765プロがソード・ワールド2.0の仕事をした話   作:鴉星

5 / 6
ダグニア組2180点+リーゼン組2450点 計4630点分の経験値をザルツ組は事前に習得。


レベルの上限は3まで


ヒビキ=カドゥケアス

 グラップラー3 プリースト2 スカウト2
 セージ1 エンハンサー1 レンジャー1


アズサ=カドゥケアス

 セージ2 ウォーリーダー3 ソーサラー1
 コンジャラー1 プリースト2


アミ=ファルクス

 スカウト3 ファイター3 セージ1 プリースト2 レンジャー1


イオリ=ファルクス

 フェアリーテイマー3 プリースト3 セージ1 アルケミスト1


タカネ=ファルクス

 ファイター3 プリースト3 セージ1 エンハンサー2 レンジャー1




ザルツ編
ザルツ地方・1


 人族と蛮族は分かり合うことはない。

 

 それが大勢の者たちの認識である。

 

 しかし、蛮族の中でには力がないゆえに蛮族内での扱いがひどく人の生活圏にて仕事や住処を得る者たちもいる。

 

 ザルツ地方のほぼ中央に存在するルキスラ帝国。そこより半日ほど西ある町――レアンダはテラスティア大陸でも珍しい人族と蛮族が共存している町である。

 

 蛮族といえど、住んでるのは蛮族の中でも最弱といわれるコボルドやモヤシなどと言われ使い捨てにされるウィークリング。そしてラミアと呼ばれる者たちである。

 

 この町のことは帝国も知っているし、中には蛮族を討伐すべしと主張する者もいるのだが、ルキスラ皇帝は首を縦に振ることはない。ここを攻撃するということはルキスラを滅ぼすことに繋がってしまうからである。

 

 レアンダの町にはほかにも特徴がある。それは町のほぼ中心にある大きな神殿である。

 基本的には神殿一つにつき、それぞれの信仰する神の石像が置かれることが基本であるが、この町では一つの神殿に数多くの神々の石像が置かれている。

 元々はこの町を作った町長が信仰していた神ヴァ=セアンの石像だけを置いていたのだが、人が集まると、各々の信仰する神が存在するため神殿を作るのだが、集まったとはいえやはり数は国には及ばないため、一つの大きな神殿を作り、そこにそれぞれの神を設置することにしたのだ。

 

 同時に町長は来るものを拒まない性格であったため、穢れゆえに嫌われるナイトメアだろうと蛮族のコボルドであろうと受け入れた。そしてレアンダの町は出来上がっていったのである。

 

 当然町に住み人たちは人族、蛮族などで見ていない。隣人として相手と接している。

 

 そしてその結果、人族と蛮族の混じった友人関係が出来上がるのである。

 

「おーい! アミー! おーい!!」

 

 一人の少女が町中を走りながらアミと呼ばれる人物を探していた。

 

「おやおやヒビキちゃん、アミちゃんを探しているのかい?」

 

 一人のコボルドがヒビキに声をかけてきた。

 

「あ、マレッタおばさん。アミを見なかった?」

 

「さっきまでイオリちゃんに怒られていたようだったねぇ、ああ、広場のほうにいたよ」

 

「そっか、ありがと!!」

 

 ヒビキはそれを聞いて再び走り出す。

 

「相も変わらず元気だねぇ」

 

 マレッタは犬顔をくしゃりと崩し、笑顔を見せる。

 

 

 

 マレッタからの情報を頼りに、町の中心にある広場に面した場所にある神殿へと向かっていた。するとお目当ての人物は広場にて寝っ転がっていた。

 

「おーい! アミ、聞いてくれよ!!」

 

「うわっ、ヒビキ姉っ、何、どしたの?」

 

 驚いたように飛び起きるアミと呼ばれた少女。彼女の背には羽が生えており、頭部には立派な角がある。

 彼女はいわゆるドレイクと言われる蛮族の中でも高位の種族なのだが、生まれつき魔剣を持って生まれる通常のドレイクと違い彼女は剣無しで生まれたために、下っ端種族のゴブリンにも舐められ、落ちこぼれ扱いを受けるドレイクになっている。

 とはいえ彼女は生まれて間もなく育ての親に助けられたため、ほとんど人族のように育てられている。

 

「この町の近くに見たことのない洞窟があるんだよ! きっと父さんたちが言っていた魔剣の迷宮ってやつだ! 行ってみないか!!」

 

 魔剣の迷宮は特殊な力を持つ武器がある日とある場所にて突然迷宮(一概には迷宮と呼べない作りもありえる)を生み出す。冒険者はそこへ入り、最奥にある魔剣を回収して一攫千金を狙うこともある。ただし、危険と隣合わせであり、なにが起こるのかわからないのが魔剣の迷宮である。

