カタナ、閃く   作:金枝篇

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思った以上に長くなったので分割して投稿。
集合する怪物達。続いてはこの2人。
果たして無事に「碧」序章に到達できるんだろうか。

では、どうぞ。


残影に続く(上)

 「そこじゃー! いけー! 差せー! 差すんじゃ―!!」

 「いいえそのまま逃げ切りなさい! 行けるはずです!! その逃げ足、見せてみなさい!!」

 

 地響きとともに馬が駆け抜け、悲鳴と馬券が舞い散るそこは、帝国競馬場である。

 最前列で身を乗り出して応援しているローザさんとリアンヌ様だった。

 ……なんで私達の実習に同伴してるんです? 偶然、目的地が被った? ……さいですか。

 

 「惜しい……! ぐぬぬ、僅差で差しきれんかったか……! 鼻差……!」

 「危なかったですね……。これで一勝一敗ですか。ではもう一勝負、やりますか?」

 「当然じゃ!」

 

 ぴょんと姿勢を正して外に出て、再び馬券コーナーに行く二人。

 『お嬢ちゃん、ここは成人じゃないと買えないんだよ』と競馬場外の係員に注意されるローザちゃん(推定年齢800歳~)。リアンヌ様が代理で購入し、馬券片手に次の勝負を待っている。

 〈夏至祭〉のメインレースまでは、まだ暫くだ。

 パドックでは前哨戦が行われており、人々に熱気と賞金、そして借金をばらまいていた。

 日が昇り、賑わう競馬場。暑い。うっすら滲む汗を拭って、貴賓室を目指す。

 忘れてはいけない。私達の仕事は、支配人チャールトン氏から実習を受取り解決することだ。

 

 「興奮したら喉が渇いたのー、リアンヌー、ジュース買ってくれぬかなー」

 「……トマトジュースでいいですか?」

 「良いな! 流石のチョイスじゃな!」

 

 観客席にあった屋台で買い込む2人。野菜嫌いの吸血鬼でもトマトジュースは飲むらしい。

 今度はローザが奢ってくださいよ? 分かった分かった、と会話している金髪美女と美少女。

 委員長よりあの2人の方が親族に見える、と言ったら失礼だろうか。失礼だろうな。

 

 「委員長、()()()むっちゃ満喫してるけど良いの?」

 「先ほど注意はしましたが聞いてはいませんね」

 「お友だちがダダ甘なんですが、注意は……?」

 「出来ると思いますか?」

 

 思わない。リアンヌ様に注意とか無理だよ。武装して無くとも肌で感じ取れるもん。

 

 「……あ、あの、お二人にお尋ねしますが……この後は、どうされる予定で?」

 「妾……じゃなかった、私はリアンヌと歩いて回るぞ。付きまとったりはしないからそっちはそっちの仕事をすれば良い。――よし次はアイスじゃ! リアンヌはどうする? 今度はこっちが奢るぞ」

 「ミルクを。どうやらノルド高原からの直送品があるようですから」

 「懐かしいのー」

 

 わいわいきゃいきゃいと自由すぎる2人を前に、委員長は大分諦め気味だった。

 私の真横で死んだ目をしているアホも諦め気味だった。

 まあこっちは良いや。ツッコむと騒がしいし。

 騒がしいとは失礼ですわね……! と言われた。やっぱり騒がしいじゃないか。

 

 「私らはもう暫く遊んでいく。お姉ちゃんらは学業に戻ってくれー」

 

 図書館前で出会った時とは、靴もスカートもリボンも既に違う。

 2人は今晩《ヴィラ=ソレイユ》に宿泊するらしく、他にも沢山購入した衣類は既にフロントへと預けられていた。帰りが心配である。……どうするんだろ、《魔女の里》まで宅配便は無理だと思うが。

 

 「……まあ、ずっと見てるわけにも行かないからさ。やろうか、実習」

 「そうですね……」

 「二人共ローザちゃんを心配しすぎじゃない?」

 

 事情を知らないアリサは朗らかにそう言ってくれた。

 確かにそう見えるかも知れない。だがそうじゃないんだ。説明できないがそうじゃないんだ。

 とはいえ、ずっとこうしているわけにも行かない。

 軽く頭を下げて辞すると、私達は支配人室へと向かうことにした。

 

