IS/SLASH!   作:ダレトコ

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第百五十四話~海上の再会~

 

 

 はい、こちら現場の織斑一夏です。

 目が覚めたら一度ここで目覚めた時に寝かされていたベッドの上で、さっきのクロエや葵のことまで含めて全部夢落ちかと一瞬思いました。

 取り敢えず手元に白式が戻っていたので、待機形態のそれを引っ掴んで廊下に出ると――――

 

 ――――なんか至る所で警告灯がグルグル回っていて景色が赤い。

 えっ……ヤバくない? なに沈むの? ISあれば助かるかな?

 

 なんて益体もないことをグルグルとしばらく考えた結果、俺は改めて白式が手元に戻ったことを思い出して、こういう時に頼れる奴に頼ることにした。

 上手いことイメージして、白式のハイパーセンサーだけを部分展開する。

 呼び出してから白煉が亡国の連中に何かされていないかという危惧が過ったが、程なくしてハイパーセンサーに見慣れた青い閉じた眼のシンボルが浮かび上がって、息を吐きながら安堵した。

 

 「はぁ……お互い、無事なようで何よりだ、白煉」

 

 『マスター……この度は、本機のサポートAIとしてお役に立てず……』

 

 「あー、そういうのはいい。元を正せば、連中に人質取られてマゴついてなんも出来なかった俺が悪い。悪かった」

 

 『……それは、そうですね。マスターは、もう少し御身を大事にされるべきかと』

 

 「えっ……説教入る感じ? ゴメン、後で聞くから今は勘弁してくれ」

 

 ああ……敵地ってのも大いにあるだろうが、この気の置けないやり取りに大いに安心感を覚えている自分がいる。

 こいつとはまだ知り合ってから一年も経っていない仲だが、それでも随分と長く一緒にいるような気がする。それだけIS学園での日々が濃かったってことだろうな。

 互いに、俺の正体についての話はしない。真実はどうあれ……今の俺は織斑一夏だ。その事実だけ、あればいい。

 そうだろ? ――――白式……

 

 「で、白煉。早速で悪いんだが……この状況、どう思う? やっぱ沈むのか? この潜水艦」

 

 『いいえ、船体自体は寧ろ浮上しています。これは……ああ。そういうことですか。安心してください、マスター。――――の悪ふざけです』

 

 「うん? 悪い、なんつった?」

 

 丁度白煉が名前らしきものを告げた辺りでガコン、という潜水艦の駆動音らしきものが響き聞き逃してしまったため、もう一度聞き直そうとしたところで、答え合わせの機会が訪れた。

 

 ――――いかにもヌッ、といった感じで。

 どこかフィギュアスケーターを思わせるデザインの、肘や膝から先が妙に細く針のようになっている人形のようなロボットが、床から生えて(・・・)きたのだ。

 

 「!?」

 

 それを皮切りに側面の壁からも二体目と三体目が、当然のように壁をすり抜けながら現れる。

 敵かと思い白式に一瞬意識を飛ばすが……三体の、推定無人ISと思われる機体は、俺がISを展開する前に一斉に俺の前で跪いた。

 

 「な、なんだ……?」

 

 困惑する俺を余所に、首を垂れる三体のISの向こう側の通路から、全く同型のISがふよふよと浮かびながらやってくるのが見える。

 ただ、その機体だけが他と違った。

 最後に現れた女性型無人機のバイザー部分には、見覚えのある、ニヤニヤ笑いを浮かべる赤いギザ歯のシンボルが浮かび上がっていたのだ。

 

 『あ、いたいた。よぅハニー! お久しぶ――――おわあああぁぁぁ!? いきなりなにすんの!?』

 

 そしてその声で最早こいつが何者か確信に至ったので、咄嗟に白式の脚部装甲を呼び出してハイキックを叩き込む。

 白煉もしっかりスラスターを制御してアシストしてくれる。

 だが一見バグか何かかと見紛うような、微妙な横スライドのような動きをしただけで、白式渾身のキックはあっさり受け止められる。

 その見た目でアホみたいな強靭しやがって、つのんちゅかテメエは! 影の地に帰れ!

