ボクとカノジョと召喚獣   作:気分は少年

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それでは続きになります


第4話 作戦会議

 人間、体を動かす時最後にものをいうのは精神力である。特に体に疲労が溜まり、動かしにくかったり、眠たかったり、寒かったりで布団から出られないときなど、そこから這い出るには強い意志が必要である(本人談)。

 それは吉井明久も例外ではない。一言でいえば、今の彼の状態は満身創痍、しかし彼はFクラスに向かう廊下を進む。今の彼を突き動かすのは、ただ一つの強い殺意(おもい)である。

 

明久「(ゆぅぅ――――うじぃぃぃぃ―――――!!!殺ス、殺ス、コロス。アノオトコ、イカシテオクモノカ。)」

 

 明久はなんとかFクラスまで辿り着き、その扉を開けた。

 

明久「ゆぅぅ――――うじぃぃぃぃ―――――!!!よくも騙したなぁ―――――!!」

 

 そして、瞬時に標的を発見し、残りの力を振り絞り飛びかかった。

 

雄二「やっぱそうきたか!!くらうかよっと。」

 

 雄二はそばにあった卓袱台を盾にしこちらに向ける。

 

明久「!!なっっ雄二キサガっ!!!」

 

 気付いた時には、もはや止まることもできず、僕は卓袱台に突っ込み、床に倒れた。

 

雄二「それで、宣戦布告はちゃんとしてきたんだな?」

 

明久「・・雄二、その前にいうことがあるだろぉっ!!Dクラスのやつら、いきなり襲いかかってきたよっ!!」

 

雄二「やはりそうきたか。ああ、そうそうご苦労だったな明久、安らかに眠れ。」

 

 そういって雄二は十字を切る動作をする。

 

明久「勝手に殺すなっ!!しかもやはりって、使者への暴行は予想してたな!!わかってて僕を騙したな!」

 

雄二「当然だ。これくらい予想できなきゃ代表は務まらん。」

 

 平然と言いやがったコイツ、このウラミいつか晴らす。

 

姫路「吉井君、大丈夫ですか?」

 

 僕の状態を心配したのか、姫路さんが駆けよってくれた。

 

秀吉「明久、今手当するから待っておれ。」

 

 秀吉は救急箱を持って駆け寄ってきてくれた。

 

明久「大丈夫だよ、姫路さん。まだ痛いけど、なんとか動けるようになってきたから。秀吉もありがとう。でもどうして救急箱なんて持ってるの?」

 

秀吉「うむ、演劇の小道具じゃ。まさか本当に治療することになるとは思わなんだが・・・・」

 

 僕に説明しながら、秀吉は手慣れた手つきで治療を始める。

 

明久「秀吉手際がいいね。演劇での練習の成果かな?」

 

姫路「本当です、速くて無駄もないですし。」

 

 そう聞くと秀吉は、少し遠い目をしながらいいにくそうに

 

秀吉「・・・いや何というか、・・日常を生きる貫くために必要じゃったとういことかのう。」

 

明久・姫路「???」

 

 なんだろう、今の秀吉からは哀愁が漂ってくる。

 

秀吉「とりあえずこんなもんじゃろう。少しは良くなったかの?」

 

 

明久「うん、ありがとう秀吉。大分良くなったよ。」

 

島田「吉井、ホントに大丈夫?」

 

明久「島田さんも心配してくれてありがとう。大丈夫だよ、秀吉の治療が上手だったから。」

 

 まさか島田さんまで心配してくれるとは思わなかった。きっと彼女も本当は心のやさし「良かった、ウチがまだ殴っても大丈夫よね♪」・・・・違う!!彼女の心にはきっと鬼が住んでいるっっ!!

 

明久「やっやめてよ島田さん!!!今度こそ死んじゃう。」

 

秀吉「島田よ、これ以上は明久が不憫じゃ・・・ここは拳を引いてくれんか?」

 

 秀吉は、僕と島田さんの間に入り、島田さんを説得する。

 

島田「やーねー2人とも、冗談に決まってるじゃない。さすがに今の吉井をこれ以上痛めつける趣味はウチには無いわよ。」

 

 そう言ってニカッと笑い掛ける島田さん。彼女の冗談はシャレにならない。

 

雄二「もういいか?それで、開戦時刻だがちゃんと告げたか?」

 

明久「一応今日の午後に開戦予定と告げてきたよ。」

 

