765プロがソード・ワールド2.0の仕事をした話   作:鴉星

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始まりの剣。

ルミエル、イグニス、カルディア。

これら三本の剣がラクシアを作ったとされている。


ダグニア編
ダグニア地方・1 


「なぜ理解できんのだ、ハルカ!!」

 

 ダン! と力強くテーブルを叩く男性は目線の先にいる少女――ハルカ・デュラミスを怒りの形相をもって睨みつけている。

 

「何度も言っているとおり、私の夫は私が決めます。お父様やお母様が勝手に決めた相手の妻になどなりません」

 

 少女――ハルカは凛とした佇まいで、父親の言葉を撥ね退ける。

 

「ハルカ、お相手のアレドロ家と我がデュラミス家は長年に渡り友情を育んだ間柄なのですよ。あなたは両家に恥を掻かせるつもりなの?」

 

 男性の隣に座っていた煌びやかなドレスを纏ったハルカの母親も、娘に対して厳しい表情を作っていた。

 

「なんと言われようとも私は結婚しません。では」

 

 ハルカはそれだけ言うと、部屋から出て行く。

 

「待たんかハルカ、まだ話は終わって――」

 

 最後まで父親の言葉を聞く前にハルカは姿を消した。

 

 

 

 

 テラスティア大陸の北東方面に位置するダグニア地方の一国家、セフィリア神聖王国。その首都アーレがハルカ=デュラミスが生まれ、育てられた場所である。

 

 蛮族と総称されるゴブリンやトロールたちを打ち滅ぼし、人族の手に土地を取り戻すことを使命に掲げているセフィリアでは聖戦士と呼ばれる名誉ある者たちがいる。

 彼らは蛮族を掃討するだけではなく自衛手段が乏しい村に住む人々のために剣を振るうヒーローのような存在である。

 

 しかし、時代が進み人族と蛮族の戦いに終わりが見えない状況が進んでいくと、聖戦士の数が減っていってしまう。新たに加えようとしても質は落ち、横暴な者も出てくる始末。最悪なことに聖戦士の称号を金銭で得ようとする貴族もいるほどである。

 

 ハルカの婚約者も金で聖戦士の証を買っただけの男である。

 

 それを知ったハルカは、元々好きでなかった相手であったため、絶対に結婚などしないと決めたのである。

 

(こんなところに居ては私までおかしくなってしまう。どこか、違うところへ――――)

 

 ハルカはそう決心し、すぐさま行動に出た。師と呼び慕うライフォス神殿の司祭に手紙を書いて使用人に渡すと、身支度を急ぎ整え、部屋にあった美術品を売り捌き金銭を得ると、セフィリアの東にあるバルナッド共和国へ向かう商人たちの荷台に乗せてもらうことになった。

 

「これが……セフィリアの外の景色……」

 

「嬢ちゃん。外を見るのは始めてかい?」

 

 女性の商人が声をかける。

 

「はい。ずっとアーレの中で育ちました」

 

「ま、城壁の外に出るなんてセフィリアじゃアタシら商人や聖戦士が大半だろうしな」

 

「……美しいですね。それでいてどこか危険もありそうな……」

 

「嬢ちゃん。アタシら商人は危険でも商売をしなきゃいけない。冒険者みたいに一攫千金を狙えるほど強くないけど、自分の身くらいなら守れる。生きるためには金を稼がないといけないしね」

 

「冒険者……か」

 

「ん? 冒険者を知らないのかい? いくら冒険者が好まれていないとはいえセフィリアにも冒険者はいるだろうよ」

 

「いえ、知ってはいたのですが、自分には縁がないなと思っていまして……」

 

 ラクシアの世界において一番自由な仕事は何か? と尋ねれば大抵の者は冒険者と答えるだろう。過去の遺跡から価値のあるものを発掘するもよし、蛮族やアンデッドを退治することで名声を得るのもよし。と、その時によって好きなことをできるからである。

 

 残念ながらセフィリアという国は冒険者を野蛮な連中と見下す傾向にあり、他国よりも冒険者を受け入れている専用の店が少ない。

 

「嬢ちゃんは見たところライフォスの神官だし、こう言っちゃなんだが、他の上から見てくるライフォスの戦士よりは引く手あまたじゃないかね?」

 

「あはは……そうだといいんですけど」

 

 ライフォス神官は他所では嫌われる傾向がある。原因は色々とあるが、最近ではラクシアにおける最初の神ということで、ライフォスは神々の王だと主張する者たちがいる。そのような者たちが聖戦士として他国のライフォス以外の神を祭る神殿で粗暴な態度を取り、あまつさえ金品を要求することがある。

 

 このことが原因で、ダグニアの冒険者たちの間では、ライフォスは邪神と陰口を叩く者もいるほどである。

 

「そういえば嬢ちゃん。神官として魔法は使えるんだろうけど、それ以外は何かできるのかい?」

 

「恥ずかしながら家にいるか、ライフォス様の神殿に行くくらいで……」

 

「なるほどね。なら簡単な魔法を覚えておくかい? その体じゃ敵の正面に立って戦うってのは無理そうだし」

 

