」

 「似通った植物を集めて作った即席の品ですけど……効果があって、良かったです」

 

 エマが照れている。お婆さん――ローゼリアさんだな――から教わった知識であるらしい。

 薬草学は、まだまだ研究が進んでいない分野だ。レミフェリアでも開拓中。

 医療関係者より、森や山で生活する、『環境の知恵を持ってる人』の方が詳しいかもしれない。あるいは《D∴G教団》とか。……どっちも古代からの技術を持つ一族ってことだな。

 

 エマ曰く、全く同じ植物が生えてなくても、似た種類の物を組み合わせたり、複数を調合したりすれば、大抵の薬は作成出来るらしい。意外とアウトドアにも強いらしかった。

 

 おかげでユーシスの怪我は、怪我をした痕跡も目立たないとのこと。

 ヘルムート・アルバレア氏が、ユーシスの怪我を気付かなかったことが、良いことかは別として。

 

 「……おいカタナ。顔に出ているぞ。今、あの父上のことを考えていただろう」

 「ふえ!? ……え、えーえっと、あー、……その……」

 「誤魔化す必要は無い。子である俺の眼から見ても、そう言うことに気付かない人だ」

 

 あの人が見ているのは、俺ではなく、俺の風聞だからな。

 ユーシスは椅子に座ったまま、脚を組み、その上で手を組んで、はっきりと言い放った。

 そんなことはないんじゃない? という意見は、言えなかった。

 

 「兄上ならば、気付いたのだろうがな」

 

 そう話すユーシスの顔には、少しだけ――憂いを帯びた表情があった。

 常に傲慢であるヘルムート公とは違う、もっと等身大の少年が持つような、複雑な表情だ。

 学院では上から目線に見えるユーシスだが、あれは他生徒を威圧する目的もあるのだろう。

 

 これがユーシスの素顔に近いのだろうか。

 ……ルーファス氏の持つ優雅な余裕とも、また少し、違う気がする。

 昼間に出会ったルーファス氏と、ユーシスの会話を思い浮かべて、二人の並んだ姿を思い出す。

 

 (……あれ?)

 

 私はふと、気付く。

 ワイスマン譲りの『嗅覚』が反応していた。

 人間関係を見破れる、感情を嗅げる、この機能が、働いている。

 

 「どうしたカタナ。また珍妙な顔を浮かべて居るぞ。言いたいことがあるなら言え」

 「え? あー、……な、なんでも、ないよ?」

 「二回目も誤魔化せていませんよ、カタナさん」

 

 エマからツッコミが飛んだ。

 ポーカーフェイスは得意じゃないんだって!

 さっき社交界から戻ってきて素モードに切り替えたなら、猶更に!

 ユーシスの目線が鋭くなったので、私は意を決して、口に出す。

 かなりデリケートな問題なんだけど。

 でも、ユーシスが()()()()()()()だし、促してみよう。

 

 (ユーシスが……ヘルムート公の話を切り出したのも……多分、切っ掛けが、欲しい、のかな)

 「あー、えーと……ユーシスと、ルーファスさんって、お母さん……違う人?」

 

 異母兄弟ではないか、という指摘を。

 ユーシスは言葉を荒げることも無く、『良く気付いたな』と、静かに肯定をした。

 

 なんだって? と驚くマキアス。

 リィンは――黙ったままだ。

 この場に居るのが、男子3人だけだったら、もっと違う形での告白だったのだろう。

 リィンにも複雑な家庭環境があるらしいのは分かっている。彼だけなら踏み込まなかったかもしれない。

 口に出してしまい『良かったのだろうか』と不安になったが、今更、取り消せない。

 

 「気にするな。……カタナの気遣いは正解だ。……少しばかり、窮屈な襟元を緩めたくなった」

 

 肩の上に載る重圧が重い、とでも言いたげに、ユーシスは静かに口を開く。

 私の気遣いは、今回は正しかったらしい。

 口に出して良かったと心で安堵しながら、話を聴く姿勢だ。

 マキアスもレポートこそ置かなかったが、手を一瞬止め、音を立てないようにと行動を変える。

 あれは聴いている耳だ。

 

