ザッザッザッザッ.....
ザッザッザッザッ...
1人の青年はただひたすらに砂漠を歩き続ける。布を一枚吊り下げている大きな木の枝を片手に目的地に辿り着くために休憩を挟みながら砂漠を歩く。
彼は数年間、高校生になる歳から世界を巡り旅をしてきた。時には様々な人と出会い、時には助け合い、時にはたくさんの修羅場を乗り越えてきた。栄えてる国や貧困地域、更には今も尚世界中で続いている紛争地帯へも足を運んだことがある。
何故、彼がわざわざそんな所へ向かうのか。それは、彼にとある目標と目的があるからだ。世界中の子供たちを救うこと。世界中の困っている人達に手を差し伸べて力になってあげること。そして、たくさんの人との絆を深める。それが彼の目標だ。
現在はその目標も交えつつ、今は自分が求める物、彼のもうひとつの目的を果たすため調査を行いながら世界を渡り歩いているのである。
「...あそこか。」
と、青年は言葉をつぶやく。彼の目線の先にはいくつかの建物が見える。彼が目的地として目指していた場所だ。彼はそこへ赴き、自分の目標と目的のためにさらに人との繋がりを増やしていく......。
場所は変わり、現代の日本。
ここは近年話題となっているスタジオ兼ライブハウス『CiRCLE』
ここは日本を代表する都市。近年、日本では都心を中心にガールズバンドが全国に広まりつつある。通常の男性と女性の合同のバンドや男性のみのバンドではなく、女性のみで構成されたバンドが近年では増えてきており、逆に前者のバンド達は最近は見なくなってきているほどだ。さらに、その年代は高校生の歳で組むようになってきているとか。とある評論家によると、近い将来『大ガールズバンド時代』という時代になるだろうと言われているほど、ガールズバンドは人気を博している。
そんなガールズバンドブームを巻き起こした一つであるCiRCLE。そしてそのきっかけとなるバンドのうちの1組が集まっていた。
「みんなー!今日は面白そうなお話を用意して来たわよー!」
こころが面白そうな話を用意したって言うけど…なーんか嫌な予感がするのは私だけかな?こころの話す内容にはいつも振り回されてばかりだからなぁ...。
去年なんか、思いつきで豪華客船に乗って怪盗ごっこが始まるし、こころの屋敷で見つけた古い地図で南の島に行って探検しちゃうし、最近だとポピパの皆を励ますって言って空まで飛んじゃうし、笑顔パトロール隊って言ってボランティア活動始めちゃうし…。
…まぁ、ボランティアすることは悪くないし寧ろ良いことだし、豪華客船も南の島も楽しかったけど。でも『ハッピーフライトモード』だけはもうこりごり。最初マジで死ぬかと思ったよ...。
話を戻して...こころは、何やら面白い話を用意したと言葉にし一足先にCIRCLEのテラスに集まっていた私たちのもとへ駆け寄る。
「面白い話?」
「ええ!とーっても面白いお話よ!」
「フフ…実に興味があるね…是非聞かせてくれないかい?」
はぐみに続いて薫さんが反応する。3バカが絡むと余計ややこしいことになるんだけど、今はまだ大人しいな。と言ってもこころが内容を話せばいつもみたいになるんだろうけど…。
「商店街のお婆さん達が話してくれたんだけど、ビルとかがたくさん建っている街の中心に、昔ミイラっていう怪物さん達がいーっぱい居たらしいの!」
…え?