 

「え、二人で行くの?」

 

「何言ってんだ。タカネにイオリ、アズサ姉さんを誘うに決まってるだろ?」

 

「うぇぇ、ワタシ、今さっきまでイオリ姉に怒られたばかりなんだけど」

 

「どうせまた勉強をサボったんだろ?」

 

「それはあなたもでしょヒビキ?」

 

「…………え?」

 

 声のした背後に視界を向けると、一人のナイトメアの女性が立っていた。

 

「あ、アズサ姉さん。ちょうどよかった今「それよりもヒビキ、あなたまた課題をやっていないようね?」う、それを今言う?」

 

「元気なのはいいけれど、もう少し勉強にも身を置いてほしいわね」

 

 手を腰に当てて怒っていますという雰囲気を出しているようだが、まったく伝わりそうにない。

 

 アズサはヒビキの実の姉というわけではない。実際にはナイトメアであることから捨てられていたところをヒビキの実の両親に助けられ家族として迎えられている。

 

「そういうのは姉さんのほうが得意じゃん? アタシは行動派だし」

 

「もう。お義父さんやお義母さんが呆れちゃうわよ?」

 

「うー、姉さん帰ったら教えて?」

 

 ヒビキはアズサに甘えるように近づく。

 

「ちゃんとやるって約束してよ?」

 

「うん。するー」

 

「もっと真剣に」

 

「がんばります!!」

 

「もう……しょうがないわね」

 

 アズサは苦笑いでヒビキを見つめる。自分の義妹がかわいいのか、どうしても甘やかしてしまうのである。

 

「相変わらずアズサ姉さんはヒビキ姉さんに甘いですね」

 

 そこへやって来たのは二人の女性。一人は女性にしては高身長で頭部に牛のような角を生やした女性。

 もう一人は左目を髪の毛で隠した少々小柄な少女であった。

 

「あら、タカネちゃんにイオリちゃん。どうしたの?」

 

「ヒビキ姉さんが町中を走り回っていると聞いたので」

 

 どこかツンとした表情で答えるイオリ。

 

「ふっ、あれだけ騒いでいたら何かあったんだろうと思うだろう」

 

 クールな笑みで答えるタカネ。

 

 二人はウィークリングと呼ばれるいわば蛮族版ナイトメアな存在だ。蛮族から生まれる中には時に、人間に近い姿で生まれてしまうことがある。それがウィークリングである。本来よりも穢れが少なく、その種族の特徴的な力も損なわれているため、弱く脆いということから生まれてすぐ処分されるか、早々に戦場に立たされて死ぬというのが大半である。

 

 牛のような角を持つタカネはミノタウロスウィークリングと呼ばれ、元々の種族であるミノタウロスのように力があるが、伸びしろは少々時間がかかる。

 

 一見人のように見えるイオリはバジリスクウィークリングと呼ばれる限りなく人に見える蛮族である。違いは隠してある左目が石化を引き起こす目であることであるが、本来のバジリスクよりもその性能は劣化している。

 

 ここにアミを加えた三人は生まれも明確な種族も違うが現在の両親に命を救われ姉妹として育てられている。

 

 ちなみにだが、実の子もいるのだが、兄弟仲は良好である。

 

「ヒビキ姉が魔剣の迷宮みたいなのを見つけたんでって」

 

「もう、また勝手に町の外に出たのねヒビキ」

 

「ごめんごめん。でも今回は当たりかもよ?」

 

「そう言いますけど、前も大きな遺跡を見つけたと大はしゃぎした結果、すでに他の冒険者たちによって大方の物を持っていかれた後だったと思いますけど?」

 

「そうきつく言うなイオリ。ヒビキ一人が中に入らなくてよかったと皆言っていただろう」

 

「けど、遺跡を見つけたときは一人です」

 

「イオリ姉はヒビキ姉が大好きだもんね。今回の魔剣の迷宮は二人で見つけたかったんでしょ?」

 

「アミ!!」

 

「そっか、ごめんなイオリ、今度は二人で何か見つけよう?」

 

 ヒビキはイオリの前までやってきて両手を握る。

 

「ううっ、べ、別にヒビキ姉さんと何かをしたいわけじゃないというか……」

 

「イヤ?}

 

「イヤというわけでもなくて……その……」

 

「ほらほら、ヒビキ。うちの妹を揶揄っている場合じゃないでしょう? どこでその迷宮を見つけたの?」

 

「お、タカネは乗り気?」

 

「まぁ、自分の技量がどれほど上達したかを図るには実戦が一番だからな」

 

「はぁ、まぁ……いつもの流れね。ヒビキ、帰ったら勉強をしてもらうからね」

 