 「兄上の母は貴族出身で今も存命中。俺の母は、平民出身で……8年前に亡くなった。――つまり妾腹の子供なんだ俺は。……俺を引き取ったのも、外聞が悪かっただけだろうと睨んでいる」

 

 その中には、バリアハートで己に向けられた、期待と立場への忖度への面倒臭さがあった。

 アルバレア家ほどの格ともなれば、常に《高貴なる義務(ノブリス・オブリージュ)》を忘れるな、と養育される。周囲もそう接する。それが本人にとって楽か否ではないかは、関係がない。庶民として生きていたユーシスが放り込まれた貴族社会は、想像できない程に過酷な環境だった筈だ。

 私みたいな都合が良い臨時貴族とは違う。

 

 ユーシスは続けた。

 《ソルシエラ》のハモンドオーナーが、伯父……つまりユーシスの母の兄であったことや。

 引き取られて8年間、ルーファス氏に親しくして貰い、作法や剣術を始め多種多様な振る舞いを学んだこと。それで今の貴族としての態度を取れるようになったのだと。

 ……ユーシスが実習課題を、最後までやりきりたい、と発言したのは、それがあったからか。

 父には期待していないが、兄からの期待には応えたい、と。

 

 「昼間あちこちで……ユーシスさんが子供に懐かれていたのは、そういう訳だったんですね」

 「こ、子供は、正直だよ。……で、でも、それを、何故……此処で今?」

 

 まさか一日目の課題に疲れた、という理由ではないだろう。

 

 「馬鹿を言え。兄上から貰った課題を、俺が蔑ろにするわけがない。地を這ってでもやりきる」

 

 ルーファス氏への強い意志をはっきりと見せた後、しかし、と続ける。

 

 「だが俺の怪我の話を、アルバレアの人間が耳にしたら、俺が叱責を受けるだけでは済まないだろう。()()そこのマキアス・レーグニッツは、強く糾弾される。そうなれば課題は達成出来ない」

 「そこで僕の名前を出す必要はあるのか」

 「分かりやすさ重視だ。……俺の成績が下がるだけなら良い。だが《Ⅶ組》内で済む問題を、実家にまで持ち込まれては堪らない。あの場所を代理戦争の場所にしたいか?」

 「……それは僕も本意じゃないな」

 

 昼間『学院を楽しんでいなかった』と認めたマキアスだ。

 流石にクラスの輪をこれ以上に乱す問題は、彼も引き寄せたくない様子。

 

 「ええと、つまりそれは……明日からもよろしく頼む、ってこと?」

 「……アルビー。お前はもう少し言葉を選べ。鋭いのかアーパーなのか分からん奴だな」

 

 素直に言えない言葉を代理したら、怖い目で睨まれてしまった。

 

 「い、いや。そ、その話を聴いてしまったら、うん。……ユーシスには、頑張って、欲しくなった、から」

 

 断じて同情では無いぞ。私は他人に同情が出来るほど、立派な人間じゃない。

 ユーシスの告白を聞いたからか、自然と私の口も開く。

 黙っていたけれども、吐き出すならば、今だろう。

 

 「……私の母さんも、そうだったよ」

 

 皆の視線。その中でも特に、マキアスの視線を強く感じた。

 きっと学生会館での会話が頭に浮かんでいるのだろう。

 

 「私は、ユーシスに、……母さんと同じ道に進んで欲しくない、って思う」

 

 家に翻弄され、身分の枷に嵌められ、貴族という華やかな世界で苦汁を飲まされた女。

 もっと露骨に言ってしまえば――母さんは――()()()()()()()()()()を辿った人だ。

 ユーシスへの激励だと思って、聞いて貰おう。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 私の母は、小さな貴族の、娘だった。

 他国から帝国に帰属した家柄で、爵位はあったが、それ故に格下扱いされていた。

 それでも令嬢であった母は、普通に恵まれた生活をして、普通に育ち、そして普通に嫁いだ。

 