「いいんですか!? ぜひ教えてください!!」

 

「お、おう。なら簡単な真語魔法(ソーサラー)を教えておくよ。道中何もなかったら暇だし、ムサイ男どもの相手をしなくていいし」

 

「聞こえてるぞー」

 

『はははははっ!』

 

「うるさいね! ちゃんと周りを見てな!!」

 

 女性は怒った口調で言っているが、口元は笑っていた。おそらくはこのようなやり取りを楽しんでいるのだろう。ハルカはそう感じ取った。

 

「では、ご指導よろしくお願いします!」

 

 ハルカ=デュラミスの冒険は今より始まった。

 

 

 

 

 

 ハルカが商人たちと共にバルナッド共和国に着いたのは、出立からおよそ6日が経過した頃だった。

 

 その間に最低限の魔法を覚えたハルカは商人たちと別れ、バルナッド市内を歩いて回っている。

 

「セフィリアとは全然違う街なのね……」

 

 少し前まで見ていた街並みとは違う景色がハルカを楽しませていた。

 

「ここは広場かしら……活気が全然違う。ううっなんだか熱気が」

 

 バルナッドでは金を稼ぐものが偉い。という風潮が少なからずある。そのために広場で商売している者たちは一人でも多くの客に自分の商品を売りたいのだ。

 

「ここから離れ――きゃ!」

 

 広場から出ようとしていたハルカに一人の男がぶつかって来た。

 

「おい、気をつけろ!」

 

「す、すみません!!」

 

 頭を下げて謝罪すると男はそのまま姿を消そうとするが、

 

「待ちなさい」

 

「イデデデデデデッ!!」

 

 一人の美女が男の右腕を押さえつける。

 

「貴方、今彼女から何を盗ったのかしら?」

 

「な、なんの――イデェ!?」

 

「とぼけないで、ねぇ貴女、ガメルがいくつか盗られていないかしら?」

 

「え? …………ああっ! 100ガメル分の袋がない!!」

 

「やっぱりね。この男が持っているわよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「お、おい! もう放してくれよ!! 金は返しただろが!」

 

「しょうがないわね、ほら行きなさい」

 

「ちっくしょお……覚えてろよ!!」

 

 男は痛めつけられた右腕を抑えながら、走り去っていく。

 

「随分と隙だらけだったけど、バルナッドは初めてなの?」

 

「はい。本当に助かりました」

 

 ハルカは目のやり場に少々困っていた。目の前の美女は自身の体を最低限の布で隠しただけで、後は肌を露出していた。ドレスなどを着ていた日々のハルカからすれば少々困った状況である。

 

「えっと、申し訳ありません。あなたはソレイユですか?」

 

 ソレイユ。始祖神ライフォスの友人にして太陽神として崇められるティダンの眷族と言われる者たちだ。

 

「ええ、私はチハヤ=ルナイト。よろしくね」

 

「ハルカ=デュラミスといいます。先ほどはありがとうございました」

 

「たまたまよ。ま、これも何かの縁だし、この後予定はある?」

 

「いえ、特には」

 

「じゃあ、一緒に食事でもどう? 奢るわ」

 

「え、そんな! 悪いですよ」

 

「いいのよ、ちょっと臨時収入も入ったしね」

 

「???」

 

「さ、行きましょ、美味しいお酒が飲めるところがあるのよ」

 

「ええ!? まだ昼ですよ!!?」

 

「いいじゃない。飲みたいときに飲まないと! さ、行くわよ」

 

「あ、ちょ、ちょっと~」

 

 ハルカはチハヤに手を引っ張られ、そのまま広場を後にする。

 

 

 

 

「ここよ」

 

 広場を後にした二人はバルナッドの端にある一軒の小さな店だった。店名は〈千夜の剣〉という店のようだ。何やら屋根の上で作業している人がいるがハルカはそれどころではなかった。

 

「あ、あの……私たちが通った所って……」

 

 ここに来るまで、ハルカは周囲に人影が少ないことに何やら違和感を覚えていた。

 

「ああ、あの辺はスラムみたいな場所だし、大抵は夜に店を開けるらしいわ。私は知らないけどね」

 

(そっか、ソレイユって夜はすぐ寝ちゃうって本に書いてあったかも……)

 

「ま、今日は近道のために通っただけだし、普段は使わないほうがいいわ、またお金を取られたくないでしょ?」

 

「は、はい。気を付けます」

 

 二人が中に入ると、二十席ほどの店内が視界に入った。先に来ていたと思われるフードを被った人物以外は誰もいないようだった。

 

「こんにちはマスター。いつものお酒ありますか?」

 

「ああ、チハヤちゃんいらっしゃい。今日も来ると思っていたから用意しておいたよ」

 

 マスターと呼ばれた30代ほどの男性が笑顔で出迎えた。

 

「おや、珍しいね。チハヤちゃんが人を連れて来るなんて」

 

「さっきスリにあった所を助けたの」

 

「ハルカ=デュラミスと申します」

 

 礼儀正しく挨拶するハルカ。マスターはそれに笑顔で答える。

 