「はーい」

 

「それはアミも同じね。分かった?」

 

「うぇーい」

 

「イオリがしっかりしていると私は言うことがないな」

 

「タカネ姉さんも剣ばかり振っていな「よしっ、準備に移ろうか」もう!」

 

 五人は両親に話をした上で許可をもらった。

 全員成人であり、一応冒険者を名乗る以上は自分の命は最低限自分で守るのが一般的だ。

 ヒビキとアズサの親――カドゥケアス夫妻は無理はするなとだけ言って了承してくれた。

 が、タカネら姉妹の育ての親――レイモンド=ファルクスとアーリアは過保護なところがあるため、期限を設けられ、その期限までに戻らないのであれば自ら連れ戻しに行くと言う。

 

 何を言っても無駄だと分かっている姉妹はそれを了承。ヒビキとアズサに伝えると苦笑いを浮かべる。ファルクス夫妻の過保護なところは何度も見てきているからである。

 

 その後、五人は道具や装備品の確認をしつつ、広場近くの神殿にてそれぞれが信仰する神の石像の前で礼拝を行った。

 

「うん? おお、アズサではないか! うむうむ。今日もしっかりと私の可憐な石像に挨拶をするとはさすがだな!! しかし、こうして実物がおるのだ。私のほうにしておけばご利益があるやもしれんぞ?」

 

 神殿内でひと際大きな声を出す少女。僅かではあるが、人ならざるものの雰囲気を出している。

 

「これはユリス様。この時間は町で布教をしているかと思ったのですが」

 

「うむ、そうしたかったのだが、コボルドの童たちに囲まれて振り回されてな。見よ、気に入っていた服が泥だらけだぞまったく!」

 

 アズサと話すユリスとは、戦勝神ユリスカロア本人であり、まごうことなく女神なのだが、神々の戦争が終わりを迎えると、戦いに関する協議を持っていた彼女の信者たちは時代とともに数を減らしてしまい、現代においてはアズサ一人が神官としての技能を有している存在となっている。一応信仰をするだけの町民はいるにはいるが熱心ではなく、町を守るために必要かな? という程度である。

 

 ちなみに神々は人々から忘れられてしまうと完全に消滅してしまう。人々から信仰されることで、自身の存在を確立している。なのでユリスカロアは割と消滅を迎えそうになっていた女神である。

 

 神々にも時代によって神格に違いがある。始まりの神といわれているライフォスやティダン。戦争を引き起こしたダルクレムなどは古代神(エンシェントゴッド)といわれ、昔から世界各地で信者が存在する。

 ユリスカロアも古代神であるが、その各地方のみで知名度が高いといわれる小神(マイナーゴッド)と呼ばれる神ほどの力しかなく。地上――レアンダの町に住み着いており、そこで信者を増やそうと活動する始末である。

 この、女神らしからぬ行動からヒビキは駄女神と言ったことがある。

 

「それはそうと、どこかへ出かけるのかアズサよ」

 

「はい。妹のヒビキが魔剣の迷宮を見つけたというので見てこようかと」

 

「この前も遺跡を見つけて騒いでいなかったか?」

 

「ええ、また勝手に町を出たようです」

 

「やれやれ、ミルタバル信者らしいのか、それとも性格故のことなのか分らんな」

 

「全くです」

 

「まぁ、気を付けていくのだぞアズサ。なんなら何か魔法を使うか?」

 

「いいえ、己の力で道を切り開きましょう。ましてやユリス様の神官として、知恵を持って」

 

「ほほう。言うではないか。だが、あらゆる方法を持って勝利をつかまねばならんぞ? 生きてこそだ」

 

「承知しております」

 

「うむうむ。この調子でお前が活躍してくれれば、いずれは「おーい駄女神ユリス様ーそろそろうちの姉さんを開放してくれー」駄女神言う出ないわー!!」

 

 ユリスカロアは怒ってヒビキの元へと突撃していったが、ひょいっと避けられ転んでしまった。

 

「ほら、ヒビキ遊んでいないでそろそろ行くわよ」

 

「はーい」

 

「では、行ってまいりますねユリス様」

 

 タカネらと合流して五人は神殿を後にする。

 

「…………せめて起こしてくれアズサよ……」

 

 倒れたユリスを放置して。

 

 

 

 五人は身支度を整えると町の南から出発。街道から離れた場所にあるというその迷宮は思いのほか近く、半日で行ける道のりであった。

 

「というより、いつ迷宮を見つけたのさヒビキ姉」

 

「朝早起きしてちょっと散歩をな」

 

「町の外に出て散歩をしちゃだめでしょ」

 

「はーい」

 

