カタナ、閃く   作:金枝篇

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《黎の軌跡》発売おめでとうございます。
プレイするので更新遅れます。許して!

誤字報告、毎回ありがとうございます。
では、どうぞ。
今回は、カタナうっきうきモードです。


少女修行中

 侵入者だと察知した瞬間に、私の身体は動いていた。

 視界が暗い。当たり前だ。皆はまだ学院。放課後になったばかりで、第三学生寮へと帰宅したのは私のみ。空は曇天に覆われ、しとしととした雨が降り注いでいる。

 鍵を開けて一歩踏み込み。

 

 「――!」

 (……な、……殺気……!?)

 

 こんな場所で、何故、攻撃を受ける!?

 疑問に思ったが、そこで足を止める程、私の生存本能は衰えていなかった。

 不審者か!? サラ教官か!?

 

 一撃目、手にしていた傘で受ける。

 一瞬の抵抗の後、水色が破れ、骨組みも折れ、お役目御免になった!

 ええい、好きな色だったのに!

 

 刹那の間に身を沈めたが、攻撃が続く。

 飛んできた刃を、避ける。斜め前に転がるように回り、即座に姿勢を立て直す。息をつく余裕もなく、続けざまに追撃が来る。辛うじて視認出来る速度で、私の元に飛翔したナイフ――撃ち落とすのは、無理だ! 

 

 (……なら!)

 

 別の方法で止めるしか、ない!

 壁へと手を伸ばし、手に板を掴むのと、上半身に衝撃が来るのはほぼ同時だった。

 破裂する木の板。ばらばらになった掲示板と、裂けた大陸地図が空を舞う。連絡用の掲示板、それで上半身を辛うじて守る。飛翔した刃は、分厚い板を砕いたが、ギリギリ私には届いてない。

 郵便受けと、壁に、ダメージはない、セーフ!

 速度が落ちた刃を、握る。

 柄の部分に、ワイヤーが結ばれている。

 

 「……え、これ」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 思考は一瞬。ナイフが引き戻される勢いを利用して、そちらに飛ぶ。

 引き合いは無理だ。牽引される力に逆らわず、壁を蹴り。

 かちっと腰骨を入れて、速度を上げる!

 

 ワイヤーの先は、食堂だ。

 何時も皆で食事を取っている、食堂の中。机を挟んだ先に人影があった。

 ナイフから手を話し、速度を上げる。行儀が悪いが、椅子を蹴り、メインテーブルに足を乗せ、加速をそのままに武器を抜く。腰のスリットから抜いた黒い刃を叩きつける……!

 首。一切の躊躇なく、頭と身体、生き別れを狙う!

 キィン! という音がして、受けられた。

 力任せの一撃でも、《斑鳩》の黒刃は、綻びもしていない。

 衝撃が止まった。

 私の呼吸が戻る。

 

 「は、ぁ……!」

 「良い動きですよ」

 

 身体に入っていた緊張が解ける。心臓が早鐘を打ち、全身から汗が吹き出す。

 僅か数十秒の攻防だったが、余りにも唐突な()()()()は、きつかった。

 

 「……い、良い動きとか、何を、考えてるんですか!? り、寮の、備品、壊しちゃったじゃないですか……!」

 「ご安心を。最初から壊して良いものに交換してあります」

 「そ、そういう問題じゃないんですけどね! 不法侵入、です!」

 「そちらもご安心を。イリーナ様から許可を頂いていますから」

 

 そつがない!

 

 「話には聞いていましたが、成長しているようですね」

 「お、お陰様で……」

 

 小太刀をしまう。

 ぱちり、と壁際の明かりを点ける。

 食堂の真ん中に佇んでいたのは、穏やかな笑みを浮かべたメイドの女性だった。

 腕が震えているのは、衝撃によるものか、それとも別の――。

 

 「……えっと」

 「はい」

 

 鼓動は、激しい緊張から、穏やかな……言うなれば、ときめきに変わった。

 

 自然と、頭の中が切り替わる。

 感慨深い想いが、声にならず、喉に引っかかっている。

 脳裏に浮かぶのは、ルシオラさんと同じ、私へ注いでくれた愛情だ。

 それが本物ではなくとも、心に残っていることは、紛れもない事実。

 

 あんまりにも優雅に余裕綽々のまま佇んでいるので、どうしようかと一瞬迷ったが。

 寮には誰もないようだし、今の戦いの片付けも数分で終わるだろうし、ここは、素直に。

 

 「……会えて嬉しいです! クルーガーせんぱーい!」

 

 わあい! やっと会えたーっ! と飛びついてみることにした。

 腕の中、私を丁寧にキャッチして、くるっと回して着地させてくれる。

 うーん、やっぱりこの人は素敵だ!