「よろしくねハルカちゃん。店主のアルフレッドだ。好きに読んでくれて構わないよ。ま、立ち話もなんだし、座って座って」

 

 二人はテーブル席に座ると、店の奥から美しい女性がグラスを二つ持ってやってきた。

 

「いらっしゃいチハヤちゃん。いつもの置いておくわね」

 

「ありがとうマダム」

 

「はい。あなたにも」

 

「あ、ありがとうございます……(綺麗な人、チハヤさんとは違った何かがあるような……)」

 

「アルフレッドの妻、レミアよ。よろしくねハルカちゃん」

 

「よ、よろしくお願いします!!」

 

 レミアのチハヤとは違った美しさに緊張したのか少々声が上ずったハルカ。それをクスリと笑いながらレミアはボトルをテーブルに置いて「ゆっくりしていってね」とだけ言って店の奥へと姿を消した。

 

「それじゃ乾杯しましょ」

 

「あ、はい。乾杯」

 

 グラス同士をキンッと軽く鳴る程度接触させ、自分たちの口へとグラスを運ぶ。ゆっくりと少しずつ流していくハルカと一気に飲み干すチハヤ。

 

「ぷはっ! やっぱりマスターが揃えているお酒は最高だわ!!」

 

「ありがとうチハヤちゃん」

 

「お、美味しい……」

 

 初めて飲む酒の味に自然と笑みがこぼれるハルカ。それを見たチハヤはボトルに入った酒をハルカのグラスに注ぎ入れる。

 

「それで、ハルカはどうしてバルナッドに?」

 

「あ、えっと……」

 

 ハルカはチハヤに話してしまうことに少しだけ躊躇いはあったが、隠し事をするほどでもないと考え、ここにバルナッドに来た理由を話す。

 

 アルフレッドやレミア、店にいた一人の客にも聞こえていたが、ハルカは気にすることなく、これまでの不満を吐き出すように語った。

 

「そう……大変だったわね」

 

 すべてを聞き終えたチハヤは呟くように言い、グラスを呷る。

 

「これからどうするの? 歓楽街で働くってわけじゃないでしょ?」

 

「むむむ、無理ですよ! わ、私まだ……その……」

 

「ああ、ごめんごめん。そりゃまだそうだよね」

 

「チハヤさんはその……経験は……」

 

「ないわよ」

 

「え、ないんですか!?」

 

「いいお相手がいないのよ。マスターほどのいい人がいればいいんだけど」

 

「からかわないでよチハヤちゃん」

 

 アルフレッドが苦笑いを浮かべながら料理をテーブルに置く。

 

「ハルカちゃん。もしよかった冒険者をやってみないかい?」

 

「え……冒険者ですか?」

 

「うん。実は昨日からうちも冒険者の店として登録してあるんだよ。まだ一人も冒険者もいないし、仕事もないけどね」

 

「へー知らなかったな。昨日もいたはずだけど」

 

「チハヤちゃんは夜の六時になると寝ちゃうから。正式に許可が下りたのはチハヤちゃんが寝た後だし」

 

 なるほどねー。と言いながらチハヤは料理をガツガツ食べる。

 

「私一人でできるでしょうか? 冒険者は場合によっては大変な仕事だと聞きますけど」

 

「何言ってるのよハルカ。私もやるわよ」

 

 口の中の料理を酒で流し込むと、チハヤはハルカに力強く言った。

 

「え、いいんですか?」

 

「もちろん。言ったでしょ、これも何かの縁だって」

 

「ありがとうございますチハヤさん!!」

 

「ああ、そうだ。マミちゃん。君もどうだい?」

 

 アルフレッドは店の奥で一人でいた客に声をかける。

 

「……ありがたいですけど、その……」

 

「君の立場が大変なのはわかるけど、やはりしっかりとした保証は必要だよ?」

 

「…………」

 

 奥にいた客は席を立つとハルカとチハヤの席まで歩いてきた。

 

「マミ=アントレイ。良ければ私も加えてほしい。一応戦える」

 

 マミと名乗る少女はメイスを二人に見せる。しかし、顔を見せたくないのか、フードを深く被っている。

 

「私は構わないわ。ハルカは?」

 

「問題ないですよ。よろしくね、マミちゃん!」

 

「ありがとう。お役に立てるよう頑張るわ」

 

 マミと握手を交わす二人。アルフレッドは笑顔でそれを見守っていた。

 

「ああ、そうだ。もう一人紹介しておこうかな。確かガンを使うと言っていたし」

 

 すると店のドアを力強く開く人物がいた。

 

「マスター! 屋根の修理終わったよー!」

 

 ドアを開けて入ってきた人物――否、人間よりも大きな耳をして、だらりと下がっている。耳はフサフサした毛で覆われ、体格もマミよりもさらに小柄に見える愛くるしい少女の姿があった。

 

(わ、レプラカーンだ。本当に変わった耳をしているんだ……)

 

 レプラカーンは通常人の前にはあまり姿を見せない貴重な種族というのが多くの人の常識であったが、どうやら目の前の少女は違うようだ。

 

「ああ、ミキちゃんありがとう。それに丁度良かった」

 

「??」

 

