~~~~~~side「楯無」
ふと、昔のことを思い出した。
夢を見た訳でもないのにそんなことになるのは、わたしにとっては珍しい。
心当たりは……いっそ、あり過ぎるのが腹立たしい。
――――あの忌々しい赤眼。
当時と見た目は変われど、見覚えのある敵。
人を殺し続けてやせ細った心を圧し折る最後の一押しになった、ある意味
「『カナリアの血』を見ても狼狽えないか。折角、用意したのだが」
その辺りを見透かされたのか、『敵』が感情を感じさせない声で煽りを入れてくる。
そんな筈はない。内心は腸が煮えくり返っている。
唯でさえ、今まで永く憎み続けてきた敵。
加えて先生が全て回収したはずの、『アレ』を持ち出してよりにもよってあの子がいる場所を狙ってくるなんて……!
なのに表面上取り繕えたのは……認めたくはないが、人生の底というものを経験したのが大きいのだろう。
もうあの時と違うと思っていても、わたしの心の奥底にはかつて自分が犯した罪に対する後悔と諦観がこびり付いている。
これ以上何も失いたくないと思う一方で、あれだけ奪ってきたのだから、いつか自分が奪われる側に回っても仕方ないという気持ちが同居している。
だから今のわたしは、もし先程のミサイルがアリーナに直撃してIS学園の皆、虚やあの子まで全員吹き飛んだとしても、泣いたり後悔はするかもしれないが、きっとすぐに割り切れてしまうという嫌な確信があった。
無論。そんなことをさせるつもりはない。
どんなに傲慢で、罪を重なることになったとしても。もう家族ではなくなったとしても。
またあの子を奪われるくらいなら、わたしは死神のままでいい。
「っ……!」
また胸の中心を狙って放たれた敵の攻撃を、蒼流旋の噴射で今度は完全に躱し切る。
敵の攻撃は全く前兆がなくいきなり接近してくる上に、当然のように絶対防御を貫通する。
水の防御があれば防げるかもしれないが、今は『展開できない』。
――――敵の黒翼に包み込まれるようにしてわたしが連れてこられたのは、海上アリーナが見えるIS学園近海。
先程の別の敵のミサイル攻撃が見えたことから、敵の空間を渡る能力によって一緒に飛ばされたのかとも思ったが、直ぐに違うと気が付いた。
恐らく、ここはあの『ISスクール』同様、ある程度現実での事象が反映される、敵ISが展開した量子空間。
ここが現実でない証明としては、先程までは快晴だったはずの空を分厚く覆う、空を埋め尽くさんばかりの黒雲。
そしてなにより――――見渡す限りの海が、真っ白に凍り付いている。ISを展開して尚、恐ろしい程寒い。
「――――ここが私の世界だ、更識楯無。君のISは、ナノマシンによって操る水の防御が要と聞いたが……果たしてこの
「……!!」
やられた……!
わたしのレイディだって、無敵のISって訳じゃない。何かしらの対策を取られることくらい、想定の内だったけど……こんなちゃぶ台返しみたいなやり方で、無力化されるなんて想定できるわけがない。
ミステリアスレイディの能力でも水を氷に変換することはできるが、それでもレイディのアトミックマイクロウェーブ照射による水分子操作は、基本気体か液体の状態の水の操作を想定している。
けど今の気温では、水はそのどちらの状態でも基本存在できない。レイディ自身で水を精製することもできるが、今精製したところでコアやアクアクリスタルから放出された瞬間凍結してしまうだろう。
――――水による防御や攻撃は、実質封じられた。
排水管内の水操作によって操っているラスティ―ネイルも、この環境では十全に力を発揮できない。
必然的に、わたしは
とはいえ……わたしも、仮にも国家代表。そっちの戦い方だって、相応に積んできた自負はある。
普通の相手であれば、早々手古摺ったりはしない、んだけどっ……!