 傘を壊したのは怒りますけどね!

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 以前予想した通り、クルーガー先輩――じゃなかった、今度からはシャロン先輩と呼ぼう――は、私が《Ⅶ組》に居ることを知っていた。今迄も、アリサの情報と一緒に、私の近況も都度確認していたという。

 

 「《怪盗》からの報告もありましたよ?」

 

 『蛇』の構成員には、私の情報は流れているらしい。

 放置していても問題がない、ではなく()()()()()()()()()()()()()から、放置されている。

 ……どこで観察しているのか謎でしょうがない。

 これでも身辺には気を使っているのだけど。

 

 「暫く、この学生寮でお世話をさせて頂くことになりました」

 「だ、だからって」

 

 不意打ちとか何を考えてるんですか?

 私じゃなかったらやばかったですよ?

 

 「ふふ、ルシオラさんからも、随分と成長したと聞いていましたから、つい……」

 

 確かめたくなってしまいました、と微笑まれた。

 これまたあんまりにも穏やかで優しい笑顔だったので、私は何も言えなかった。

 ……暗殺者って怖いね。

 脅威を脅威と認識させない技術は、飛び抜けていると思います。

 

 そんな感じで、出会った、その夜。

 

 「……この内容を、話すわけにはいかないですよねえ」

 「そうね。黙っててあげなさい」

 

 私はサラ教官の部屋にお邪魔していた。

 

 私と顔を合わせたシャロン先輩は、そのままヴァンダイク学院長へと挨拶に向かって行った。

 勿論、後片付けは綺麗に華麗に終わらせて、だ。

 入れ違いくらいでリィンらが戻って来た。アリサも一緒だった。

 

 つい『シャロン先輩に会ったよ』と言いそうになったが……思い直す。アリサは、彼女が『結社』の人間だと知らないのだ。ならば私は口に出すべきではない。

 話すなら、先輩から直接話すだろうし。

 テスト期間中だし。余計な問題増やさないほうが良いだろうし。

 

 だから、事情を話せる人の元に足を運んだのだ。

 ベリルのお陰でテスト勉強が捗っていることも有り、少しばかりお邪魔しても支障はなかった。

 

 「あの、私が聞くのもなんなんですけど、良いんですか?」

 「拒否できる立場じゃないしねー。イリーナ理事がOK出して学院長もOK出すなら私がノーとは言えないわ。確かにカタナが言う通り、ちょーっとばかり複雑ではあるけどね」

 

 お酒を飲みながらポリポリとおつまみを齧っている。

 私が持ってきたフォーチュンクッキーだ。

 ベリルと卸しているこの品は、調理部とも提携して、バリエーションを増やしている。

 今では、占いではなく、味を求めて買ってくれるお客さんも出てきている。

 差し入れたのは、程よい塩と胡椒を効かせた物。クッキーというよりかは、スナック菓子だ。

 

 「でも、春と同じことにはならない。不覚は取らないわ。そこは安心して」

 「わ、分かりました」

 

 流石に、二度目の汚染はないと断言された。

 サラ教官を覆った、あの《黒》い呪いのようなナニカ。

 その正体は掴めていない。教官も独自ルートであれこれ調べているようだが、情報は出ない。

 かくいう私も少しは調べようと行動してはいるのだが、どうにも行動が冴えず、能率が上がらず、結果に結びつかない。無意識が邪魔でもしているのだろうか。

 フィーやエマも知らないようだし……シャロン先輩なら知っている、か……?

 

 「その辺、こっそりお話しなさいな。アリサにどこまで伝えるかも含めて」

 「そ、そうします」

 

 頷いて、目の前のコップに手を伸ばす。――伸ばした。届かない。

 すかっと空を切ったので見ると、サラ教官が私のコップを回収していた。

 

 「しれっとお酒飲もうとしてるんじゃないの」

 「……ば、ばれましたか」

 「私を出し抜くのはまだ早いわよ。――眼の前で飲まれたら流石に止める。飲むなら見えない所でやんなさい」

 