「けど、少々時間は遅いですね。今日は迷宮近くまで行ったらキャンプをして明日挑むべきでは?」

 

「暗視があるから私とアミは平気だか……まぁ、危険は排除する必要があるな」

 

「そうね。幸いおじ様が設けてくれた期限は明日の夜。無理をする必要はないわ」

 

「じゃあ、交代をどうするか決めたら早めに休もう」

 

 五人はテキパキとキャンプの支度と、周囲に罠を設置して敵への警戒に備える。

 

 何事もなく翌日の朝を迎えた五人。朝食と片付けを終え、ヒビキが見つけた迷宮の入り口へ向かう。そこは山が出来上がっており、ぽっかりと穴をあけていた。

 

「ここが……確かにヒビキ姉さんの言う通り、見たことないです」

 

「うーん。確かにね。この辺にこんな山はなかったはずだし」

 

「中は暗いか……火をつけておこうか?」

 

 ヒビキは火を起こす用の道具を取り出す。

 

「そうね、少し時間はかかるでしょうけど、お願いするわ」

 

「よし来た! アミ、タカネ。手伝ってくれ」

 

「はーい」

 

「ああ、任せてくれ」

 

 三人は協力して火を起こす。種火を作り、用意した松明に移していく。暗視を持たないヒビキ、アズサ、イオリの内、格闘のヒビキが手を塞ぐわけにもいかないため、松明はアズサとイオリが持つことになった。

 

「んじゃ、行こうかアズサ姉さん」

 

「ええ、暗視を持つアミちゃんは斥候も兼ねているから先頭をお願い」

 

「りょーかい!」

 

「ヒビキは射程の短い格闘だから、アミちゃんの次に前へ……見えにくいけど平気?」

 

「平気だよ。いざとなったらアミを盾にして「ちょっとヒビキ姉!」冗談だよ。とにかく、アタシは平気だから」

 

「そう。じゃあ殿はタカネちゃんにお願いするわ。後ろへの警戒もしないといけないし」

 

「ああ、任された」

 

「私とイオリちゃんは真ん中で松明を持ちながら行動ね」

 

「はい。わかりました」

 

「それじゃ、行きましょう」

 

 五人はぽっかりと開いている穴へと入っていった。

 

 松明の明かりによって内部の作りが見える。

 

「やけに綺麗な洞窟だな。なにかでくりぬいたみたいだ」

 

 壁に触れながらヒビキはぽつりと言う。

 

「やはり魔剣の迷宮でしょうか?」

 

 ヒビキの手元を照らしていたイオリが後ろにいるアズサに聞く。

 

「その線が有効ね。何があるか分からないけれど」

 

「でもでも、もし強い魔剣だったら町のためになるよね?」

 

 魔剣があるかもしれないということからテンションが高いアミ。

 

「町のためになりような物であればいいんだがな」

 

 それに対してあくまでも冷静に返すタカネ。

 

「て言っても、町の人たちはアタシらより強い人が多いけどな」

 

「守りの剣がないからどうしても鍛えなきゃいけないしねー」

 

 強い穢れを寄せ付けない守りの剣と呼ばれる代物は基本的に国が設置をしている。だが、彼女たち五人が暮らしている町には存在しないため、蛮族が襲ってくることがある。

 

 とはいえ、実力者が多いレアンダの町民たちはそこらの蛮族に後れをとることはまずない。

 

 さらには人間に化けることができるオーガなどの一部の種族はこの町に近づくと人の姿を維持できなくなってしまい、一切の潜入が行えなくなっている。

 

「んん?」

 

「どうしたアミ?」

 

 斥候として少し先を見てくると言い、先へと移動したアミ。入り組んでいた先で足を止めていた。

 

「うーん。少し明るい場所があるね。松明は要らなくなるかも」

 

「ここまで敵が出てこなかったとみるとより警戒が必要ね。みんな、気を付けて」

 

 アズサが気を引き締めなおし、五人はアミの言う明るい場所へと向かう。

 

 たどり着いた場所は、貴族などが暮らす豪華な屋敷であった。ただし、洞窟内部であることは変わらないのか、窓の外は土で覆われている。明かりがなければ少々暗い印象を与える。

 

「ますます迷宮感があるな……」

 

「なんで洞窟の中に屋敷なんだろうね?」

 

「魔剣の迷宮に常識はないって聞くしなーよく分からん」

 

「アミ、ヒビキ姉さん。警戒をしてください」

 

「ごめんごめん」

 

「不気味な感じだけど気配は感じないんだよなー、アミは?」

 

「うーん今のところは平気かな」

 

 松明を壁に設置されていた使われていない松明とと交換し、中央にある二階への階段をさけ、一階を調査する。

 

