~~~~~~side「セシリア」
「くっ……どういう、ことですの!?」
戦意を滾らせながら、挑んだのはいいものの。
わたくしと箒さんは、漸くサイレントゼフィルスと対峙して尚、苦戦を強いられていた。
いや、これは苦戦、というのには少し違う、気も……
箒さんの怒涛の近接攻撃のラッシュと、わたくしの後方からの援護射撃、そして
これらにより、今のところ相手に一切反撃は許していない。が……
「きゃぅん!?」
「にゃはゎうっ!?」
「ぴぃっ!?」
こちらも一切攻撃が『当てられない』。
どんなに飽和攻撃を仕掛けても僅かでも綻びがあれば、そこからすり抜けるように避け、物理的に避けられない攻撃を仕掛ければ、6基のシールドビッドを的確に操って防御してくる。
それでいて搭乗者の動きは決して熟練のそれという訳でなく、寧ろ一学期の初期の一夏さんですら上級者に見えてくるような、最近ISを扱い始めたような素人ですら、もう少しマシな動きをするだろうっていうくらい傍目は酷いもので。
攻撃を受けるたびに必死に避けたり防ぎつつ、奇妙な悲鳴をあげるので、どうも調子が狂う。
でも今まで仕掛けてきた攻勢は、決して素人にまぐれで対応できるものじゃなかった。この何かが絶妙に嚙み合わないような、時間が経つほど何かを履き違えているような、先程から感じる齟齬の正体は、一体……?
「『目』だ」
前衛を一度ナイトビットに任せ、一時休息と敵の観察のために下がってきた箒さんが、そんなわたくしの疑問に心底忌々しそうに答える。
「目、ですの……?」
「ああ。武の才は一切ないのに、運動神経は驚くほどいいというのもあるが……何より異常に目がいい。いや、観の目に優れているというべきか……あの女、顔を隠しているから確証はないが、恐らく私の剣はおろか、お前の射撃やあの人型のビットの光線さえ、『目で追って』いるぞ」
「なっ……!」
『……認めたくはないが。その
サイレントゼフィルスに一方的に攻撃を加えているアーサーの声が、プライベートチャンネルから響いてきて箒さんの言葉を肯定する。
ナイトビットを展開していて尚この戦況。
私が単一仕様能力を維持できなくなれば、敵に余裕が生じ再度反攻に出てくる。仮にそうなった場合、簪さんなしで敵の偏光射撃に対抗できる自信がない。
なにせ、ライトコートがあれば自分の身は守れるし、何なら仲間も守れるはずと高を括ってあの様だった。
……つくづく、自分の無力さが嫌になる。けど、今更それを嘆いたところで敵は待ってくれも手を抜いてくれもしない。単一仕様能力を展開できている内に倒さなくては、けれどどうすれば……
「なにかしらの手段で動きを制限し……目がいいだけでは回避できない一撃を見舞う。それしかないだろうな」
「回避できない攻撃……この場合は、広域殲滅兵装ということになりますわね。箒さんには、何か手が?」
「いや……
「あるには、あるのですが……溜めが必要になりますし、その間はわたくしもナイトビットも動けなくなります。それに、箒さんが足止めするとなると近接戦闘になりますでしょう? 広範囲攻撃なので恐らく放つ際に巻き込んでしまいますわ」
「では、私が遠距離攻撃で奴を足止めできれば、その隙にそれを当てられるか?」
「箒さんが……? 雨月も空裂も遠距離攻撃にも対応した武装であるのは知っていますが……あれはE兵器ではありませんでしたか? わたくしやナイトビットの攻撃が防がれているように、それではあのシールドビットは……」
「わかっている。だが、修練を経て新しい力に目覚めたのはお前だけではないということだ……とはいえ、一度だけ使用できる単一仕様能力を宛てにした一発限りの花火のようなものだ。足止めはできると思うが、二度目はない。私の『手』に賭けるのであれば、セシリアには一度で確実に決めて欲しい」
「……畏まりました。このままでは埒が明きませんし、箒さんの手に賭けるしかなさそうですわね。お願いできますか?」
「承った……来い!」
「えっ……!?」
箒さんの提案に頷いたのはいいものの、次の瞬間雨月と空裂を呼び出したかと思うといきなりその両方を放り投げる箒さんに、思わず目を見開く。
……これが毎回双天牙月をコールしては雑に放り投げる鈴さんならば、こちらも驚かなかった。
けれど箒さんは更識生徒会長との特訓によって再び紅椿を部分展開できるようになって以降、ISには武装も含め自己修復機能があるため特に必要もないのに、時折ピットで二刀の手入れをしているのを見るようになったので、己の武器はかなり大事にする方だという印象があったのだが……