 

 くそっ、相変わらず言葉と動作でどこまでも他人をおちょくってくれる奴だ。これで能力は白煉に匹敵するというのだから始末に負えない。

 だが厄介者とはいえいきなり襲い掛かったことについては褪せピムーブでしかなかったので、そこは素直に謝罪することにする。

 

 「すまん。丁度お前のこと思い出してムカついてた矢先に、本人が出てきたもんだからつい」

 

 『そりゃないぜハニ~。今回ばかりはマジで助けにきたのよ、オレ』

 

 「だったら妙な悪ふざけすんじゃねぇよ……」

 

 『やー、だってオトコノコなら、一度はこういうシチュエーションって憧れるもんなんじゃないの? エマージェンシー! ってさぁ』

 

 「アホか! アトラクションとかならまだしも、ガチの潜水艦でやられたら危機感の方が先に来るわ! ったく……ん?」

 

 どうやら束さん謹製の無人機を引っ提げて助けにきてくれたらしい、黒煌と話していると、先に俺達の前に現れた黒煌の干渉を受けていない方の無人機たちが顔を見合わせているのに気がついた。

 

 『一番機に対する、織斑一夏様の敵対行動を確認』

 

 『敵対行動の理由を推測……識別固体『ワルキューレ』に対してではなく、自律型AI『黒煌』に対する敵意によるものと判断』

 

 『判断内容から今後の対処を検討……織斑一夏様の懸念払拭のため、AI黒煌の排除を提案』

 

 『殲滅?』

 

 『処す?』

 

 『処す』

 

 『ゑ……?』

 

 そして次の瞬間には、三体が同時に立ち上がり黒煌が制御していると思われる、牙のシンボルが浮かび上がった無人機に、針のように尖った腕の先端を突きつけていた。

 

 『ま、待て待てなんのつもりだ!?』

 

 『――――識別固体ワルキューレの任務は織斑一夏様の救出』

 

 『そのためにAI黒煌は障害になると断定。よって』

 

 『処す』

 

 『チィッ、この融通の利かないポン共がっ! こんなんじゃれ合いみたいなもんじゃんか!? お~いシロ! 助けて!』

 

 『――――白式附属、自律型AI白煉が、貴方達の判断を肯定します。懲らしめてあげなさい』

 

 『シロオオオォォォォォ!?』

 

 ドッタンバッタンと仲間割れ染みた争いを始める無人機達。最早こいつらが出てきたときの緊張感さんは涙目になりながらどこかへ去ってしまった。

 いや、その。俺から手を出しておいてアレだが……あの、ここ、一応、敵地……

 

 

 

 

 壮絶に見えてそうでもないような争いを制したのは、なんと三対一という圧倒的不利を覆してみせた黒煌。

 どうやらこのISの単一仕様能力らしい、床や壁を透過したり、針のような手足で突き刺したものを操る力を駆使して、あっという間に襲ってきた三体の無人ISを鎮圧してしまった。

 今は地に伏せた三体を足蹴にして高笑いしてる。

 

 『ざぁこ♡ ざぁこ♡ 三体がかりのクセに秒で床ペロとかよわよわ♡ マムにクソザコAIになっちゃってごめんなさいしなきゃね♡』

 

 いや、最早煽りが行き過ぎてメ〇ガキと化している。

 どこまでもふざけてる言動の癖に、マジで強いなこいつ。

 

 『次は……殺すと宣告……!』

 

 『殲滅……殲滅……』

 

 『マイスターに……バージョンアップを……申請……』

 

 『……こいつら汎用AIの癖に自我芽生えてない? 怖いんですけど。マム何考えてんの?』

 

 うーむ。あの三体の無人機のことに関しては、俺の迂闊な行動が発端になっているだけに何とも申し訳なさがあるが……

 少なくともここであのパスカルを見た事実は無視できないので、今はこちらの事情を優先させてもらう。

 

 「黒煌。ここで亡国機業のヤバい奴を一度見てるんだ。あいつに見つかる前に脱出できるか?」

 

 『うん? そうなの? もうここにいた連中はこっちで粗方制圧したけど、リーダーっぽい奴以外にIS持ってる奴いなかったよ?』

 

 「なに……?」

 