雄二「よし、なら屋上で作戦会議だ。いつものメンツに、姫路と島田も参加してくれ。」

 

 そういって雄二は先に外へ出て行った。あいつは少しでも友人をいたわる心を身につけるべきだろう。

 

姫路「あの、吉井君。痛かったりしたらいってくださいね。私、手伝いますから。」

 

 雄二とは反対に優しい姫路さん。雄二に彼女の爪の垢でも飲ませれば、少しは優しくならないだろうか。

 

明久「ありがとう姫路さん。でもさすがに女の子に無理はさせられないよ。」

 

秀吉「明久の言う通りじゃ、もしものときは、わしとムッツリーニでカバーするから大丈夫じゃ。」

 

明久「何言ってるのさ、秀吉も女の子なんだから無理しちゃだめだよ。」

 

秀吉「だからわしは男じゃといっとるじゃろう。」

 

土屋「・・・・そんな些細なことは気にするな。それより早く屋上にいかないと時間がなくなる。」

 

秀吉「わしにとっては些細なことではないのじゃが・・」

 

 秀吉はぶつぶつ呟いていたが、僕たちは屋上へと向かった。

 

 

 

 

 

屋上に着くと雄二がフェンスの前に腰をおろしていた。

 

雄二「やっと来たか。ところで明久、今日の昼くらいはまともなもん食べろよ。」

 

明久「それならパンでもおごってくれる?」

 

姫路「えっ!吉井くんは普段、お昼を食べないんですか?」

 

 少し彼女驚き、僕に聞いてきた。きっと彼女は規則正しい生活をしているんだろう。その・・・・なんというか・・・発育もよさそうだし。

 

明久「一応は食べてるよ。」

 

雄二「明久、世間一般では水と塩を舐めることは食事に入らんぞ。」

 

 雄二が哀れむように声でいう。

 

明久「失礼な!!砂糖だってあるよ。」

 

姫路「吉井君、たいして変わってないと思うんですが・・・」

 

島田「調味料が主食って、普通体がおかしくなるとおもうんだけど・・・・」

 

 なぜかみんなの目が妙に優しい。それが逆に僕にはつらい!!

 

 

明久「し、仕送りが少なくってさ、仕方がないんだよ。」

 

雄二「飯代まで趣味に使いこんでるからだろう。自業自得だ。」

 

 

・・・趣味ってお金がかかるよね。

 

姫路「・・あの!!よかったら私がお弁当を作ってきましょうか?」

 

 姫路さんから突然の優しい言葉。

 

明久「本当にいいの!?久しぶりにまともな物が食べられるよ。」

 

姫路「はい。明日のお昼でよければ。」

 

 姫路さん、今の君は天使に見えるよ。

 

島田「・・・吉井だけに作ってくるなんて瑞希って吉井にはずいぶん優しいんだね。」

 

 何だろう?島田さんはなにかおもしろくなさそうだな。

 

姫路「あ、いえ!よろしければ皆さんにも。」

 

雄二「俺たちにも?いいのか?」

 

姫路「はい!ご迷惑でなければ。」

 

秀吉「それは楽しみじゃのう。

 

土屋「・・・・・(コクコク)」

 

島田「お手並み拝見させてもらうわ・・・・でもさすがに全員分は瑞希も大変だろうから、ウチも作ってこようかしら。」

 

 姫路さんの負担が大きいと考えたのか、島田さんも弁当を作ってくれるようだ。

 

姫路「美波ちゃん?もしかして気をつかわせてしまいましたか?」

 

島田「まぁ、さすがにこれだけの人数分だと大変だと思うし、2人なら負担も半分になるでしょ。それとさっきは嫌なこと言ってごめんなさい。」

 

 そう言って島田さんは姫路さんに謝った。

 

姫路「あ、あの気にしないで下さい!それに美波ちゃんは私のことを気遣って、お弁当を作ってきてくれるんですから。」

 

島田「ありがとう瑞希。」

 

姫路「どういたしまして、美波ちゃん。」

 

 

 2人とも打ち解けあったみたいで何よりである。

 

雄二「さて、そろそろ試召戦争の話といこうじゃないか。」

 

 ここに来たのは作戦会議のためだったがすっかり忘れていた。

 

秀吉「しかし雄二。なぜDクラスから攻める?段階を踏むのならEクラスじゃろう?」

 