そんな疑問は、箒さんが投げた二刀が空中で回転しながら消えていったことで氷解した。
いや、消えたのではなく『解けた』。空中で分解され、いつか見た絢爛舞踏で発現する金色の無数の粒子のようなものに変わった二刀は、一部が再び箒さんの手元に戻って形を取り始める。
「展開装甲派生兵装、穿弓『
そうしてやがて出来上がったのは、深紅の和弓。
手元に現れたそれを、箒さんは殆ど使ったことがないという事実を感じさせない程自然な動きで引き絞る。
すると周囲にまだ散っている、金色の粒子が集まってきて一本の矢を形作った。
自身の言葉に反するその熟練者のような一連の動きに、わたくしは思わず箒さんに声をかける。
「箒さんは、弓術の心得がありますの?」
「一時期は時間が余ったので、一夏が言うところの齧る程度にはやってはいたんだが……IS学園にくる少し前に、その、少し失敗してな。それからはあまり触っていないので、自信があるかと問われると微妙なところだ」
「成程……その、失敗とは?」
「…………とても言いづらいんだが。一度、胸当てをつけずに射ろうとしたことがあって……その、急に大きくなり始めていた時期だったから、当たってしまって……それで痛い目を見て、苦手になってしまったのだ……」
俯き耳を真っ赤にしながら返された、箒さんらしからぬ迂遠な言い回しに、最初わたくしは意味がわからず首を傾げたのものの。
今こそ装甲に覆われてわからないが、その下に隠れている、箒さんがお持ちの立派なものを思い出し、すぐにハッとなる。
予想の斜め上の答えに、わたくしも思わず顔がカァッと熱くなるのを感じた。同時にかつて起こったであろうその悲劇を想像し、顔を顰めてしまう。
そ、それは痛い……!
「? ……あっ! そ、それは、その……嫌なことを聞いてしまって申し訳ございませんの」
「いや、いいんだ……と、とにかくこの装備であれば、同じことは繰り返すまい。これで奴を釘付けにしてみせる。だから時が来たら大技を頼む……!」
箒さんが、その言葉を口にした直後。
箒さんの弓の弦を引いていた右腕が、信じられないような速度で動いた。
「っ!」
そしてまるで流れ星の機関砲のようにサイレントゼフィルスに殺到していく金色の光。
た、確かに凄まじいが……見る限り、これもE兵器。これ、では……
頭の中で、つい失望が過る……あのサイレントゼフィルスが持つシールドビットは、どうやらナイトビットのライトコート……というより、わたくしが一学期の福音戦で使用したパッケージ『
これが、武装のほぼ全てがE兵装のブルーティアーズにとって相性が最悪だった。箒さんの雨月や空裂によるEショットや光波も通用せず、ここまで戦況が硬直する最大の原因になっていた。
実際敵もそれはわかっているのか、迫る金色の流星群に対しシールドビットを展開。先程までのように受け止めようとし――――
「……え?」
「ほぇ……?」
――――シールドビットの一基が金の光に貫かれ、火を噴きながら轟沈した。
それを合図に、二基目、三基目と、貫かれたり引き裂かれたりして次々と墜ちていく。
「ど、どういうことですの!? あれは、E兵器では……?」
どう見てもエネルギーによる攻撃なのに、シールドビットのシールドが機能していないことに疑問に思っていると、間一髪で巻き込まれるところだったナイトビットが泡を食って退散、わたくしの横に降り立った。
『うわぁ……凄いなあれ。展開装甲の機能で分離した装甲の金属粒子を、SEでコーディングして亜光速で『弾き飛ばしてる』……つまり、あの見た目で物理攻撃だ。私のライトコートでも防げないから、安易に突撃させないでくれよ?』
「ま、またあの方は……とんでもない武装を発生させましたわね……」
「ひょえええぇぇぇ! ぴええぇぇぇぇぇ!!」
アーサーによる種明かしの間にも、既にサイレントゼフィルスのシールドビットは全損。
防御手段がなくなったサイレントゼフィルスは、搭乗者が奇声をあげながら必死に金色の矢の嵐を避けようとするも、完全に躱しきれず装甲が虫食いだらけになりながら弾け飛んでいく。
……あら? これ、わたくしが止めを刺すまでもなく倒してしまうんじゃ……
『そう簡単にはいかないみたいだ。周りをご覧?』
思わずそんなことを思ってしまったわたくしの考えを否定するように、ナイトビットが指を立てて注意を促してくる。
「……!?」
箒さんの周囲の金色の光が、減っていっている……?
