異変に気付いたのは、《イメルダ》から戻ってきて直ぐの事だった。
預けてあった仮眠室の鍵を受け取って、廊下の突き当りにある狭い部屋に向かう。
元々、従業員が使っていたというだけあって、部屋の位置も辺鄙なのだ。本来の宿泊客ならば『立ち入りをご遠慮ください』と言われる場所。学生の私たちの身の丈に合っている、とも言う。
お腹も良い具合に膨れたし、シャワーでも浴びて寝ようか、と廊下を歩き。
扉に鍵を差し込んで、捻――。
「あれ? ……鍵が開いてる?」
「……戸締りしたのは、私も確認した。部屋から出た時も、うっかり昼寝から寝過ごした時も」
その時は確かに施錠をした。ドアノブを掴んで開かない確認もした。
従業員が使う部屋だから、扉はオートロックではない。だからこそ厳重に施錠し外出したのだ。
なのに、鍵が開いている。
私達の思考が、即座に戦場モードに切り替わった。
「……室内からの気配はないね。誰も居ない」
悪意はさておき、この部屋に誰かが入ったのならば、今も室内に潜んでいる可能性があるのだ。
互いに意識を部屋に向け、気配を探る。互いのレーダーに反応は、無い。
ゆっくりと、扉を、壁に張り付きながら、蹴り開ける。
内部に爆発物があると思っていた訳ではないが、体に染みついた習性だ。フィーも同じだった。
そのまま慎重に――ちょっと無駄なくらい慎重に――室内を伺う。
持っていた手鏡で死角を確認し、同じタイミングで部屋に踏み込む!
「天井、壁、異常なし。シャワー室にも誰も居ない」
「床やベッドの下もセーフ。トラップもないね」
室内に危険がないと確認が取れたところで、私達は警戒を解いた。
だが安心できる問題では無かった。
私達が昼寝していたベッドは、シーツも布団も乱れたまま。
しかしその上に置いてあった旅行鞄の口が――空いている。
図書館で本を回収した後、荷物を置きにこの部屋に来た。その時、確かに私はベッドの上に鞄を置いた。しっかりと鞄の口を閉めたのも覚えている。そして当然ながら。
「引き落とした20万ミラは無い……と」
つまりこれは。
「泥棒?」
「うん、そうなる、ね。フィー、ホテルの人、呼んできて」
他にも盗まれたものが無いかを確認する。
修繕して貰った古書の山とか、着替えた下着とか。……無事だ。良かった。
分かった、とフィーが出て行き、数分もしない内にホテルマンとレティシア支配人を連れて戻って来た。両者ともに顔色が変わっている。当然だ。防犯的に問題があるとなるとホテルの信用にかかわる。……問題はそれだけではないのだがね。
私はやって来た皆さんに、事情を説明した。
「確かに施錠はしっかりしました。勘違いという事はありません。どこかにミラの入った袋を置き忘れたり……、という事も無いです。50分前までは、確かにありましたから」
施錠した鍵が開いていた事。ミラの札束が入った封筒が無くなっている事を説明する。
《ホテル・ミレニアム》の宿泊費は、部屋を確保した時、先払いしてある。
手元の財布にも20万ミラを入れておいたから、少し使って約19万ミラ程が所持金。
本もドールも回収したし、列車代は十分足りる。だからいきなり道行が困る事は無い。
だが20万ミラ。20万ミラだ。これはかなりの値段である。
そして問題は――。
「……し、支配人。その、ホテルの方が、ミラを盗んだ可能性は?」
「あり得ません。……おっしゃることは、良く分かります。ここは従業員用の仮眠室です。窓もなく、部屋の位置を知っているのは従業員のみ。――外部の犯行が難しいのではないか、という事ですね」
そういうことだな。
元が従業員の仮眠室なので、此処から、従業員のロッカールームとか更衣室、休憩スペースや支配人室などに行ける。逆も然りだ。この部屋に一般人が来るのは、少々ハードルが高い。
「警察に連絡しましょう。私を含め従業員から話を聞き、確認いたします。お客様のミラは、私達で一時的に立て替えましょう。まずは」
「ちょっと、待って」
レティシア支配人はプロだった。即座に状況を把握すると警察を呼ぼうとした。
それを制したのはフィーだ。
「今、警察は何処も忙しい。遊撃士も多分忙しい。犯人は内部の人間の可能性があるから、絶対に確認しなきゃいけないと、支配人は思ってるんだろうけど――でも多分これ、外部犯だよ。警察呼ぶのは当然だけど、少しだけ待って」
「なんか、みつけた?」
私達の言葉に、え? と皆が顔を見合わせる。
室内を確認していたフィーが、地面をゆっくりと這った。
静かに指先で空気の流れと音を感じながら、部屋の一角に向かっていく。
シャワー室だ。フィーは、その床を無言のまま触っている。そして
壁に鏡があり、シャワーノズルがあるが、立って使う事しか出来ない狭い空間だ。
髪と体を兼用できる石鹸が壁にぺたりと吸盤で張り付いた籠の中に置かれていて、タオルがかかっていて、天井には豆電球と、小さな換気扇が一つ。
後は排水溝があるくらいで――排水溝?