「実はここにいるハルカちゃん、チハヤちゃん、マミちゃんが冒険者として仕事をするんだ。ミキちゃんはガンを使えたよね? 君さえよければ彼女たちと冒険者としてやってみないかい?」

 

「いいの!? うん、やるやる!! あ、ミキ=ライトネストだよ、よろしくね!!」

 

 ミキは嬉しそうにその場で何度も跳びあがる。

 

「うん、パーティのバランスとしては申し分ないかな」

 

「ところでマスター、依頼はあるの?」

 

「……あはは、ごめんごめん明日までに用意しておくよ。今日は四人で結成のお祝いでもしたらどうかな? お金はサービスするよ?」

 

「ホントに!? じゃあワタシもみんなと同じやつ!!」

 

 ミキが元気よく手を挙げる。

 

「色々準備も必要だと思うけど、まぁいいのかな……」

 

 マミも口元に笑顔を見せつつ、チハヤの隣に座る。

 

「じゃ、乾杯しましょう!」

 

「そうね! じゃ、グラスを持って……乾杯!!」

 

『乾杯』

 

 チハヤの号令の下、四つのグラスが優し気な音を奏でる。

 

 四人は思い思いにこれからの冒険に花を咲かせる。

 

 ソレイユのチハヤは午後六時になると翌日の午前六時まで基本的には目を覚まさないため、道端で眠られても困るため、チハヤがアルフレッドの店にある二階の宿で眠り次第、マミが冒険の準備をしようとハルカとミキを誘って遅い時間ではあるが買い物に出かけた。

 

 背負い袋、水袋、毛布、たいまつ数本、火口箱、10mのロープ、小型ナイフの所謂冒険者セットはアルフレッドが用意してくれるとのことで、三人はそれ以外の回復用のヒーリングポーション。万が一意識を失った際のアウェイクポーション。そしてハルカのような魔法使い系統の力を使う者には必須の魔晶石と呼ばれるアイテムを購入これがあればマナ(MP)が不足した場合でも魔法などが行使できる。

 最後に薬品の救命草、魔香草を購入。それぞれ体力(HP)とマナ(MP)を回復できる代物であるため、戦闘以外の時に使う。

 

 買い物を終えた三人はアルフレッドが用意してくれた部屋で眠りについた。

 

 

 

 

 翌日。

 

 四人は一階の店内に集まり、朝食を食べていた。

 

「はい。じゃあこれが依頼……というよりも地図かな」

 

「? 依頼じゃないんですか?」

 

「うん。知り合いに聞いてみたら新しく見つけた遺跡があるらしくてね。その地図をくれたんだ。遺跡探索も冒険者の醍醐味だろう?」

 

「どれどれ……あっ、結構近いよ!!」

 

 ミキが地図を見てみると、バルナッドの北にあるタナト川周辺にあると印がある。距離にして半日以下で到着する距離だった。

 

「マスター。こんな近い距離なのにだれも気が付かなかったの?」

 

 マミは疑問を口にする。

 

「どうやら地下にあるみたいでね。今回たまたま地面が隆起した際に発見したらしいんだ」

 

「よし、食事を終えたら早速行きましょ!」

 

 チハヤの言葉に三人は頷き、手早く食事を終わらせると、アルフレッドとレミアそして幼い双子の赤ん坊に見送られた。(二人の子供であるが、自分の母と比べてハルカはレミアが子供を産んでいたとは思えない美しさがあると感じていた)

 

 

 

 バルナッド共和国は実のところ歴史が浅い。正確には今のバルナッドがということであるが。

 

 ラクシアは大まかに四つの時代が存在している。

 

 10000年以上昔といわれる神紀文明シュネルア。

 3000年前に存在していた魔法文明デュランディル。

 2000年前から1700年ほど続いた高度な技術が発展していた魔動機文明アル・メナス

 そして現代。

 

 しかしながらアル・メナスから現代に至るまでに高度に発達していた技術などは消えてしまった。それが大破局(ディアボリック・トライアンフ)と呼ばれる蛮族たちの襲来である。現代から300年前、「地上」からは蛮族をほとんど駆逐できており、人々は安寧の時代が到来したのだと思い込んでいた。しかし、蛮族たちは地下に国を作り、来るべき時まで力をつけていた。この奇襲によりアル・メナス文明は滅びを迎え、生き残った人々が団結し、決死の覚悟で戦い、戦争を仕掛けてきた蛮族の王を誰かが倒したとされている。

 

 この時バルナッドはアル・メナス時代のダグニア地方に名を刻んでいた。しかし、蛮族たちの過激な攻撃により、一度は滅びを迎えたのである。

 

 現在のバルナッドはその過去の都市の近くに新たに構築された遺跡都市としての一面も持っている。しかし当時のバルナッドは現在の都市よりも大きく。今も未踏の場所が存在しているのが事実である。

 

 今回四人が向かうのもその過去の遺跡と関係があるのかもしれない。

 

 

 

「楽しみだね、いいものがあるといいな~」

 

「そうね、ここまでマスターに用意してくれたんだからそれなりの物を見つけないとね」

 

 楽しそうなミキとやる気をみなぎらせているマミ。

 

