ガンプラビルダーズ・フレンズG-Next   作:いすた

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今や地上波・ネット含めてレギュラー番組5本を持つ大人気現役アイドル。

ディープなガンダムオタクとしても有名だが、なぜこのレストランに来たのか、カザナは知らない。

クミ、ジュウリ、カザナの3人で同じテーブル席に着き、

モービル特製ハムエッグ定食をかき込んでいるアイドル様の方から声をかけてきた。

 

「君がガクの言ってた3人のうちの1人ね。

 あたしはタカイ・クミよ。

 モービルとは昔からの付き合いでね」

「は、はじめまして! カザナ・フィーネルベルトです!

 ガンプラ放送局いつも見てます! 大ファンです!」

「ありがと、でも今はプライベートだから、お願いね」

 

仕事の昼休憩でやってきて空腹のため、箸の勢いは止めずに挨拶するクミ。

モービルの料理は10年前から食べ慣れているが、

ここより美味しいレストランは、色々な地方を飛び回るクミも知らない。

それに、食事中にペラペラおしゃべりしていようとマナーがどうの言う者もいないので気楽だ。

 

「ジュウリもがんばってるみたいじゃない。

 っと、え~っと」

「あ、そのコ、私がネコトって知ってます」

「ならいいわね。

 この前の歌ってみた動画も盛況みたいじゃない。

 ウチの事務所も今更バーチャルアイドル事業を立ち上げたところだけど、どう?

 これを機に企業所属になってみない?」

「お誘いは嬉しいですが、企業になるとガンプラ動画を作りづらくなるのでやめておきます」

「アングラ思考ねぇ。

 ま、しばらくは企画は進んでるだろうから、気が向いたらいつでも声をかけなさいよ」

 

ジュウリにアイドルとしての在り方や技法を叩き込んでくれたのがクミ。

忙しい中の集中スパルタに見事耐え抜き、アマミヤ・ネコトが作り出された。

いわば、ネコトの育て親にして師匠と言える。

カザナは気になる、どうしてあのアイドルのクーミが、二人と密接な関係なのか。

モービルの友人、と一言で済ませるにはその関係への興味は尽きない。

 

「クミさんとモービルさんはご友人という事ですけど、どういう形で?」

「あたしとモービルで、ガンプラチームを組んでるのよ。

 チーム・フレンズって言うんだけどね」

「えぇ!? あ、あのチーム・フレンズのメンバーに、モービルさんが!?」

「あら知ってるの? あたし達が目立ってた時期となると、カザナは幼稚園ぐらいよね?」

「確かにそうですけど。

 ガンプラの事を調べれば、フレンズの名前が目につかないはずがないよ!」

 

年代的にはカザナも実際に目の当たりにする機会はなかったが、その名は今も語り継がれている。

当時、6人の少年少女が色々な大会で大暴れをし、大きな話題になったそうだ。

そのメンバーの1人がクミだとは様々なメディアで誇らしげに語っていたので知っているが。

残り5人の中に、このレストランの店長が名を連ねているなんて。

と、なぜかジュウリが得意気に胸を張って。

 

「そうよ、ちなみにモービル店長の奥さんのユリカ様も、

 チーム・フレンズのメンバーなんだから」

 

一体、このレストランはなんだというのか。

工房のショーケースに並ぶガンプラの著名人の多さにも驚かされた。

理解が追い付かない、少し待ってと頭を抱えだしたカザナはひとまず置いておいて。

クミは別の話があると切り出す。

 

「ところでジュウリ。最近ガンプラバトルで変な事なかった?」

「変な事、ですか?」

「そ、例えば、開始前のステージ設定が、バトルを始めたら途端に変わった、とか」

 

あっただろうか? そういえばあった。

ダイズが初めてガンプラバトルをした際、

フリールームのプライペートロックが外れてしまっていた。

初心者狩りの連中が乱入してきたとクミに伝えると、それは重大情報とペンとメモを取り出し。

 

「PODのシステム担当の人が言ってたんだけど、

 最近バトルシステムのバグが増えてきたらしくてね。

 原因究明に開発チームが動いてるけど難航してるらしいのよ。

 今は少しでも情報が欲しいから、

 機会があったら情報収集をってお願いされてね」

 

