再び欲望に溢れたこの世界に   作:ソルティーナ

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パンツと怪力娘と再臨の王

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んっ…ふわぁ〜…。」

 

 肌に光を感じた俺は、朝になったことに気づき塞がっていた目を開く。歪んだ視界を擦って治して大きく伸びをする。小鳥の囀りが響き渡る日曜の朝。清々しい気持ちになりながら重い体を起こし、小さく呟く。

 

「いい天気だなぁ…。」

 

 雲一つない快晴の空。太陽の光に照らされながら、昨日の夕方に鴻上さんに伝えられたことを思い出す。

 

〈メダルの復元についてだが、可能かもしれない。〉

 

 俺はポケットからある物を取り出す。俺があの時掴み取った、俺にとってかけがえのないアイツとの唯一の繋がり。空を仰ぎ手に握りしめながら、もう一度伸びをしアイツに喋りかけるように呟く。

 

「ん〜っ、はぁ。…絶対にもう一度、お前の手を掴み取ってみせる。」

 

 気が済んだ俺は公園のベンチから立ち上がり、そばに立て掛けておいたパンツをぶら下げた木の枝からパンツを取り、そのパンツを近くの水道で洗う。そういえば、もうそろそろバイト探さなきゃなー…しばらくは日本に滞在するつもりだし。難なく過ごせるお金と明日のパンツを買えるぐらいのお金は貯めないとなぁ。

 

 少し、変な発言をしている映司だがそんな彼はこの公園のベンチで野宿をしていた。鴻上ファウンデーションを出た後、彼には宿に泊まるほどの金は持ち合わせていない。決してお金が全くないというわけではない。いくつかの食料と、パンツを買うお金しか無いのだ

 彼曰く、「ちょっとのお金と、明日のパンツさえあればいける。」だそうだ。ちなみに確証はない。足りなくなったら、今滞在している国もしくは次の目的地で稼ぐようにしている。実際にこのような生活を何年も行なっている為、彼自身全然苦痛に思う事はないようだ。とんだ変わり者である。

 

 洗い終えたパンツを、水気を無くしてから再び木の枝に掛け直す。

 

「今日はパンツがよく乾きそうだなぁ。」

 

 謎発言を残して、彼は再びベンチに横になった。

 

 そこまでの一連の流れを見ていた、中年の男性は開いた口が塞がらなくなっていた。「世の中にはいろんな人がいるんだな。」と感じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1人の男が、闇が続く窮屈な地下道を歩き続ける。段々と光明が見え始め闇が払われていき、やがて地下道を抜けると、金属と金属が互いにぶつかり合うの様な音が耳に入り込んでくる。そして、ようやく見えて来た出口の先を通り抜けて、彼の姿がはっきりと目視できる様になる。

 

 映司達を陰から監視していた、白スーツの男。彼こそ、映司達が追っている財団Xの1人。

 

 そして、彼が入り込んだこの場所は、財団Xの基地であり、セルメダルを大量に生産する工場でもある。さらに、その隣には全面特殊加工ガラスで張り巡らせた実験室、全フロアを監視し侵入者がいた場合直ちに知らせる管理室。

 

 その奥にある部屋はこの施設の支配者、そして財団Xの幹部である人物の部屋。映司達にとっての宿敵である人物が、その部屋で不気味な笑いを漏らしていた。

 

 スーツの男は、幹部の笑いを気にする様子を見せずに実験室の部屋へと足を運ぶ。

 

「ヤミーの方はどうなっている。」

 

 ドアを開け、実験の様子を見ていた作業員に話しかけると、今から実験を行うとのことだ。ガラスので囲まれた部屋を見て見ると、部屋の中には横一列に立て並ぶ謎の機械が4つ。その周りには何千ものセルメダル。機械の方に視線を移すと、小さなガラスケースの中に電線が張り巡らされ、繋がっている先を見るとそれぞれ違う色のコアメダルが3つずつ。

 

 合図を入れることもなく作業員が、手で握っていたスイッチを押す。すると、電線から目で確認できるほどの強い電流が流れ出す。やがて、コアメダルがセットされていた装置に辿り着き、セルメダルの方へ電流が走る。

 

 

 

 すると、セルメダルが地から離れて空中に浮き出す。金属と金属が擦り合う音の中セルメダルはやがて自身が動くための身体を形成し始める。

 暫くして、4体の人ならざる物、ヤミーが身体の形成を終え地面に足を付ける。

 

 

 

 蟷螂の化物、猫の化物、野牛の化物、鮫の化物が生み出された。

 

 

 

 昆虫系、猫系、重量系、水棲系と分類される4体のヤミー。ヤミーはグリードが人間にセルメダルを投入し、その人間の欲望を暴走させ具現化させた欲望そのもの。人間の欲が無ければ、ましてやグリードがいなければヤミーは生成する事はできない。