……もしや。
「――ん、よいしょっと」
薄い金属床を貫通した剣の切っ先を、テコの様に使って、フィーが床を持ち上げる。
がこん、という音と共に
いや、違う。これは――。
「あ、穴が、空いてる……!?」
「こっから出入りしたんだろうね」
そこには、大人1人でも十分に通り抜けることができる縦穴があった。
構造としては簡単だ。
シャワー室の真下に穴を開ける。上下に伸びる出水、排水のパイプに沿うような縦穴だ。
その上に鉄網を被せ、更にその上にシャワー室の『床』を置く。
ポイントは、床を開けるには、下から持ち上げなければならないという事だ。
要するに、縦穴を上ってきた人間が、タイミングを見計らって
従業員用のシャワーだから、多少造りが粗末でも誰も気にしない。
問題が起きれば内部犯だと疑われるし、実行直前まで侵入経路がばれることもない。
人の出入りや物音は床1枚向こうだから、ちょっとの工夫で十分嗅ぎ取れる。
「こ、こんな通路がある、とは……!?」
「最近に開けられたものじゃないね。元々あった縦穴を誰かが勝手に利用したんだと思うよ。……クロスベル、開発ばっかりやってるんでしょう? 誰かが地下開発中に見つけて、その上が偶然、ホテルだったんだよ」
レティシア支配人が驚いていた。
が――話を聞くと彼女、どうやら元々ここのホテルのオーナーと言う訳ではないらしい。
経営手腕を学び、2年前に就任した。そして従業員も皆、その時に彼女が連れてきた敏腕達。
つまりそれより前の周辺状況には、どうしても情報的な穴がある。
いや、そもそも《ホテル・ミレニアム》の周囲全ての開発状況だって、把握する難易度は高い。
ホテルそのものは改装せずとも、近くの建物の取り壊しや、再建設、地下の拡張工事なんかは頻発している。加速度的に発展するクロスベルでは珍しくない。情報がレティシア支配人に渡らないことは更に珍しくない。
地下が先か、ホテルが先か。どちらかは不明だが、これで謎は解けた。
「そ、創立祭を、見越したんだね……。しかも今年は70年で。特大、イベントだから」
「うん。このルートは1回しか使えない」
フィーが探して発見できるような縦穴だ。
警察が良く調べれば一発でばれるような抜け穴。
それを最も効果的に使えるタイミングが、創立祭だった。
従業員は多忙で、売り上げは高く、盗んだミラを地上まで運んでしまえば、もう探しようがない。
「犯人はタイミングを計っていたんだと思う。ここから内部に入り込めば、ホテルの金庫とかにもすぐいけるでしょ? だけどそんな時――」
「レティシア支配人が、サービスの為に、ここを客室にしてしまった。一般客が入れるようになった。だからこれ幸いと、私達の分のミラも、奪っていった」
「抜けてるけどね。どうせなら私達の金を盗まないで、私達が加害者って濡れ衣を被せた方が有利だろうに。……それをしないって事は、計画性はあるけど
確かにフィーの言うとおりだな。
目先の20万ミラに釣られなかったら、今頃、私とフィーが第一容疑者だ。
「し、支配人、一応、従業員さんとホテルの中を確認してみてください。仮に、売上金が沢山入った金庫が無かったりしたら、大問題です」
支配人の気遣いが裏目に出てしまった形だが、これは彼女を責められまい。
彼女が知らぬ間に、クロスベルの闇がホテルの地下に忍び寄っていたという話。
慌てて出て行った彼女は、顔色を今度こそ真っ青に変えて戻って来た。
『昨日今日二日間分の売り上げが入った金庫と、IBCの通帳がありません』
支配人によれば、金庫はかなり大きな代物だとか。
大人が数人で抱えて運べる品で、普段は事務室の一番奥に置いてある。
ところが創立祭中ということで、どうしても注意が逸れていたと。
更に言えば事務員は気絶させられ、隣の倉庫に拘束されていたと来た。
「決まり。支配人が幾ら忙しくっても、気付くまで精々稼げて数十分」
「い、急いでいる、といっても、金庫なら移動は遅い、かな? 出せてキャスター、かな」
「警察に連絡して手配して。警察が手一杯なら遊撃士でも良い。口座の凍結は今すぐIBCに。だけどまあ」
フィーは縦穴を覗く。それで彼女が何を考えているか良く分かった。
……私が無言でフィーを見ると、視線が合った。
何を考えているのか、良く分かるよ。
「じゃ、ちょっと行こうかフィー。こ、此処の宿は親切だったものね」
「そうこなくちゃ。恩返しといこっか」
