ガンプラビルダーズ・フレンズG-Next   作:いすた

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第4話「戦吼のジ・O」

カザナ・フィーネルベルトがレストラン・フレンズの常連になって三日。

これまでガンプラを共に遊ぶ友人に恵まれなかったカザナにとっては、夢のような空間。

レストランの店長、モービルもとても親切な人、怪しいぐらいだが、

ダイズが心を許す相手ならばと、カザナも警戒はしていない。

そう、ジケイ・ダイズ。

カザナを孤独から連れ出し、似た境遇の友人にして恩人。

慈恵の家の名など関係ないと手を差し伸べてくれて、

カザナもフィーネルベルトの家の名を忘れられる。

強くて優しい、憧れの男の人。

フレンズに行けば彼に会える。

ガンプラよりも彼に会う事のほうが大事かもしれない。

そんな彼が昨日、嬉しそうに大好きだと話していた女が居る。

『アマミヤ・ネコト』。

現在人気急上昇中のバーチャルアイドル。

寸胴みたいな凹凸の無い身体に。

あざとさしかないピンク髪のツインテネコミミ。

語尾にニャンなんてつける安直な設定。

確かに歌は上手いし、ゲーム実況のコメントも的確で、

リアクションにもクスリとさせられてしまう、悔しい。

いや、所詮は自分の顔をネットに映さずに配信したがる根暗のオタクがやること。

あんなのの何がいいのか。

憧れのダイズがカザナそっちのけでネコトの良さなんて語るから気に入らなくて、

気になって、そのチャンネルを見たのが昨日の夜。

カザナとしても一番気になったのはガンプラ動画。

ガンプラ改造テクニックや知識等は、安直なキャラ設定には似合わぬベテランのやる事。

設定年齢16歳?

そんなバカな。こんな芸当、そんじょそこらのオタクが見様見真似でできる事ではない。

バーチャルアイドルならば複数人で中身をやっている可能性もあるが、

ライブ配信で視聴者からの質問にリアルタイムで答える速度を見ている限り、アドバイザーは居ないだろう。

となれば、成人済みの大人が演じているはずだ。

ガンプラを宝石色に塗装する技術も見事。

キラリと光を反射しすぎて写真が撮りづらいだとか言いながらも、

その撮影技術も高い。

ああ、確かにこれは人気がでるはずだ。

声も良いから、バーチャルアイドル映えもする。

そう、このどこかで、つい最近聞いた声。

そして、ジュエルカラーにガンプラを塗装する趣向。

 

「ジュウリさんが、アマミヤ・ネコトだよね?」

 

時刻は昼過ぎ、ダイズとカザナが通う学校の、中等部だけは早くカリキュラムが終わった日。

モービル特製賄スパゲッティを口に含んだばかりのジュウリは、盛大にむせながら。

 

「な、何のことかしら!? 他人の声似って奴よ!」

「ボク、まだ声の事は言ってないよ」

 

さらに自爆。

皿洗いをしながら笑いを押し殺して堪えているモービル。

なるほど、この人は知っているのか。

ジュウリはナプキンで口を拭いながら、だから不意打ちはやめろとカザナを睨みつけ。

 

「――そうよ、私がアマミヤ・ネコト。

 よくわかったわね」

「気づくよ。ガンプラの塗装の癖、まるっきり同じだし、今時Gレコのキットにあんなに執着する人、少ないよ」

「すっごく反論したいけど、否定はできないわね」

 

バレたものは仕方がない。別に悪い事をしているわけではないのだから隠す理由も無いし。

カザナが確認したい事は、言われずとも承知しているジュウリ。

 

「言っとくけど、私がネコトをやり始めたのはダイズ君と話すようになる前よ。

 いきなりネコトのファンって言われて、びっくりしたんだから」

「え? じゃあダイズさんって、本当に?」

「私がネコトだって、気づいてないわよ。ガチで」

 

気づかないふりをしているわけじゃなかったんだと驚くカザナ。

カザナの家の事は、初対面の数時間で気が付いたのに。

大ファンゆえに、盲目的になっているのだろうか?

そこまで御執心になられると、それはそれで面白くない。

 

「むぅ……髪、伸ばそうかな……」

 

ダイズの好みに近づきたいといういじらしさ。

中学生だなぁ、青春ねぇ。

と甘酸っぱい少女の百面相を鑑賞しながらスパゲッティを堪能したジュウリ。

さて、一言言っておこう。

 

「ダイズ君は私のお気に入りなの。

 そこんとこ、忘れないでもらえる?」

 

ガンプラの基礎やらイロハを叩き込んだのもジュウリ。

夢小説の朗読テクニックもじっくり調教中。

逸材だ、ポッと現れた中学生に掠め取られるのは我慢ならぬ。

そういう事を言うのかと、カザナは負けじと。

 

「出会いが早いからって、所有権を主張するのは違うよ!」

「それは正論だけどね、あんたの物でもないわよ。

 同じ学校に通ってるからって、彼女面はやめてくれる?」

 

テーブルを挟んでバチリと奔る、女と女の視線。

歳の差6つ。3つ年上と3つ年下の少年への気持ちを、お互い譲るつもりは一切無し。

と、その間にトンッと置かれるガラスの器に、プルンと揺れる自家製プティング2つ。

 

「はいそこまでだよ二人とも、ちょっと落ち着いて」

 

ひとまず互いの気持ちを伝えたのなら終了、と。

店内で取っ組み合いが始まったら、モービルは笑顔のまま、容赦なく二人をつまみ出すだろう。

 

「「……いただきます」」

 

にらみ合ったまま席につき、プリンを一口。

おいしさで強制的に頬が緩むから、モービルの料理はずるい。

甘さで険悪ムードも綺麗さっぱり消え去って、

これからどうしようかと話始めた時だった。

レストランの扉が開き、入ってきたのは金髪の女。

自信の塊のような堂々とした立ち居振る舞い。

サングラスを気取って取る姿からは勝気な性格が伺える。

女はもはやここは自宅かのように気さくに。

 

「やっほー、モービル。

 ちょっと近くまで来たから、寄らせてもらったわよ」

 

その人物は、モービルもジュウリも見知った相手。

 

「いらっしゃい。ご飯食べていく?」

「うん、日替わりでよろしく」

「お疲れ様です。今はロケの休憩ですか?」

「そうよ、ロケ弁もあったけど、せっかくならここで食べたいじゃない?」

 

ここに居て当然と応対する二人に対して、カザナは全く状況が理解できなかった。

 

「も、もしかして……」

 

彼女の事はカザナも知っている。だけど、それはあくまでもテレビ越し。

年末の国民的歌合戦も含めて、多数のメディアに登場する人気アイドル。

 

「もしかして、クーミ!?」

 

そうよぉ。と手をひらひらと振って、その反応も慣れた物と対応するのは。

今や国民的アイドルであるクーミこと、『高井 久美(タカイ・クミ)』その人であった。

 

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