 

 しかし、財団Xは人間の欲望、グリードの力を使わなくともヤミーを生成させる事に成功させたのだ。その反面、通常ヤミーを生成するのにセルメダルが1枚で問題無いが、大量のセルメダルが必要とする。

 

 さらに言えば本来ヤミーはグリードの指示に従うのだが、現在はそれぞれのコアメダルに意思を持ったグリードは存在しておらず、このヤミー達は財団Xにより人工的に生み出された為財団Xの指示に従う様に細工されている。

 

 男はヤミーが生成された事を確認すると、ガラス張りの部屋に入り4体のヤミーを引き連れ地上を出ようと入ってきた施設の入口の方へと向かう。

 

 

 

「ようやく動き出す……。リーダーの目指すものへ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 駅前騒動が起きた翌日、私達5人はこころの屋敷にてバンドの練習の前に花音さん、はぐみ、薫さんに駅前で起きた出来事をこころと私は質問攻めされていた。こころはノリノリでその時の状況を話すが、私はあまり乗り気でなかった為、あまり話さずこころの後付程度にで終わらせていた。

 

 あの後、映司さん達と別れた後騒動の事で頭一杯ですっかり3人のこと忘れてたんだよね…。

 家に帰る途中で思い出して、メッセージで謝罪して今日に事情説明をするって事でこうなってるわけ。それより、3人に凄い心配かけちゃったから非常に申し訳ないな…

 今、ローテンションな私に比べて正反対のハイテンションのこころは、あのミイラのことと助けてくれた映司さんと後藤さんについて語った。

 

「それでね!そのミイラさん達を慎之介がバシューンって感じで、映司がジャキーンって二人だけで倒しちゃったのよ!」

 

 うーん…間違ってなくはないけど、擬音というか効果音に違和感を感じる。こころの発言を聞いたはぐみは、ある事に閃く。

 

「もしかして、その二人がお婆さんが話してた赤色の人と紫色の人の正体なんじゃないかな!」

 

「そうかしら?二人とも色が全然違ったわよ?」

 

「謎に包まれる紅と紫の人物…もしかしたら、彼らはこの世界を救った勇者なのかもしれない…。あぁ…!儚い…。」

 

 勇者って…薫さん歴史物の見過ぎ…。とはいえ、昨日のミイラの件もあるからもしかしたら勇者も存在してるんじゃないかって疑っちゃうんだけどね...。

 心の中でツッコミだり思考を巡らせる私はため息を溢す。すると隣に居た花音さんが、話しかけてきた。

 

「美咲ちゃん。」

 

「?何ですか、花音さん。」

 

「大丈夫?なんか凄い言葉に表しづらいけど、何となく疲れてるように見えて…。」

 

「へ?」

 

 突然そんなこと言われたもんだから間抜けな返事をしてしまった。まぁ…確かに花音さんの読み通りで昨日の騒動で疲れてるってのもある…けど、理由は他にもある。

 

 それは、昨日映司さんと慎之介さんが去っていった後に感じた妙な胸騒ぎ。こころたちから感じる物とはまた別で嫌な予感がしていて、気になってしょうがない。それに、今日の朝にも少し…。まぁ、あまり気にしてても仕方ないから気にしない様にしてたんだけど花音さんにはバレちゃってたか。こころももしかしたら気付いてたのかもしれないけど。

 とりあえず、花音さんに心配しないでとだけ伝えとこう。

 

「心配しなくて大丈夫ですよ。まぁ、疲れてはいますけど特に支障はないので。」

 

「そ、そう?それなら良いんだけど…。」

 

「決まりねっ!!行くわよ、花音、美咲!」

 

「「え?」」

 

 これまた突然、こころの発言に今度は花音さんと同時に疑問符を出してしまう。どうやら、私と花音さんと二人で話している最中3バカが今日もまた笑顔パトロール隊としてパトロールをしようと(勝手に)決めたらしい。あることを思った私はこころに反論するように答える。

 

「やめたほうがいいと思うけど。昨日のこともあるし、それにああいうのって警察の人とかに頼めばいいと思うし、少なくとも女子高生の私たちの出る幕は無いと思うけど。」

 

 少し、キツく言いすぎた気もするけど実際事実なので仕方がない。が、こころがそんな簡単に諦めてくれる事はなく。

 

「どうして?この世界の皆がヒーローなのよ?」

 

「そうだよ!ヒーローが人々を守らなくてどうするの、みーくん!」

 

「それに、私達には世界中を笑顔にするという重要な使命があるじゃないか。」

 

「そうよ!だから、そんなこと言わないで一緒にいきましょう!」

 

 はぁ…まぁ、説得したところでこういう結果になるって目に見えてたけどね…。こうなってしまった以上、もう食い下がる事は出来ない。素直に折れるしかないか…。

 心の中でも現実でも溜息を吐き、こころの提案を了承する。

 

「…はぁ、はいはいわかりました。私もついて行きますよー。」

 

「ふふっ。」

 

 私の顔を見て隣の花音さんが微笑んだ。何でだろうか?