 母は美人だ。私に全然似てないけど。

 ちょっと陰を纏った雰囲気こそあるが、穏やかに微笑む人だった。

 特別でこそないが平均以上に優秀であり、包容力を持って、家族を愛せる人だった。

 貴族の妻として、あるいは家庭の主婦として、生きるには十分な力を持っていた人だった。

 

 唯一つ、彼女が不運だったのは。

 嫁いだ先の相手が、余りにも、ろくでもない男だったということだ。

 

 公爵とか侯爵とかに連なる、母より遥かに格上の身分を持っていた男――血縁的に言えば私の父になる――にとって、母は、愛すべき女ではなかったのだ。

 何故縁談が結び付いたのか、さっぱり分からないくらい、父親は母への愛情が存在しなかった。

 

 単に『異国の血を引く母が珍しく良い自慢になるから』程度の感覚だったのかもしれない。

 妻を放置して、毎日のように別の女性の元に足を運び、遊び歩くの繰り返し。

 母が悲しみを見せても、怒りを見せても、父はそれを鬱陶しいだけだと払いのけ、遊びを止めることは無かった。

 

 金と立場だけを与えて置けば満足だろう、と母に『モノ』を与えるだけ。

 『心』を見ることはなかったのだ。

 

 私が産まれた以上、夫婦の関係はあったのだろうが、私が――微かに残る、一番小さな子供の記憶では――まだ自分の年齢を言えるか言えないかくらいの時には、既に夫婦仲は冷え切ってたのを覚えている。

 

 ……冷え切っていた、ではないな。

 母から父親への愛情は、あったのだ。

 

 母は、じっと待っていた。耐えていた。

 父に歯向かえば、実家や幼い私に被害が及ぶ、という理由はあった。

 

 だがそれ以上に、母は父を嫌いになれず、離れることが出来なかったのだ。

 情けない話だと思う。

 

 彼女は、何時か旦那が此方を向いてくれるのだと信じて、待ち続けた。

 難しいのではないか、という忠告を聞き入れず、ただ伴侶を待っていた。

 無理やりに――矯正しようとする人間は居なかった。

 

 ……貴族の社会は残酷だ。人妻である母に、助けの手を差し伸べることが出来る人は殆ど居ない。まして本人が、夫から離れることを嫌がっているのだ。その内、誰もが見捨て、手を貸さなくなる。当然の流れだった。

 

 父親の立場が、それだけ高かった、ということでもある。

 ほんの少し働きかけるだけで妨害が出来る、そういう家柄だったのだ。

 何かが起きなければ、母も私も、今でもあの父の檻から逃げることは出来ていなかっただろう。

 

 ……何があったのか?

 放置されていた母の元に、一人の男がやって来たのだ。

 先ほど“殆ど”居なかった、と語ったが、実は一人だけ母に手を伸ばした男が居た。

 人妻である母――嫁入りが相当早かったので、当時まだ30歳前だ――に熱心にアプローチをした男だ。

 

 「その男はこう言ったよ」

 

 頭の中で言葉と態度を真似しながら、口説き文句を伝える。

 

 「『貴女のような美しい人が、こうして囚われて何も出来ないのは余りに悲しい。その孤独を、どうか私に癒させてはくれないだろうか』――耐えて耐えてずっと、自分を見てくれる誰かが欲しいと我慢していた母は、――父親を恐れ、誰も近寄ってこなかったからこそ、その障害を無視して来訪した男を――受け入れて――それで、折れた」

 

 情熱的な愛を囁かれ、母は、父を見限った。

 母は若い青年貴族との関係に溺れることとなった。

 

 「……ばれるのはそんなに遅くなかったよ。どう考えても父親に原因があるんだけどね。……母が不倫したのも、悪いと言えば悪いんだけど、5年近く夫を想い続けたんだから……世間一般で言えば情状酌量の範囲だと思う――でも、父親は自分の所業を棚に上げて激怒して、まずその青年貴族を牢屋に叩き込んだ。そして母を、実家から追い出した」

 

 心が狭い奴ほど、己の非を認めず、執念深く仕返しを考える物だ。

 よっぽどプライドが傷つけられたのか、父は母の実家に根回しをし、尻軽のレッテルを貼って路頭に迷わせた。母方の祖父母が真実を知っていたとしても、邪魔出来ないように徹底的に。