「くっ……!!」
敵はISを部分展開している。
装甲で覆われているのは、申し訳程度の手と足のみ。他は、あの特徴的な大きな黒翼が常に展開しているくらいだ。ISの特徴の一つであるスラスターや
その状態で、実質完全に展開しているレイディの、ジェットランスを駆使した高速戦闘に当然のように対応してくる。
敵ISの性能が並外れている、というのもあるだろうが……何より搭乗者の肉体スペックと反応速度が半端じゃない。
まともにIS搭乗者をしていたら、間違いなく次代戦女神の筆頭候補だっただろう。こちらの突きや払いを弾きすらしない。的確に潜り込んで急所にカウンターを入れようとしてくる。
……考えてみれば当然か。お父さんも流石にあの柳韻さんには及ばないものの、かなり有名なSATだったらしい。そのお父さんを一撃で殺したのが、当時恐らく今の私くらいの歳だったこの女だった。織斑先生のことを考えれば、肉体的にも今が全盛期だろう。
「フッ……!」
「あづっ……!!」
それに厄介なのがあの翼……!
翼竜の翼のような、翼膜のついた細い翼脚は、その簡単に折れてしまいそうな見た目と裏腹に凄まじい膂力を持つ。
並みの砲撃を凌ぐ威力のある蒼流旋によるランスチャージを、片腕で受け止めてしまう程だ。
さっきのも渾身の一撃だったのに、鉤爪であっさり受け止められて蒼流旋ごと投げ飛ばされた。
おまけにその怪力から放たれる一撃は、外しても完全に凍結した海面を抉り、氷の破片を散弾の如く周囲にバラ撒いてくる。
水の防御のない今は対応できず、致命傷こそ貰っていないが、シールドだけでは防御しきれず、装甲のないレイディでは接敵の度に体中切り傷だらけになってしまう。
何より最悪なのが……あの翼に一瞬でも触れると、体の熱という熱を奪われ、全身の血が凍るような苦痛が全身を駆け巡る。一度鉤爪に掴まれた時は全力で抵抗して何とか何を逃れたが、一瞬死を覚悟した……ISによる保護機能があるとはいえ、周囲に立ち込める強烈な冷気によって次第に体が動かなくなってきている。恐らく、もう一度やられてしまったら助からない。
「はぁ、はぁ……!」
でも、この手合いでわかったこともある。
敵はあの空間を渡る力を使うとき、必ずあの黒翼を大きく広げる必要がある。
だからその事前動作さえ見逃さなければ、転移からの急所突きを避けるのはさほど難しくない。
「チッ……!」
「! ……そこっ!」
「ぐっ……!?」
そして……敵は多分、あのISを十全に使いこなせていない。常に部分展開なのも、恐らくそこに理由がある。
敵ISの黒翼は基本搭乗者が操作しているように見えて、偶に搭乗者の意思に反し暴れるような素振りを見せることがある。
先程はその変則的な動きに戸惑って一度鉤爪に捕まってしまったのだが……織斑先生クラスの肉体スペックを持つあの女でも、軽く振るわれるだけで分厚い氷が張った海面を、1メートル以上も軽々と抉るパワーを持つ翼脚に好き勝手に暴れられると、流石に持て余すらしい。翼脚による攻撃後に、何度かバランスを崩していた。
翼脚は、搭乗者の後方に接近したものに対し手当たり次第に攻撃する傾向があるようで……その辺りをちょっと利用して、翼脚の攻撃を敢えて誘発させてから対処、隙ができたところに一撃……というやり方で、こちらも何発か蒼流旋を叩き込んでやった。
ガードこそされてしまっているが、瞬時加速の推力を乗せた一撃は、流石に搭乗者の腕部装甲では受けきれず、敵が吹き飛ぶ。
――――攻略法は見えた、今度こそその腕を貰う……!
再度翼脚を挑発し攻撃を誘発すべく、蒼流旋のスラスターを展開。突撃を図ろうとしたところで……敵が、溜息を吐いた。
「こうなると認める他ないな。元より自分の腕が上等とは思っていないが……IS搭乗者としては、どうやら君の方が明確に上のようだ」
「ふぅん? だったらどうするの? 今から、尻尾を巻いて逃げ帰る?」
「まさか。君も一時期同業だったならわかるだろう? ……標的を前にして、おめおめと逃げ帰る殺し屋はいない」
「……一緒にするな
「ああ……そうだったな
しまった……こんな安易な挑発で感情を乱された……!