支配人さんやホテルマンさん達が制止する暇も与えない。
私達は躊躇せず、縦穴に飛び込んだ。
何故かって? ……無謀な正義感ではない。士官学院の義務感でもない。
単純な損得の話だ。このまま泥棒を逃がすとミラは間違いなく消えて無くなる。
ただの旅行客である私達は、保障で戻ってくるかもしれない。
ホテルの売上そのものも保険で補えるかもしれない。
だが信用はミラでは貸し借り出来ない。
事件の詳しい情報を、他の宿泊客に説明する必要もあるだろう。
『でもミラは全て手元に戻り、犯人は捕まえ、一切の問題は起きていません』と主張できるのと、そうでないのは、雲泥の差。助けてくれたホテルに、恩返しくらいはしてあげたい。
だから私達は駆けた。
後まあ、言葉にはしないでも、分かりあっていた、もっと大事な問題がある。
よくもまあ、楽しい時間に水をぶっかけやがったな、と苛立っていたのである。
○ ○ ○ ○ ○
かくして私達は、泥棒を追跡した。
私とフィーの速度なら、間に合うと思った。
その予想は、正解だ。
「み、見つけた! ど、泥棒! 私の20万ミラと、ホ、ホテルの売り上げ……返しな、さい!」
私の声は
ウィスパーボイス。囁きにも似た声質だと言われたことがある。
まるで幽霊に囁かれたように、一瞬だけ動きを止める姿が4つ。
暗くて分かりにくいが、何れも工事現場の作業服を着ている。
同時に、ガチリ、とARCUSのリンクが繋がった。
フィーの動きが分かる。
私が男達へと加速する中、背後で、フラッシュグレネードを懐から取り出した。
加速した勢いを乗せ、私の前方へと飛んでくる。
軽く飛び、片足で
5秒、というカウントが聞こえた。
「じ、充、分……!」
フィーの言葉に、重心を下げ、加速する。
そして腕を、脇下に。肋骨の下にあった柄を握り、小太刀を抜く。両腕に一本ずつ。
視界の先には五人の男。二人が最後尾。中央二人がキャスターで金庫を運搬、先頭に一人。
4秒。
カン……!
グレネードが地面に落下して弾む。
「追っ手か!?」
「なんだ、今の金属お……!?」
「足元に何かぁっ!?」
相手が此方を見た瞬間、私は
膝を抜く。落下を推進力に変える。カチっという音。腰骨が正中線にぶつかる音。同時、加速。
その速度を持って、相手の足元を。
――恰も蛇の如く。
――
――抜ける。
最後尾の男は、私を捉えていない。相手からすれば、何か凄い勢いで、小柄な影が這いよって来たようにしか見えなかった筈だ。暗く狭い通路の足元、私は隙を、見逃さない。
刃は逆手に。腕から相手の足にぶつかっていく。
鋭利な刃が、その脛を
主要な血管は避けたが、骨まで達する切り傷だ。一瞬だけ生白い肉が見え、それが瞬く間に真っ赤に染まっていく。痛みに反応する間もなければ、自分に起きた出来事を理解する間もない。
気付けば脚を破壊されていた。
気付いた男が悲鳴を上げる時には、私は既に、動いている。
右足で地面を踏み、加速を維持。そして全身が伸びた状態で、右足を身体に引き寄せ、そのまま地面を蹴る。一度に二回、大地を蹴った。一回目で加速し、二回目で方向を変える。
3秒……!
シャア、と風を切る音は、蛇の威嚇音の如く。
そのままの勢いで、二人目の男の太腿を
そしてジオフロントの鉄柵に着地。
細い鉄の欄干の上を、駆け抜ける。靴が鉄に響いていく。途中、左から右へ。右から左へと反復し、反響音を重ね、相手に位置を悟らせない。
より早く、より隠密に、見つかるより先に、獲物を、喰らえ。
2秒。
右から左に移動した私は、そのまま勢いを斜めに向け、相手の背中を切り裂く。
勢いのまま進めば、今しがた背中を切られた男は僅かに前進し、違和感を知って、痛みに呻く。
倒れるより早く、空中でその男を飛び越え、着地と同時に地面に向けて加速。
1秒。
地面に身を投げる。転がった男を横目に、私は息を吐く。
耳を掌で塞ぐ。口を開ける。目を閉じる。肺に残った空気を絞り出し、衝撃に備える。
閃光。
轟音。
衝撃。
三つが連続し、周囲が軋んだ。
「――っ…………すぅ、ぅうう」
胸郭ではなく、腹筋を膨らませるようにして、息を吸う。
小太刀の血を拭って収納すると、フィーが追い付いてきた。
「……カタナの動きは、不気味。なんか動きが……見た事の無い挙動で、追いにくい」
「そ、そう、かなぁ……?」
ジオフロント:B地区。
汚水処理を主にしているエリア。確かに匂いと湿気は強いが、過酷でもない。