「いい天気。これなら力が漲るってものよ!」

 

「チハヤさん。元気ですね……」

 

「ソレイユは太陽が出ているときは元気だからね」

 

 談笑をするチハヤとハルカ。初めて故のまったりとした空気であるが、緊張しているよりはましなのかもしれない。

 

 地図を頼りに進んでいくと、隆起した地面のそこに確かに構造物の入り口が見えた。

 

「ここだね。ようし! 行こー!」

 

「待ってミキ、あなたは暗視があるからいいかもしれないけど、ハルカたちは持ってないのよ。まずは明かりの用意をしましょ」

 

「あ、そうだった。ありがとうマミ」

 

「あ、私がライトの魔法を使おうか? 魔晶石もあるし」

 

「勿体ないわよハルカ。その一個分は別の時に必要になるかもしれないし、残しておきましょう」

 

「うん。ありがとう(……さっきからマミは頭数に入ってないような……)」

 

 ふと、ハルカが疑問を持つが、それを払い、たいまつに火をつけるのを手伝った。

 

 ハルカとチハヤがそれぞれたいまつを持ち、マミは暗視があるから平気だと言う。

 

(やっぱり。ということはドワーフ?)

 

 再び疑問が湧いて出てきてしまうが、もう一度ハルカは降り払う。

 

(今は遺跡探索に集中しよう!)

 

 ハルカたちは奥へと進んでいく。

 

 

 

 遺跡内部は光が届いていないせいか、暗い。

 

 暗視を持つミキとたいまつを持ち斥候としての技量を持つチハヤが前を歩き、その後ろをハルカとマミが歩いている。

 

「おお、なんの建物かわからないけど、いいつくりしてるなー。この柱も立派だよ~」

 

 ミキが時々足を止めて、遺跡の柱などを触って機嫌をよくしていた。

 

「時代としてはアル・メナスの物?」

 

「うん。そうみたいだね! ワクワクしちゃうよ」

 

 マミの質問に元気に答えるミキ。とてもご機嫌である。

 

「……ミキ近くに来て」

 

「え?」

 

「早く! みんな敵よ」

 

『!!』

 

 チハヤの声で皆顔を引き締め、背中合わせに周囲を警戒する。

 

 ウィーンという機械音と共に、複数の物体がやってきた。数は五体だ。

 

「あれは……レンガード! 魔動機文明の遺跡でよく見かけると本で読んだことがあります!」

 

「たしか、連結させると厄介だって聞くから気を付けて!」

 

 ハルカとミキがそれぞれ敵――レンガードのことを口にする。

 

「チハヤ、私たちで前衛を組みましょう」

 

「当然! 遅れないでよマミ!」

 

 チハヤは素早くレンガードに接近、警告を発していたレンガードに攻撃する。

 

「はぁぁぁっ! たぁ!」

 

 平たく小さめなレンガードに対してチハヤは二連続のキックを浴びせる。

 

「もういっちょ!」

 

 さらにもう一撃加えて粉々に粉砕した。

 

「ようし、私も! エネルギーボルト!」

 

 商人の女性から習った魔法でハルカは二体目のレンガードを狙う。

 

 当たり所がよかったのだろう。一撃でレンガードを破壊した。

 

「やるねハルカ! ならワタシも、ソリッド・バレット、ドーン!!」

 

 両手に持ったガン――トラドールでレンガードに狙いを定めて発射した。

 

 しかし、一撃とはいかず、レンガードは動き続けている。

 

「うーん。ハルカみたいにはいかないか」

 

「なら私が!」

 

 ヘビーメイスを両手に持ったマミがミキの攻撃でボロボロになっていたレンガードを破壊する。

 

「あとは二体だけ!」

 

 その二体はミキの言う通り連結し、電撃を帯びて攻撃してきた。

 

「よっと、危ない危ない」

 

 チハヤにたいして攻撃したがあっさりと回避されてしまう。

 

「畳みかけましょう!」

 

 レンガードはあっさりと倒されてしまった。

 

「使えそうなのは……この記録装置一つね。あとは粉々だし、お金にはなりそうもないわね」

 

 はぁ、とため息をつくマミを励ますようにチハヤが背中を叩く。

 

「まだ終わりじゃないわよマミ気を取り直して行きましょ!」

 

「……そうね。とりあえずレンガードたちが来た方向へ行きましょうか」

 

 四人は警戒しつつも奥へと進んでいく。

 

 いくつかの道は土に埋もれてしまい通れそうになく、現状の自分たちではどうすることもできないため、進めそうな道を探していると、絵が描かれた壁を見つける。

 

「これは……」

 

「魔動機文明語だね、ワタシ読めるよ! ええっと……バルナッド駅地下通路ご案内掲示板? だって」

 

「駅……?」

 

「何かしらそれ」

 

 マミとチハヤはわからないと言った表情をしていたが、ハルカとミキは分かったようで、

 

「ううん、確か当時の移動手段だった列車なんかが止まる場所だったかな……セフィリアじゃあまり魔動関連は好かれてないからそれ以上は分からないかな」

 

「確かそんな感じだったよ。ええっと……ドワーフのストラスフォードが作り出した移動手段が魔動列車で、各地に一時的に人や物が乗り降りするための施設かな」

 

「そっか……やっぱりドワーフはすごいんだ……」

 

(マミもドワーフじゃないの?)

