1【電話番号】
意中の彼の電話番号も入手したし
前歯重点に歯のマニキュアもしたし
鼻はほじれないけど、ネイルアートもしたし
デート専用に、ファーつきブーツも買ったし
予感がするので、ブラとお揃いのショーツも買ったし
ついでに、マイ香水も決めたし
有り金はたいて縮毛矯正もしたし
用意周到、準備万端、抜かりなし
あとは、彼に告白するだけ
ピポパ
『おかけになった電話――
(……エレベーターの中か、地下かな?)
――使われておりません』
2【失恋】
「ねぇ、ねぇ。知ってる?課長の恋人のこと」
(えっ!……なんでバレたんだろ)
「うちの課の子なんだって」
(……課長と一緒のとこ、誰かに見られたのかな)
「なんでも、ロン毛の美人なんだって」
(……やっぱ、私のことだ)
「そんな子、いたっけ?」
(目の前にいるじゃん)
「見た目は、20代前半だって」
(えーっ!そんなに若く見えるかな、私って。クッ)
「あっ、わかった!」
(あーあー、とうとうバレちゃった)
「そう言えば、一人いるじゃん」
(もう、遠回しなんだから)
「ほら、来た。あの子、あの子」
(エッ!)
「ヤだ、課長と同じテーブルに座った」
(!……って、ことは、いつも話し中は、ホントの話し中じゃなくて、拒否設定の話し中?)
「楽しそうにおしゃべりしながら、同じ定食食べてる」
(……遊びだったの?私とは)
「やっぱ、付き合ってたんだ」
(……あの、甘い言葉も甘いささやきも、みんな嘘だったの?)
「……ね、どうしたの?泣いてんの?」
「ん?……タンメンの酢が目に入っただけ」
3【相席】
「混んでるな……」
「……あのぅ、よかったら、どうぞ」
「えっ、いいんですか?」
「ぇ。相席でよければ」
「では、お言葉に甘えて」
「ぉ言葉だけじゃなく、私にも甘えて」
「えっ?」
「ぁ、ぃぃぇ、なんでもないです」
「ラーメンとギョーザ」
(定食メニューを注文する男は、古風な常識派。少し頑固だが、男気があり、『俺についてこい』タイプ。結婚するなら、こういう男がいいかな……。
指輪もしてないし、ネクタイも曲がっているから独身だな。
……もし、この人と結婚したとして、ハネムーンはどこにしようかな……。海外もいいけど、国内も捨てがたいしなぁ……。
子どもは、一人っ子じゃ可哀想だから、最低でも二人は欲しいなぁ……)
「あのう……」
「えっ?」
「食べないんですか?中華丼」
「あら、気づかなかった。では、お先にいただきま~す」
(……丼物が好きな女は、面倒臭がり屋の無精者。掃除嫌いの料理下手――
――結婚相手にはしたくないな)