 しかし、家具があるだけで、そのほかには何もなく、五人は一度、入り口へと戻った。

 

「家具は新品同様。しかし、それ以外は何もない。どういうことだ?」

 

「……二階の調査をしてみましょうか」

 

 アズサが階段のほうへ進もうとしたその時、

 

『ギィ』

 

 僅かな声を聴いたアミとヒビキの動きは早く、アミはアズサを止め、ヒビキは声を荒げ「円陣!!」と言う。

 

 その言葉を聞いたタカネとイオリも素早く動く。

 

 アズサとイオリの周囲をヒビキ、アミ、タカネの三人で囲み、周囲を見る。

 

「敵かヒビキ?」

 

「ああ、僅かだが、声がした。人の声じゃない」

 

「うん。ワタシも聞いたから間違いないよ」

 

『ギィ、ギィ』

 

「近いぞ」

 

「っ! 二階のあそこ!」

 

 アミが指を指したのは、二階へと上がる階段へと繋がる途中にある柱の陰から覗き見る奇妙な生物だった。

 

「姉さん、イオリ、あれはなんだ?」

 

「…………分かりません。アズサ姉さん」

 

「私にも分からないわね」

 

『ギィ、ギィ、ギィ!』

 

 生物は成人男性ほどで、黒い肌で体の至る所から禍々しい何かが生えていた。

 

 生物は五人に狙いをつけたのか、階段から飛び降りると一直線に向かってきた。

 

『ギィィィィィィィ!!!』

 

「チィ!!」

 

 狙われたヒビキは背後にいるアズサ、イオリのためにも避けることをせず、攻撃を防ぐ。

 

「舐めるな!!」

 

 お返しと言わんばかりに、二連続で殴り、怯んだところに蹴りを食らわせ、後退させる。

 

『ギィィ!』

 

「とりあえず殴れるし、蹴ることもできるな」

 

「ならば早々に片付けよう。アミ」

 

「了解タカネ姉」

 

 両手剣を構えるタカネとそれぞれの手に剣を持つアミが謎の生物に接近。三つの斬撃が敵を打ち滅ぼした。

 

『ギィィィィィ!!』

 

 断末魔の叫びとともに敵は黒い砂と肌についていた鱗を残して消えた。

 

「おいおい、まともに戦利品も頂けないのか、何なんだあれは」

 

「見たことない生物でした」

 

「そうね。私たちはすべてを知っている訳でもないから、致し方ないといえばそうなのだけど……ちょっと気になるわね」

 

「この鱗みたいなのなんだろ?」

 

「不用意に触れるなよアミ。なにが起こるか分からないからな」

 

 剣の先で鱗を突くアミ。

 

「ふむ、見たところ触っても平気そうだけど……」

 

「持ち帰って調べてみますか?」

 

「そうね。町長やお義父さん、レイモンドおじ様に聞いてみましょうか」

 

 アズサは鱗を持ってきていたカラの袋に入れる。

 

「…………アミ」

 

「うん」

 

 袋に入れ終えた直後、ヒビキとアミの表情が険しくなる。

 

『ギィィィィィ!!!』

 

 先ほどと同じ異形な生物が五体現れた。そのうち三体は倒した者と同じであったが、残り二体は黒い肌をしているが、三体と違って鱗の量が少ない。が、腕にはその分黒いオーラを発していた。

 

『ギャオオオ!!』

 

 そのうちの一体が腕を五人のほうへと突き出すと、腕からソーサラーの魔法リープ・スラッシュが放たれた。

 

「ぐっ!」

 

「タカネ!」

 

「平気だ。なんとか抵抗した」

 

「魔法を使える個体ってことか。姉さん、ああいうのは先に倒したほうがいいんだよな?」

 

「ええ。けど、前列の三体がそれを許さないでしょうね」

 

「だったら――」

 

 ヒビキは右手の拳を左掌にバシッとぶつけると、

 

「手早くぶっ倒す!!」

 

 三体の前衛の内、中央に立っていた者へと攻撃する。

 

 それに続いてアミとタカネも連続で攻撃する。確実に一体を倒した。

 

「イオリちゃん。私たちも行くわよ!!」

 

「はい!!}

 

 ナイトメアの種族特徴というべき異貌を発動するアズサ。これを使えば、詠唱することなく魔法を使うことができる。

 

「イオリちゃんは前列のやつに眼を使って、私は後衛の連中に魔法を使ってけん制する!」

 

「はい!」

 

 イオリは左目を隠していた髪を手でまくり、左目を露出させる。ウィークリングであれ、元はバジリスク。左目には弱体化しているとはいえ、石化の力が宿っている。

 

 残された前列二体の内の一体はイオリに睨まれたことによって、動きが鈍くなった。

 