 

 「運が良いのか、悪いのか……そのすぐ後に《百日戦役》が始まってね。後ろ盾を失った母は、表舞台から完全に姿を消せたのでした。今も遠くで生きています。終わり」

 

 私が話し終わると、室内には沈黙が降りた。

 ユーシスとマキアスは、複雑な顔だ。

 

 ――今日、平民が貴族に取り入るとか、身分差があって結婚まで持ち出すとか、どう考えても媚を売って計算するってのが前提に、来る。純粋な恋愛なんか夢だよ……その覚悟がないまま行動するのは……夢見ているだけにしか、思えない――

 

 母が悪人であったのか、といえば否であろう。

 ただあの人は悲しい人だったのだ。

 強かった心が長年の間に壊れてしまった。

 

 欲しい物を父親に望み、それが手に入らないと心の何処かで分かっていても、さりとて切り替えて行動できず、ずるずると夢を見たまま手遅れになった。

 力付くでも、己の旦那を繋ぎ止める――そんな覚悟もなかった。

 

 今でも母の心は壊れたままだ。レミフェリアの森の中で、静かに余生を過ごしているが、もう何かを新しく始める気力は無い。時折、変化のない――幸福も無いが不幸も無い生活を綴った手紙が、届くだけだ。

 私に対する愛情は残っているのだろう。

 だが、それだけで、そこまででしかない。

 

 「私は、ユーシスに、同じ道を進んで、欲しくない。期待しすぎて……閉じ込められるのは、似合わない。――でも、あんまり心配しないでも良いのかも。……たとえ血の繋がりが半分でも、親しい身内が近くに居る。……羨ましい、っていう部分があれば、そこかな」

 

 母は、私からも距離を置いた。

 私の『結社』所属に関しても、知っていても何か意見を言うだけの気力は、残ってはいない。

 あの人はもう私に何も望まず、私もあの人に何も与えられないだろうさ。

 

 「……何、皆、そんなにしんみりした顔して」

 「いや、そんなあっけらかんと話される内容ではないだろう、その境遇は」

 

 マキアスの顔が語っていた。

 それは確かに、あんな言い方にもなるか、と。

 私の地雷発言をした、その真意が無事に伝わったなら何よりだ。

 マキアスの事情も……きっとその内、話してくれるだろう。今はそれで良い。

 

 皆が私を見て、同情――では無いが、心配するような眼をしているのを見て、私は笑う。

 

 空元気ではない。本当に気にしないで欲しいのだ。

 確かに言葉にすればハードな内容だ。

 

 加えて、曖昧に濁しただけで、伝えていない情報もある。

 母に愛を囁いたのが、当時アレイスターと名乗り、浮名を流していた「保護者(ブルブラン)」であるとか。

 投獄されたブルブランは、あっさりと《百日戦役》の混乱に乗じて奇脱獄を果たし(帝国時報では『奇跡の脱獄』とかされてるらしいな)、母をレミフェリアに逃がしたとか。

 後は――。

 

 「……その、敢えて話題に上げてないだけだと思うから、聞くのは憚られるんだが。カタナの母上が、青年貴族と逢瀬を重ねていた間、君は何をしていたんだ?」

 

 マキアスの疑問の答えも、その一つだな。

 

 「き、()()をされていたよ。父親にとって、母さんはどうでも良い存在だったけど……娘の私は違ったんだよ。だって、政略結婚の道具としては最適でしょ?」

 

 まだ日曜学校にも通うか通わないかというギリギリの年齢。

 そんな私に対して、父親は、過剰な『愛』を押し付けた――もとい道具としての格を求めた。

 

 「だ、だから父親は、私に『家庭教師』を付けました。それも帝国の博物館に勤める学者の、先生をね。――母が家を追い出された後も、私と『家庭教師』の関係は続いたのです」

 