後日聞いた話だ。A・C・Dは、ダクト/熱処理/駐車場となっているのだとか。駐車場はさておきダクトや熱処理区画に比較すれば楽勝だ。逃げる相手も逃げやすい場所を選ぶのは当然か。
しかしABCDで綺麗に、風/火/水/地と四属性なんだなと漠然と思った。
「うん、金庫は無事」
グレネードの効果と私の攻撃で、泥棒四人は、びくんびくんと痙攣しながら呻いている。
水揚げされたレインボウの如くだ。
「……金庫の中、全部、ある?」
「カタナの20万ミラとIBCの預金通帳だけ無いっぽい。――もう一人、逃げたかな」
「……主犯、かな」
中を軽く検分した(割と危ないぞそれ)フィーは、扉を閉める。
一番貴重な、持ち運べるものを持って逃げる。
部下は最悪捨て駒にする。なるほど、ありそうな行動だ。
先頭の一人は突出していた。フラッシュグレネードの炸裂範囲からもギリギリ逃れたらしい。
少し苛立って、がんと地面を蹴ると、空気が漏れる様な悲鳴が聞こえた。……いけない、これは地面じゃない。泥棒だ。
「ん、そんなに遠くじゃなさそう、だ……けど」
「地上に出られると厄介だね」
通帳は恐らくもう使えまい。
レティシア支配人なら、素早く、口座を凍結させているだろう。
私達は3人の男を手早く拘束していく。暫くは目を覚まさないと思うが念のため、だ。
さっきのグレネードは今も効果を発揮しているようで、魔獣も近寄っては来ない。
そのうち警察もやってくる。出血はあるが、死にゃしないだろう。
「よし、追撃、再開」
急がなければ。
私達には土地勘が無い。
まあ、この泥棒達もどこまで知っているかは怪しい、けれども。
クロスベルの開発は、秩序だった無秩序だ。最低限の部分こそ管理されているが、それ以外はミラが動くならば許可される。それが安全か、本当に必要なのかは別問題だ。
甘い汁の分量と、それを啜る機会が多ければそれで良い。
故にジオフロントは今も拡大中とのこと。
これまた後日に知った話だが、無秩序な開発や、余りにも無駄な公共事業拡大に異を唱える人間は、利益優先の上層部によって強制辞任に追い込まれる、なんてことも良くあるそうな。
本当腐っているなクロスベル。頑張ってる一般人が可哀そう過ぎる。
「足音、こっち」
地の利、速度、合わせればトントンか、私達が若干、速い。
乾いた唇を、微かに舌で湿らせる。
幾つもの分岐ルートがあり、行き止まりの道も多そうだが――。
「……右。次は、直進」
「
迷う事は無い。徐々に相手の気配に迫っている。
先のスタングレネードの音は向こうに伝わっているようだ。
遠くから響く、相手の足音が早まった。
だが此方も速度で負けるつもりはない。時に階段をすっ飛ばして階を変え、手摺りから手摺りに移動し、天井の配管を掴んで追いかける。追いかけ追いかけ、追いかけ続け。
追い付いた時、主犯格は、地上へ繋がる梯子を、もう8割ほど登っていた。
にゃろう、負けてたまるかと私達は梯子を一気に登り切る。
出た先には、マフィアが居た。
○ ○ ○ ○ ○
よっこいせ、と蓋を外して地上に出ると。
今まさに、泥棒の男は、頑丈そうなビルの中に飛び込んでいく瞬間だった。
最後に私達の方を見て、勝ち誇った顔をする。
イラっとした。
「こ、此処、もしかして……」
この場所は《イメルダ》から見えていた、路地裏の、ずうっと奥の方ではないか?
かなり遠くに歓楽街のネオンの光が見えている。
「……《ルバーチェ商会》……?」
思わず口に出た言葉に、玄関前に居た見張り員が我に返った。
まさかマンホールから若い少女二人が飛び出してくるとは思わなかったのだろう。
驚いていたが、すぐに態度を改めて、話しかけてくる。
「おい、お嬢ちゃん達。どんなお転婆をしてるかは知らないが、さっさと帰れ」
一応取り繕っているが、言葉に威圧感を込めている。
並みの人間なら慌てて引き返すのだが、私達は並ではない。
脅しに対して顔を上げ、正直な事情を告白することにした。
「あ、あの、さっきの男。私達からお金を盗んだ泥棒、です。お金、返してくれないかな、と」
「……そりゃあ不幸だったな。だが悪いが通す訳にはいかないんでね。諦めてくれや」
真面目に告げた私の言葉に、見張りは黙る。素直な言葉が来るとは思わなかったのだろう。
しかし流石はマフィア。そこで私の勢いに飲まれることなく、笑って切り捨てた。
――どうしよ?