 「……私も行きますわ……」

 「え、着いてくるの? お前も?」

 「今のアリ……リアンヌ様の傍にいるよりは、マシですわよ!」

 「何時もは『そんな姿も素敵ですわ……』とか陶酔して言うじゃん」

 「言いますが! ――仲の良いお二人を影から見続けるだけなのは虚しいだけですわ……」

 

 それもそうか。しょうがない。外部協力者ということにしてもらおう。

 

 「ところで今更なのだが尋ねて良いか? ――彼女は……友人か?」

 

 ユーシスが、私と、腐れ縁のアホとを見ながら尋ねてきた。

 友人? 私は彼女を指さした。向こうも私を指さしていた。

 

 「「冗談じゃないよ!」ですわ!」

 「仲良いじゃない」

 

 アリサを筆頭に、皆には仲良いじゃないかという視線を向けられた。

 カタナって学外に友達が居たんだな、という言葉は聞かなかったことにしよう。

 だから私とデュバリィは、別に友人じゃないんだって。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 でもまあ、友人で良いんだろうな。認めたくないけどさ。

 

 私とデュバリィとが、こうして互いに言い合いながらもう10年になる。

 帝国より少し離れた場所にあった、辺境貴族のデュバリィ実家が消滅したのがそのくらい前だ。

 アリアンロード様が死に瀕していた彼女を助け、流れで『結社』に来たのが10年程前。そっから1年ちょっとだったっけ? 最初は……私がワイスマンと《グロリアス(1代目)》に帰還した時に、顔を合わせる程度だった。その時の彼女はぼーっとして――呆然として、過ごしていた。

 その彼女が、やがて立ち直って、剣を再び握り。

 ヨシュアさんがブライト家に潜入した頃、アリアンロード様に、正式に師事するようになって。

 私は、デュバリィを嫌でも意識するようになった。

 

 だって強かったもん。

 レオンハルトさんに全く太刀打ちできなかったとはいえ、そもそも彼の実力が桁外れだ。

 アリアンロード様とレーヴェさんの間に差があり、レーヴェさんとデュバリィの間にも差があり、そして私とデュバリィの間にも、差があった。越えられない差が。

 ヨシュアさんやレンちゃんで経験した道とは言え。

 あとから来た人にあっさり抜かれるというのは、結構、くるものがあった。

 『結社』の中でタイマンをして私が勝てる相手は、それこそギルバート・スタインくらいだよ。

 デュバリィは私達の誰よりも強いのだ。精々頼らせてもらうとする。

 

 「……実は、馬達の調子が悪いようなのです」

 

 帝都競馬場(ヘイムダル・レースコート)支配人チャールトン氏の言葉だ。

 

 「悪い、ですか? ちらっと見た感じ、悪そうには見えませんでしたが」

 「言い方を間違えましたな。調子が()()()()のです。特にランバーブリッツやブラックプリンスを始め、〈夏至祭〉メインレースを走る馬達がやたらと興奮して落ち着かない」

 

 ここ数年、オッズの1位2位を争っている馬達が軒並み精神的に不安定。

 騎手も制御に苦労している。これはなにか理由があるのではないか、というのが仮説だった。

 そして可能ならばそれを解明して欲しい。それが実習内容だった。

 

 「……地下に何かある、という可能性はどうだろうか?」

 「はい。実は地下は探索を終わらせてあります。普段から魔獣が住み着いている場所ですから。帝都の正規軍にお願いした結果、異常なしとの報告がありました。巨大な魔獣に怯えている、ということはなさそうです」

 

 大都市の地下には大抵何かがある。

 バリアハートと同様に、というユーシスの推測は違った様だ。

 となると何だろう。一先ず、馬達を間近で見させて貰うことにする。

 

 「ご案内します。こちらへ……」

 

 そう言われ職員以外立ち入り禁止エリアへと向かっている途中だ。

 私は見慣れた銀髪を発見した。

 

 「ランバーブリッツにするか……ブラックプリンスにするか……いや、いっそゴルシ……」

 「ク、クロウ先輩、どうしたんです?」

 「ん? ああお前らか。いやぁ……単勝にするか三連単にするかとか色々悩んでてな」

 「……先輩、年齢的にアウトでは?」

 「大丈夫だ。代理を立ててる」

 

 トールズ一番の遊び人。クロウ・アームブラスト先輩だ。

 競馬場に来ているのはやはりと言うべきか。

 

