2019年 8月20日文章追加
「よし、全員揃ったな。朝早くから悪いな」
高木社長の話から半年と少し。765プロの初期メンバー13人がそろっていた。こうして全員がそろうのは久しぶりなことであった。
「みんなが事務所にそろうのは久しぶりだね千早ちゃん」
「ええ、久しぶりね春香。聞いているわよ、少し前までやっていた舞台が大盛況だったんですって?」
「えへへ、みんなさんのおかげだよ? 私だけじゃ満員にはできないよ~」
久しぶりにあったからか、皆ワイワイ会話を楽しんでいる。
「ほらっ、注目!」
プロデューサーは手を鳴らして13人の目線を集める。
「さて、もうわかっているだろうが、お前たちには新しい仕事としてソード・ワールド2.0の仕事をしてもらう。すでに聞いているだろうが、アニメ化を前提としている。自分が作ったキャラクターは自分で担当することを忘れないように。スケジュールもちゃんと確認しておくように。いいな亜美真美」
『は~い』
双子の双海姉妹は仲良く返事を返す。
「でだ、この半年間でルールも一応確認してくれたと思うし、作りたいキャラクターを固めた者もいるだろうが、ちょっと先方から条件をいくつか出されてな。それを伝えておく」
「条件? どんなことを押し付けられたのよ?」
プロデューサーの言葉に反応した水瀬伊織。今もウサギのシャルルを持っている。
「ま、ようはSランクアイドルだったお前たちのアニメ顔を描きたいから、種族の制限をされたり、キャラクターの名前は分かりやすく自分の名前だったりとかだな」
「つまり……タビットやリルドラケンなどはできないということですか?」
ルールブックを確認しながら発言するのは秋月律子。最近はクイズ番組などで忙しいらしい。
「ああ、悪いな。お前らはアイドル界を制覇した存在だからな。やっぱり顔を売り出したい部分はある」
「ま、仕方がないよねー真美たちチョー有名だし」
「うんうん。忙しいよねー」
「お前ら昨日一日休みだったろ」
「プロデューサー。ほかにはなにか言われなかったんですか?」
千早が脱線しそうな状況をもとに戻してくれた。
「ああ、基本は2.0なんだが、一部2.5の要素も入れてほしいと言われてな。といっても一部の神や特技、技能あたりしか盛り込めないけどな」
「なるほど、もう一度確認しておきます」
「それと、この仕事は長期にわたるし、現状、今年お前たちが全員で集まれるのは少ない。そこで最初は三つのグループに分かれてもらうことにした」
「そういえばボクは三日後に海外ドラマの撮影ですよね? それに映画の撮影もあったし、結構長い間外国にいることになりますね」
「ああ、ここにグループ分けしたリストがあるから確認してくれ。それぞれセッションを行う際に時間がかみ合わせられそうな組み合わせになっている。あとそれぞれどこの地方からスタートなのかも書いてあるからキャラクターを作る際に参考にしてくれ」
・グループA ダグニア地方
天海春香 如月千早 星井美希 双海真美
・グループB リーゼン地方
萩原雪歩 高槻やよい 秋月律子 菊地真
・グループC ザルツ地方
我那覇響 四条貴音 水瀬伊織 三浦あずさ 双海亜美
「あっ、千早さんといっしょなの!」
「よろしくね美希」
「うん!!」
「あれ? 兄ちゃん。真美たちバラバラだよ?」
「ホントだ。なんでー兄ちゃん」
「……ハァ、お前ら前に別々に仕事が来てるって言った時に余裕余裕とか言ってただろうが、スケジュールはちゃんと見ておけ」
「そういえば……」
「言ったかも?」
「アンタたちプロデューサーさんに迷惑かけすぎないようにね」
律子呆れているが双子はそこまで反省していないようで笑っていた。
『りょーかーい!』
「真ちゃんと一緒だ。よろしくね真ちゃん」
「うん。よろしくね雪歩。雪歩も今度海外で仕事だったよね? やよいや律子も」
「はい! よろしくお願いします!!」
「ええ、よろしくね」
「それじゃさっそくキャラクターを作ろうか?」
「はい!」
やよいの元気な声を合図にグループBはさっそくキャラクターを作り始めた。
「貴音、自分たちも作ろ!」
「ええ、よろしくお願いしますね響」
「ちょっと響、私たちは5人なんだからちゃんと合わせなさい!」
「まぁまぁ伊織ちゃん。楽しくいきましょ?」
「そうだよいおりん! 面白いのを作って兄ちゃんを驚かせてやろ!!」
グループCも作成に入った。
「よし、千早ちゃん、美希、真美。私たちも頑張ろう!!」
『はーい(なの)!』
「ええっ頑張りましょう!」
グループAも2つのグループに遅れながらも作成に入った。
「あ、いけね。悪い、もう一つやってほしいことがあったわ。春香、1枚ここから引いてくれるか?」