 今迄あんまり触れていなかったが、私はお酒、普通に好きであったりする。

 社交界では、アルコールは常に付いて回る。未成年が大っぴらに飲めないというだけで、カクテルくらいならば振る舞われたりするのだ。ユーシスは絶対に経験あると思う。

 毒物薬物への耐性を付けている私には、ちょっとくらい飲んでも酔わないし。

 酔ったふりは出来るけど(……そのまま寝所になだれ込んで、って奴ね)。

 お酒だけの話でもない。飲食は、大体なんでも美味しく堪能できる。作るのも楽しい。

 

 「……サバイバルも得意よね?」

 

 お酒も貰えないし、しょうがない。自室に戻って勉強をするか、と立ち上がったところで。

 私の(私のではない)コップにあったお酒を干した教官は、少し考えてからそう質問をしてきた。

 

 「フィーの方が上だとは、思いますけど」

 「十分よ。もう一つ、泳ぐのは得意で良いわよね?」

 「……得意です」

 

 バリアハート地下での諸々を知られている以上、否定しようがなかった。

 この長い髪の手入れが大変だからあんまりやりたくないだけで、泳ぎは大得意だ。

 

 「じゃ、やっぱりカタナはあっちのグループねー」

 「……特別実習ですか?」

 

 返事はない。

 けれども、にんまりとした上機嫌な顔が明白な返事となっていた。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 管理人に就任したシャロン先輩は、実に手際よく事を進めた。

 窓や廊下等、普段あんまり手が届かない場所の掃除。

 食堂にある各種食材の管理と手配。

 今後、女子全員でのお料理タイム……は、多分、先輩が加わってのイベントとなるのだろう。

 大テーブルに並んだ、豪華で栄養ある朝食を見ながら、私達はそう思った。

 

 テストも無事に終わった6月20日。

 日曜日。自由行動日だ。

 テスト結果が張り出されるまでもう少し。

 私は意気揚々と先輩の元に足を運んだ。

 理由は勿論。

 

 「伸び代が、増えていますね」

 「ふ、増えている、ですか?」

 「きっと《Ⅶ組》で頑張ったからでしょう。『結社』に居た時とは違った一面が見えています。平面が立体になったくらいには、成長していますよ。基礎基本を抑えながら、少しずつ発展させて行きましょう」

 

 先輩に、鍛えてもらう為だ。

 動きやすい服装に着替えて、街道に出る。

 少し茂みを奥に進んだ、樹々が密集して生えている場所。

 私は柔軟体操をしながら、先輩の言葉を聞いていた。

 

 「《執行者》になる、と宣言したのでしょう? なら目指すだけです。お手伝いはお任せを」

 「わ、私、才能、ありません、けど」

 「はい。才能は有りません。重々承知しています。……ですが、平均ちょっと上のレベルまでならば、大抵のことは習得できるのも事実でしょう? ――カタナさんが《教授》との旅をしている間……《福音計画》が始まってから、長い時間、指導は出来ていませんでしたからね」

 

 ……器用貧乏、というのが私の自己評価だ。

 どうやっても届かない才能の壁がある。それを越えられない。だから工夫で勝ちを拾いに行く。

 全ての能力が高い人間は、そう居ない。いや、居るには居るが、滅多に……いや、数えられるくらいには居るが、在野にゴロゴロしている訳ではない、多分。……ゼムリア大陸魔境すぎない?

 

 さておき、どんな人間にも、得手不得手がある。

 私は、そんな「不得手」に対して、得意もとい大分マシな力をぶつける。

 そうやって戦っている。

 例外以外には食い下がれるのだ。

 

 だが、執行者となれば、どうしても『その先』が必要となる。

 心の中の闇にはそこそこ自信があるが……実力不足は紛れもない事実。

 しかし先輩曰く、まだまだ、発展の余地があるらしい。もとい余地が生まれたらしい。

 今迄取ったことがないスキルツリーを習得して、それらを応用することで、結果的に伸びると。

 地面に棒で説明を描いてくれる。

 

 「鍛え方、伸ばし方にはその人に合った方法があります。例えば……筋力が今の2倍になったとして……速度が半分以下になってしまったら、これは強化とは言えません。むしろ弱体化していますね?」

 「で、ですね」

 

 パワーが2倍になっても私の力ではたかが知れている。

 撹乱する能力がない私は、雑魚である。

 

 「ですから、他の能力を下げないように、鍛える必要があります。重要なポイントは3つ」

 

 先輩は、123と指を折ってくれた。

 

 「鍛えるべきは、防御、反射、そして融合です」

 

 最後のは良く分からないが……1と2は、基本中の基本だ。

 具体的には? と、私の表情を汲み取って、説明してくれた。

 