「前衛の三人はイオリちゃんの眼で鈍いほうを先に倒して!」

 

『了解!!』

 

「そして私の相手は――お前たちよ! エネルギーボルト!!」

 

 アズサの魔法は後衛の二体の内、先ほど魔法を使ったほうへとむけられた。命中はしたようだが、ピンピンしている。

 

「やはり、魔法への抵抗が強い個体ね。イオリちゃん、眼の力を後衛に、アルケミストの補助をタカネちゃんに使って! タカネちゃん、あなたは後衛の方へ意識を集中して、ヒビキ、アミちゃんは急いで前衛を倒して!}

 

「タカネ姉さん!」

 

 イオリはアルケミスト技能を駆使し、クリティカルレイを使う。

 

「感謝するぞイオリ」

 

「タカネの道を作るぞアミ!」

 

「いよーし! やるぞー!!」

 

 二人は連携して二体目を撃破、そこをタカネが駆けていく。最後の一体はイオリの魔眼によって動きが鈍くなっている。

 

「はああああああ!!}

 

 両手剣を豪快に振り回し、後衛に強力な一撃を与えた。後衛の敵は物理攻撃に弱いのか、はたまたタカネの力が強すぎたのか分からないが、会心の当たりだったようで、一体の敵が一撃で散った。

 

「残敵二」

 

 残り二体は抵抗するが、五人の連携になすすべもなく散る。

 

「ギィウエエエエエエエ!!」

 

 だが、最後の一体であった後衛型の敵は最後に断末魔の叫びとは言えない叫びをあげて散っていった。

 

「まずいんじゃないか、姉さん」

 

「ええ、おそらく今のは…………」

 

『ギィギィギィギィギィ!!』

 

「げぇ、仲間がいっぱい来た!!」

 

 二階からワラワラと異形の敵が現れる。

 

「さっきから二階の方から来るな……」

 

「何かあるんでしょうか?」

 

「それを調べるためにも、こいつらを倒すわよ!」

 

『了解!』

 

 追加で現れた敵は八体と多い。加えて先ほどの連中とはまた違いが現れた。

 

「今度は剣を持った敵かよ」

 

「けど、なんか不釣り合いっていうか……」

 

「……過去に冒険者が持っていた物を使っているのかもね」

 

「なるほど…………こいつらに殺されただけではなく、所有物まで好き勝手に使われているのか」

 

『ギィィィィィィィィィ!!』

 

 八体の敵が一斉に襲ってくる。

 

「ハッ!」

 

 ヒビキは近づいてきた敵へと攻撃しかし、

 

「うぐっ」

 

「ヒビキ姉! どうしたの!?」

 

「こいつら、さっきより硬い。鉄を殴った感覚だ」

 

「先ほどのやつより物理的に硬いのね? だったら」

 

「ああ……姉さん、イオリ出番だ!!」

 

「ええ、エネルギーボルト!!」

 

「任せてください! アースハンマー」

 

 今度はアズサとイオリが活躍して、敵を倒していく。特に妖精魔法を使うイオリの魔法は敵が嫌がるのか、大きなダメージを与えた。

 

「私たちも負けてられんな」

 

 タカネは剣を握り直し、敵へと駆けていく。

 

「いよーし、ワタシだって!」

 

「殴りにくいなら投げ飛ばせばいいってな!!」

 

 八体の敵も五人の敵ではなく、次々と倒されていった。

 

「これで終わりだ! はあああ!!」

 

 タカネの全力攻撃で最後の一体が塵となり、ようやく一段落ついた。

 

 五人は回復を優先。改めて準備を整えると、二階へと上がる。

 

「この屋敷、意外と広さは無いんだな」

 

「そのようね。さて、特に敵が多く出てきた右側だけれど……」

 

 一つ一つ調べていくが、何か特別な物があるといった様子はない。同様に左側にも確認できなかった。

 

「どーする? なにも見つからないよ?」

 

「このまま手ぶらというのも悔しいですね……」

 

「…………みんな。この屋敷に入ってから、何かおかしいなというところはなかった? どんな些細なことでもいいの」

 

「そう言われても、洞窟内に屋敷という時点でおかしい話だと思うが」

 

「まぁ、タカネの言う通りだよなー他に何かあったっけ?」

 

「うーん」

 

 五人は思い出そうとするが、何も思い浮かばない。

 

「残念だけれど、引き上げるしかないわね」

 

 そう言ってアズサは入る際に置き換えていた松明を取ろうとした。

 

「…………そういえば、なんで入り口の松明は燃えてないんだろうな」

 

「え?」

 

「ほら、入ってきたとき、燃えていない松明が二つあったろ? 他は燃えてるのに」

 

