再び欲望に溢れたこの世界に   作:ソルティーナ

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第三話 戦いと敵と夕日

 

 

 

 

 

「大丈夫?」

 

 俺はヤミーに襲われそうになっていた金髪の女の子を助けて、怪我がないかを確認する。それに対して彼女はまるで襲われてないかのような様子を見せて応える。

 

「…?特に何もなってないわよ?それより、貴方は誰なのかしら?」

 

 え、えぇ…。もしかして、自分が危険だったこと気がついてないのかな…。とりあえずここは危険だからここから離れてもらおう。

 

「えっと、俺のことを教える前に今ここは危険だから、あの後ろの子君の友達だよね?友達と一緒に安全な場所に避難してね。」

 

「うーん…まだよくわかってないけど、とりあえず美咲と一緒にここから離れれば良いのね?」

 

「うん!俺のことは事態が治まってからね。」

 

 そう伝えて、俺は彼女の元を離れてヤミーと交戦していた後藤さんに合流する。後藤さんに少し怒られ、少し俺は申し訳ない気持ちになりながらも戦闘態勢を整える。

 

「火野!!遅いぞ!」

 

「すみません、あの子のことを助けてたら遅れました。」

 

「全く、相変わらずなやつだな。行くぞ!」

 

「はい!」

 

 後藤さんは大きめのショルダーバッグから武器を取り出しヤミーに向けて構える。

 

 後藤が持っている武器は、灰色のボディに側面中央にガシャポンによくある緑のカプセルの形をした模様に黄色のラインが引かれ、見た目がグレネードランチャーのような造形の銃『バースバスター』

 取り出してすぐ様に、銃口下部のマガジンを外しショルダーバッグに突っ込ませ、マガジンに装填されたセルメダルを持ち手上部にに装填する。

 後藤に続き、火野と呼ばれる青年も先程バイクから取り出し用意していた大型剣を取り出す。彼が持っている剣は、黒のボディにシルバーとブルーの装飾が施され、メカニカルな外観をしている『メダジャリバー』

 彼も構えを取り、足を踏み出すと同時に後藤のバースバスターから放たれるエネルギー弾がヤミーに放たれる。バースバスターに装填されたメダルは、そのまま放出されるのでは無くメダルに秘められているエネルギーを変換して集団として放たれるのである。そのため、撃ち終わってしまったセルメダルはただのメダルとなるので、新しくセルメダルを装填しなければならない。

 再び、バッグにマガジンを突っ込みセルメダルを装填し撃つ。メダルが尽きるまで同じ繰り返しを行い、火野のサポートをする。

 火野はヤミーに地面を強く蹴り、急接近して飛び蹴りを喰らわせ怯んだところをメダジャリバーで斬りつけてヤミーを撃破する。撃破されたヤミーは小さな爆発を起こし、爆破した場所にセルメダルを一、二枚落とす。ヤミーが落としたセルメダル2枚を拾い、メダジャリバーに入れてレバーを動かし装填する。

 

〈チャリン カン! カカン!〉

 

 メダジャリバーは、セルメダルを装填させることにより本体の性能を上げることができる。最大3枚まで装填可能で、メダジャリバーのフルパワーを引き出すことができる。

 ヤミー達は火野と後藤たちの襲撃に立ち向かうこともできず、二人の見事なコンビネーションにより駅前に群がっていたヤミー達は残すところ後3体になった。後藤は目線の先にいたヤミーに連射し撃破。火野は二体のヤミーに声を張り上げながら、回転斬りを行い二体同時に撃破する。

 

「セイヤッ!」

 

 パニック状態に陥っていた駅前が、二人の青年の活躍により食い止められた。その様子を美咲とこころは遠くから見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 凄い…。あれだけの大群を二人だけで倒しちゃった…。あの人たち何者なんだろ…。そんな疑問を持たせることを許さないこころは、すぐさまあの人たちに近寄って行く。私も焦ってこころについて行く。こころは近寄ってすぐに笑顔になりながら口を開き出す。