そして立て直すのにかかった時間は高くついた。
その間に敵が首を左に傾けると、右肩から不意に漆黒の金属の鱗に覆われた、細長い爬虫類の首が燃え滾るような視線をわたしに向けながら鎌首を擡げ、次の瞬間その咥内から十字の光条が走った。
「っ! レイディッ!」
勘で最早回避は間に合わないことを悟る。
咄嗟にレイディ声をかけると、蒼流旋の中心部分が展開、内部にあるアクアクリスタルから大量の水が溢れ出す。
水は出ていく矢先に一瞬で凍結していくが、その僅かな時間の間に制御を行い壁を生成。水壁ほどの効果は期待できないが、防御を試みる。しかし……
「うあっ……!」
ハイパーセンサーでもって尚視認できないほどの高速で放たれた光弾のような何かが、展開した氷の壁に突き刺さり、立て続けに爆発した。
氷壁はあっさりと砕け散り、わたしは爆裂した氷壁に巻き込まれる形で吹き飛ばされる。
「――――終わりだ」
「っ……!!」
そして敵は、立て直すのを待ってくれなかった。
黒翼の鉤爪で凍結した海面に爪を立て、その異常な怪力によって自身を放り投げさせた。
瞬時加速も斯くやという速度で黒い女が迫る。わたしの心臓めがけて右手を振り翳している。
蒼流旋を駆使すれば、ここからでも悪魔のような敵のあの手を、回避することは叶う。けれど、その先が続かない。敵の搭乗者の動きに併せるように、黒翼が力を引き絞っている。
どの方向に逃げても、あの翼脚の鉤爪による追撃が来る。ダメだ、避け、られ、な――――
走馬灯、というのだろうか。こんな局面で、お爺様の言葉が頭を過る。
――――のう、刀奈よ。わかっておろう? 劣勢をひっくり返す、一番の好機。それはの……
――――うん。わかっているよ、お爺様。こと戦いにおいて、最も
――――敵が、『勝った』と驕った時じゃ。
――――あは。
「!?」
――――敵の突き出された黒い腕を、
敵は即座に異常を悟ったのか、貫通された腕を引き千切るように蛇腹剣から逃れ、攻撃のために引き絞っていた黒翼を咄嗟に自分を隠すように展開。
直後に転移が発生し――――体の血肉も寄越せと言わんばかりに殺到した、無数の白いラスティ―ネイルは、その場で空しく空を切った。
逃げられちゃった。
敵の勘が優れてた……いや、わたしが直前で殺気を隠せなかっただけか。まだまだ甘いなぁ。
「氷の、剣……そうか。まんまと担がれたということか」
後方に転移した敵は、使い物にならなくなった右手をぶら下げながら、自嘲するような呟きを零す。
まぁ……こればかりはわたしも、敵が間抜けだと思う。だって……
「あなた、自分達がわたしをどこに置き去りにしたか、もう忘れたの?」
死の雪原、極寒のシベリア。
この場所同様水が液体で存在できず、より融点の低いお酒が水の代わりになる場所。
当初置き去りにされたわたしはレイディのコアに守られる形で眠っていただけだが、それ以降もあの場所で活動することは何度かあった。
気温が−50 °Cを下回る環境下で、いつくるとも判らない標的を何日も潜伏して待ち続けたこともある。
レイディの水分子操作能力が、気体や液体の水の操作に特化しているというのは本当のことだ。
でもそんな環境での活動が長かったわたしが、固体の水の操作が難しいという弱点を把握していない筈がないし……その弱点をみすみす放置したままなんて本気で思われていたのなら、いくらなんでも舐め過ぎだ。
凍結した海面から持ち上がった、氷で形作られた純白のラスティ―ネイルが、次々と起動していく。
そこそこ時間をかけたが、この一帯の氷は既に掌握した。このまま戦っても、負けることはない、だろうが――――
「……ねぇ。あの男……報復って言ってたわよね? 更識があなた達になにをしたかは知らないし、興味もない。けど、わたしの家族は、あなたたちの報復で死んだ。そうよね?」
――――ああ。もう、我慢できないや。
「なら――――わたしも、報復したって、いいよね? やられたことをやり返して、いいのよね? おまえを殺したって……いいのよねええぇぇぇっ!?」
「……!?」