プロデューサーは箱を取り出し、春香の前に置く。
「? それじゃあ、これで」
春香は箱の中に入っていた無数の紙の中から1枚を取り出した。
「どれどれ……おっ、全員プリースト技能(神官)とセージ技能(学者)を習得することと書いてある」
「え……ということは……」
「ちょっとした遊びみたいなもんだ。キャラクターにプリーストとセージを習得させてくれや、もちろんプリーストは最初からじゃなくてもいいぜ。ただしセージは初期作成時に絶対習得な」
『ええええっ!!』
「兄ちゃん! それじゃほかの技能が取れなくなるかもじゃん!」
「そーだ。そーだ!」
双海姉妹が抗議をするがプロデューサーは知らん顔である。
「まぁいいじゃんか。ゆっくりやっていくんだ。最初から難しい敵と戦わせねぇよ」
『怪しい』
「アンタそういって昔私たちに無理難題を押し付けてきたじゃない」
「けどそれをお前たちは乗り越えたろ? それに、あんまりお前たちが死ぬようなことは起きないようにしてくださいと言われてんだ。そうそう命の危険にさらさないよ」
「それ、多少はさらすと言ってないか?」
「はい! 文句を言ってないでキャラクターを作れ!! 時間がもったいないぞ!! それに、プリーストの方はちゃんと特別ルールを用意してある」
「特別ルールですか?」
「そ、初期経験値とは別にプリーストレベル2回分の経験値をやろう」
「2回分……ということは生まれを神官にした場合冒険者レベルは3まで上げられるということですか?」
「鋭いな律子。そういうことだ。ほら今は作っちまえ、質問があるなら随時受け付けるからな」
パンパンと手を叩く。それからは各グループで話し合い、キャラクターを作っていく。数時間後全員が作成を終了した。
「よし、それならグループA、ダグニア組から自己紹介をしてくれ」
「はい! それじゃ私から。んんっ。ハルカ=デュラミス。人間の神官です。セフィリア神聖王国の首都アーレで生まれ、育てられました。技能はプリースト3、セージ1、ソーサラー1です。もちろん信仰しているのはライフォス様です。経歴表で裕福な家庭に生まれたと出たので、貴族ということにしたいんですけどいいですか?」
「OK」
「ありがとうございます。それと許婚がいるとでたのでお相手がいると思います。でも最後に大ゲンカしたことがあると出たのでその相手と結婚したくないと喧嘩したのかもしれません」
「ほう。それでどうやって冒険者に?」
「実はまだそこまで決まってなくて……」
「じゃ、後で再度俺の方と打ち合わせておこうか、一応数パターン用意しておいたから」
「ありがとうございます!」
「よし、次」
「次は美希が行くの! ミキ=ライトネストだよ。レプラカーンで生まれは魔動機師。経歴表で銃で撃たれたことがあるって出たからそれ以来銃の怖さと強さを知ったんだと思うな。技能はマギテック2、シューター1、セージ1を取ったの。経歴表の残りの2つは愛読書を持ち歩いていると今でも使う決め台詞を持っているが出たけど、まだ決めてないから考えておくね」
「ん? プリーストはまだ取らないのか?」
「うん。この神様なんだけど……ダメ?」
「あーなるほど、レパラールね。じゃあそっちの地方に行く際に信仰するってことでいいか?」
「うん。お願いねハニー」
「ハニー言うな。次は?」
「じゃあ私が。チハヤ=ルナイト。ソレイユの斥候です」
「ソレイユ!?」
「あははっ、兄ちゃんやっぱり驚いたね」
「いや、悪い。あまりにも意外でな。もっと無難なところに行くかと思ったんだが……」
「思い切って見ました」
「そうか……(アニメだと薄着で結構露出するってこと忘れてんのかな)悪い、続けてくれ」
笑顔で答える千早をプロデューサーは止めることはできなかった。
「技能はスカウト1、グラップラー2、セージ1です。エンハンサーが欲しかったんですけど、セージ絶対取得が痛いですね」
「うう、ごめんね千早ちゃん」
「いいのよ。それで、経歴表は体のどこかに刺青がある。のめり込む趣味がある。歌を褒められたことがないの3つです」
「最後の一つはお前と真逆だな」
「こういうのが面白いところですね。ああ、プリーストはサカロスを取りました」
「ティダンじゃないんだな」
ソレイユは太陽神ティダンの眷属とも言われている。
「はい。変わり者なソレイユも面白いかって」
「ふーん。千早がやるとなるとより面白いな。じゃ、最後は真美」
「ほいほーい。真打ちのマミ=アントレイだよ。種族はダークドワーフ!」
「……え? ドワーフじゃないの?」
