アインハルトの黒歴史 作:aa
ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルトという女の子がいた。
彼女はちょっとばかし裕福なベルカの家庭に生まれた普通の女の子。特に大きな病気にも掛かる事もなく元気に育っていった。
幼い頃から親の贔屓目に見ても可愛らしく育った彼女は間違いなく将来美しく育つだろう。
そして間違いなく彼女は幼いながらも美しく育った。育ったのだが。
「ボクの名前はクラウス・G・S・イングヴァルト。宜しく!」
「いやお前ここ男子便所だから」
ちょっとおかしかった。
おかしいと言うには語弊があるのかもしれない。いやここは男子トイレでそこにニコニコと男子が小便をしている所を後ろで見ていると言えばおかしいと言うのは間違えているどころか的を射ているのだが。
それをマジかよと横目で見て声も掛けずに通り過ぎて行くクラスメイト達。立ちションしている少年は心の中でfuckと中指を立てた。そして絶対にタークロウはまだお母さんと風呂に入っていると言い触らしてやるとタークロウが罪もないのに被害を被る未来が確定した。
どんまいタークロウ。
「だって君、さっき寝ていただろう?」
「あの俺の言葉通じてる?」
どうやら悲しい事に目の前の女の子には言葉が通じないらしい。クラウスはとても真面目な男だった。毎日朝5時には起きてランニングはかかさずおこないそしてその道で会う国民に頭を下げられれば挨拶をするぐらいには真面目な男だった。
故に自己紹介の際に寝ていたこの男の子の元へ律儀に自己紹介に馳せ参じたという訳である。
クラウスにとって自己紹介とはこれから1年学び舎を共にする仲間との親睦を深め合う儀式のようなもの。真面目である故にクラウスは休み時間、トイレに行く男の元へ親睦を深め合う為にやって来た。しかしクラウスは真面目過ぎるが故に固い。それはもう特性メタルボディを持つスライムのように固い。
それ故に融通が効かない、そして何事にもバカ正直で真っ直ぐだ。
「これから1年間宜しく頼むよ!」
「いやだから……」
だからこそ話が通じない!立ちションをしている少年の目は死んでいた。
真っ直ぐに、それは真っ直ぐにそして真摯に真剣に。クラウスもといアインハルトから親睦を深め合おうと右手を差し出された。
握手、それはいつの時代でも変わらず友好を深め合う為にも使われる伝統である。
いや俺立ちションしてんだけど、とは言えない。少年はこれでも善良な男の子でそんな女の子にセクハラ紛いな事は言わないし言えない。タークロウ?彼らは親友だからあのぐらいスキンシップの範囲内だからセーフ。
しかしクラウスは馬鹿で真面目で真っ直ぐな男だ。決して握手する事を辞めないし諦めない。
だがしかし!
確かにクラウスは馬鹿で馬鹿で馬鹿なのだが彼女はあくまでアインハルトである。少し記憶が先祖返りしてて可笑しくなっているが普通の可愛い女の子。
もしかして迷惑だったかな、と不安になってくる。そしてまだ彼女は幼い。自然と目尻に涙が溜まる。
そのもしかして所かくっそ迷惑なのは傍から見ても当然であった。
そしてただ握手を求められているのに追い詰められた気分になる立ちションの少年。
まさに背水の陣。
そしてボタンを押して小便を流して普通に握手した。
少年は考える事を止めた。
満面の笑みでブンブン腕を降ってくる目の前の女の子に少し顔を赤くする。皮だけ見ればクラウスもといアインハルトは美少女なのだ、それが満面の笑みを浮かべていれば年頃の男の子であれば誰だってそうなる。
「宜しく!えっと、授業が始まるしはや……く……」
そこまで言うと視線を下にして顔をみるみる真っ赤に染めていく。首をかしげる少年は自分の下をみた。
やっべぇ、チャック閉め忘れてた。
そして思った。てめぇさっきガンガン立ちションしてた俺の後ろで満面の笑みで自己紹介してたのにチャック開いてるの見てその反応はおかしいと。
「ごめんなさいっ!失礼しますっ!」
耳まで真っ赤で目を><にして走り去っていく様はまるで女の子のよう。いや女の子なのだが。
ぴゅー、と風を切るように男子トイレを走り抜けていく女の子。そして唖然とする少年。
うせやろ工藤と呟くがあいにくと此処に工藤は居なかった。
キーンコーンカーンコーン。
鳴り響くチャイム。
授業に遅れることが確定した瞬間だった。
こんなノリで進みます