 

 マミの呟きが聞こえてしまったハルカだったが、気にしていても仕方のないことだった。ハルカはストラスフォードの名前を聞いて思い出したことがあった。

 

「あ、そういえばストラスフォードって名前神様にいたんじゃないかな。確か大陸各地に列車を走らせた功績でグレンダール様に手で神になった方がいたって本で書いてあったような……」

 

「へぇ、すごい神様ね。大陸各地って」

 

 素直に感心するチハヤ。

 

「うん。でも、大破局の影響でどこもこんな感じじゃないかな」

 

「なら、ちょっとでもみんなに知ってもらわないとね」

 

 チハヤの言葉に三人は頷きさらに奥へと進む。

 

 地下へと続く階段を発見し、四人は明かりと暗視を頼りに進む。

 

 空気がやや重たく感じる地下であるが、ミキは気にした様子もなく回りを見ている。すると、

 

「あっ、見て!」

 

 ミキは声をあげて前方を指さす。さすがに明かりの届かない範囲では見えにくいため、ミキはチハヤと共に前へ進む。

 

「これは……魔動列車?」

 

 マミの言葉にハルカが頷く。

 

「うん。本に書いてあった絵に酷似している。間違いないと思うよ」

 

「これが列車……」

 

 マミは列車に近づいて見惚れていると、

 

「っ! 危ないマミ!」

 

「え? きゃっ!」

 

 チハヤが素早く小柄なマミを抱き上げてその場から離脱した。そこへ銃弾が飛来した。

 

「な、なに!? チハヤさん! マミちゃん!」

 

「ハルカ、敵だよ!」

 

 ミキは手にトラドールを握りしめている。

 

「っ!」

 

 それによりハルカも警戒態勢を強める。

 

「敵は右前方よハルカ!」

 

 チハヤの声に従いそちらを見ると、二足で立つ自分たちよりも大きな魔動機械がそこにはいた。

 

「っ!? ガーヴィ! 気を付けて、ワタシと同じでガンを使う!!」

 

 その言葉を肯定するかのようにガーヴィは銃撃を行ってくる。

 

「っ! ハルカ!!」

 

 ミキがハルカをかばうように押し倒す。

 

「ご、ごめんミキちゃん。大丈夫?」

 

「平気よ、それよりもいったん距離を取りましょう!! チハヤ、マミ!

 

「分かったわ!」

 

 四人はガーヴィの腕に装着された銃の射程から外れるように距離をとったが、

 

「――――――」

 

 なんとガーヴィの銃撃は本来の射程よりも長い物になっていた。

 

「射程は15mのはずなのに、なんでっ!?」

 

 ミキは自分の知っている情報との違いに動揺する。

 

「落ち着いてミキ、私が見た限り、あいつの腕は後から改造した跡があったわ」

 

 マミの言葉にミキははっとする。

 

「じゃあ」

 

「ええ、何らかの理由でやつを改造したのよ」

 

「っ! 長話はできないわ」

 

 チハヤの表情が再び強張る。

 

 見ると、先ほどのレンガードたちが五体連結した状態の物が五組現れた。

 

「数が多い!」

 

 ハルカの悲鳴に近い声が漏れだす。

 

「このっ!」

 

 ミキは手当たり次第といわんばかりにガンを撃つ。

 

 命中したが、先ほど戦ったレンガードよりもあたりが悪いのか、効いているようには見えない。

 

「さっきのやつよりも耐久に優れている!?」

 

「上の階まで引きましょう!」

 

 チハヤの声で、四人は上の階まで撤退した。

 

「はぁ、はぁ……大丈夫?」

 

「な、なんとか……」

 

「どうやらここまでは来ないみたいね」

 

「はぁ、いったい何を守ってるんだろう……」

 

「守ってる?」

 

「うん。ガーヴィとかは命令で動いているから多分地下のどこかに守らなきゃいけない何かがあるんじゃないかな」

 

 ミキは少々不安げに話す。

 

「どうする? ここは戻る?」

 

「……いいえ、せっかくパーティを組んでの初めての冒険だもの、これくらいの障害は払いのけないと夢には程遠いわ」

 

「夢? チハヤさん。なにか夢があるんですか?」

 

「ええ、いつかバルナッドで一番の酒造家になりたいの。今回ハルカと冒険に出たのはその資金を得るための第一歩だったの」

 

「そうだったんですか……」

 

「ええ、だからこんなところで引けないんだけど、みんなを無視していくわけにも「行こう」え?」

 

 チハヤの言葉を遮ってマミが言う。

 

「私にもやりたいことがある。ここで引いたら何もできずに生涯を終えそうだもの、逃げてられないわ」

 

「マミ……」

 

「それに――みんなにこれ以上隠して戦うなんてできないわ」

 

 マミはそう言ってフードを取る。そこには青白い肌をした少女の顔があった。

 

「……もしかして、ダークドワーフだったの!?」

 

「うん……」

 