 『――――黒煌の言っていることは本当です、マスター。今から1時間ほど前に、IS学園襲撃に関わった亡国機業構成員と推定される者達がパーシアスから脱出したのを、こちらでも確認しています』

 

 「……割とついさっきだな。え、待てよ? そういえば俺、どれくらい寝てたんだ?」

 

 『私も一時白式ごと機能を停止させられていたので、正確には把握していませんが……少なくとも、白式がマスターの元に戻されて以降、10日が経過しています』

 

 「!? ……黒煌!」

 

 『へいへい。もうIS学園襲撃でハニーが亡国のネズミ共に拉致されてから、一か月位経ってるよ。その様子じゃ、ハニーは殆ど寝てたっぽいね』

 

 「そう、か……」

 

 正直、そんなに寝ていた自覚はない。クロエや葵と話した時のことは、昨日のことのような感覚だ。そういやあの時も、その前にどんだけ寝てたのか確認できなかったな。

 そもそも十日も寝ていた割には、空腹や尿意といった生理現象が一切襲ってこない。

 ……もう気にしないつもりではいたものの。いざこうして自分が人間でないことを自覚させられることが起きると、内心ちょっとくるものがある。

 そんな内心を見透かされたのか、急に黒煌が低い声をあげた。

 

 『――――ハニー。その様子じゃ、ネズミの連中に余計なことを吹き込まれたか?』

 

 「っ!?」

 

 『ああ、なんも言わなくていいわ。その反応で大体わかった』

 

 『……黒煌。私は……』

 

 『オメーもなんも言うな。正直、オレはずっと隠してなんざおけるわけねーと思ってたクチだし、責めたりしねーよ。けど……マムは怒るだろうなー……一応、オレとホムの奴で庇ってはみるけど、色々と覚悟はしておけよ。シロ』

 

 『……はい』

 

 「! 待てよ! この件で白煉が束さんに責められるんなら、その前に俺に話をつけさせろ! 俺だって、あの人にはいくらでも言いたいことがあるんだ!」

 

 『あー、うん。ハニーの立場じゃそうなるわな。まぁ、そいつはおいおいね、おいおい。まずは、とっととここから逃げ出しましょうや』

 

 俺の抗議に、黒煌は露骨に話を逸らすように、ISの腕をまあまあとでも言いたげに翳す。

 正直納得はいっていないが、実際言う通りではあるので唇を嚙みながら引き下がる。

 

 『つっても、オレ等の仕事はもう大体終わってる。じきに別の迎えが来るから、ハニーたちは上を目指しな。こいつらん中から案内をつけるからさ』

 

 黒煌の言葉に呼応するように、先程まで倒れていた無人機の内の一機が起き上がってスッと音もなく進み出てくる。

 無人機の割になんかちょっとプレッシャーを感じて怖いが、俺にはこの潜水艦の構造などわからないので大人しく先導についていくことにした。

 

 

 

 

 『こちらが、人員出入り用のハッチになります。パーシアスは現在既に海面まで浮上しているため、問題なく脱出が可能です。どうか、お気をつけて』

 

 幸い特に変なところに連れていかれるとかもなく、無人機は普通に出口まで案内してくれた。

 それはいいんだが……相手は無人機の筈なんだが、なんだろうな……さっきの一緒に跪いてきた他の二体といい、なんか敬意の視線みたいなのを常に感じるんだよな……

 これが千冬姉とか束さんならわかるのだが、俺がこの束さん謹製の無人機達に慕われるようなことをしただろうか?

 千冬姉の弟だからってだけか?

 ……まぁ、束さんが造ったISの気持ちなんて俺が推し量れる筈もないか。

 

 「迎えが別に来るって話だったけど、誰なんだ? 束さんが直接来るのか?」

 

 『それは来てからのお楽しみだと、AI黒煌が』

 

 またかあの野郎。徹頭徹尾ふざけ倒しやがって。

 やはり今からでも一回戻って絞めてくるか……?