 実を言えばこの競馬場、見学しているのは大人だけではない。家族連れも結構いる。

 賭博場と言えば、どうしても治安の悪さがイメージとして付き纏うかもしれない。だが、この帝国競馬場は歴史ある建物。レースも遥か昔より開催されてきた伝統だ。

 貴族の嗜みでもあり、皇帝陛下も貴賓席でご歓談される由緒ある行事なのだ。

 だから整備と掃除は行き届いている。チャイルドシートも完備済みだ。

 大人が代理で購入するのは、何も問題がない。

 

 「それに近くにトワの家もあるんだよ。この後、アンやジョルジュも来て4人で集まる予定だ」

 「……前列、行かないんですか?」

 「偶には椅子に座ってじっくり見るのも良いだろ?」

 

 この人の性格的に、最前列で応援するのでは、と思った。しないらしい。

 前列では合計年齢1000歳超えのコンビが熱心に応援している。ローゼリアさんが私等の視線に気付いて振り返る。笑顔で手を振る姿は、完全に子供だ。擬態が完璧すぎる。

 だが一瞬、その視線が凄まじく鋭くなった。

 ……気がした。

 ……見間違いか?

 

 「さっき話してたのが聞こえたんだが」

 

 競馬新聞を大きく広げながら、クロウ先輩が言う。

 

 「なんか馬の調子が良くないんだって? 頑張って解決してくれ。俺の財布のためにもな……」

 「か、賭けないのが一番の節約ですよ」

 「正論言うなって」

 

 実を言えば、私も博打そのものは嫌いじゃない。

 一通り仕込まれているから、大抵のゲームは出来る。

 チェスなんかはマキアスにも勝てるし、ボードゲームならそこそこ優秀な自覚があるし、カードゲームやパズルも出来る。大体ワイスマンのお陰だ。

 だから競馬もそこそこ得意だ。

 運が無いから大勝ちしないけど。

 のめり込み過ぎは、良くない。

 軽く挨拶をして、私達は厩舎へ向かうことにした。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 「リアンヌよ、なんとなく見知った気配がするんじゃが」

 「奇遇ですね。私もですよ」

 

 魔女と聖女はのんびりと果物ジュースを飲みながらそういった。

 《魔女》の気配。本人ではなく、彼女と関わりがある者の気配だ。

 観客席は埋まっている。実習中であれこれ動く《Ⅶ組》は視界に入るが、標的を探し当てるのは難しい。観客席をずーっと歩くことはしなかった。なにせ。

 

 「ま、良いか。今日はお主との語らい優先じゃ。めんどいから何もしたくない」

 

 真剣な顔は、一瞬でへにゃっと元に戻った。

 ローゼリアの長い金髪も同時にへにゃっとして広がる。リアンヌは汚れないように纏めると、彼女を抱えて膝の上に置いた。特に抵抗もされない。

 幼女(800歳)は飼い猫のように大人しかった。

 

 「そうしましょう。そういえばドライケルスの話、聞きたいですか?」

 「聞くー……」

 

 魔女と聖女は只管ほんわかとしていた。

 

 「実は転生して、今も帝国で元気にしているのです」

 「そうかー。転生かー」

 

 ほわんほわんとした頭で、彼女は言葉を反芻して。

 

 「……なんじゃとお!?」

 

 聖女の膝の上、魔女は顔を真上に向けて目を見開いた。

 困ったような嬉しいような、複雑な顔の聖女と視線が交錯する。

 訂正。ちょっとだけ賑やかだった。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 競走馬が待機している厩舎に足を踏み入れる。

 感じたのは――漠然とした、淀んだ空気だ。淀んでいるというか、何か停滞しているというか。

 歴史ある競馬場だ。動物独特の匂いこそあるが、風通しや日当たりも良い。だがそれらを持ってしても、不可解な澱みが浄化される様子がない。ずっと居ると落ち着かない。そんな良くない空気が漂っている。

 

 「どうどう、どうどう」

 

 騎手の人達が名馬を宥めている。だが馬達は静かにならない。

 ぶるるんと大きく嘶き、厩舎から出ようとしている。軽い興奮状態が、治まる様子はない。

 一頭がヒヒン!と啼いて後ろ足で立ち上がった。とても危ない。

 

 「――っ! ガイウス! 行くぞ!」

 

