ガンプラビルダーズ・フレンズG-Next   作:いすた

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ガンプラ専門店『ゼブラゾーン』の名を知らぬ者は、

この地方のガンプラビルダーにはまずいないだろう。

「宇宙一のガンプラショップ」と謳う店の前には、

全長160センチの人間サイズのガンプラが置かれている。

RX-F91シルエットフォーミュラー1/12スケール。

なんとこの店の店長によるフルスクラッチ作品らしい。

先日ギャプランを買いに来た時はわからなかったが、

実際にガンプラを作り、知識を得てから改めてみれば、

これがいかにとんでもない作品なのかがよくわかる。

こんなガンプラを作る店長の店が有名でないわけがない。

休日の本日は大盛況。

この賑わいだけを見れば、昨今のガンプラブームの陰りなど嘘のように思えてしまう。

 

「くぅ! なんかいいな、これ!」

 

表向きは休止中のガンプラ工房に来客は全くいなかったため、

生のガンプラビルダー達がひしめく光景はデビューしたてのダイズの心を昂らせる。

もう早く、ガンプラバトルでこの猛者達と戦ってみたい!

善は急げ、店の奥にズラリと並ぶPODの数はとんでもない量。

どれほどの人が来ても、待ち時間なくすぐ楽しめることだろう。

宇宙一のガンプラショップは伊達ではない。

レンタルしっぱなしのパープルカラーのパイロットスーツに着替えて、

さっそく空いているPODに入り込み、店内対戦を選択。

ルールは3対3のベーシックバトル。

オンライン対戦では何度もしたが、隣に居る相手が味方と敵となると気分が違う。

ガンプラバトルの実力を表すランクも皆が高く、

バトルの累計回数もダイズの百倍は違う。

まちがいなく強敵揃い、俄然楽しくなってくる。

試合は始まり、戦場は宇宙、サイド7宙域。

特にこれといって特徴もない普通の宇宙空間。

ダイズは味方の2機と共に動いて、敵を探す。

多人数対戦の基本は孤立しない事。

数的不利はそのまま敗北につながるというのをダイズはしっかり理解しているので、

初心者が混ざり込んできたと思っていただろう味方二人は、

ほとんど素組みのギャプランでも足並みを揃えてくれている事に安心してくれたようだ。

こういう戦いで、初心者が混ざる事を嫌う者は多い。

悲しいかな、対戦ゲームというシステム上、避けられぬ問題だ。

 

「へへ、ここは姉ちゃんに感謝だな」

 

ここ一週間、手加減無しで徹底的に叩きのめされた。

その都度問題点を研究し、ダイズとギャプランの両方に手を加えられていった結果、

ただの初心者ではないと自信がある。

だからといって、油断はしない。

油断して負けましたなんて、ジュウリの報告したらどんな顔をされるかわかったものではない。

だから、敵の動きが妙に遅く感じる事にも、警戒を解きはしない。

……ジュウリのダハックよりもずっと速度はでているはずなのに、なんというか、気迫がない。

小型のガンプラ、ビギナ・ギナと名が表示されているガンプラは、

後続の2機と編隊を組み、こちらのチームと距離を詰めてくる。

3機全員の動きから、怖さが伝わってこないのは単にダイズの知識が不足しているだけか。

いやこれこそ油断だ、気を付けよう。

そう、ジュウリのダハックならこの時点でもう接近されてしまっている。

この一週間、何十回と切り刻まれてきたのか。

敵の攻撃射程に侵入、ビギナ・ギナの放ってきたビーム・ランチャーの弾を回避して、

ギャプランのビーム・ライフルの射程内に敵を捕らえる。

ビギナ・ギナ、ビーム・シールド展開。

ビーム・ライフルを防いでくるのだが、

ジュウリのダハックのビーム・バリアに比べて、着弾時の揺らぎが大きくて長い。

なんだそりゃ?

MS形態に変形して精密射撃をするまでもない、高速機動したままで鎧通しが狙える程度。

予測に違わぬ結果で、ビーム・シールドごとビギナ・ギナを撃破。

ついでに突然味方が落とされて足が止まったもう1機も撃破させてもらい、

このまま数的有利で、試合終了。

初戦で2機を落とす戦果を出して見せたダイズとギャプラン。

なにかしっくりこないと、一度PODから出てみれば。

先ほどマッチングした5人のビルダーがこちらに気づいて近づき。

 

「さっきのギャプランだね? さっきのアレ、何をしたんだい!?」

「動きも初心者には思えなかったな、サブアカウントとか?」

 

口々に初心者離れした動きを見せたダイズに驚き、称賛までしてくれるビルダー達。

ちょっと嬉しくて、彼らと会話を弾ませながら、ダイズは気づく。

 

「姉ちゃんに鍛えられすぎたな」

 

っていうかあの人、どんだけ強いんだ、と。

ジュウリに勝てるようになるのは何時になるのか、

武者修行に来たら、かえって壁が高くなったと感じるダイズだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たまにはジャンクフードも悪くない。