 ダークドワーフとは、かつて神々と戦いの中で人族のもとを離れて蛮族側に味方したドワーフたちがいた。彼らは巨人サイクロプスから黒い炎を貰い、操ることを可能とした。その代償に、炎に対しての耐性を失い、地下での生活が長かった影響で、子孫にも肌の色が通常のドワーフとは違うというものになっている。

 

「フードをしていたのはそれでなのね」

 

「ごめん……」

 

 小さな声で謝罪するマミ。そんなうつむいたマミにミキは、

 

「もう、マミは気にしすぎだよ!」

 

 怒っていた。

 

「え?」

 

「誰だって言いたくないことはあると思うよ。ワタシだって昔銃に撃たれたことがあるけど、それがきっかけで銃を使うようになったもの」

 

「え、なんで?」

 

「だって、身を持って銃の怖さも痛みも知っているから。だから自分で使うときはちゃんとするって決めたの」

 

 ミキはトラドールを力強く握りしめる。

 

「……マミちゃん。私ねセフィリアの実家から逃げてきたの。昨日聞いてたよね」

 

「うん」

 

「このまま逃げたら何も変わらないと思うの、何かを変えたくて出てきたはずなのに、何も……。だから、私は貴族の娘じゃなくて、冒険者のハルカ=デュラミスでいたいの」

 

 すっ、とマミに手を出すハルカ。

 

「一般的には裏切りのドワーフとか言われているけど、マミちゃんは私たちの仲間だよ!」

 

「ハルカ……」

 

「うんうん! その通りだよ」

 

「当然、私もよ」

 

 ミキとチハヤがそれに賛同する。

 

「ありがとう」

 

 マミはハルカの手を取り立ち上がる。

 

「さて、まずはあのレンガードの群れをどうにかしないとね」

 

「強度が上がっている以上一撃には期待できない。だとするなら時間をかけてでも、確実に倒すべきかも」

 

「うん。チハヤとマミはきついかもだけど、ワタシがなんとか援護するね!」

 

「私は回復を中心にサポートする!」

 

「よおし! 行きましょう!!」

 

『うん!』

 

 チハヤの号令に声を合わせて頷いた三人は再び地下へと向かう。

 

 案の定というべきか、レンガードの群れは待ち受けており、魔動機文明語で警告を発していた。

 

「ガーヴィはこっちに来ないみたい。今のうちだよ!」

 

「ライフォス様、私たちを見守りください。フィールド・プロテクション! 今ですチハヤさん!」

 

「行くわよ! たあああっ!」

 

 チハヤは一番近くにいたレンガードを投げ飛ばす。連結していたレンガードはチハヤに投げ飛ばされた時点でバラバラになった。

 

「一体ずつなら!」

 

「くらえ!!」

 

 マミのメイス、ミキのトラドールが、確実にレンガードを撃破していく。

 

 当たり前であるが、それでも数はいる。

 

「反撃に備えて!」

 

 レンガードたちの猛攻が始まる。前線に立っているチハヤとマミだが、チハヤは軽やかに避けられるのだが、マミはそういうわけにはいかないため、チハヤが敵を引き付ける。

 

「当たらなければ意味はないってね!」

 

 レンガードの電撃攻撃も空振りに終わる。

 

「もらったぁ!」

 

 チハヤ達の猛攻は凄まじく、ガーヴィが一定の場所から動かないことが分かったため、レンガードたちに集中できたことも大きい。

 

 時間は少々かかったものの、無事にレンガードの群れを撃退した。

 

「この距離なら大丈夫なのね。今のうちに回復をしましょう」

 

 買っておいた救命草と魔香草を使って全快した四人はガーヴィをどう攻略するかを考えた。

 

「無理な改造のせいで、接近すれば何とかなるかもしれない。その時は私の奥の手も使うわ」

 

「黒炎のことだね?」

 

「うん。出し惜しみはしていられないし」

 

「なら、マミは側面から行ったほうがいいわね。私が正面から囮としていくわ」

 

「じゃあ、ワタシとハルカはその援護をするね」

 

「分かった。気を付けて」

 

 作戦を決めた四人は素早く行動する。

 

 まずはミキが射程距離ギリギリな位置から攻撃を開始、ガーヴィはそれに反応して反撃してくるが、そこへチハヤが接近。攻撃目標をチハヤに切り替える。するとそこへハルカのエネルギーボルトが飛来。ガーヴィの体に傷がつく。

 

 それでも命令に忠実なガーヴィは一番近づいてきているチハヤに狙いを定める。銃撃を開始しようとするが、ガンと魔法の攻撃を受けてひるんでしまった結果、時すでに遅く、チハヤに投げられてしまう。

 

「だああああああああ!!」

 

 地面に金属音が鳴り響く。そこへ側面から走ってきていたマミが黒い炎をメイスに纏わせていた。

 

「これでどうだああああああああっ!!」

 

 全力で叩きつけた一撃は、間違いなくガーヴィを破壊するに至った。もともと劣化していた部分もあっただろうが、それでも勝ちは勝ちである。

 

「や、やった……」

 

「ええ……」

 

『……やったあああああああ!!!』

 