 家庭教師の名前を、敢えて言う必要もない。

 ゲオルグ・ワイスマンと私の出会いだった。

 ……そしてあの男は、私の立場を『使える』と思ったのだ。

 《百日戦役》の直前、ワイスマンは父親に相談を持ち掛け、私を帝国のあちこちに送り込んだ。

 学習という名目で、情報収集に加担させた。

 私の『結社』人生の始まりだ。

 そのまま私は、ずっと闇に生きていた。

 

 「……大事な、ことを、伝えておくとね」

 

 ……でも『結社』時代の話をする必要は無いな。

 代わりに私は「今此処に居る」理由を、しっかりと口に出す。

 

 「か、『家庭教師』に指導されてる中、私は、少し前に……()()()()()()。――『あれ、私、自分で何かをしてたっけ?』って。――教わるだけで、指導を受け入れるだけで、自ら何かをして良い、という思考が、私には無かった。……母さんと、同じ道を歩みそうに、なってたよ」

 

 だから、だな。

 

 「わ、私はユーシスが、自分の意志で何かをしたいそれを、応援したいと、思った、のです」

 

 私の言葉に、一同は黙る。

 それは戸惑っているのでも、困惑しているのでもない。

 ただ私の言葉が、じんわりと浸透してくれたことが、感じ取れた。

 

 「……ふ。……そうか。――なら、その言葉に期待させて貰おうか」

 

 心情と事情を吐き出したユーシスの顔は、何時もの不敵な顔に戻っている。

 口元が若干微笑んでいるようにもみえるが、彼ははっきりと笑顔を見せるタイプではない。

 だが、居丈高でも、どこか真っすぐな瞳と、視線が交わった。

 うん、やっぱ貴公子という言葉は、彼によく似合う。

 

 「話し込んでしまったな。……もう遅い時間だ。明日、学院に戻るまでが実習だろう?」

 「そ、そだね」

 

 ユーシスが促し、皆が立ち上がる。

 この分ならば男子三人が同じ部屋で寝ても、何かトラブルが起きることはないだろう。

 

 「そ、それじゃ、また明日。明日こそ5人で頑張ろう」

 

 おやすみなさい、と挨拶しながら部屋に戻る。

 ……そう言えばまだ夜会から戻って来た支度を片付けて居なかった。

 ベッドの回りは雑然としている。これは寝ようにも寝れない。

 シャワーくらいは浴びて、寝間着に着替えて、荷物の片付けをして、明日の準備は済ませなければ。

 

 「カタナさん、楽しそうですね。さっきレポート書いてる時は、目付き悪かったんですよ?」

 「ん、そ、そうかな。――皆と話をして、回復したんだよ、きっと」

 

 回復と言えば、ユーシスの治療をエマがやってくれたと話していたな。

 私が応急処置をして、エマがハーブから軟膏を用意した。

 それで治る……治りきる物なのか?

 その旨を質問してみたら、エマは、人差し指で自分の口を閉ざし、内緒ですよ、とウインク。

 なるほど、《魔女》の技を使って補助もしたのか。

 

 「ま、これで明日は実習に集中できるよ」

 

 エマの手を借りて、手早く荷物と服を片付けた私は、備え付けのシャワールームへ足を運ぶ。

 服を脱ぐ途中、私は自分のARCUSを手に取る。

 ユーシスとの間で結ばれた絆で、仄かに暖かく輝いていた。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 数十分後。

 『ホテル・エスメラルダ』ロビーにて。

 

 「こんな時間に届け物ですか」

 「夜分遅くに申し訳ありません。大事な物だから緊急にと頼まれたんです」

 

 フロントマンのエンリケは、運ばれてきた荷物に目を向ける。

 

 ホテル内への荷物の出入りは、客が居ない時間を使って行われる。

 掃除や寝具に使う布の交換、水回りの確認などは、朝食後から夕方まで。

 一方で、朝食に使う食材の搬入は深夜になることも珍しくない。

 

 しかし――これは、なんだ?