 

「貴方達凄いわね!悪いミイラさん達をやっつけちゃうなんて、もしかして貴方達がお婆さんが言ってた男の人と…でも、紫の人はいないわね。」

 

 急にこころが口に出した言葉に困惑するお二人。まぁ、そりゃそうだよね…。この人達はこっちの事情を知らないわけだし。

 それにしても…こころってば、何も考えずに危険な所に突っ込むのはほんとにやめてほしいよ…。本当に心配しちゃうし、心臓が痛くなるから。とは言っても、こころに伝えたところでやめるつもりないと思うんだけどね…。

 そう考えていると、こころは突然自己紹介をし始めた。

 

「私は弦巻こころ!ハロー、ハッピーワールドっていうバンドのボーカルをやってるの!こっちが、美咲ね。美咲も、ハロハピのメンバーなの!」

 

「あー…、奥沢美咲です。その、先ほどは助けていただいてありがとうございます。」

 

 私は助けてくれたことに対してこころの分もまとめて感謝を伝えた。ほんとにこの人たちには助けられたよ…。私はこころに二人に礼をしろと催促し、こころに礼を言わせる。

 茶髪の男の人が反応して、笑顔を見せながら彼も自己紹介を始める。

 

「ううん、気にしないで!あ、そうだ俺も自己紹介しなきゃね。俺は火野映司。そしてこちらが、後藤慎太郎さん。よろしくね。」

 

「よろしく。火野、話している最中で悪いが会長から連絡が入った。今すぐ鴻上ファウンデーションに来てほしいそうだ。すぐに向かうぞ。」

 

「あ、はい!ごめんね、俺しばらくこの街にいるから今度会った時話そうね!それじゃ!」

 

 そう言って映司さんと慎太郎さんは、ヘルメット類を着けてバイクに乗りなおしエンジン音を鳴らしてこの場を去っていく。私はその様子を黙って見送り、こころは呑気に手振りながら「バイバーイ!また会いましょー!」と声に出す。

 

 …不思議な人たちだったな。警察的な人たちだったのかな…?さっきも呼び出しがあったみたいだし。それに、あのミイラ…本当に存在してたんだ。でもどうして急に現れたんだろ。今までこんなこと起きなかったのに…。もしかして、私たちの知らないところで何かが起こってるのかな。

 

 

 …なんだか、胸騒ぎがするなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 駅前中央に、二人の男性がバイクに乗り二人の女子高校生と別れる様子を、少し離れた建物の陰から白いスーツの男が顔を覗かせる。男はバイクで走り去って行く様子を見るとポケットから携帯を取り出し、誰かに電話をかける。数分後電話がかかり、用件を伝え始める。

 

「…ボス、オーズとバースが日本に帰国していることを確認しました。しかし、ドライバーを使わずにヤミーを撃退した様なのでコアメダルの回収は出来ませんでした。……はい。……はい。わかりました。それでは、成長型ヤミーの用意をお願いいたします。はい、失礼します。」

 

男は携帯の通話を切り、人気の無い通路を歩き自身の目的地へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「会長、火野さんと後藤さんを連れてきました。」

 

「通したまえ。」

 

 鴻上ファウンデーションに着いた俺たちは、入口で待機していた里中さんの案内の元、鴻上会長が居る部屋まで連れて行ってもらい鴻上さんに許可を取り部屋の中へ入る。入ると、いつもいる机でケーキを作っている鴻上さんの姿があった。目の前まで行くと、一旦作業を止め話始める。

 

「やぁ火野君、後藤君。久しぶりだね。」

 

「ご無沙汰してます、鴻上さん。」

 

 鴻上会長とは数年前にも関わりがあって、こうしてお互い姿を見せ合って話すのは久しぶりだ。俺が海外に行って調査に向かってた時に電話越しでちょくちょく連絡は取り合ってたけど。変わってなさそうで安心した。

 鴻上さんはケーキのトッピングを仕上げながら、こうして俺たちを呼んだ理由を説明する。

 

