夜の街は、いつも通り騒がしかった。
私にとってそれは、まるで遠くのノイズのようにしか聞こえない。
人間の声、車のエンジン、ネオンの光。どれもが私の“平穏”を邪魔する雑音だ。
そんな中で、ひときわ静かなカフェがある。
私はそこによく通っていた。
コーヒーが美味しいわけでも、店の雰囲気が特別良いわけでもない。
ただ――そこで働く女性の“手”が美しかった。
名前は香澄(かすみ)。
整った顔立ちに、長い黒髪。
指先の動きがやけに滑らかで、
カップを持つ仕草ひとつにも、無駄がない。
「吉良さん。今日もいつものブレンドですね?」
「ああ、香澄のコーヒーは落ち着くよ。」
そう言うと、彼女はやわらかく笑った。
その笑顔は“温かさ”よりも、“演技”のように見えた。
……わかっている。
彼女は“グール”だ。
この街の喧騒の裏で、無数の命を食らう“人食い”。
目線の動かし方、呼吸の間、そして――微かに漂う“血の匂い”。
私の嗅覚は、そういうものを誤魔化せない。
だが、彼女は上手かった。
彼女の“女”としての魅力は、飢えを隠す仮面として完璧だった。
男なら誰でも惹かれるだろう。
自分が“狙われている”とも知らずに。
「吉良さんは……一人暮らし、なんですか?」
「ああ。気楽なものだよ。」
「寂しくないんですか?」
「ああ。静かに暮らせれば、それでいいと思っているよ。」
変わっていますねと、香澄は笑った。
その笑顔の奥に、わずかな獣の匂いが混じっていた。
その夜。
私は彼女を家に招いた。
理由は単純――
“彼女が私を食おうとする瞬間を、見てみたかった”からだ。
ワインを開け、二人でテーブルを囲む。
赤い液体がグラスの中で揺れ、まるでどちらの血なのか分からないような深い色をしていた。
「あなたって……落ち着いてますね。」
「平穏が好きなんだ。」
「私も、静かな人が好き。」
彼女はグラスを置き、立ち上がった。
ゆっくりと歩きながら、私の背後に回る。
指先が首筋をなぞった。
甘い息が耳元にかかる。
――次の瞬間。
皮膚の下で“赫子”が蠢く音がした。
背後で、空気が裂ける。
「ようやく、食べられるわ……」
声が、低く歪んだ。
振り返ると、彼女の片目が赤く輝いている。瞳孔は収縮し、笑みは獰猛な形に変わっていた。
私は微笑んだ。
「ああ……やっぱり、そうだったか。」
香澄が飛びかかる。
赫子が伸び、私の胸を貫こうとした瞬間――
「キラークイーン。第一の爆弾。」
光が弾け、音が消えた。
爆風も、叫びもない。
ただ、花が散るように静かな“爆殺”。
残ったのは、焦げ跡のない床と、テーブルの上に落ちた白く滑らかな手首だけだった。
五本の指がきれいに揃い、まるで彫刻のように凍りついている。
皮膚は艶を保ち、爪の先まで整っていた。
美しさを失う寸前の“永遠”の姿。
私はそれを拾い上げ、花瓶の隣に飾った。
冷たく、滑らかで、完璧な形をしている。
「やはり、美しい。
人でも、グールでも、美は平等だ。」
ワインを飲み干し、静かに息を吐いた。
外ではCCGのサイレンが遠く鳴っている。
だが、この部屋だけは、完璧な静寂に包まれていた。
――今夜も、いい夢が見られそうだ。
OpenAIの力で自分の見たいものを書いてもらいちょっとだけ変更を加えたものになります