 「1つ目。受けの技術をあげましょう。元々、柔軟性は高いですから……衝撃を吸収する力はあります。それを伸ばします。肉体だけでなく、武器を使っての受けも伸ばしましょう。《斑鳩》の小太刀で受け止める……相手の力を受け流し、殺せるだけで、耐久性は上がります。耐久性が上がるならば、戦闘時間が長くなる」

 

 そこで2つ目が絡んでくる。

 

 「その上で、反射を鍛えます。これには集中力も含まれます。そうですね……今、カタナさんは武器どれくらい持っていますか?」

 「どれくらい、ですか」

 

 まず腰に小太刀。二刀流。

 懐に、投げナイフ――ケルディックで砕けた小太刀を再利用した匕首。

 相手を絞めるのに有用な長い髪。

 その髪の先に補助導力器。サブウェポンを持てるし、アーツの連続使用が可能になっている。《アナライズ》を一度に複数体掛けられるだけで破格の性能だと思う。ワイヤーが入っているし。

 ワイヤーといえば、スカートの中にも剃刀と一緒に織り込まれている。

 靴の先に隠し刃(毒)があって、後は……口の中と……《銀》からの贈り物か。

 

 「はい。ですがそれらは、一部を除いて使い捨てでしょう?」

 

 つまり、使う度にどんどん手持ちの武器が消えていく。

 その辺に落ちている武器で即席の対応は出来ても、基本は消耗品。

 敵の武器を奪うのも、毎回成功するわけじゃない。

 戦えば戦うほどに、戦闘力が落ちてくるのだ。だが、小太刀一本で防御を賄えるなら話は違う。

 

 「2つ目。反射を鍛えます。これはただの回避力だけではありません。()()()()()()()()()()()()()()()()というのも、防御を上げる方法の1つ。武器の使い方……何時どうやって武器を使えば効果的かという、瞬時の判断力も含めましょう。使い捨ての武器が、2回まで使えるようになれば、単純に倍でしょう? 反射と判断力を鍛えて、消耗を減らします」

 

 さっきの私が、まさに先輩の語る弱点そのままの行動だ。

 確かに、咄嗟の判断で、傘でナイフを防いだのは、命を守る行為としては正しい。

 しかし小太刀を抜いて弾くだけの余裕があったのならば?

 お気に入りの水色は破けずに手元に残っていただろう。

 使い捨てではない武器を多く手に入れれば、それだけ戦いも楽になる。

 

 「そして最後……融合。つまり、それらを混ぜます」

 「混ぜる、というと」

 

 最初の2つは分かった。理解できた。

 基礎力の延長線上にある話だ。だが融合とは、なんだろう?

 

 「実際にやってみたほうが早いでしょう。――パンチ」

 「……は、はぁ」

 「何種類出来ます? 相手を殴るモーションです」

 

 先輩は、私に行動するように促した。

 未だに意味を掴みかねている私だったが、取り敢えず順番にやってみる。

 普段あんまり使わない物も含めて、整理しながら。

 

 「まず……えーっと、《泰斗流》みたいな、東方武術」

 

 左手を引くと同時に、右手を繰り出す。

 背中と腰に滑車を付けるイメージだ。槍を繰り出す動きにも似た、直線の拳。

 

 「次……は、えーっと……軍式格闘術」

 

 体重と勢いを乗せた打撃。

 脱力と緊張を上手に使うことで、止まった姿勢からでも重い響く拳になる。

 「突く」というよりは、拳という巨大なボールをぶつけるようなイメージになるか。

 

 「……《八葉一刀流》……の素手の型」

 

 気を乗せる――要するに力の流れをコントロールする技に近い。

 からっきしだが、理屈は知っている。確か……こんな感じだったっけ?

 自分の重心を崩さないように、相手の力を受け流す。正方形を平行四辺形に潰すような動きだ。

 一見すると威力は控えめだが、その実、相手は「崩し」を受けるので、耐え難い。

 

 「あとは……引く拳ですかね」

 

 腰を使わないで、腕と肩で放つ技。一番軽いが、一番速度が出る。ジャブというやつだ。

 とにかく手数を多くできるので、耐久力が低いとか、すばしっこい相手には中々効果的だ。

 一通り使った私に、では、と先輩はとっても優しい笑顔で言ってくれた。

 

 

 「ではそれ全部一度にやってみましょうか」

 

 

 「……あー……そういう……」

 

 思えば、《八葉一刀流》の使い手の皆さんも、そうだったか。

 流派の基礎を覚え、それを自分なりに昇華させていく。昇華させて行く中で、他の技が混ざる。そうやって練り上げられて行く。私の場合「昇華」には届かずとも……複数を混ぜることは、可能である、と。

 何も打撃に限った話ではない。アーツとアーツの融合はベリルもやっている。複数の技術の融合――それを手に入れられれば、確かに幅は大きく広がる。むしろ……私にしか出来ない、かもしれない。

 

 ……先が長そうな道だが、それなら確かに、技にはなる。

 なんか元気が出てきたぞ!

