ガンプラビルダーズ・フレンズG-Next   作:いすた

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第二話「ガーネット・ダハック」

カケヒ・ジュウリの朝は早い。

朝6時に起床し、眠気覚ましのコーヒーを煎れながら、

動画配信サービスにアップロードした自分の動画の再生数やコメントを確認する。

 

「ん、やっぱりボカロの人気曲は再生数伸びるわね」

 

練習に練習を重ねた渾身の歌ってみた動画は見事、

初週再生回数、過去最高を記録。

このままいけば、累計再生数も記録更新で間違いないだろう。

パソコンのモニターに映る、ネコミミ姿の自分の分身の人気はうなぎ登り。

広告収入もおひねりチャットもしっかり頂き、

その恩恵として、先週よりグレードを2つあげたコーヒーを堪能するジュウリ。

いい香りだ、味わいも深さもパワーアップ。

アムロとハヤトぐらい違う、やはり素材は大事。

などとガンダムオタクにしかわからぬ例えを脳裏に浮かべつつ、

動画についたコメントを確認していると。

 

「ネコトはガンプラなんてやめて、歌ってみたとゲーム実況に絞ればいいのに」

 

また来た。ここのところ動画を投稿するといつもついてくるこのコメント。

コメントツリーは賛否両論。

いや、こんなコメントに賛成しないでほしいのだけど。

悲しいかな、いわゆる”オワコン”を見下して精神的優越感に浸ろうとする者は少なくはない。

勝てる相手に追い打ちをかけて悦に浸る、なんと人間らしいのか。

インターネットの世界は人間のこういう暗部を浮き彫りにするため、

対象となった者はストレスを溜めがちだ。

ジュウリはコメント欄を閉じる。

この手の事柄に関わると面倒になるとわかっているぐらいには、

インターネットに精通しているジュウリは、モニターにむかってあっかんべぇをしながら。

 

「い~や」

 

当てつけにまた新しいガンプラを作ってやろうと決めて、コーヒーを飲み干す。

身だしなみを整えて、自宅であるアパートを出るジュウリ。

時刻は朝7時。平日ならば人も車もまばらな道も、

今日のような休日となれば、人通りはほとんどない。

アパートから歩いて15分。

アルバイト先であるレストラン・フレンズに到着。

ここで雇ってもらうようになって、もう3か月になる。

ガンプラ界隈では有名人の夫婦がひっそりと営む家庭料理専門レストラン。

テレビ取材お断り、広告も宣伝もしない。

が、しかし来客は非常に多く。

休日のピークタイムともなればそれなりに行列が形成される。

知る人は知って何度も来たくなる名店だ。

今日も忙しくなりそうだと気合を入れて扉をくぐる。

 

「おはようございます、モービル店長!」

「おはよう、ジュウリさん」

 

歳不相応の少年みたいな笑顔で、キッチンで仕込みを続けながら迎えてくれるモービル。

常連客の中には彼目当ての女性客も多く、

女子高生からラブレターをもらっている所も、この3か月で2度も目撃している。

余談だが、その時に奥さんに見られて、色々と大変だった。

ジュウリが出勤する時間にあわせてテーブルの上に用意されているのは、白米、焼鮭、味噌汁、卵焼きの定番朝食セット。

 

「今日は良い鮭が手に入ったんだ。おいしいよ」

「わぁ! いつもいつも、ありがとうございます!」

 

天才料理人モービルの賄朝食。

もうこれ一食だけで丸一日働いても構わない絶品料理。

それが休日のアルバイトでは、朝昼晩の3食付き!

この出会いに感謝します神様、信じてなんていないけど。

しかし食の神は今まさに目の前に顕現しており。

今この場は、神のおわす神聖なミサに等しき聖域。

頂きますと箸をとって鮭の切り身に伸ばした、時だった。

 

「うわあああああああああああ!!!」

 

奇怪な雄たけびと同時に、レストランの扉をバンを開ける人影がひとつ。

190を超える身長に、強面を絶望色に染めた表情をする少年。

食べる直前の大きく口を開けたまま呆気に取られているジュウリに駆け寄る少年、

ジケイ・ダイズは手の中のギャプランを突きつけ。

 

「姉ちゃん姉ちゃん! ギャプランが壊れたぁぁぁ!!」

 

ガンプラを作った事があるものならば、いくらでも経験した事がある関節の接続部折れ。

こめかみを引くつかせながら、美味なる鮭の切り身を口にしながらジュウリだ。

 

「うっさいわね、朝から」

「いや、だって! 変形させてたら急にボキってさぁ!!」

「あとで直してあげるから、ちょっと待ってて」

「直せるのか!?」

「直せるわよ」

 

神聖なる朝食が台無しだから、静かにしてくれ。

昨日出来たばかりの年下の友人に呆れた視線を送りながらも、頼られてまんざらでもなさそうなジュウリ。

モービルはその向かいの席にジュウリと同じメニューを並べながら。

 

「ダイズ君おはよう。朝食は食べた?」

「っとすみません、おはようございますモービルさん!

 朝飯はまだっすけど」

「じゃあ、一緒に食べようか?」

「いいっすか!? ゴチになります!!」

 

ああ、騒がしい。

けど、こんな朝も久しぶりにはいいかもしれない。

そうジュウリにとっては、”懐かしさ”を覚える、騒がしい朝だった。

 

 

 

 

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