午前中はゼブラゾーンでたっぷりとガンプラバトルを楽しんだダイズは、

近くにある有名バーガーチェーンでセットを注文して持ち帰り。

色んな人のガンプラバトルを眺めながら飲食ができるコーナーでかぶりつく。

モービルの極上の家庭料理はうまい。

脳内で食レポが勝手に浮かび上がるぐらい、うまい。

しかも飽きない。そりゃあ近くのファミレス店員が勤務先をほっといて常連にもなる。

だが極上があるからB級グルメがまずいわけではない。

例えるなら、そう、王城のプリンセスと花屋の看板娘。

美しい美しいお姫様、見目麗しいそのお姿は、例え一流の画家であろうと描けまい。

それに比べれば、パン屋の元気いっぱい看板娘は貧相だ。

パンズのゴマは少女のそばかす。

レタスのエプロンはしなびてしわくちゃ。

パン作りの精をだす指先は荒れてケアもしきれぬ型取りハンバーグ。

でも、彼女の一生懸命さと直向きさのどこが、プリンセスに劣るというのか。

ソースはたゆまぬ企業努力、万人が味を覚えようこのチェーン店でしか味わえぬテイスト。

故に、これも美味い。いつもありがとう、君からは元気がもらえるよ。

――また謎の脳内食レポをしてしまった。

これはモービルの料理のせいだと責任転嫁をして、ゴミをまとめてゴミ箱に。

腹ごなし完了、さぁ午後も楽しい楽しいガンプラバトル。

……が、気がついたら、PODの周囲に進入規制の柵が置かれて、自由に遊べなくなっている。

なんだ? 一斉メンテナンスでもするのだろうか?

柵の近くに建てられた看板に、

『ゼブラゾーン恒例 2on2トーナメント大会』

 

「た、大会ぃ!?」

 

店舗の全PODを使ったガンプラバトルトーナメント。

午後からそんなものが予定されていたとは。

興味津々で大会概要を読み上げていくダイズ。

 

「何々? 二人一組で参加受付。

 エキスパートチェック無し。

 飛び入り参加歓迎っと。

 ん~、まだ参加枠は余ってるっぽいな」

 

エキスパートチェックというのはよく知らないが、必要ないという事はダイズが出られるということだ。

出たい。誰が強いかを決めるバトルトーナメント。

戦うためにやってきたのだから、出たくないわけがない。

しかしエントリーには二人必要。

今からジュウリを呼びに行くかと一瞬考えたが、

バイト中だと怒られるだろうし、そもそも時間がない、受付終了まであと15分。

よし、野良で探そう、誰か店内に居ないか?

もう参加に意欲を見せる者は、午前中にはエントリーを終わらせているので、

皆がナンバーのついたバッヂを身に着けている。

バッヂをつけていない者、一人いた。

銀髪をスポーティに短く整えた少年。

半袖のTシャツと短パンからも伺える健康そうな体。

歳は中学生ぐらいだろうか、

手の中のサンドイエローのガンプラを大事そうに抱えているのが、良い印象だ。

 

「や、ちょっといいか?」

「え……? ボ、ボク?」

 

近づいて声をかけると、すごくおびえた様子。

ダイズとの身長差は50センチはあるのと、強面はやっぱり威圧的だ。

膝立ちになって目線を合わせて顔を見れば、

ここで、”少年”ではなく”少女”なのだと気が付いた。

一人称もボクで、恰好も併せて近くでも気が付かない者もいるだろう。

顔立ちは中性的だが、かなり可愛らしいと言っていい。

アジア系とは違う顔付きと銀髪からして、ハーフだろうか?

いや、今はそれはどうでもいいと、ダイズはすぐさま本題を切り出す。

 

「実はさ、俺、今からやる大会に出てぇんだけど、

 一緒にやる奴がいなくてさ。

 初対面でいきなりなんだけど、一緒に出てくれねぇか?」

「どうして、ボクに?」

「誰とも組んでなさそうだったのと、

 そのガンプラ、大事そうに持ってる姿が気になってな」

 

ガンプラを好きな人なら、きっと大丈夫。

根拠はないけれどそう思うのだ。

 

「ん……でも……」

 

少女の返事はまだ戸惑っていて引き出せそうにない。

まずい、もう時間がない。

ここでピコピンと浮かんだのはジュウリとの会話。

 

『少女漫画のキュンキュン鉄板セリフ!

 さぁまずはこれを、感情たっぷりに読み上げれるように練習!』

 

今朝のボイス収録前に、男にはあまり縁のないセリフのその言い方を叩き込まれたダイズ。

手段は選ばぬ、少女にゆっくりと顔を近づけて。

 

「いいからさ、俺に任せとけって」

「ふぇっ! ひぁ……あの……顔……近っ……!」

「顔真っ赤になってんぞ。へ、おもしれー女」

「っ~~!」

 

これが並み以下の顔面偏差値だったら通報モノだったろうが、

当然、イケメン前提のセリフなどジュウリは承知済み。

オタクのジュウリが悶絶する声質も相まって、少女にもクリティカルヒットだったらしい。

コクンと小さくうなづいたのを確認し、よっしゃとガッツポーズ。

そのままダッシュで受付に。

と、エントリーシート記入の段階で、まだ名前を聞いていなかったと気づいた。

 

「俺はダイズ。そっちは?」

「っ!……。ボクはカザ……、カ、カナって言います」

 

こうしてダイズは、『カナ』という新しい仲間と共に、大会にエントリーする。

ただ、カナがダイズを見る瞳は、どこか複雑な色を示しているのだった。

 

 

 

 

 

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