 咄嗟にユーシスが騎手に駆け寄り、避難させた。怪我はない。

 ガイウスは素早く馬の真横に身体を入れて、首筋を優しく撫でる。大丈夫だ、と言い聞かせるように、静かに呼吸を整えさせていく。

 三度吼える競走馬だが、騎手と2人の言葉で何とか暴走は静まった。

 なるほど、これは危ない。若さ故の暴れ馬、ではない。明らかに何か異常が起きている。

 しかし――騎手の人も、全く心当たりがない、と。

 

 「確かにここまで興奮するとは考えにくい。何か特別な出来事はなかったか? 食事が変わったとか……」

 

 馬の異変ということで乗り気な男性2人。質問は的確だった。

 

 「食事はいつも通り。水も、いつも通り。厩舎にも異常はなく、魔獣の気配もない」

 「不審者の情報もない。パドックやレース場にも何か不具合が起きている様子もない」

 「と、すると……」

 

 皆で暫し考えた後、ユーシスから意見が出た。

 

 「……尋ねたいのだが……帝都の外に馬達が出たか?」

 

 騎手さんの返事は、肯定だった。なるほど。多分、それだ。

 当たり前だが競走馬は馬だ。手綱は必要だが、自由に平原を駆け回れた方が良いに決まっている。

 この辺で……彼らが主に走り回るのは南オスティア街道だろう。

 帝都に近く、道が整備されていて、適度な丘陵地帯で、自然が多く、魔獣も少ない。

 由緒ある競走馬に何か細工をするなら、そこだ。私でもそこを狙う。

 

 「……そういえば……課題に、南オスティア街道の魔獣退治が、あったな。偶然だと思うか?」

 「思わない、かなぁ」

 

 ガイウスの指摘は至極真っ当だった。この2つの事件は繋がっているのだろう。

 

 「……ただ、だとすると馬達を鎮めるのは私達だけじゃ難しいかもね」

 

 何かしらの毒薬などで強制的に興奮させている、と考えるなら、その治療は私達では出来ない。

 その場合は……医者や、《七耀教会》にお願いするしかないな。

 原因を突き止めて対処方法を伝える。これで実習クリアとしてもらおう。

 

 「じゃ、早速行きましょ」

 

 チャールトン支配人に自分達の考察を伝えて、街道に向かう。

 競馬場の最前列ではローザちゃんがリアンヌ様に寄っかかって黄昏れていた。

 はしゃぎすぎて疲れたのかもしれない。

 クロウ先輩の姿は、見えなかった。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 ということで、やってきた南オスティア街道。

 私とアリサは――そこで、今回の事件の背景を、完璧に理解した。

 

 「ああ……そっか。わかった。あの子達、ルナリア自然公園と同じだったのね……!?」

 

 まじかよ、と私が額を抑えたのは言うまでもない。

 

 南オスティア街道の外れ。ルミナス霊園へと続く道の途中。献花として使われる花々が咲く花壇から少し離れた場所に、隠れるように咲いている花があった。花畑だ。

 一見すれば普通の青い花が、咲いている。

 

 「この花は……なんだ? 薬草なのか?」

 「バリアハートの地下で、猟兵が妙に暴走してたでしょ。その時使ってた錠剤。その原料だよ」

 「麻薬か?」

 「みたいなもん」

 

 事故、だと思いたい。南オスティア街道で道草を食った時、馬達はこれを口にしてしまったんだろう。

 アイン総長自ら処分してくれるって話だった。それが繁茂している。

 ならば誰かが、バリアハートの事件の後で、栽培したことに他ならない。

 

 私はルーファスさんの顔を思い浮かべた。

 バリアハートの実習最後、彼は後始末はちゃんとすると語っていた。しかしだ。

 あの人は、これを意図的に見逃したのか? それとも本当に見つけられなかったのか?

 疑問は―― 一先ず飲み込んだ。ユーシス相手に、雑談で話す内容じゃない。

 

 「……と、とりあえずこれで背景は分かった。……問題はこれ、どうやって片付けるかな……」

 「普通に刈り取るのでは無理なのか?」

 「んっとね……。これ、土壌が汚染されてる限り、ずっと咲き続ける花なんだよ。だから収穫が簡単で、今ここで刈り取っても土壌をなんとかしないと直ぐ満開になっちゃう……」

 

 ガイウスの疑問に応える。勿論私達が此処で数時間使い花を全部刈り取ることは可能だ。可能だが……対処療法にしかならない。帝都ヘイムダルと、ヒンメル霊園の間だ。多分、地脈的にもかなり強い魔力が含まれている。それに、下手に収穫してこっちにあらぬ疑いが掛かるのは避けたい。