起った日や時間を手帳にメモしていくクミ。

相変わらず顔が広い。

開発者とも交流があるのだからこのアイドル様は。

ガンプラ業界に無くてはならぬ一人で、毎日右往左往で大忙し。

左手の薬指に指輪こそ煌めいているが、結婚式を挙げる暇もないとボヤきもする。

旦那のほうも旦那で忙しく、

それでも無理をしてクミの空いた時間に合わせてくれるので不満はないが。

やはり女子。”そういう話題”は定期的に欲しいというもの。

 

「それでぇジュウリ。堅物のアンタが気に入った男の子の話、聞かせてよ」

「……うすうす、それが目的なんじゃないかなとは思っていましたよ」

「そっちのカザナちゃんも、お熱なんだって?」

「ふぇ!? いや、あの、ダイズさんは……その」

「カザナ、クミさん、ダイズ君って言ってないから」

 

さっきジュウリがされた事を自分が食らっているカザナ。

さて、現状主導権はクミにある。

モービルは仕込みに集中していて助力は願えそうにもないし。

そもそもこの状態のクミを止められる人物は、この世界に居るはずもないかと、降参。

 

「ダイズ君は。まぁ、一言で言うなら”天才”ですね」

「へぇ? ジュウリが一番嫌いな言葉じゃない」

「そうとしか言えないんですよ。

 先週ガンプラをはじめたばかりなのに、恐ろしい速度で強くなってる。

 きっと、一つの行動毎に凡人では考えられない思考を巡らせているから。

 頭の回転が、不気味なぐらいに速いんです。

 しかも本人の性格がどちらかというとリアリストで、

 できない事の割り切りと、できる事の昇華が冷徹なぐらいに的確で、

 なんていうか、『独裁者になる血筋の者』って、

 そういうのを、見せつけられています」

「慈恵の名は私も知ってるから、最初に聞いた時はびっくりしたわよ。

 まさかあの家じゃないでしょと思っていたのに、嫡男っていうんだから。

 モービルも、とんでもない上客を引き入れたって」

 

もっとも、モービルからすれば家の名などどうでもいい話だろうが。

カザナの方はどう見ているのかと、目配せするクミ。

 

「ダイズさんの天才性、ボクもそう思います。

 それに、多分あの人はその自覚がないんです。

 昔、テーブルゲームをした時に相手が本気を出してくれないってグチをこぼしていたけれど、

 半分ぐらいは本当に勝っていたんだろうなって。

 あの人の”学ぶ”という本能は、理解の範疇を超えてるよ」

「あ~。学校の方も?」

「入学前から、ずっと主席」

 

それはジュウリも初耳だったので、そこまであるんかい、うへぇと声が零れた。

おまけに年頃の少年が一人暮らしでも問題を起こさぬ品行方正。

恰好がかぶいているだけで、全てが完璧。

聞けば聞くほどクミは思う。

 

「ジュウリが絶対に嫌いなタイプじゃない。

 どうしたのよ一体?」

 

親の七光りを飛び越えた、天才の血統。

ジュウリの性格を良く知るクミは、そんな相手を煙たがりこそすれ、気に入るとは到底思えない。

その理由は、憎らし気にカザナが口を開き。

 

「ダイズさん、ネコトの大ファンなんだって」

 

ふん、おもしろくない、とそっぽを向いて。

なんとも言えぬ恥ずかしさに、黙り込むジュウリを見て豪快な笑いをあげるクミ。

 

「あははははは! そりゃまたとんでもない縁じゃない!

 ファンは大事にしなきゃだめよ、うん」

 

予想外すぎた理由にひとしきり笑い。

はぁと一息ついてから。

 

「いや~、噂のダイズ君に会ってみたいわね。

 でも、今日は学校か。

 さすがに学校の終わりまでは居られないから、残念ね」

 

噂の王子様に、是非にでも会っておかないと。

近いうちに本当に会いに来そうで、その時に余計な事をされないか気が気でならないジュウリ。

この人を止められないから、よりタチが悪い。

悪い人ではない、恩人として尊敬もしているが、

それとこれとは話が別だ。

 

「まぁ、ジュウリもカザナも殺し合わない程度に取り合いしなさいよ。

 ああでも、あの家なら二人ぐらい奥さん抱えててもいいんじゃない?」

「「クミさん!!」」

「ごめんごめん、半分は冗談よ」

 

半分は本気かい。

そろそろ辟易してくるジュウリとカザナ。

忙しい身分なのだから、もう料理も食べ終わったし、さぁ仕事へお戻りください。

次の一言は帰ると言って欲しい、祈る二人の願い虚しく。

 