「そういえばそうだったな……あの時は私が一つ交換したから覚えている」

 

「あ、そーいえば! 二階になんで松明を置くところがあるんだろうって思ったよ!!」

 

「…………なるほど、イオリちゃん。この燃えていない松明に火を頂戴」

 

「あ、はい! ティンダー」

 

 火の妖精魔法で松明に火をつける。

 

「ヒビキ、アミちゃん。これらを二階の松明を置く場所に」

 

 二人は松明を持って二階へ駆けあがる。

 

 二人が松明をセットすると、二階へ上がる階段が突然動き出す。

 

 左右に分かれるように動き、その間に空間が広がる。

 

「どうやら奥があったみたいだな。ご丁寧に明かりもある」

 

「行きましょう」

 

 二階から戻った二人と合流し、五人で新たに見つかった道を進む。

 

 道は金と赤の二色が豪勢交じり合った道で、左右の壁には細長いろうそくが光を放っていた。

 

「一本道か……敵は――――「伏せてぇ!!」っ!?」

 

 アミの声で全員伏せることに成功。その頭上を早い何かが、通り過ぎて行った。

 

「っ……まさか今のは」

 

「あそこにいる!!」

 

 アミが見ている方を見ると、両手で持つ大きな銃を構えた異形体の姿があった。

 

『ギィギィギィ!』

 

「今度はガン使いかよ!」

 

 異形体はリロードを行うが、てこずっていた。

 

「……どうやらまだ慣れていないのかもな」

 

「ならばチャンスよ、ヒビキ!!」

 

「よおおおしっ!!

 

 アズサの声に反応したヒビキがダッシュで敵へと近づく。

 

 動く前にイオリからヴォーパルウェポンの援護をもらっているため、いつにもまして強力な攻撃を行えると考えていたが、敵は両手で持つガンを捨て片手で持てるガンをそれぞれの手に持っていた。

 

「なに!?」

 

 すぐに倒せると考えていたヒビキだったが、敵の行動に驚き、隙ができてしまった。

 

「ヒビキ、上に!」

 

 後方からタカネの声に反応してヒビキは頭上にあったシャンデリアを掴み攻撃を回避、そこへアズサとイオリの魔法が飛来。遅れてアミとタカネも全力で攻撃。接敵された異形体はあっけなく散った。

 

「ふぅ……ありがとうなアミ、あの時声をあげてもらわなかったらアタシは危なかったよ。タカネもありがとな。危うく体に穴が二つ出来そうだった」

 

「気にするな。付き合いが浅いわけじゃないんだ」

 

「そうそう。あ、それより。これ」

 

 アミは敵が持っていたガンを見せる。

 

「ボロボロだな。これじゃ問題が起きるのも無理ないか」

 

「戦利品を頂いたらこの辺りを調べましょう」

 

「あ、ここの壁、動くみたい。だから急に現れたんだね」

 

 敵の背にある壁がぐるりと回る仕掛けになっていることに素早く気が付くアミ。お手柄だ。とタカネに頭を撫でられると嬉しそうに笑う。

 

 奥を調べると、そこには巨大な装置が置かれている空間へとやってきた。

 

「なんだこれ……」

 

「調べてみましょう」

 

 五人は装置周辺を調べていると、

 

「っ!! これは!」

 

 イオリが絶句したように身を固くした。

 

 他の四人が近づくと、そこには透明な筒の中に捕らえられていた人間が五人が戦っていた異形体へと姿を変える光景だった。

 

「っ、あの武器は元々の所有者の物だってことか!」

 

「装置を止めましょう。まだ助けられるかも「無理よ」っ!?」

 

 五人が警戒する中、フードを被った女が現れた。

 

「ごきげんよう。ここまで来るとは驚いたわ。そしてよくも試作品たちを倒してくれたわね」

 

「試作品だと!? お前、何者だ!!」

 

「それに答える義理などないでしょう? でも、代わりの答えをあげる。あなたたちはここで死ぬという答えをね」

 

 女が右手を光らせる。

 

 すると、一斉に装置が動き出し、筒に入れられていた人間たちが一か所に集められ融合し始めた。

 

「貴様、何をっ!」

 

「いずれはやろうと思っていたけれど、三つ眼かうまくいかないわね、失敗だわ。まぁ、あなたたちを殺すことぐらいはできそうかしら」

 

 筒から出てきたのは複数の人間の交じり合った異形体だった。ある意味で黒い肌の怪物と分かる姿であるのが、気分を害さない最後の救いかもしれない。

 

『ヴォオオオオオオオ!』

 

 右が三つの腕、左が一つというアンバランスさで、体に顔があったりと素人からしてもうまくいっていないようにしか見えない。

 