 大人の男なら、片手で持ち運べる大きさのトランクが1つ。

 頑丈で、軽く振っても中身が動く気配はない。しっかり固定されているようだが……。

 

 「私らも中身が何かは聞いてないんです。ただ運んでくれとだけ言われまして。あ、此方はメッセージカードです。一緒にお願いします、と言われました」

 

 ゴツイ配達員が、似合わないサイズの便箋を荷物の上に置く。

 その一瞬、毛深い腕に、過去の古傷なのか、三本の傷跡が見えた。

 

 「ふむ。……差出人と宛先は書かれていると。……メッセージの内容は……」

 

 ――『親しき《Ⅶ組》の皆さんにとびきりの想いを込めて』

 

 その文の最後には、アルバレアの家紋が押印されていた。

 念のため家紋の『写し』を取り出して比較。紛れもなくアルバレア家の物だ。

 よく見るとトランクにも同じ『アルバレア家の手配した物です』とタグが付いている。

 

 「……なるほど、実習中のユーシス様と、そのご学友への贈り物というわけですか」

 「お預けして良いですかね?」

 「ええ。確かに預かりました」

 

 メッセージを呼んだエンリケは了承した。

 伝票にサインをもらった配達員が去って行く中、トランクをクロークルームへと運ぶ。

 既に休んでいるだろう生徒らに声を掛けるわけにもいくまい。

 

 「リシュリュー総支配人には、明日の朝、引継ぎ時に報告しなければいけませんね」

 

 明日の朝まで、先は長い。

 扉を閉め、受付へと踏み出し。

 

 そこでエンリケの意識は、途切れている。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 今日一日にあったことを振り返りながら、シャワーを浴びる。

 長い髪に石鹸を通し、ゆっくりと丁寧に濯ぎ、汗と一緒に疲労を流し――ながら――。

 今日も一日大変だった。バリアハートに来てからの怒涛の課題ラッシュ。ブルブランの仕込んだ依頼に、手配魔獣は倒す羽目になるし、終いにはオーロックス砦でのテロ事件……。

 ………………。

 ……………………………。

 

 「…………ゾーイ・キャラハンのこと忘れてたぁっ!!」

 

 洗面器に貼ったお湯を被って、泡と汚れを流す。

 何をボケッとしてるんだ私は!

 あのドタバタ騒ぎに、夜会への招待、ゲルハルト侯爵の強情さですっかり頭から抜けていた。

 何かが喉奥に引っかかっていた感覚があったのだ。

 だからと言ってアレを忘れてしまうのは馬鹿すぎる!

 

 そう、ゾーイ・キャラハン。

 砦でのテロリストが、見間違いではなく、本当にカメラマンのゾーイさんであったのならば。

 彼女から感じた、漠然とした――曖昧な不安が、決して看過してはいけないモノだったならば。

 あの出会いが偶然では無いならば、何が起きる?

 

 「……彼女の行いが……いや、そもそもの接触が罠だった、場合……」

 

 頭の中で組み上がっていく情報の欠片。

 今日一日で発生した事件と、バリアハートの中で蠢く闇と、そして私達の行動を重ね合わせる。

 何だ。何が起きる? 彼女の行い、は――。

 まるで私達と親しいかの様、で。

 

 「!! エマっ! 今すぐマキアス叩き起こして!」

 「裸で出てきたと思ったら何です急に!?」

 「や、やられた! かんっぜんに嵌められたっ!」

 

 素っ裸でシャワー室を飛び出した私に、エマが驚くが、そんなことは些細な話。

 男三人はまだ寝入っていない筈だ。仮に既に熟睡していたとしても、強引に叩き起こして行動しないと不味い。

 

 「今すぐ安全な場所に逃げる! そうじゃないと冤罪に――」

 

 言葉を最後まで、言うことは出来なかった。

 真下から、凄まじい――ドンッ! という轟音が、響いてきたからだ。

 

 ――紛れもない、()()()

 

 建物を大きく揺らし、窓ガラスを割る衝撃。

 床が軋み、思わず転びそうになる程の、揺れ。咄嗟にエマを支えて、出所を探る。

 

 (この感じ、……直下……、フロントロビー!?)

 

 この状況で、無関係な事件が起きると思うほど、私はノーテンキではないぞ!

 逃げ場が塞がれた、だけではない。

 

 (……っ、今ので冤罪が1つ追加された……っ!)