「君達に来て貰ったのは、これから起こりうる事態に対抗すべく来て貰った。君達も何となく察しているだろう?」

 

「…さっきのヤミー。」

 

「その通りッ!!」

 

 鴻上さんは、興奮してか分からないけどテンションが高まり会話をする際大声を上げながら話す癖がある。突如横から現れて、彼の口癖「素晴らしいッ!!」を叫ばれる事が何度かあり、驚かないものはいないだろう。

 

「数年前、火野映司君のお陰でDr.真木の野望の阻止、そしてメダルの器による暴走を見事食い止めてくれた。」

 

 

 

 彼の言うDr.真木という人物は、元々鴻上生体工学研究所に勤めていた科学者で鴻上光生のお気に入りで会った。映司や後藤が使用していたメダジャリバーとバースバスター、そしてライドベンダーなどメダルシステムと呼ばれる様々な設備、道具、武器を開発していた張本人である。

 しかし、彼は少しー。いや、かなり歪んだ使命感に捉われていて「物語は終わりを迎えて初めて完成する。」「世界に良き終末をもたらす。」など「終末」に大きな価値観を見出していた。自分とは正反対の鴻上の下では使命を果たす事ができないと感じていて、やがて裏切り800年前に復活した「グリード」と呼ばれる怪人の下へ。さらに、自分をグリード化させ世界を終末へと導こうとしていた。

 

 その使命も、ここにいる火野映司、後藤を含むたくさんの仲間達、そして、己の欲望のために彼と手を組んでいたグリードによって、自身の使命は達成できず自らが終末を迎えた。ここまでが鴻上が話した数年前の出来事。

 

 

 

「一時はグリードによる野望、そしてDr.真木の終末は防がれたように思えた。しかぁし!!再び、ヤミーが地上へと姿を現し人々を欲望の渦へと巻き込もうとしている!」

 

「でも…ヤミーはグリードにしか作れない筈…。メダルは鴻上さんのところで預けてあるし、意思が入ったコアメダルは破壊してあるから、復活の可能性は無い…」

 

「そう。だが、これまでの事件を誰かが監視し君達の戦闘データ、グリードの能力、そしてメダルの研究をしていたら…?」

 

 メダルは800年前の錬金術師に造られた、つまり人工的に生み出された物。そして、今の日本や世界の工業は爆発的な成長を遂げている…まさか!!

 

「…当時のデータを元にコアメダルとセルメダルを作成し、再びグリードを復活させようとしている。」

 

 

 

 グリードの復活の意味。元々グリードは人間の欲望を糧に生きる擬似生命体。9枚のコアメダルと大量のセルメダルで構成され、最初は10枚存在していたコアダルから1枚を抜き取り、9という欠けた数字にした結果「足りないが故に満たしたい」という欲が生まれ、やがて欲望が進化し自我を持ち始めて誕生したのがグリード。しかし、その欲望は決して満たされる事はない。故に永遠に満たされない欲望から、建物や植物、そして人間もろともやがて世界そのものを喰らい尽くしてしまう。その脅威に曝される事がグリードが復活する意味に隠れているのである。

 

 

 

「Exactly!!そして後藤君、それを目論んでいる組織の目星は既についている様だね?」

 

「はい。こちらの方で調査を行った結果、一つだけあてはまった組織がありました。」

 

 後藤の口から明らかになる、今後グリードやメダルの力を使い鴻上ファウンデーションや映司達にとって危険な存在であり敵対するであろう。その組織の名はーー。

 

 

 

 

「財団X。死の商人とも呼ばれている裏世界の巨大組織です。」

 

 

 

 

 財団Xー。

 その素性は表の世界では名が知られることのない組織。様々な他組織に資金援助を行い、見返りの一つとして独自で研究した道具の成果の蓄積を行なっている。その道具の内にメダルが研究対象として入っているのは間違い無いだろう。