そうか、あの光がSEコーディングされている紅椿の装甲の一部なら、この周囲を漂っているのが穿千の矢そのもの。
これが全てなくなってしまえば、弾がなくなり戦況はまた振り出しに戻ってしまう……!
『いや、あの厄介なシールドビットを除去してくれたから、こうなればもし彼女の矢が尽きても、後は貴女と私が並んでつるべ撃ちするだけでサイレントゼフィルスは沈むだろう。けれど、主はそれでいいのかい?』
「……いいえ。箒さんは、自分が敵の足止めしている内に止めの一撃を撃ち込めと仰りました。ならば、そのようにするだけですわ。アーサー! 『キングスオーダー』を発令します! 貴方の剣を抜きなさい!」
『拝命した。我が主……!』
わたくしの指令を受けて、ナイトビットが両手で剣を翳すような構えを取る。
すると青い光がナイトビットの手元に集まり、やがて光の剣を形作った。
光の剣は周囲から何かを吸い込んでいるかのように周囲に風を巻き起こし、その風に揺られるように紅椿やサイレントゼフィルスのシールドが一時的に揺らぎ、ノイズがかかる。
『
先程のCBFでのフォルテ先輩との戦いで使用しようとした、第二形態に昇華したブルーティアーズの切り札。
あの時フォルテ先輩のISはほぼ行動不能状態に陥っていたが、CBFルールによる最大量の関係と、彼女自身のSEアドバンテージの維持を是とする戦い方のお陰でSEはまだかなり残っている状態だった。
そのまま追撃してもよいが、それだと嬲り殺しのようになってしまう。サラ先輩のことがあったとはいえ、自分からそのような真似をするのは気が引けた。
そこでアーサーが、あの翅を失った芋虫を一撃で沈める方法があると、これの使用を提案してきたのだ……結果は、あの様だったのだけど。
能力としては、ナイトビットが手に発生させたEブレードから、『
それに加え、この能力の特性として剣を展開した時点で、周囲に展開しているISがある場合、そのISが常時展開しているEシールドからSEを強制的に『徴収』するというものがある。
これにより王命剣を展開しそれで攻撃するまでの間、SEを徴収されたISはシールドの強度が落ちるため、ただでさえ強力な攻撃を、防御力が下がった状態の相手に叩き込むことができる。
流石に当たったISを問答無用で戦闘不能状態に追い込む零落白夜には及ばないかもしれないが、それでも一撃必殺に匹敵するダメージを敵に与えられる大技。
箒さんの穿千で弱っている今のサイレントゼフィルスならば、必ず仕留められる筈……!
「これで……終わりですわ!」
ナイトビットが王命剣を振り抜く。青と翡翠色が入り混じった光の刃が一瞬で巨大化し、横殴りにサイレントゼフィルスに叩きつけられる。
「あっ……」
未だ金の矢の流星の嵐に晒されるサイレントゼフィルスに、最早逃げ場はなく。
質量が伴っていそうな程の迫力を持つ、光の刃が敵を押し潰し――――
~~~~~~side「???」
『はぁ~い、ドゥドゥ。そっちは大変そうねぇ』
『す、す、スコールさぁん! 助けてくださいよぉ! ぼぼ、ぼくにはやっぱり無理なだったんですよぉ! ね、姉さまが、こ、このままじゃ、このままじゃぁ……!』
『う~ん……そうねぇ。ティーちゃんがやられちゃうのは私達も困るから、それはいいんだけど。ねえ、ドゥドゥ。あなた、本当に自分ができることをしたのかしら?』
『で、できること?』
『無理って、言葉にするだけなら簡単じゃない? だから、本来できることすらやらずにすぐに無理なんて言葉を口にする子は、周りからどんどん信用されなくなる……らしいわよ? 知らないけど。『無理』なんて、私からすれば縁遠い言葉だったからね』