起動したラスティーネイルが、悉く正気を失ったようにその場で暴れ出す。
それによって分厚い氷が割れ始め……その下から、本来の海が漸く姿を見せ始める。
――――鮮血のように真っ赤に染まった、海面が。
「あなた、わたしのことを随分とボロボロにしてくれたけど……こんな環境を態々用意した割に、鈍いのね。わたしの傷から血が止まってないの、気づかなかった?」
「何……?」
そう。普通こんな低温下、流血なんてあっという間に凍ってしまうし、傷は凍傷になる。後者はISを展開していれば搭乗者保護機能が防いでくれるが、流石に外に流れ出た血までその中には入らない。
なのに、今の今まで、わたしの血だけが液体として流れ続けたのは――――
わたしの血が、青白く光るクリスタルのロザリオの形をした、レイディのコアクリスタルに触れる。
するとその色がコアに染み渡るように、コアクリスタルが赤黒く染まっていく。
――――
「……!?」
やはり敵は、相当勘がいいらしい。
咄嗟に数秒先の危機を感じて、もう一度黒翼を広げて空間を跳ぼうした。
でも、もう遅い。
「
「なっ……!?」
「飛べないでしょ?」
敵の脚部装甲の一部が、海面の赤い水によって一部が融解。
まるでそのまま海面に沈むように『吞まれていく』。
あの赤い水は、わたしの血から精製されたナノマシン、
――――つまりわたしの一部。
あの脚部装甲は、ただ溶けた訳じゃない。最早海そのものと『融合』している。
つまり今、敵があの空間を渡る力を使いたければ、この見渡す限りの赤い海そのものをわたしごと飛ばさないといけない。
敵の黒翼のISも、流石にそこまでの力はないのだろう。
「……水を介し自身のISフレームの解釈を広げ、それに敵を巻き込んで動きを封じる拘束能力か。大したものだが……このやり方だと、君自身も動けまい」
「あら……わかっちゃうか」
そう、だけどわたしという楔によって海を自分の一部にし、それに敵を巻き込んでいる以上。わたしという楔が抜ければ、海はただの海に戻ってしまう。
これは一度発動した以上、互いに一歩もその場から動けなくなる自縄自縛の拘束能力。これだけなら、わたしの力が尽きるまでお互いにらみ合いで終わってしまう。ただ、これだけならば。
「
――――ガギャアアアァァァァァ!?
「!?」
敵IS本体とものと思われる、悍ましい絶叫が響き渡る。
敵の黒翼が、ミチミチと音を立てながら急激に『錆び』始めたからだろう。翼脚が錆を振り払うように暴れるが、一度始まった金属の腐食は止まらない。
「
「!? ぬ、ぐあああぁぁぁっ!?」
海水中から水に吸着する形で抽出した、リン等の可燃物が急激に『酸化』し赤い海面が燃え上がる。
当然その中に取り込まれつつある敵も巻き込まれ、青白い炎に絡まれるように炎上する。
――――ミステリアスレイディの
そして拡大するのは、ナノマシンを含んだ水を自らの一部とする、ISフレームの拡大だけじゃない。
寧ろそちらはおまけ……本命はアトミックマイクロウェーブにより、操れる水という物質の解釈の『拡大』。
朱い雫は――――水というものを構成する元素と、それに含まれている元素。
それらに纏わる化学反応及び核反応を、わたしの望み通り『あらゆる条件を無視して』強制的に発現させる。
「この、程度……!」
……ああ、そうか。
今敵を襲っているのは、水を構成する内の酸素を分離……大量の酸素による『酸化』を強制的に起こすことによって発生している現象。
大抵の場合酸化反応には大なり小なり発熱を伴う。敵はその熱エネルギーを悉く吸収することで、反応を無理矢理鈍化させて抵抗している。
だが無駄だ。いくらエネルギーを吸収できたところで……今敵が相手にしているのは、有史以来どれだけ人類が発展しても、常に持て余し続けた『海』という膨大な資源庫。いかにISの力が強大で規格外だったとしても、単身で抗える筈もない。
更に言えば――――
「――――さて、問題です。今あなたの周りで起きている現象は、水から分離させた
「! ……重、水素……!!」