「ミイラ?」
「に、にわかに信じ難いね…」
「ふぇぇ〜…そ、それ本当なの?こころちゃん。」
「そんな非現実的な…」
どうやらこころが話したかった内容とは昔、街の中心に大量のミイラが屯っていた話らしい。そもそもミイラって、簡単に説明すると自然乾燥で長期間原型を留めて保存された死体のことであって。そんなミイラが、近代化が進んでるこの街に大昔の死体が歩いているという話は幾ら何でも信じられないなぁ。
「そうかしら?私はこの話本当だと思うわよ!」
「へー…で、その根拠は?」
「だって、お婆さん達は嘘をついてる様には見えなかったわ!」
「そんな見た目だけで判断出来ないでしょ...あー...でもこころなら出来てもおかしくないか...」
こころは折れることなくひたすらに目を輝かせこの話が本当だと思い続ける。私はあまり信じてはいないけど、少し本当なのかと思い始めてもいる自分もいるんだよなぁ…。こころは人が思っていることを正確に見抜ける力があって、私もこころのその観察力に思っていることを見抜かれたりたまに助けられたりしたし。
まぁ「お婆さん達は嘘をついていない」という言葉をだけで信じるのはどうなのって話なんだけどね。
「それに、この話には続きがあってね」
『続き?』
「その、街中にいたミイラさん達を赤色の人と紫色の人の2人でそこにいるミイラさん達をやっつけてたらしいの!」
もっとも謎なワードが飛び出てきた!?
「赤色の人と紫色の人ー?」
「何それ…どっちも気になるんだけど。」
「そ、それって、何かのヒーローものの撮影とかなんじゃないかな…?」
こころが言った赤色人と紫色の人がミイラ達をやっつけていた。確かに花音さんの言う通り、その場面だけで見るとよく日曜の朝に見るようなヒーローものの撮影と思ってもおかしくはないね。むしろ、そうとしか思えない。
こころの話を無我夢中で聞いていたはぐみや信じてはいたが少し怖がっていた薫さんも、流石に少し困惑している。
こころはどうすれば皆にミイラは存在していたと証明出来るか、腕を組みながら頭を傾げて考える。そうしてこころの頭の中で出てきた答えはー。
「そうだわ!皆でこの街の周辺をパトロールしてミイラさんを探し出しましょ!」
はい、嫌な予感的中しましたね。
「絶対いないって...」
「そんなこと、実際に動いて探してみないとまだわからないでしょ?さぁ、皆行きましょ!笑顔パトロール隊、出動よー!」
そう言ってこころはすぐさま立ち上がり、とてつもないスピードで当てもないままに走り出した。取り残された私達は流石にこのまま放っておく訳にはいかないと思い(一部)すぐさまこころの背後を追いかけるのであった。
場所は再び、異国の砂漠。
旅の途中だった俺は目的地の町に少しの間居座ることにして、ひとまず町の様子を伺うことにした。町の中心に行くと大きな噴水や露出した水路があり、涼し気な雰囲気が感じられる。観光客や地元の人達も多く集まってきており、中々賑やかになっている。
「いいところだなぁ...ここ。」
この地域では数少ない栄えた町。見た感じでは人同士で争ったり喧嘩したり、盗みを犯すような雰囲気は今のところないように見える。むしろ、楽しく会話をしている女性の人達や、町の人たちが協力をして何かを建てようとしていたりと町全体が生き生きとしている。
「この町の人たちも人柄が良い人が多いし、すっごい平和だなぁー!」
俺は大きく伸びをして、噴水近くのベンチに寝そべると自然に向いた視線の先に、ある光景が目に入った。
「!!」
町の人達が笑顔になりながら話している中、誰もいない路地裏の角にしゃがんで泣いている女の子が見えた。それと同時に、俺の脳裏に1つの
「......」
俺はスッと起き上がり、何を思うことも無く歩きだし彼女の傍へと近づいていく。
「うぅっ...ぐすっ...ママぁ...」
俺は泣いている少女と同じ目線になるようにしゃがみ、「どうしたの?」と声をかける。すると、少女は俯いていた顔を上げて肩をビクッとさせ、少し驚いた表情をする。
「あ、驚かせちゃってごめんね。君が泣いている姿が見えたからさ...それで、どうしたの?」
女の子は、俺の質問に少し間を置いてから答える。