 

 『殲滅ですか? 殲滅ですね!?』

 

 やっぱ止めよう。ここにまだ残るってことは黒煌やこいつらもまだ仕事があるんだろうし、邪魔はするまい。

 ……つか言葉にすら出してないのに黒煌のこと考えた途端、急に機械っぽかった無人機のテンション上がるの怖いんだが。

 黒煌の奴どんだけ恨まれてんだ? 同情はしないが。

 だがまぁ……助けられたっぽいのは事実。でも改めてあいつに礼を言うのはなんか癪なので、代わりにこの子?に伝えておこう。

 

 「その……なんだ。ありがとな。お前らのお陰で助かったよ。黒煌にも、よろしく言っといてくれ」

 

 無人機の……ワルキューレ、だったか? は、何も答えずただ深い敬礼だけを返してくる。

 この無人機という割には妙に人間臭い動きをするワルキューレに見送られながら、俺はハッチから這い出した。

 

 

 

 

 ハッチから頭を覗かせると、当然周囲は見渡す限りの海だった。

 太陽はやや西に傾き始めたくらいの位置にあり、少なくとも見える範囲に陸地はなさそうだ。

 ハイパーセンサーで位置情報を確認……げっ。

 ハワイ沖……太平洋のド真ん中。マジか……白鷹使えば帰れっかな? いや、迎えが来るって話なら、待ってた方がいいのか。

 それよりも一か月も音信不通のまま行方不明だった訳だし、色んな人に心配かけてる筈だ。今度はコアネットワークチャンネルを確認し、目下連絡できそうな相手に通信を――――

 

 「――――あれ?」

 

 通信先を探そうとしたところで、更識先輩と簪以外、軒並み知り合いの専用機持ちのネットワークがオンラインであることに気づく。

 それに――――位置が近い?

 

 「一夏ぁっ!」

 

 「!」

 

 もうまどろっこしいとばかりにオープンチャンネルを開いてみたところ、鈴のでかい声が頭を直接揺らした。

 なんとかその衝撃から立ち直っている内に、水平線の向こうから豆粒程度の五つの影が飛び出してくる。

 ハイパーセンサーでそれを拡大して確認し……そいつらか誰か分かった俺は、思わず白式を展開。雪蜘蛛の糸を蹴って空へ飛び出した。

 

 「お~い! ……へぶっ!?」

 

 見えたのは……箒達をはじめ、IS学園で出会い、または再会した少女達。

 オープンチャンネル越しに声が聞こえるように近づいていくと、先程まで豆粒に見える程遠くにいた筈の鈴が突然目の前に現れた。驚く間もなく抱き着かれ、俺は体勢を崩して墜落していく。

 

 「ばかっ、このばかっ! ……無事だったんなら、連絡の一つくらい寄越しなさいよっ!」

 

 抗議の一つでも入れようかと思ったが、ハイパーセンサー越しに涙と鼻水で酷いことになっている顔を見て思い直した。

 ……これは、悪いのは俺だわ。

 

 「ああ。悪かったよ、鈴」

 

 「わーんっ!!!」

 

 最早恥も外聞もなく大泣きする鈴を抱えたまま海面が迫る。

 まあIS展開してるから怪我はないだろうし、この際鈴と一緒に濡れ鼠くらいなら許容するかなと着水に備えたところで、不意に空中で機体が停止する。これはまさか、AIC――――

 

 「ごはっ!?」

 

 しかし直後に身長低い組の二人目(ラウラ)の突撃を受け、AICはそれで維持できなくなったのか、結局俺は二人に纏わりつかれもみくちゃになりながら海に落ちた。

 

 「ラウラ、お前、落ち着……!?」

 

 「えーんっ!!!」

 

 「お前もかいっ!」

 

 白式のお陰で溺れることこそなかったが、一瞬水中で平衡感覚を失いかけ、なんとか鈴とラウラを抱えて水面に顔を出した時に見えたのは、普段のクールで凛々しい雰囲気はどこへやら、子供みたいに俺にしがみ付いて泣いているラウラだった。

 ……まぁあの時目の前であの黒光に呑み込まれることになってしまったため、人一倍責任感の強いラウラにとって、俺の蒸発は相当心の重荷になっていただろうことは想像に難くない。

 そうなるとこっちも責めることはできず……水中で二人に纏わりつかれたまま身動きが取れないでいると、残りの三人が追いついたのか、いつの間にか空中で俺を見下ろしていた。