「さて、まだまだゆっくりできるしぃ」

 

まだ居るのか。

表情は笑顔だが、心の底で舌打ちする二人。

その心を察してか、クミはニヤリと笑いながら。

 

「それじゃせっかくだし、あんた達二人の実力、ちょっと見せてもらおうかしら」

 

カバンから取り出す桜色のガンプラ。

この店にやってきた本当の目的はこっちかと、今理解した二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンプラバトルも久しぶり、というわけでもない。

クミにとって、ガンプラはどんなに仕事が忙しくとも時間を割く価値がある。

その想いがあるから、ガンプラに関するイベントや番組でも、クミ以上の逸材は居ない。

今日、クミが持ってきたガンプラは、アニメ機動戦士Zガンダムに登場するラスボス、ジ・O(オ)。

最近完成したクミの新しい機体には、

原典のジ・Oには搭載されていない背中の大きなコンテナ2つと、ロケットブースターが装備されている。

機体のデザインは昔から変わらぬピンクにフリルとフラワーのデコレーション。

クミが今持てる技術の全てを注ぎ込んで作り上げた傑作ガンプラ。

 

「『ジ・Oマルス』、行くわよ!」

 

カタパルトから発進する、ジ・Oマルス。

着地した場所は、砂と岩が剥き出しの地。

バトルステージ、月面都市グラナダ周辺。

重力は地球の6分の1、歩くだけでフワフワとした独特の感触のある、月の表面ステージ。

出撃する味方は無し、こちらの戦力はクミのジ・Oマルスのみ。

対するは、近づいてくる光点2つ。

1対2。クミが「2人まとめて掛かってきなさい」と啖呵を切って成立したマッチ。

ジュウリのダハックと、カザナのバスターガンダムXYZ。

二人とも年下だが、ガンプラの仕上がりは遠目にも良さがわかるほど。

ジュウリの技術は知っているのでともかく、カザナのバスターガンダムXYZは年端に見合わぬ卓越した技量が伺え、

AFV、実在兵器風のカラーリングとチョイスも渋い。

バトルの腕はいま一つらしいが、あのガンプラのスペックは脅威となろう。

ふと、チーム・フレンズの最年少にして智将の友を思い出し、より油断などせぬ。

敵の性能は、格闘戦においては無敵のダハックに、

ただでさえ長射程に強いバスターガンダムを思いきり射撃に振り切った射撃特化機。

相性は抜群。この2機が組む限り、死角はないだろう。

状況はクミとジ・Oマルスの圧倒的不利と言えるが。

 

「まぁ、いいハンデね」

 

自惚れでも過信でもない、ただの事実とひとりごちる。

距離が近づき、そろそろバスターガンダムXYZの射程に入る手前。

 

「じゃあ、始めましょうか!」

 

ジ・Oマルスの背部コンテナ2つが分離し、宙を飛ぶ。

コンテナの名は『マザー・ファンネル』。

アニメ機動戦士ZZガンダムに登場したMSゲーマルクだけが持つ唯一武装。

操縦者の意のままに動く遠隔操作砲台ビット兵器の中でも特殊なもので、

その最大の特徴は。

 

「行きなさい、『チルド・ファンネル』!」

 

親機たるマザー・ファンネルから放たれるチルド・ファンネルは全部で16基。

通常のビット兵器では届かぬ距離までマザー・ファンネルが飛び、

そこから射出されるチルド・ファンネルが、

ジ・OマルスがバスターガンダムXYZの射程内に入る前に攻撃を仕掛ける。

ビット兵器による一方的な攻撃作戦。

ビット1基当たりの攻撃力は低くとも数が多すぎる、無視できるほど火力ではない。

ダハックとバスターガンダムXYZは一旦足を止めて迎撃に。

ダハックはビーム・バリアを展開し、足の遅いバスターガンダムXYZの守りに入った。

チルド・ファンネルのエネルギー切れまで凌ぐつもりだろうが、

エネルギーが切れかけたチルド・ファンネルはすぐさまマザー・ファンネルへと戻してエネルギー充填。

その間は別のチルド・ファンネルで攻撃を継続してローテーションを行う。

マザー・ファンネル自身にジェネレーターが内蔵されているため、実質エネルギー切れはありえない。

マザー、チルド、全18基のファンネルは2機の敵を蹂躙し続ける。

 

「どうでるかしら? 二人とも」

 

まずは小手調べと、

安全圏から高見の見物と洒落込むクミだった。

 

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