 四人の嬉しさが爆発したようで、お互いを抱きしめる。

 

 その後、レンガードを含めた戦利品を回収し、ガーヴィが守っていった奥へと進む。

 

 

 

 そこは数十人の人間が入れるような部屋だった。

 

「なにかないか探してみましょうか」

 

『うん』

 

 四人は探索を開始する。すると、チハヤがあるものを見つけた。

 

「ミキこれなんて書いてあるのかしら」

 

「どれどれ」

 

 そこにはここで働いていた職員らしき人物の手記だと分かった。

 

『ついにバルナッドにも線路が作られ魔動列車が通るようになった。これでさらに貿易がやりやすくなるし、人の往来も増えるだろう』

 

『それにしてもセフィリアのやつらは魔動機械がそんなにいやかね。頑なに否定して時代に取り残されても知らねぇぞ』

 

『ラ・ルメイアにも線路が作られた。これでますます豊かになるに違いない!』

 

『話によると列車を作り出したスタラスフォードっていうドワーフは自分の目でも見分を広めたくなる人物だとか、でも今は立場上それも難しいらしい。なんとも難儀な話だ』

 

『リーンシェンクの魔動列車総本部はまた新たなルートを開拓するらしい。ただでさえザルツ、リーゼン、ダグニアと繋いでいるのに大丈夫なのかね』

 

『ついにストラスフォードはやりやがった! このテラスティア大陸で列車が通っていないのはプロセルシアっていう島が集まってできた場所だけらしい。とんでもない話だな』

 

『炎武帝グレンダールが功績を認めてストラスフォードを神にしたらしい。すげぇ! まさか生きているうちにそんなことが起きるなんてな!!』

 

「やっぱり、ストラスフォード様は神様だったんだね」

 

「そのあとの物は?」

 

「ええっと、これかな」

 

『くそっ、蛮族どもめ、地下でずっと待ってたってわけかよ、けどなこっちだって意地がある。見てろよ』

 

『一体だけ残ったガーヴィにここを守るように命令した。これでここにある物は守れるといいんだが……全部を持ち運べないのが悔しいな……』

 

『もし、だれかがこれを見つけてくれたのなら、これを読んでくれるのが人族なら、これを託したいどうかストラスフォードのことを忘れないでくれ』

 

「ここで終わってる……」

 

「ここになにかあるってこと?」

 

「そうみたいだね。なにかまだ見ていないのは……」

 

 四人は辺りを見回す。

 

「あれじゃないかしら?」

 

 チハヤがある一点を指す。

 

 そこには棚のような物があり、いくつかは開けっ放しになっているが、一部はまだあけていないようだった。

 

「どれどれ……」

 

 ゴソゴソと探してみると、

 

「こ、これ……」

 

「うん! 間違いないよ!! 魔動列車の設計図だ!!!」

 

 四人は歓声を上げる。

 

「よし、戻ってマスターに報告しましょ!」

 

「うん!」

 

「やったねマミちゃん! って、どうしたの?」

 

「……私いつかリーンシェンクに行ってみたい」

 

「リーンシェンクに?」

 

「うん。ストラスフォードがなんのために列車を作ったのか、それを調べたい」

 

「なら、まずは強くならないとね!」

 

 チハヤがバシッとマミの背中を叩く。

 

「うんうん! それに、移動するお金も稼がないとね!!」

 

 ミキもチハヤに倣ってマミの背中を叩く。

 

「リーンシェンクか、楽しみだね」

 

「来てくれるの?」

 

「仲間だから当然でしょ。ほら、もう行きましょ」

 

「そーだね。早くしないと途中でチハヤが寝ちゃうかも」

 

「まだ平気よ! ……多分」

 

「ふふ、マミちゃん。行こ!」

 

「うん」

 

『若きドワーフよ……』

 

「え?」

 

『ワシ……は…………そなたを……待つ…………』

 

「今のは……」

 

「マミちゃーん。どうしたのー?」

 

「ごめん、今行く!」

 

 マミは気のせいだったとして、三人を追いかけた。

 

 四人の冒険はひとまず無事に終えるのであった。

 

 

 

 

 余談であるが、見つけてきた資料にマギテック協会は大いに歓喜したとか。

 

 

 

 

 




区切ろうと思ったのですが、一話でまとめたくて無駄に長くなってしまいました。申し訳ない。


この作品は本来のリプレイなどの戦闘ではありえないところが多々ありますが、ご了承ください。


リザルト

 基本経験値1000点
 GM(プロデューサー)からのボーナス1000点
 レンガード              レベル1 5体撃破 50点
 連結レンガード            レベル2 5体撃破 100点
 改造ガーウィ(劣化による弱体化あり) レベル3 1体撃破 30点

 計 2180点


名誉点獲得

 貴重な資料を持ち帰ってた者たち(30点)

 歴史的資料である魔動列車の資料を持ち帰った者たちがバルナッドに現れた。
 しかし、聞いたことのない冒険者だったためかすぐに印象が薄れてしまう。
 他の冒険者たちもマグレだろうと思っている。
 マギテック協会の一部からは覚えてもらえた。
 

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