さっき目の前で駆け込んでいるのは見ている。
泥棒がルバーチェの構成員ではなく、恐らくは加入希望者だろう。
それで理解した。
恐らくホテルの売り上げにIBCの通帳までを、駆け込み資金にしたかったのだ。
となると、そんな奴を、私達に素直に引き渡してくれる筈もない。
黙って考えを整理している私を、納得したのかと見たのか、見張りは追い払うように続けた。
「分かったようだな。さあ帰った帰った。安全な場所まで案内してやろうか?」
「ん、良い。そんなのはどうでも良い。お金返してくれない?」
「ちょ、フィー、あんまり刺激しない方が、良いよ」
「良いよ別に。騒ぎになったらなったで勝ち目があるし」
此処で、今まで黙っていたフィーがぴしゃりと返した。
その態度に見張りも、段々と表情が荒くなってくる。
特に最後の一言が大きかった。
『暴れても私達が勝つから』という意味を、年下の少女に言われて、憤慨しない男は居ない。
「お二人とも。あんまりお兄さん達を、怒らせない方が良いよ? ――今なら無事にホテルまで帰れるんだぞ」
最後の言葉が、今度こそ苛立ったものになった。
フィーを見る。彼女は平然としている。
(……まあ、ここまでフィーが落ち着いているなら)
軽く息を吐いて。
(……大丈夫、だと信じよう)
彼女も、マフィア相手に喧嘩するほど馬鹿じゃない。
構成員の一人二人を密かに倒すくらいなら兎も角、戦力的にはどう足掻いても勝ち目はない。
余計な火遊びで、痛いダメージを受けるのは勘弁だ。
挑発したという事は勝ち目があると意味している。
それに向こうも暇じゃない。
此方が一歩も引かなければ、少し上の立場の人と、話くらいは出来ると思う。
私達の態度と、見張り員の忍耐が、どう転ぶか。
危うい天秤は、事情を聴いて入り口に顔を出した男の出現で動くことになる。
「おい、入り口で何を騒いでるんだ……!?」
高級なスーツに身を包んだ、如何にも幹部と言った男が来ていた。
威圧感も威厳も構成員とは比較にならない、熊のような大男。
その男を見た時、フィーが小さく「よし」と呟いたのを聞いた。
私達が見上げると、その男は『なんだこの娘達は?』と事情を聴く顔になる。
話が早い。そして己の実力に自信があるから小娘相手にも堂々としている。これなら交渉くらいは出来そうだ、と私達は話を切り出したのである。
結果、ビルの中に案内される事となった。
○ ○ ○ ○ ○
クロスベルの暗部を支配するマフィア《ルバーチェ商会》。
その影響力は高く、クロスベルの議事長を務める親帝国派ハルトマンとも密接に関わっている。
違法火器の売買、非合法なマーケットの主催などを始め、やっている事は悪事も悪事。
一応守っている最低限の部分はあるそうだが……まあ、内部事情は私達には関係がないな。
そうした《ルバーチェ》の庇護を求める連中は多い。
今回、ホテルから売り上げと通帳を奪った泥棒さん達の狙いは、これら大量の献金を送ることで、傘下に入るのが計画だった。
私達の妨害で、持参金はたった20万ミラになってしまったが、熱意は分かって欲しい。
件の泥棒さんのリーダー、名前はあるようだが取り合えずA氏としておこう。彼はそう語る。
私達は現在、その《ルバーチェ商会》の本社ビルで、話をしている最中だった。
若頭を務める偉丈夫ガルシア・ロッシは黙ってA氏の独白を聞いている。
壁際にはぞろりとマフィアの構成員が並び、私とフィーも同じ部屋の中だ。
査問会みたいなものである。
「後はあの旅行者の小娘2人を黙らせれば、何も問題はなかったことにできます、だってさ」
「まあ……間違いでは……ないかなぁ……」
入る直前、フィーから耳打ちを受けていた。
『私に任せて。絶対にこっちが勝つから』。
フィーは出来ない事は言わない。気楽に構えよう。
普通の少女なら、この状況、震えてまともに会話も出来ない。
が、残念ながら私達二人は普通からは少し離れている。
この人数――というか真正面に居る、ガルシア・ロッシ氏を相手に戦うのは勘弁して欲しい。
鍛え抜かれた体躯に、剛力。私とフィーがそろってもまず勝てない豪傑だ。
だが、不意を突いて逃げるくらいならギリギリ。
取り囲むマフィア達を混乱させて、生まれた隙を完璧に付けば、2割くらいで行ける。
それに見た感じガルシア氏は、婦女子に乱暴を好んで働くような男でもない様子。
泣き寝入りしても、さして乱暴を受けることもなく、無事に帝国に戻れるだろう。
一通りA氏の発言を聞いた後、さて、とガルシア氏は私達を見た。
余りにも平然としている私達の胆力に感心している様子だ。
どうするの? とフィーを見ると。
彼女は『じゃ』と息を吐いて。
「で、私の話を聞いてもらっても良い? 熊のおじさん」
すごく気の抜けた態度で、そう話しかけた。
どよめいたのは構成員だ。
少女が語った余りにも場違いな一言に、少女は何を考えているのかと混乱する者多数。