姫路「そういえば、確かにそうですね。」

 

 秀吉の疑問はもっともだろう。

 

雄二「理由は色々とあるが、Eクラスは戦うまでもない相手ということだ。」

 

明久「でも僕たちよりクラスが上だよ?」

 

雄二「確かに、振り分け試験の点数がそのまま形となっているからEクラスの方が点数はいい。だがそこまで離れているわけでもない、それと今のFクラスが保有しているメンツをいってみろ。」

 

明久「美少女4人にムッツリが1人と鬼畜が1人とバカが大量にいるね。」

 

雄二「誰が鬼畜だと!?」

 

秀吉「雄二!反応するところはそこではないじゃろう!美少女の数が1人多い!!」

 

 秀吉と木下さん、姫路さん、島田さん、数はあっていると思うけど・・・まさか!!

 

明久「ちょっと秀吉、島田さんをまさか男だと思ってるの?確かに島田さんは、乱暴でその辺の男より男らしくて胸が小さ腕の関節があり得ない方向にいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 

 

島田「一度死になさい。」

 

 島田さんの関節技が僕にがっしりと極まる。おかしい!僕はただ秀吉に島田さんは女の子だと説明してただけなのに!!

 

土屋「・・・雄二、それより何がいいたい」

 

 こちらをスル―してムッツリーニが雄二に尋ねる。

 

雄二「まぁ、要するに姫路に問題が無い以上、Eクラスとは正面から戦っても勝てる。それより余計な戦いをして、上位のクラスにこちらの戦力を知られることの方が問題なんだ。」

 

明久「何が問題なの?」

 

雄二「今Fクラスには本来はいなかったであろう2人がいるだろう?」

 

秀吉「姉上と姫路のことじゃな。」

 

 確かに、アクシデントがなければ2人とも本来はAクラスのはずだったんだよなぁ。

 

雄二「その通りだ。こんな最底辺のバカの集まりにAクラスレベルの、いわばジョーカーを2人も有している。だからこそ二人の存在が知られないうちに戦争を起こす必要があったんだ。知らなければ相手はこちらを無謀なアホどもと油断して隙が生まれるが、知られると対策を取られてしまうからな。」

 

明久「それなら最初からAクラスに挑んだ方がいいんじゃない?」

 

雄二「残念だがこのままじゃAクラスには勝てない。Dクラス戦はAクラス打倒のための布石だ。まずは目の前の敵を撃ちとる。」

 

姫路「あの、坂本君ちょっといいですか?」

 

雄二「うん?何だ、姫路?」

 

姫路「はい、私は振り分け試験を途中退席してしまったので、持ち点は今0点なんですが・・・」

 

秀吉「ついでにいうと、わしと姉上に明久も0点じゃ。」

 

明久「そうだよ雄二、切り札の姫路さんと木下さんが参戦できないんじゃ、勝ち目がないんじゃないの?」

 

 雄二はどうやってDクラスを倒すのだろうか。

 

雄二「それをふまえて今から作戦を説明する。」

 

雄二の作戦

 

1.戦いが始まり次第、僕と秀吉と姫路さんは補充試験を受ける。

 

2.補充試験が終わるまで、他のメンバーは守備に徹し、戦線を維持する。

 

3.僕たちの補充が終わり次第全戦力投入、Dクラス代表までの道を作る。

 

4.姫路さんがDクラス代表を倒す。

 

雄二「まぁ、こんなところだ。なにか質問はあるか?」

 

明久「これでホントに大丈夫なの?2番目の戦線維持はどうやるの?」

 

雄二「それに関しては、島田が頼りだな。」

 

島田「えっ、ウチが!?」

 

雄二「ああ、お前の数学の点数はBクラスレベルだからな。数学を軸に、指揮をとってもらうことになる。負担はかかるがよろしく頼む。」

 

島田「うん、わかったわ。任せなさい!!」

 

 島田さんは力強くうなずいた。

 

雄二「ムッツリーニは、敵の情報収集を頼みたい。相手の出方を逐一報告してくれ。」

 

土屋「・・・心得た。」

 

 雄二は、ここに居る全員がやるべきことを伝えると一息いれ最後に締める。

 

雄二「それじゃぁ俺たちの初陣。派手にかましてやろうじゃないか!!」

 

 

「「「「「おうっ!!」」」」」

 

 もうすぐ開戦である。僕たちは絶対に勝つ!!

 

 




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