 昔の事件に、隣街でヤミーやグリードとはまた違った怪物が暴れていたという事例があった。その事件にも、財団Xが深く絡んでいた。

 一体何を目的として、このような行いをしているのか未だに明らかにされていない。だが、少なくともその目的が良からぬ目的である事は確実であろう。

 

「財団Xの計画を阻止するためにも、君達には再び戦ってもらいたい。ここにはいないが伊達君にも協力してもらうつもりだ。」

 

 鴻上から出てきた「伊達」という人物。彼も数年前に映司や後藤とともにグリード達と死闘を繰り広げてきた仲間である。彼も、鴻上に呼ばれていたのだが職業である医者としての仕事が忙しく手が離せないため帰国が遅れるとの事。数日遅れて日本に帰国する予定らしい。

 鴻上は二人に戦ってもらうためにと里中にある物を持ってきてくれと要求する。

 

「里中君。アレを持ってきてくれるかい?」

 

「既にご用意しています。」

 

 そう言った里中はいつの間にか大きめの黒い箱を持っていた。

 

「流石、里中君。仕事が早い。火野君、君から預かったドライバーとメダルを返却する。」

 

  里中は、鴻上の言葉に続いて持っている箱の蓋を開ける。その中に入っていたのは、中央には3つの窪みがある特殊な模様をした長方形で、鴻上がドライバーと呼んでいた物。その後ろにはドライバーの模様を意識した何かが大量に入っている小さめの箱が入っていた。元々これは、映司が所有していた物で旅立つ際に鴻上に預けておいたのだ。

 映司はその二つを手に取り、じっと見つめ、鴻上に向き直す。

 

「期待しているよ。そして後藤君、君達のドライバーについてだがアップデートが間に合っていなくてね、暫く君と伊達君には生身で戦ってもらうよ。」

 

「わかりました。」

 

 後藤は鴻上に言われた事を理解し、鴻上は一通り話し終えたところで解散を宣言する。

 

「今日はこれでお開きにしよう。明日からよろしく頼むよ。あ、また、セルメダルの収集も忘れずにね。」

 

 そうして、里中と後藤が「お疲れ様でした。」「失礼します。」とそれぞれ告げて鴻上の部屋を外出した。それに遅れて映司も「失礼しました。」と言葉を告げてから部屋を出ようとしたところで、鴻上に呼び止められる。

 

「火野君、少しいいかい。」

 

「え?いいですけど...なんですか?」

 

「...彼のメダルについてだ。」

 

「!!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、映司は顔色が一瞬にして真剣な表情に変わる。

 

「君が、メダルを私の元に預け、さらに各国に渡り調査を行ってくれたおかげでいくつかわかったことがある。」

 

 調査とは、彼が世界を渡り歩いていた理由にあった調査のことで、世界各国を渡り鴻上ファウンデーションの研究協力員として、彼が肌身離さず持っている彼にとって大切なコアメダルを復元する為に調査をし、その度に日本の本社に情報を送っていたのだ。

 映司は、鴻上の言葉をただ黙って聞く。

 

「メダルの復元についてだが、可能かもしれない。」

 

 映司は、その言葉を聞いて目を大きく開く。鴻上は、窓を見ながら続ける。

 

「だが、まだまだ研究しきれてない物が多い。時間がかかるが、何かわかったらすぐに連絡しよう。」

 

 少し残念そうな素振りを見せるが逆に、メダルが元通りになる可能性がでてきた事に喜びを感じようとポジティブに考え、鴻上に頭を下げる。

 

「…ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 二人がいる部屋を、そして彼を夕陽が赤く染める。

 

 

 

 

 

 映司はズボンの右ポケットを強く握り締め、窓ガラスから照らし出す夕陽を見つめる。

 

 

 

 

 

 空に羽ばたく赤い羽を思い浮かべながら。

 

 

 

 

 

 「今日は夕陽が綺麗に見えるなぁ...。」

 

 




彼がようやく、ドライバーとメダルを手に入れました。
次回...再び欲望の王が降臨します。

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