 

 「……その間抜け面を晒しているところを見るに、いつも通りのようだな、一夏」

 

 頭痛を我慢するように頭を抱えながら、声をかけてくる箒。

 うるせー誰が間抜け面だよ。けど、そういう箒の方は大分一時期背負っていた影が薄れているような感じがする。

 それにCBFの頃は一部の装甲しか展開出来ていなかった紅椿も、未だ完全展開でこそないが一対のウィングスラスターが展開され自力で飛んでいる。

 この一か月で、箒はまた自分の殻を破ったようだ。

 

 「箒さん、憎まれ口も程々にしておきませんと、嫌われてしまいますわよ? ……お久しぶりです、一夏さん。ご無事なようでなによりですわ」

 

 フンと鼻を鳴らす箒を横で窘めながら、穏やかに微笑みかけてくるセシリア。

 一見いつもの淑女然とした雰囲気を崩していないものの、白式のハイパーセンサーは目元に浮かぶ涙を見逃さなかった。

 こいつにも随分と心配をかけてしまったようだ。まぁ俺は殆ど寝てたので時間の感覚が麻痺してるが、知り合いが一か月も蒸発したら誰だって気が気じゃないか。申し訳なく思う。

 そういや、ブルーティアーズって第二次形態移行(セカンドシフト)したんだったか。こうして直接みるのは初めてだな……なんというか、今まで以上に女騎士の鎧感が増したというか、なんか騎士の背後霊みたいなのを背負っているような気迫を感じる機体だ。気のせいだろうか?

 

 「鈴さぁ……いきなり『飛龍』で飛び出すのはルール違反じゃない? 抜け駆けだよ……あ、一夏。大丈夫だった?」

 

 なんか物欲しそうな目で凛とラウラを見つつも、軽い調子で手を振ってくるシャル。

 ラウラもそうだが、最後にこいつを見た時の姿は血塗れで意識不明状態だったので、元気そうな姿にこちらも安堵を感じた。

 ふぇんろん……? あの、鈴が急に目の前に現れたさっきのヤツか? そういえば鈴の甲龍も第二次形態移行してたっけか。

 じゃああれは単一仕様能力(ワンオフアビリティ)かなんかだったってことか? ……またヤバげな力を発現させやがって。

 ってかシャル……いい加減、その熱い視線を送ってくるのを止めなさい。

 唯でさえ両腕が埋まって動かせないので、二人を抱えたままバタ足で頑張って水面に顔を出してるのだ。お前まで突っ込んできたら本当に沈むからな!

 そう伝えたつもりだが……どうもシャルは箒と違い付き合いが短いせいか、俺の意思は視線だけでは伝わらなかったようで。

 寧ろ別の解釈をしたようで……急に目を輝かせ、俺に向かって突っ込んできた。

 

 「一夏ー!」

 

 「なっ、おまっ、やめっ……! ぬわーっ!?」

 

 シャルにまで抱き着かれ、また水面でアップアップし始める俺を余所に、そんな状態の最中白式のハイパーセンサーは残された箒とセシリアが、それぞれどこか吹っ切れたような笑顔と悪戯好きな小悪魔っぽい微笑みを浮かべたのを捉え、俺の嫌な予感は加速していく。

 

 「お、お前らっ……まさかっ……!?」

 

 「……人が黙っていればどいつもこいつも好き勝手して! 私も混ぜろっ!」

 

 「そうですわ! 仲間外れは許しませんわよっ!」

 

 「待て! よせっ! やめろーっ! グワーッ! ガボガボ……」

 

 最後の抵抗も空しく、結局水中でしっちゃかめっちゃかにされながら沈んでいく。

 けれどこれ以上滅茶苦茶になってそれどころじゃなくなる前に、なんとか最後の言葉を絞り出すことができた。

 

 「――――皆……ただいま」

 

 俺の言葉に返ってきたのは、後からきた三人どころかさっきまで泣いていた筈の鈴やラウラ達の、はじけるような笑顔で。

 それを見て――――色々ありはしたが。ようやく、俺は戻ってこれたのだと、心から思うことができたのだった。

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