 刈り取ったとして、その花をどうするか、という問題もあるしな。

 焼くわけにも行かないし。燃えたプレロマ草吸引して全員中毒とか洒落にならん。

 

 「……近くの手配魔獣、片付けようか。それやってる間に、考える」

 「それならもう片付けたで」

 

 私達に掛けられた声は、聞き覚えがあるイントネーションだ。

 振り向けば、街道には緑髪の男性が立っていた。ボウガンを背負った巡回神父。穏やかな笑顔。

 見覚えがとってもある顔だった。多分私は一生彼の顔を忘れないと思う。

 

 「ネギさん……!」

 「ケビンや!! 自分、随分豪胆になったな!?」

 

 ビシッとツッコミが入った。そう、そこにいたのは。

 巡回神父にして――《七耀教会》が《星杯騎士団》第5位のケビン・グラハム神父だ。

 ……まさか噂の《外法狩り》ですか、と呟いたデュバリィの言葉は無視だ。

 向こうもデュバリィを意図的に視界から外している。

 

 「……お久しぶりです」

 「リベール以来やな。そっちはカタナのクラスメイトか? バルクホルン神父から聞いてるで」

 「そうでしたか! 神父にはお世話になってます。ガイウス・ウォーゼルです」

 

 警戒していた皆は、バルクホルン神父の名前を聞いて直ぐに胸襟を開いた。

 特にガイウスが早かった。

 そういえばアリサ、ユーシス、ガイウスの3人もノルド高原でバルクホルン神父に出会ってたんだっけ? 勿論ブリオニア島組も彼の老神父ことは良く知っている。

 一同の間に走った緊張は直ぐ解けた。

 いや、私は緊張しっぱなしだがな。

 

 私の眼の前で、ワイスマンを殺したのが、この男だ。

 ワイスマンは、殺されてもしょうがない男だったと思う。それは間違いない。

 ミクロな視点では、ヨシュアさんやレーヴェさんを弄んだ事。

 マクロな視点では、《百日戦役》や帝国の遊撃士教会へのテロを引き起こした事。

 これらは決して許されることではない。だから迎えた結末は妥当だ。

 ただそれでも私の教師だった。多くを教わった。長い付き合いだったのだ。

 ケビン神父を恨んではいない。敵意を向けるつもりもない。ただただ複雑なだけだ。

 

 「ま、さておきこの花の始末もこっちに任せてくれて構わんで。競馬場にも後で行っておく」

 「助かります。けど。……誰がやったか、見当がついてるんですか?」

 「いるやろ? 今でも逃亡していて《グノーシス》持ってる奴が。……しかもお誂え向きに、帝国に潜伏しとる。先日、指名手配受けたやろ」

 

 閃いた。

 

 「え、ま、まさか、ハルトマン議長ですか!?」

 「いや、元秘書のアーネスト・ライズの方や」

 

 そういえばアーネスト・ライズも絶賛逃亡中だったっけ。

 エリィさん曰く《D∴G教団》の後始末のどさくさに紛れて脱獄したんだったか。

 ハルトマン議長は生命の危険があるから嫌々同伴してるだけだと思うで、とケビン神父は言う。

 

 「彼が栽培したと?」

 「栽培、かは分からんが、目下容疑者はアーネストやな。ウルスラ病院で資料を盗み見てノウハウ奪うくらいは出来るやろ。本人は無理でも、その方法を誰かに伝えるくらいは……まあ動機次第やけど――」

 「おいー! ケビン! 倒した魔獣の後始末を私にさせるとか良いご身分だなあ?」

 

 その会話を遮るように、ケビン神父の奥から少女がやってくる。

 デュバリィは再び「げ」という顔をする。私も再び「うわ」と言いそうになった。

 小柄な姿。赤い髪。髪の色にも負けない、背中に背負った真紅の大剣。

 シスター服では中和出来ないヤンキー気質。歩く姿勢は真っすぐで、視線は射抜くように強い。

 

 「まあそう言わんといてや、セリス先輩。どうせなら顔見知りが行ったほうが話しやすいで?」

 「お前もリオンも年長者を敬う姿勢が足らねーんだよ」

 

 ……なんで第4位のセリス・オルテシアさんが此処に居るんですかねえ。




クロウ「色々(ローゼリアとか)やばいし、アーネストが馬鹿やったから撤退しよ……」(新聞で顔隠し)

何時も誤字報告等ありがとうございます。
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