『で、でも、ぼ、ぼぼぼくに何をしろって……』
『――――とかは?』
『え? ぼくが、それを……?』
『簡単じゃない? 何せ相手は動いてないんだし……ちょっとくらいなら、ティーちゃんから制御権奪うくらいできるでしょ?』
『で、でも、そんな……!』
『そ。なら、好きにしなさい。けど……現状、最も『箱』に近いティーちゃんの力でその程度の窮地を何とかできないなら、貴方の親の評価はどうなるかしらね?』
『……!?』
『私に言わせれば……お茶会の道具すら満足に用意できないお茶汲みなんて要らないわ。そうね……なら精々、主賓に供する最初の
『!? う、う、うわああぁぁぁぁぁぁ!!!』
『……! えっ、ドゥくん!?』
『……あ~あ、
『あっ……待っ……!』
『ハーイ、ティーちゃん! 調子どう?』
『す、スー、さん。翼、あの、今の……つ、翼っ……!』
『あー、人を撃っちゃった? いや……殺しちゃったか。イケない子ね。『人モドキ』のくせに』
『あ、あ……いや、いやああああああああぁぁぁぁぁぁ!?』
『は……? お、お、ま、え……スコール……スコールゥゥゥゥゥ!!!』
『はーい、干渉終了♪ あとはあなたが何とかしなさい、ドゥドゥ。この力があれば、どうとでもなるでしょうから』
『う、姉、さま……ぼくの、せいで……ごめんなさい。ごめんなさいっ……!!』
~~~~~~side「セシリア」
ナイトビットが、
――――あの赤い光が、再び走ったのだ。
「え……!?」
「あ……!?」
最初は自らの危機を察しての、破れかぶれの一刺しかと思った。それは恐らく箒さんも同じだったのか、わたくしたちは自らを襲うであろう一撃に備えて身構えた。
……敵に一撃を許した時点で、結果は変わらなかったのかもしれない。だが、咄嗟に我が身可愛さに走った結果、事態はさらに最悪の方向へと向かってしまった。
赤い光はわたくしたちの頭上を飛び越し、後方で搭乗者保護状態のISを纏ったままの簪さんに、突き刺さっていた。
「っ!? 簪っ……!?」
あまりの事態に箒さんは弓を射っていた手を止め、簪さんのところへ向かう。
わたくしもそれに倣いたい気持ちをなんとか抑えつけ、既に戦えない者へ手を出すような者に対する怒りを込めて敵が王命剣に薙ぎ払われるのを見届ける。しかし――――
「あ、あ……いや、いやああああああああぁぁぁぁぁぁ!?」
「なっ……!?」
青と翡翠色の光の剣は、敵の搭乗者の逼迫した絶叫が響くと同時に『圧し折られた』。
光は敵に届く直前で斜め上に『折れ』、空に吸い込まれて消えていく。
『こちらの光子干渉を上書きされた……? 馬鹿な……!?』
アーサーの呆然とした声が空虚に響く。
敵は無茶な光子干渉を行ったせいか、頭を抱えて苦しんでいるように見えた。が、直後一瞬だけ機体が青い炎に覆われ、それが消えると今度は機体全体をスキャンするように金色の光が走る。
これ、って……
『この光……黎明、の……? 条蝶は目覚めてない、なのにこのエネルギーの反応は……何をしたっ!? サイレントゼフィルスに……条蝶に何をしたんだっ……!?』
常に余裕のある言動をするアーサーらしからぬ、激高した声が耳を打つ。
その声でなんとか立て直したわたくしは、今の状況を整理しなおし、慌てて箒さんと簪さんの方へ振り向いた。
「箒さん! 簪さんは!?」
「……この状態でも絶対防御はしっかり働いてくれたようだ。少なくとも、肉体的な損傷、は……」
簪さんの状態を口にしていた箒さんだが、やがて呆然としたようにわたくしの方を見る。
……いいえ。彼女の視線の向く先は、わたくしの後ろ……?