口の利き方が成っていないと慌てた物少数。
言葉の意味を理解したが意図が分からないガルシア氏。
納得した奴、私。
「慌てるな! ……俺の異名が《キリングベア》ってのを良く知ってたなお嬢ちゃん。――いや……待てよ。お前……どこかで……」
「どこかでじゃないよ。私、フィー・クラウゼル」
その名前を告げた瞬間だ。
ガルシア氏は、はっと目を開いてフィーを確認し、名前と記憶を一致させて、納得して。
「お前! そうか、お前! あの時のちっこい小娘か!? 少しは育って……いや、小さいと言えば小さいが、確かにその髪、その眼の色、間違いない。見覚えがある!!」
そのままフィーをがしっと掴むと、ばんばんばん!と音が出そうな勢いで肩を叩く。
それは知り合いに出会ったというより――。
久しぶりに見た親戚の子供を可愛がるおじさんの図だった。
猟兵は家族のように過ごすという。分隊は家族、分隊は兄弟ということらしい。
痛い、と文句を言ったフィーに、悪いなと笑う彼は、イイ笑顔だった。
「なら早く言え! うっかり脅すところだったぞ! ……おい、お前ら、椅子を持ってこい!」
部下に命令するガルシア氏。
理解が出来ない顔の部下に、彼は続けて命令を下す。
「この娘は《西風の旅団》、その団長の娘だ。俺の古巣に居たお嬢ちゃんだ。ちっとばかり昔に出会ったことがある……。マルコーニ会長が就任する際にも何かと助力して貰った仲だ。粗末には扱えねえ。分かったら動け!」
構成員は慌てた。まさかまさかの立場だったと理解し、大慌てである。
椅子が運ばれ、着席するまでの間に、フィーから説明を聞いた。
この《ルバーチェ商会》の代替わりの際、《西風の旅団》はミラで雇われたそうだ。
その働きを気に行った、今のボスがガルシア氏を引き抜いた。フィーはまだ幼く、ガルシア氏との付き合いはそこまで長くなかったが、気の良いクマのおじさんが居たことは覚えていた、と。
「な、なんだ。やっぱりフィーは昔から小さいんじゃん」
「カタナよりはマシだから。私は年齢的に低いだけで、育つから」
「は……?」
ちょっとそれは聞き逃せないぞ!
レンちゃんやティータちゃんに負けるのが確定している事実から目を逸らして反論する。
「わ、私だって育つし……!? ら、来年とかになれば身長がぐーんと伸びてスタイルもエマみたいなグラマラスな――
「夢を見るのは自由だよ。人の夢と書いて儚いって言うけどね……フッ……」
「……お嬢ちゃん、こっちの娘はお友達で良いのか?」
「妹分だよ」
「わ、私が、姉!!」
つまりそう言う関係だと理解したらしい。
ガルシア氏は、私とフィーとのやり取りを眺めた後、豪快に笑った。
「愉快な関係じゃあねえか。それでいったいどんな経緯で地下をマラソンしてたんだ?」
「そんなに長い話でもないんだけどね」
フィーが説明を始める。
ちらっと伺うと、不幸なことにA氏の顔は真っ青であった。
まあ、まさか追いかけて来た少女の方が、実は《ルバーチェ》と関りが深いとは、普通は思わないよな。まったく同情はしないけど。
私が出しゃばっても面倒なことになるので、説明をフィーにお願いした。
構成員の皆に嘘を言わず、正直に隠さず説明をする。こういう具合にだ。
『今は猟兵から離れてエレボニア帝国で社会学習として学生をしている。カタナは友人で、彼女の用事を済ませるために一緒にクロスベルに来た。しかし創立祭だというのを忘れていて宿が無く、困っていた所に《ホテル・ミレニアム》が一部屋開けてくれた』
『この忙しい時に泊めてくれた恩は大事にしたいから、ホテルの売上金や通帳はきちんと返したい。そして、友人のカタナから泥棒した20万ミラは、それ以上にきちんと回収したい。ジオフロントで急いで動いたのは、彼が逃げそうになっていたからだ』
そして止めとばかりにフィーは告げた。
「私達は明日にはこの街から離れる。だから、それまでに《ホテル・ミレニアム》の問題を解決し、カタナのお金を回収したかった……。それだけ出来れば、貴方達の邪魔をする気は一切ない。泥棒の始末は、警察でも自家焼却でも、なんでも良いよ」
フィーの言葉に、ガルシア氏は暫し考えていた。
古巣とはいえ、顔馴染みとは言え、それで譲れない部分もあるだろう。
しかし彼は冷静に、部下からの情報を確認する。恐らくホテルの確認を済ませ、今後の計算を済ませ。
「良いだろう。……この件は、クラウゼル。お前の提案に乗ろう」
どっしりとした態度で、私達を見て、頷いた。
「だがそれは、お前が俺の古巣の人間だからという事じゃねえ……。胆力と勇気がある少女二人の行動の方が、せこくて小さい泥棒よりも勝っていた。それだけの事だ」
ゲームでいうところの「
A氏は私達の目の前で、がっくりと項垂れる。そのまま構成員に連行されていった。
悪いことをした報いだ。しっかり反省しろ。
「……一応、殺すのは勘弁して欲しいよ?」