 

 しかも、だ。一日実習をしっかり終えて疲れたところの不意打ち。

 此方の対処が後手後手になってしまうのまで、織り込み済みか!

 

 「……のわわっと!」

 

 床が大きく傾いた。崩れはしないようだが、これはこの部屋に居たら不味い!

 慌ててエマごと逃げようとして、自分が素っ裸だったことに気付く。

 

 (エマ放置するわけにもいかないし! 裸で飛び出して怪我でもしたらその後に支障が出る!)

 

 安全性を取った。その判断は決して間違いでは無かった。

 けれども結果から言えば、私の懸念は正しかった。嫌な方に、全部的中した。

 迅速にやって来た領邦軍は、直ちにマキアスを拘束し、詰所へと連行することになる。

 

 ホテル・エスメラルダに届けられた荷物の中に、時限式の爆薬が仕込まれていたと判明。

 フロントに居たエンリケ氏は、意識不明の重体で緊急搬送された。

 ――受付のロビーには彼が受け取った伝票があった。

 差出人がゾーイ・キャラハン、宛先がマキアス・レーグニッツと書かれていた。

 

 だが決め手は、この時、既に領邦軍の元に()()()()が、()()で届けられていたことにある。

 まるでマキアスと親しい間柄であることを示すようなツーショット写真。

 映る桃色髪の少女が、オーロックス砦への侵入者と同一人物であったことが、決定打だった。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 「無事に爆弾は破裂し始めましたねー、いやあ頑張って色々仕込んだ甲斐がありましたよー」

 

 地下の一角で、一人の猟兵が、ほくそ笑む。

 水音が響くバリアハートの地下水路。

 少女は、へらへらと笑いながら、次なる準備を進めていく。

 

 「待ってますよ《Ⅶ組》の皆さん。色んな人の協力で、入念に入念な罠を仕込んだんです」

 

 写真家:ゾーイ・キャラハンとは仮の姿。

 その本名を、アイリ・アドラー。

 猟兵団《ニーズヘッグ》に所属する、凶悪かつ残忍な工作員。

 

 「沢山の『玩具』と、沢山のお薬を用意して、待ってますから」

 

 だから、と彼女は邪悪に笑った。

 

 「頑張って踊って下さいね。愉快に愉快に……何もかもが、丸裸になるまで」

 

 己の知りたい情報の為なら、手段を選ばぬ狂気が、その瞳には満ちていた。

 




Q:カタナの親の元ネタ。
A:『空の軌跡3rd「星の扉」11』の「怪盗B調査レポート」がベース。
 『閃の軌跡Ⅲ』でアルトハイム伯が語っていた「アレイスターの身分違いの恋」でもある。
 ブルブランにしてみると、カタナは『美しい婦人の連れ子』という立場。「保護者」であり、成長を見守る親心はあるが、ワイスマンの部下であったことを放置していた辺り、怪盗Bの趣味の悪さが見えている。

Q:カタナの母の現在地
A:レミフェリア公国の『デナイ村』で服職人をして過ごしている。
 本当に時々手紙を送り合うだけ。
 母は娘に干渉する気力を失っており、『結社』所属という事実を知っているが、何もしない。
 娘も「あの人はもう何も出来ないよ」と悟っている。仮に村に立ち寄っても、顔すら見ない。

Q:カタナって《百日戦役》で何かやってたの?
A:帝国ギルドの妨害とか、軍将校からの情報引き出しとかやってました。
 尚、当時カタナは4歳です。この時には既にワイスマンが家庭教師に就任しています。
 流石に若すぎない? と思われるかもしれませんが、レン、ティオが《D∴G教団》に誘拐されたのが5歳(《暁の軌跡》で語られたシェリル・スカイも計算するとほぼ同年代)。フィーがルドガーに拾われたのが6歳で、アッシュがハーメルから逃げたのが3歳です。
 直々にワイスマンから指導(洗脳とも言う)を受ければ、ちょっとした工作は可能でしょう。
 迷子として保護させて、そのまま建物内部を案内してもらうとか方法は幾らでもありますので。

Q:ワイスマンの家庭教師就任のタイミングが都合良すぎない?
A:フフフ
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