「だってそれじゃ面白くないじゃん! 生まれは戦士で技能はファイター1、エンハンサー2、セージ1をとったよん。プリーストは2.5からストラスフォードを取ってみようかなと思ってんだけど兄ちゃん」
「ん? どうした」
「ミキミキと同じで最初からじゃなくていい? 蛮族の経歴表を振ったら第一の神の声が聞こえたって出たんだけど、最初じゃなくてシナリオ中に聞こえたいなって」
「そうか、分かった。あとで打ち合わせよう」
「りょーかい。あとの経歴は優しさに目覚めた。人族の歴史に興味があるが出たよ」
「よし、次はグループBのリーゼン組。よろしく」
「それじゃボクから行きます。マコト=ゼファーランスです。ヴァルキリーの騎手でシムルグを信仰しています」
「シムルグ……プロセルシアの神だな」
「はい。幼いころプロセルシアから逃げるようにリーゼンまでやってきました」
「逃げるように?」
「経歴表で異性の家族がいないと出たので」
「なるほど、父親が妻や幼いお前を連れてリーゼンまできたが命を落としたってあたりか」
「はい。ええっとシムルグじゃ都合が悪いですか?」
「……(後半の話が作れそうだし)いや、大丈夫だ。残りの経歴と技能を教えてくれ」
「はい。奇妙な予言をされたことがある。今でも使う決め台詞を持っているが出ました。技能はライダー1、ファイター2、セージ1です」
「よし、次は?」
「はいっ! 私が行きます!! ヤヨイ=ラングストン。エルフの野伏です。プリーストは2.5からダリオンを選択しました。技能はレンジャー1、シューター1、スカウト2、セージ1です。経歴表は大好きな食べ物がある。大ゲンカしたことがある。有名人から貶められたことがあるが出ました。狩りをしながら生活をしていたんだと思います! 後のことはプロデューサーさんと相談していいですか?」
「分かった。あとで聞こう。よし、次頼む」
「じゃ、私が。リツコ=ハズウェルです。ナイトメア(ドワーフ)で生まれは魔動機師です。技能はマギテック1、ファイター1、エンハンサー1、セージ1、プリースト2でグレンダールを信仰しています。両親がドワーフなのでその影響かと」
「ドワーフのナイトメアは炎が弱点だからな。いい演技を期待しているぞ」
「ええ、頑張ります。それと経歴は両親に愛されて育てられた。己に何らかの誓いを立てている。今でも使うキメポーズを持っているが出ました。内容はまだ決まっていません」
「分かった。後で考えよう。じゃ、最後は雪歩だな」
「はい。ユキホ=コナーです。人間の学者生まれ、クス様を信仰しています」
「クスか……キルヒアじゃないんだな」
「真ちゃんがシムルグをやるので、私も珍しい神様を信仰してみようかと。技能はセージ2、コンジャラー1、プリースト2です。500点残しているので、ソーサラーあたりを随時習得していく予定です」
「了解。それじゃ……グループC頼むわ」
「ちょっと、なんか雑じゃないの?」
「まぁまぁいおりん。亜美たちが考えたのが、よっぽど気に入ったんだよ」
亜美がニンマリと笑みを浮かべるが、プロデューサーは呆れた表情をしている。
「まぁ、止めなかった俺にも問題があるし、そういう連中がひとつあってもいいかなと思っただけさ。それじゃまずは誰からいく?」
「じゃあ自分から行くぞ! ヒビキ=カドゥケアス。人間の冒険者だ。技能はグラップラー2、スカウト1、セージ1そしてプリースト2だ。信仰しているのは2.5に登場した神の指先ミルタバルかな」
「スリ判定とか多様するなよ?」
「そんなにしないさー。経歴表はかつて貴族だった。大きな遺跡を発見したことがある。求婚されたことがあるがでたさ。それでプロデューサーにはこれを渡しておくね」
響は紙の束をプロデューサーに渡した。
「これは?」
「自分たちのグループの設定みたいなもの。5人で考えたんだ。じゃ、その設定に合わせてあずさ、お願い」
「ええ、任されたわ響ちゃん。アズサ=カドゥケアス。人間から生まれたナイトメアです。生まれは参謀で後方から皆に指示を出す役割をしようと思います。技能はセージ1、ウォーリーダー2、ソーサラー1でプリーストにはユリスカロアを信仰してみました」
「えぇ……マジかよ」
ユリスカロアとは遥か昔の時代には世界各地で信仰されていた戦争系の女神である。しかし、平和な時代とこの神自身が唱えるやり方が他の信者たちには不評だったことも働いてか、今ではほとんど聞かなくなった女神である。ただしユリスカロアを信仰して使うことができる特殊神聖魔法のレベル13は非常に優秀。
「経歴表で育ての親に拾われた。故郷の場所を知らない。異種族の友人がいると出たので、カドゥケアス家に拾われて、ヒビキちゃんとは義理の姉妹役をやろうと思います」