無性に嫌な気配を感じて振り返る。
サイレントゼフィルスの搭乗者は、相変わらず苦しんでいる様子のまま。先程走った機体の変化も既に鳴りを潜めているが、未だ機体の所々を激しい虹色のノイズが覆っている。
一見、ISに急になにかしらの不具合が生じたようにも見える。
だが――――
その悉くが破壊され、撃墜されて海面に浮かんでいる、サイレントゼフィルスのシールドビット。
それに金色の亀裂が走り、その中から――――虹色の光の翅を持つ蝶が、次々と『孵って』いた。
『――――上位権限により
明らかに先ほどまでの搭乗者のものとは違う、機械音声かと思うような冷めた少年の声がサイレントゼフィルスより発せられ。俯いたまま頭を抱えている、サイレントゼフィルスの搭乗者頭上のハイパーセンサーには、翼の先端に指輪のようなものを引っ掛けて差し出している鳥のシンボルが、大きく浮かび上がっていた。
。
その言葉のとても穏便とは言えない内容に、わたくしはスターライト咄嗟に敵IS本体に撃ち込んだ。
青いレーザーは敵のフィンアーマーの一部を射貫き、破壊したかに見えた。が――――
「っ!?」
破壊され飛び散った敵ISの破片は、空中で虹色のノイズに包まれた後、無数の虹色の翅の蝶に変化。
蝶たちはサイレントゼフィルスの失われた装甲部分に終結すると、再びノイズ化。フィンアーマーが、瞬く間に修復されていく。
あまりに幻想的かつ現実とは思えない光景に一瞬放心しかけるも、即座に気を取り直す。敵の力の正体がなんであれ、これでは埒が明かない。
この上は心苦しいが、今も苦しんでいる搭乗者を直接狙うしかないと覚悟を決めるも――――
『……ごめんなさい』
遅かった……!
先程まで
それを認識した瞬間には周囲を虹色の光が空間を埋めつくすように駆け巡り、わたくしの後ろにいた紅椿が、バラバラになりながら吹き飛んでいた。
簪さんを守ろうとしたのだろう。箒さんは剣も抜かずに両手を広げた体勢のまま、仰向けに倒れていく。
「ほ、箒さ――――」
『ダメだ! 逃げろ、主――――!?』
『ごめんなさい』
再び虹色の光が走った。
敵は一切、搭乗者を狙っていない。けれど纏ったブルーティアーズをズタズタに引き裂かれるのは、身を切られるのと同じような痛みをわたくしに与えてくる。
『セシリアっ――――!』
『ごめんなさい……』
薄れていく意識の中。
アーサーの後悔するような慟哭と、あの冷たい機械音声のような声が嘘のような、心の底から申し訳なさそうな少年の声が。
いつまでも、焼き付いたように頭の中で反響していた。
~~~~~~side「???」
「…………あっ。あ、あれっ、翼、どうしたん、でしたっけ……?」
『あっ……き、気づき、ましたか。ね、姉さま』
「ドゥ、くん……あ、ああああぁぁぁぁぁ……つ、翼、翼は、ひ、人を……!」
『お、落ち着いてください! あの時、ISを操作してあの人を撃ったのはぼくです! 姉さまじゃ、ないです!』
「だ、だけど……あ、あの人、たちは……?」
『最初に倒れてた人を撃った時の、れ、レーザーは最小に威力を絞りましたし、あそこの二人もISの内部センサーにレーザーで干渉し、ダメージレベルを誤認させて搭乗者保護モードに入らせました……と、当分は目覚めないと思いますけど、ぜ、絶対に死亡することはない、です』
「そ、そっかぁ……よかったぁ……」
『あ、あの……勝手なことをして、ご、ごめんなさい……』
「ううん。翼……あ、ティーのためにしてくれたん、だよね。ティーこそ、ダメダメなパイロットでごめんなさい」
『そ、そんな! 悪いのはぼくと……す、スコール、あ、あいつが……!』
「うん……ドゥくん。ティー、知ってるの。スーさんとか、亡国機業の人たちが、ホントは良くない人たちだって。みんな、お天気さまが目を醒ませば世界が良くなるって言うけど……ティー、あの人が怖いの……ソラくんも、多分お父さんの夢とは違う道へ行こうとしてる」
『う……そ、それ、は……』
「ねえ、ティーたちのやろうとしてることって……ホントに、正しいのかな……?」
『……ぼくには……ぼくには、わからない、です……』
「そか。そう、だよね。でもいいの。もう決めたから。『あの時』から、これからもずっと」
「――――この答えだけは、風は教えてくれないけれど。それでもお父さんの夢は、ソラくんと翼が繋ぎます」
それは白夜の
かの輝ける星を地に墜とすべく
凶星宿す剣は遍く光輝を併呑する
次回 凶ツ星の剣
第三零落魔剣
死んでくれ、織斑一夏。私が私で在る為に。