「だ~いせ~いか~いっ!! ……でも、呆れた。あんな
酸素を抽出し残った水素は、今海中から抽出した重水素と空中で衝突を繰り返している。
朱い雫は核反応すら条件を無視して発生させる。このまま原子そのものが変質するまで大量の重水素を発生させれば――――
「――――わたし、ずっと考えてた。実際に家族の……更識の皆の仇にいざ出くわしたら。どうやって殺してやろうかって」
「くっ……更識、楯無っ……!!」
「でも決めたわ。あなた達、吸血鬼を自称してるんでしょ? なら……
わたしも敵もその場から一歩も動けないまま――――わたし達の間に光が走る。
光は一瞬で周囲の重水素の原子核が持つ、正電荷の反発力に打ち勝って原子核を融合させ――――核融合によって失われた質量が莫大なエネルギーとして放出され、一瞬の間、海上に太陽を生み出す。
太陽は敵が発生させた量子空間を、敵ごと内側から焼き尽くした。
~~~~~~side「???」
――――ああ。死んだのか、私は。
ふと、目覚めるような感覚と共に、現実に立ち返る。
正直なところ、驚いた。私ごとファフニールを一撃で殺し切るのは、今まであの織斑千冬すら成しえなかったことだ。
その点だけで、あの楯無は確かに脅威に値するのだろう。だが――――それだけだ。
再展開された量子空間中から、真下にいる標的を見下ろす。
「あは。あははは。あはははははははははははっ!!!」
流石にあの火力に直接晒されては、かの水の防御を取り戻しても無事では済まなかったのだろう。
所々が焼き切れながらも、そんな自らを誇るようにコアクリスタルを赤黒く輝かせるISを纏い、自身も体の至る所に火傷を負い血を流しながら、少女が狂ったように笑っていた。
かたなはたてなし わたしはたてなし
たてなしはかたな かたなはわたし
たてなしはよろい わたしはよろい
わたしはかたなのあかぞなえ
たてなしはまっか とってもきれい
かたなもきれい とってもうれしい
だから
そめないと
もっともっと まっかにそめないと
――――かたきのちで そめないと
少女の笑い声に呼応するように、恐らくISを展開している者にしか聞こえない、悍ましい歌声が何処からともなく響いてくる。
……最早そこにいるのは、かつての私達の敵であった楯無ではない。
目の前にあるのは、突然突き付けられたどうしようもない理不尽に、手を取り合って抗い続け。
それでも互いに心までは守り切れず、手を繋ぎながら絡まり合うように堕ちていった、少女とISの姿だった。
無論、私達の行いの結果の一つであることは自覚している。
だが……それでもかつての敵だった楯無の姿を思うと、失望を禁じえなかった。
あの楯無がまた産まれたのならば、殺さなくてはならないと思ったが……蓋を開けて見れば、ただの犠牲者の少女。これではその価値もない。
……わかっている。これは
亡国機業の
そう思って手を下そうとして――――まだ歌っている標的のISの声とは違う『声』が、頭の中で響いた。
「――――今度は君か、ウェザー。スコールといい、今度の職場の同僚は、余程私の仕事の邪魔をするのが好きらしい」
――――……
「本気か? 楯無ではなかったが……私がこうして死んだ以上、この少女は間違いなく君の命にも届き得る。それでも君は、私を止めるのか?」
――――……
「……運命、か。この際だから言うが……私は初めて君に出会った時から、君のその言葉が嫌いだったよ」
――――……
仕方がない……納得がいったわけではないが、亡国機業の一員としては
最早
このまま撤退してもいいが……どういう訳か、スコールの分火による通信が急に途切れた。
あの女狐がどうなろうと知ったことではないが……念のため、連れてきた三人の様子は見てきた方がいいだろう。
――――ええ、知っています。でも私は、そんなあなたが大好きですよ、パスカル。
私を殺し、哄笑をあげる少女を背に、その場を後にする。
先程のウェザーの最後の言葉が、妙に耳に残ったまま。
ミストルティン≒〇ィルトウェイト
公式戦では当然使用禁止となっています。