 

 納得したところで、シャロン先輩は「最後に」と付け加える。

 まだあるの?

 いや、良いですけど!

 先輩の指導受けられるなら全然いいんですけど!

 

 

 「空中に立てるようになってもらいます」

 

 

 なんかすげー無理な話を言われた。

 ……マジですか?

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 さて、そんな出会いと修行が始まって数日後。

 勿論早くに成果が出るなんてことはないが、確かな手応えを感じていた後。

 無事にテスト結果が発表された日の午後、私達は特別実習のチーム分けを聞いていた。

 

 ……まあ、直前にパトリックさんらが乱入して、リィンらといざこざがあったりもしたのだが。

 これは詳細を話す必要はないだろう。

 成績で負けた八つ当たりに来たら、返り討ちに遭ってしまい、感情的になってしまったというだけの事。

 思わずカッとなって言ってしまったのだろう。

 取り巻きの皆さんも嗜める暴言だったが、ガイウスの反論で何も言えずに戻っていった。

 ……悪い人ではないんだけどね。

 どっかでサロンに顔を出して、それとなくフォローをしておこう。

 彼らに一番近く接触できるのは私なのだ。それで十分だ。

 

 「で、行き先は」

 「今月はどこかな」

 

 配られた用紙に目を通す。

 

 A班:リィン、アリサ、エマ、ユーシス、ガイウス。

 実習地:ノルド高原。

 

 B班:マキアス、エリオット、ラウラ、フィー、エカターニャ()

 実習地:ブリオニア島。

 

 「……と、遠い……しかも、島、かぁ」

 「5月の実習を鑑みて、安全管理には気を使ったわ。実習地先には頼れる監督係も居るから、存分に揉まれて来なさいな」

 

 サラ教官がそう言うならば、本当に頼れる大人を用意してくれたのだろう。

 ノルド高原は、ガイウスの故郷だったか。鉄道と馬での移動だ。

 ブリオニア島は……帝国最西端の孤島。行くには、殆ど帝国を横断することになる。帝国西部に足を運んだことは勿論何度もあるが……ブリオニア島は、あんまり記憶にない。

 

 「今度は人間関係でのギクシャクは無さそうだし……」

 「そだね。後、地味に最初からカタナと一緒のメンバーなのは嬉しいかな」

 

 フィーも頷いている。

 マキアスともバリアハートで関係を修復できたし、女子同士/男子同士の人間関係も良好だ。

 いい感じの実習になってくれることを、希望しておこう。

 ……私が希望すると真逆の出来事が起きる? ははは、いやいや。

 ……頼むから平穏に終わって欲しいと心底思った。

 

 

 勿論そんな儚い望みは、木っ端微塵に砕かれることになる。

 

 この時はまさか。

 

 島が爆発するとか、想像出来るはずもなかったのだ。




カタナの打撃ミックスの例で「無拍子」と頭に浮かんだ人、握手。あそこから持ってきてます。

Q:シャロン・クルーガー
A:カタナ「やった師匠と再会できた!鍛えて下さい!」
『執行者』になるという目標を手に入れた今、うっきうきである。
空中に浮かびなさいという指導は――まあそのウチ、出来るようになるんじゃないかな……。

Q:傘の色は好きな色?
A:女子の傘は、履いている下着と同じ色なのだ。カタナは水色。


さて次回からいよいよ特別実習。
《閃Ⅰ》で島に向かった面々が、結局どんな実習をしていたのか……良く分かっていませんが、筆者なりに実習らしいことをしようと思います。

あの人やこの人も出したい!

羅刹様がマジになって、島とか色々吹っ飛びますが、なんとかなるでしょう。
筆者はキャラを追い詰めますが、そっから這い上がるまで含めて好きなのです。
アイリのような陰険さよりも、派手な感じで色々動かそうかなと予定しています。

次回「紺碧の出会い」

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