「......グスッ...ママと...はぐれたの...」
その答えを聞いて、俺は迷うことなく女の子に提案をする。
「よし!それじゃあ、お兄ちゃんと一緒にママを探そうか!そうした方が安全だし、1人で探すより見つけやすいからね。」
と答えて右手を差し伸べ、一緒に探しに行こうという意思を見せる。
本来なら、知らない人に話しかけられたとなるとたとえ子供とはいえ知らない人の言葉を信じる事はないと思う。
だけど、ただ純粋に母親を探し出してあげたいという俺の思いが彼女に伝わったのか、流していた涙は少しずつ消え、少しずつ笑顔を取り戻し「......うん!」と少し時間を置いて頷いてくれた。その頃にはもう、先程までの哀しみの顔は無く彼女の表情に笑顔が戻っていた。
「それじゃあ、早速探しに行こっか!」
そう言って、俺は彼女の頭を撫でて立ち上がり右手を差し出す。彼女は躊躇いもなく差し出した手を取り、俺と迷子の子は並んで手を繋ぎながら母親を探しに路地裏から出ていったのであった。
場所は変わり日本ー
ガシャンガシャン
「おい、実験はどうなった。」
「現在も進行中です。」
カタカタカタカタ
色々な精密機械や工業用機械が立ち並び、ここに務めている人間が作業をし機械の重厚な音が四方八方から聞こえてくるこの場所。
ここは、とある場所の地下工場、いや研究施設というべきだろう。今はとある物を解析して、そこから同じものを複製させ、彼らが求めるものを作る実験を行っている真っ最中である。
「4071枚目、投入します。」
一人の男がそう言うと、部屋にいる男達は一斉に正面にある大きなガラス部屋の方を向く。男達が見ている部屋の中の中心に、銀色の
そのメダルが置いてある場所に白衣を着た一人の研究員らしき人物が、部屋に置いてあるメダルと同じ形のメダルを片手に入ってくる。
しかし、研究員らしき人物がもっているメダルは形こそ同じだが見た目が違う。部屋に置かれているものとは違い、外側が銀色に縁取られ、中にかけて黄色となっている。
絵柄は置いてあるメダルの中にある虎の絵と同じ物と、ライオンやチーターを模した絵のメダル。
そして、その男は持ってきた黄色のメダルを銀のメダルが山のように置かれている場所へと投げる。男が投げた黄色のメダルが銀のメダルの山へ着地する。
その直後ー。
ジャラ...
メダルが人間の手を借りずして独立して動くという、不可思議な現象が起きた。3枚の黄色のメダルを中心に銀のメダル達がその周りを包み込んで、金属的な音を鳴らしながら宙に浮く。
ジャラジャラジャラ...
ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ...
だんだんと音は激しくなり、やがて銀のメダルの塊は人のような形になる。
ライオンのような鬣や牙を備える頭
銀色と虎のような縞模様を思わせる黒いアーマーに鋭い爪がある腕を持ち合わせる体
チーターの様に俊敏な動きが出来そうな脚
この世には決して存在してはならない
「ウウゥ...」
怪物へと変化させた。
その怪物を見て、研究員らの人物達は勿論のこと驚いている...と、思われるが驚くどころか、怪物が生まれ喜びが見えていた。そう。彼らの目的は銀色のメダルややあの黄色のメダルに秘められている力を利用して、たった今形成された獣人...いや、怪物を作ることだったのである。
「成功した...成功したぞ!!!」
「急いで
異形の怪物を作ることに成功した次の瞬間、研究室は一気に慌ただしくなる。急いで扉を出て、先程指揮を執っていた男が言っていた『セルメダル』と『コアメダル』というものを取りに行く物や、研究室に居残り謎の機械を動かしたり調整したりと一気に現場が動き出す。それほど先程できた怪物が彼等にとって重大なことなのである。
先程メダルによって形成された怪物は...およそ800年前に封印された古の怪物。数年前、現代の日本で復活を遂げ人々に再び恐怖をもたらした存在。人々の『欲望』を糧に生き、力を増大させる擬似生命体。数年経った今その怪物が、再び人々を恐怖と欲望の渦に陥れようとしている。
その怪物の名はーー
「今すぐボスにこのことを伝えろ!!」
「