「本当の姉だと思って慕ってるさー」
「異種族の友人は、これから紹介する3人にお任せするわ」
「んじゃ亜美から行こうかな。アミ=ファルクス。ドレイクブロークンの斥候だよ」
「なんともまぁ……」
「技能はスカウト2、ファイター1、セージ1で、プリーストにはヴァ=セアンを選んだよ!」
「また変わったところを選ぶな……」
「ふっふっふっ、やるからには楽しまないとね。経歴は人族に拾われた。人族として育てられた。人族の文化が好きと出たよ。これのおかげでいおりん、お姫ちんと色々できたんだけどね。じゃいおりん頼んだよ」
「任せときなさい。イオリ=ファルクス。妖精使いのバジリスクウィークリングよ。技能はフェアリーテイマー2、セージとアルケミストが1よ。プリーストはニールダを選んだわ。経歴表からは創造性に目覚めた。人族にくだらない賭け事で負けてしまった。人族の歴史に興味があるを自分で選んだりサイコロで出したわ」
「亜美と同じ苗字ということは……」
「ええ、義理の姉妹よ。そして次の貴音もね」
「では最後はわたくしが。タカネ=ファルクス。ミノタウロスウィークリングの戦士です。プリースト技能はヒューレを選ばせていただきました」
「え゛。い、一応聞くけど武器は?」
「両手持ちのソードです」
「ああ、うん。やっぱりか……」
「やっぱり驚くよね~」
「そりゃな……」
プロデューサーが驚く理由はヒューレが持つ特殊神聖魔法フェイタルエッジにある。この魔法は自身の命中判定を行う際のサイコロの目を6ゾロに変更し、自動命中させることができる。
そして両手持ち(所謂2H)のソードには斬鉄剣と呼ばれる武器がある。これは自動命中した際に、相手の防護点(防御力のようなもの)を無視してダメージを与えることができるのである。
さらには種族のミノタウロスウィークリングにはダメージを底上げする特徴がある。
「まぁ、プリーストを13まで上げなければいけないことが少々辛いかと」
「それでも十分だと思うがな……」
「なにか問題であれば変えますが……」
「ああ、悪い。気にしなくていいよ。技能と経歴を教えてくれ」
「はい。技能はファイター2、エンハンサーとセージを1、プリーストが2です。経歴は人族として育てられた。人族の文化が好き。人族に恩がある。となりました」
「うん、了解した。あと伝えることは……ああ、そうだ。お前たちにこの仕事だけに時間を取らせるわけにもいかない都合でなんだが、合流するまでの話は少々飛んでしまうことを考慮してくれ」
「ええぅと……?」
「あー悪い分かりづらいな。つまりだ、ダグニア組がやった後に同じレベル帯のことをあと二回も繰り返すのは正直シナリオ的にも面倒なところがある。もちろん工夫はするけどな。んでだ。ダグニア組のセッションをやっている間にリーゼン、ザルツ組も何かしらのことをして経験値を稼いだことにしてくれ」
「じゃあ、ダグニア組が1000点稼いだら、ほかの二組も何かしていて、同じように経験値を稼いでいたということにするんですね」
「ああ、もちろん育てすぎないように冒険者レベルに制限はつけさせてもらうけどな。メインは合流した後だし」
「ねぇ、プロデューサー。自分たちザルツ組の時にはダグニアとリーゼンの二組分の経験値をもらったうえで始めるんだよね?」
「そうなるな」
「じゃあ、今回キャラクターを紹介した意味あるの?」
「ま、一応紹介だけはしないとな。一応仕事だし」
「プライベートで遊ぶためじゃないものね。ま、うまくやるわよ」
「ほかにも追加していくことはあると思うけど、今のところはこれくらいかな…………さて、これからお前たちはラクシアと呼ばれる世界で冒険してもらう。これだけでも長い仕事になると思うし、このあとにはそれぞれ声優としても時間を取られるだろう。加えてそのほかの仕事だってある。とても大変な日々になる。だけどお前たちはアイドル界を一時的とはいえ制覇したんだ。この程度の困難突破してくれよ?」
『はい!』
プロデューサーの挑発めいた言葉に力強く返事を返す13人。その顔には辛さは感じられない。
「小鳥さんからもなにかありますか?」
プロデューサーの傍で先ほどより準備をしてくれていた小鳥にも視線を向けるが、
「いえいえ、私はあくまでもプロデューサーさんのお手伝いをしているだけですから」
とだけ言って断った。
「わかりました。んじゃ早速始めていくぞ。よろしくお願いします」
『お願いします!!』
765プロの新たな仕事が始まった。
次回からはグループA、B、Cの順番に話を書いていく予定です。
ちなみに貴音がカタカナをちゃんといえているのはプロデューサーと訓練したからです。