「殺さねえよ。全部の罪を被せて警察に送る。今回は俺達《ルバーチェ商会》には何ら関係が無かった、という事で手打ちにさせる。《ホテル・ミレニアム》への対応と根回しは俺の方でやっておこう。それで、そっちのもう1人の小さい嬢ちゃん。アンタが盗まれたミラは20万ミラと言ったな……、ちょっと待ってろ、今手配する」
ガルシアさんは部下に命じて、A氏からミラを回収すると、中身を確認して、寄越してくれた。
……なんか分厚くないか? この封筒。
「
ガルシア氏の質問に、私は。
「い、いえ、何枚か多かったようです。
心づけとして渡された差額分を、素直に返却した。
貰っていこうと思えば貰っていけたミラだ。迷惑料として受け取っても許される。
でも今の私に『毒』は無い。ならば少しくらいは、綺麗さを取り繕ってもいいかなと思うのだ。
やったら確実に後悔すると分かっている事は、最初から、すべきではない。
断った私に、そうかとガルシア氏は微かに笑った。
お眼鏡に適ったらしい。
「俺は猟兵を辞めた身だ。今のボスにスカウトを受けての事だった。……あの場所は、俺には苦痛だったようでな。もう二度と戻りたくはねえ。――今のこの《ルバーチェ商会》は居心地が良い。問題も阿呆も多いが、猟兵では手に入らなかった
彼の言葉は、猟兵という立場から足を洗った事実以上の、重みがあった。
過去よりも今と、この先の将来に満足をしている男の顔だ。
「クラウゼルも、同じだろう。今はまだ、迷って、考えて……、自分の環境に落ち着かない様子を見せるかもしれねえが……」
まるで身内の様に心配をする、大きな熊に私は、頷いた。
何を言いたいかは、良く分かる。
「お、お任せを。居心地が良いような場所にしてみせます。私と、私の友達と一緒に」
「期待してるぜ。約束破るなよ? なにせ《西風の旅団》は誰も彼もこの娘には甘かったんだ。彼女を泣かせると、ゼノ達、他の親代わり分も皆怖いからな?」
「き、肝に銘じておきましょう。なにせ私の方が……お姉さんですから!」
ここでいえば否定はされまい! と胸を張って告げる。
フィーの新しい場所を作る。
その決意に充実感を覚えて、頷く。
「いや、俺の目から見ても嬢ちゃんの方が下に見える」
轟沈した。
○ ○ ○ ○ ○
その後の話を少しだけしておこう。
私とフィーは、マフィアに『護送』されながら《ホテル・ミレニアム》に戻った。
事情を聞きつけてやってきたクロスベル警察の皆さんの事情聴取に付き合ったりもしたのだが、ここは割愛しよう。長々と今までの経緯を再度話すだけになる。
私達の話を聞いたのは眼鏡のエリート捜査官さん。ちょっとマキアスに雰囲気が似ていた。
忙しい中、効率良く調書を取った捜査官氏は、迅速かつ丁寧な応対で話を進め、記載していく。
事件はそこそこの規模で、私達の行いは無茶だったが、それでクロスベルに文句を言う訳でもなければ、帝国として不満を述べることも無い。むしろ応援したくなった。
出来る限りの協力姿勢を見せたからか、向こうは安心しながら撤収していった。
クロスベル警察。政治家と暗部に翻弄され、苦労しているらしい。
小耳に挟んだ情報だと、その対策として『特務支援科』なる部署があるとか言っていたか。
残念ながら彼らに出会う事は叶わなかった。まあ、またどっかで遭遇する機会があるさ。多分。
支配人のレティシアさんは私とフィーに大きな感謝を送ってくれた。宿泊料金はタダになった。
泊めて貰ったお礼に追いかけたのに、タダにして貰っては貸しが増えてしまう……と言ったのだが、支配人のお願いに、私達は根負けした。
翌日。
私達は余り遅くならない内にクロスベルを発つことにした。
夕方になると人も混む。帰りの電車は早い方が良いだろうと判断しての事だ。
一通り街の中を回り、朝食はベーカリー《モルジュ》で。昼は《龍老飯店》で済ませ、レシピを覚え、同時にお土産を購入。クラスの皆の分と、先生の分を購入する。凝った品はそれほど必要もないだろう。
そして最後に、遊撃士協会に顔を出した。
エステルは相も変わらず元気いっぱいで、無駄に明るかった。ノー天気娘だった。
『影の国』事件が去年の11月なので……大体、4か月から5か月ぶりくらいだ。
二人は、クロスベルに来る直前、帝国で古代遺物《審判の指輪》事件を解決したらしい。
何かの役に立つかもしれない。記録のコピーだけ貰って行こう。
相も変わらず底抜けに明るい太陽娘と、ヨシュアさん。
二人は、私が顔を見せた時に喜んでくれて、友人のフィーを紹介するともっと喜んでくれた。
ヨシュアさんは流石、フィーが猟兵という事も見破っていた。
二人のクロスベルに来てからの活躍は目を見張るものがあるらしい。
凄まじい勢いで依頼を解決していて、すっかり市民から頼られているとのこと。
ランクはどうなってるの? と尋ねると、まだB級(準A級扱い)らしい。