「じゃあ、さようなら」

 

 女は魔法を使って姿を消した。

 

「テレポート……高い実力はありそうね」

 

「姉さん、そんなことよりもあれを!」

 

「そうね、ごめんなさい。あれはもう人じゃないわ、私たちで楽にしてあげましょう」

 

「うん……」

 

「分かった」

 

「はい」

 

「うし、行くぞ!」

 

 イオリの魔眼の力で微弱ではあるが、動くを鈍くし、イオリの補助を受けたタカネの一撃が傷を作る。

 

『ヴォオオオオオヴァアアアア!!!』

 

「なに!?」

 

 しかし、驚くべきことに怪物は傷を癒す力を持っていた。

 

怪物は怪我を恐れぬ様子を見せずに、ヒビキたち五人を正確に狙ってくる。

 

「何で傷が!?」

 

「複数の人間の集まりだからよ! 傷ができれば治癒しようとする。それがあいつはとてつもなく強いのよ!」

 

後方から魔法で援護するアズサが言う。

 

「魔法でも傷を残すことができません!」

 

イオリの悲鳴にも聞こえる声が前衛三人にとってどれほどショックなのか分かっている。

 

「しっかりしろイオリ!」

 

「タカネ姉さん……」

 

「義母さんから学んだ魔法が通用しないのはショックなことだろう。だが、ここでは一瞬でも気を抜けば死に繋がる。まずは目の前の敵に集中するんだ」

 

「でも、どうやれば……」

 

「簡単なことだ! ヒビキ、アミ!」

 

「ああ、あいつの体に治癒できないほどのダメージを」

 

「与えちゃえばいいってね!!」

 

『おおおおおおっ!』

 

 怒涛のラッシュを与え、そこへアズサの魔法が追撃、怪物は怯み、回復も遅れを見せた。

 

「畳みかけるわよイオリちゃん!!」

 

「はい!」

 

 アズサとイオリの魔法がダメージを蓄積、再びヒビキとアミの連続攻撃を与えると最後は渾身の振り下ろしを見せたタカネの一撃で怪物は散った。

 

「ふう……」

 

「ナイスな一撃だったなタカネ」

 

「私一人ではなくみんながいたからだろう。全員でもぎ取った勝利だ」

 

「だな」

 

「さて、この装置分解して破壊しましょう」

 

「ああ、こんな物あっていいはずがない」

 

 五人は使えそうな機器をバラし、使えなさそうな物は破壊した。大元の装置は戦利品を纏め、死者に礼を捧げてからアズサのスパーク機器を攻撃爆発を起こさせた。

 

 屋敷を出て、洞窟内を急いで駆け抜け五人は無事脱出した。

 

 大きな爆発後、周囲の光景はまるでなにもなかったような光景へと変貌していた。

 

「消えた? どういうことなんだよ……」

 

「ヒビキが見つけたあれは、冒険者を連れ込み、あそこで怪物に仕上げる罠だったんでしょうね。なんの目的があったかは分からないけど」

 

「くそ、なんかすっきりしないな」

 

「仕方ないってヒビキ姉、今回は無事だったことを喜ぼ?」

 

「そうですよ。それに、あの女は平気であの装置を捨てたってことは……」

 

「ほかにもあるでしょうね」

 

「理由は不明だが、あの女がしていることは許せることではないな」

 

「ああ、次に会うまでに力つけて一発ぶん殴ってやるぜ」

 

「さあ、今は戻りましょう。レイモンドおじ様が心配しているかもしれないし」

 

 五人は少々思い足取りで帰路につく、謎をいくつか残しながらも彼女たちは無事帰還したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………失敗とはいえ、なかなかの出来であったのに倒すとは、中々できるわね。でも、新しい世界であなたたちは不要だわ」

 

 女は離れた場所から五人を見つめる。

 

「工房は一つ潰されたけれど、このザルツにはまだある。大陸各地の工房もまだまだ活動を続ける……ああ、楽しみだわ、早く、早く新しい世界を見たいわ……」

 

 恍惚の笑みを浮かべる女はその場所から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リザルト


 基本経験値1000点
 GMからのボーナス経験値1000点
 人間だった怪物 レベル3 6体撃破 180点
 強化された怪物 レベル4 8体撃破 320点
 ガンを使う怪物 レベル4 1体撃破 40点
 失敗作の怪物  レベル5 1体撃破 50点


 計2590点



名誉点獲得


 戦いの始まり(30点)


 遺跡のような場所で出会った謎の女との繋がりが生まれたことにより、
 彼女たちはこれからも戦いをすることになる。
 なお予断であるが、レイモンド氏は娘たちの熱烈なハグをした。
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