サラ教官と並ぶ、最年少A級にもなれるだけの経験と技能は有しているらしいが、あんまり有名になりすぎてもいけないという配慮を協会がしたそうだ。まあリベールで活躍し過ぎたしね。
色々、話題の種は尽きなかった。
昨日夕方、創立祭の2日目に旧市街でチームレースをしたんだよ、という話。
これから任務解決ついでに《人形工房》に足を運んでみるという話。
レンちゃんの両親がクロスベルで働いているという話。
私達がジョゼットと出会ったという話。
昨晩の泥棒騒動の話。
更には《ルバーチェ商会》が運営する、二日後に催される『
オークションの話題の時、一応、マリアベルさんの事も伝えておいた。
「思いっきり怪しいですよ! 多分『結社』の事も知っていますよ!会話の中で『明後日大事な用事がある』って言ってたので多分『黒の競売会』の話ですよ!」と伝えたら、ヨシュアさんは「だろうね」と頷いていた。
ヨシュアさんは『執行者』。私では超えられない壁の向こうで動いていた人だ。私よりも多くの情報を知っている。であればIBCについても、無論、知っているだろう。
尤も、遊撃士は、民間人の保護こそできるけど、政治的な行動は出来ない。
やってこない依頼を受けることは出来ないのだ。
だから二人が、出来るのは警察に話をするくらい。
幸い『特務支援科』という――エステル達も知り合いなのか――仲の良い警察官達が居るので、言える範囲で情報を渡しておいてくれるとの事。お願いしておいた。
名残は惜しかったが、ミシェルさんから《審判の指輪》事件の写しを貰ったところで、エステル達も仕事の時間だ。挨拶をして別れることにした。
……また会えるってのは、良いことだなと思った。
かくして私達はクロスベルから列車に乗って、トリスタへと向かう。
ガレリア要塞を通り、双龍橋を抜け、ケルディックを経由してトリスタまで。
来るときは急ぎだったが、帰りはのんびりだ。列車もかなり空きがあったので、フィーと二人、向かい合って窓際に座る。
二日間という短い日程だが、中身が中身。濃い二日間だった。
「……楽しかったよ?」
手摺りに肘を乗せ、移ろい行く景色を眺めていたフィーが、小さくそう言ってくれた。
彼女の眼は、悪戯好きな子猫が満足したように、笑っていた。
「私が無理やり付いてきたようなものだけ。確かに色々あったけど。でも……楽しかった」
戦いを考えないで、自然に過ごす時間。
士官学院に来て、直ぐにそれを味わえるとは思っていなかったと続けて。
「……だから、良い思い出になったと、思う」
私はそれに素直に返事をしておいた。
ありがとう、と。
うん、その言葉が一番のお土産だ。
私とフィーは、小さく拳をぶつけあったのだった。
○ ○ ○ ○ ○
あ、そうそう。最後にどうでも良い謎が1つ残ったので、それだけ。
外出とクロスベルでの事件の話は、後日学院の先生達にしっかり伝わる事になった。
『非常に感謝しています』というレティシア支配人からのお礼の手紙が来たのだ。
入学早々に外出した件に関してはハインリッヒ教頭から小言を言われた。
ただ同時に『士官学院の生徒として恥ずかしくない行動だった』とも捉えられたらしく、以後気を付けるように、と窘められて終わりだった。
私はてっきり不真面目だ素行不良だ云々、ともっと言われるかと思ったのだが、教頭からの言葉が好感触だったのだ。少しだけ意外だった。
彼は『またクロスベルに行く機会はあるかね?』とまで尋ねて来たのだ。
その辺は『多分』とだけ返事をしておいたが。
教頭、そんなにクロスベルが好きなのだろうか?
寮の部屋の中、考える私の手は、飴玉に伸びる。《アルカンシェル》で購入した品だ。
ごそごそと袋の中を漁った私の手が、同封されていたリーシャ・マオのブロマイドを掴む。
私達が再び向かうと、何か良いことがあるのだろうか?
それとも、お土産が、そんなに美味しかったのだろうか?
謎に答えは出なかった。
Q:カタナの声質。
A:ウィスパーボイス。怖いらしい。
Q:またクロスベルに行くの?
A:恐らく3章前くらいに。特務支援課に会えるとは限らないけど。
Q:カタナって強いの?(2回目)
1:ガルシアやラウラ、ガイウスみたいな『シンプルに頑丈』なタイプは天敵。
2:サラやリィン、フィーのような速度・火力・範囲を兼ね備えたタイプも天敵。
3:エマのようなアーツ型の場合、相手の詠唱を防げればワンチャン。
4:カタナの速度以下の雑魚や、妨害/デバフが入る相手には、そこそこ有利に立ち回れる。ただし火力は無いので、手数を重ねるか、追撃を仲間に頼むことになる。
総合して:→ つまり、何処まで行っても、基本は補助で攪乱役。
これにてフィーとの絆イベント「突撃クロスベル創立祭」は終了。
次回は自由行動日の手前。
いよいよ部活動にも参加するタイミングです。何処に所属するのか、お楽しみに。
ではまた次回。