 

「それじゃ決まりね!早速出発しましょう!」

 

 そう言ったこころは勢い良く立ち上がり、早々と部屋を出ようとする。全く、いつもストッパーの役をする私の身にもなってほしいよこころには。そう思いながらこころを見て微笑む。

 と、こころが突然廊下の真ん中でピタリと止まる。

 

「あら?」

 

 何かあったのかな…?私はこころの隣に行き、視線の方向を見てみると、男性と女性が黒服さん達と歩いていた…って、映司さん!?

 

「あら、映司じゃない!どうしてうちに来てるのかしら?」

 

「あ、こころちゃん、美咲ちゃん!」

 

 私達に気づいた映司さんは笑顔で振り向いてくれた。こころは映司さんに近寄り、黒服さんたちが事情を説明してくれた。

 

「火野様は、昨日こころ様達をお救いくださったので、主人の方からお礼がしたいとのことで呼ばせていただいた所存です。今は送り迎えをしていた途中でございます。」

 

「いやー、別にお礼もらう為に助けたわけじゃないんだけど、中々折れてくれなくて大変だったよ。」

 

「そうだったのね!でもどうして映司はお礼を貰わないのかしら。」

 

 純粋な疑問だったのか、こころは正直に映司さんに質問する。確かに、こころのお父さんだし願いの一つや二つ簡単に叶えられそうだけど。

 

「え?うーん……どうしてだろ?」

 

 へ?

 

「欲がなくなった時期が長かったからかな?それか、単純に今欲しい物がないか…あ!明日のパンツ!そうだぁ、明日のパンツが欲しいって言っとけば良かったぁ…!」

 

 パ、パンツ?え、何で?パンツぐらい普通に買えるじゃん…。というか、何でパンツ?

 そう思いながら、膝から崩れ落ちて落ち込んでる映司さんを呆れながら見る。失礼かもしれないけど、ひょっとしてこの人も馬鹿なのかな?こころ達と似た雰囲気がすると、こころの方を見ながら考えていると後ろからはぐみと薫さんが話に入って来た。

 

「何話してるのー?はぐみも混ぜてー!」

 

「君が、火野映司さんだね?是非、こころが話していたミイラについて聞かせていただきたい…!」

 

 あー、3バカ揃っちゃったよ!ややこしくなるから出来れば来て欲しくなかった!頭を抱えると、後ろから花音さんの失笑が聞こえて来る。というか、当初の目的のパトロールはどうなったのよ…。

 すると、映司さんの隣に居た女性がこちらに近づき声をかけて来た。

 

「面白い子達だね、君のお友達。」

 

「そういえば、貴女は…。」

 

「私は泉比奈。映司君のお友達、よろしくね。」

 

 あぁ…まともそうな人がいて助かったよ…。心の中で安堵しながら私も挨拶を返す。

 

「あ、こちらこそ、奥沢美咲です。よろしくお願いします。」

 

「松原花音です。よろしくお願いします。比奈さんはどうしてこころちゃんのお家に?」

 

「私は、ただの付き添いだよ。映司君と偶然道で会ってねーー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分前

 

 

 

 

 

 公園で3時間程パンツを乾かしていた映司は、朝ごはんを食べようと移動し始める。歩いていると自身の喉が渇いた事に気づき近くにある自動販売機でお茶を買おうとする。彼は何故か乾かしてポケットに丸めたパンツを取り出し、さらに何故かパンツの中から小銭を取り出した。

 

 現在の残高は500円玉1枚と5円玉2枚と1円玉3枚、合計513円。そろそろバイトしなきゃなと思いながら500円を手に取ろうとするが、手から滑り落ちてしまい自販機の下へと吸い込まれてしまった。

 

「あぁ!しまった!」

 

 焦燥感に駆られ、地面に顔を擦り付け必死に500円玉を取り出そうと試みるが、奥の方まで転がっていってしまい、さらに3mm程度の空間しかなく映司の手はギリギリで手首から奥が入っていかない。

 映司は素直に諦めてバイトを探そうと手を戻そうとするが。

 

「あ、あれ?ぬ。抜けないぃ!」

 

 なんと、かなりギリギリだったらしく、手の甲が引っかかって抜けなくなってしまった。絶体絶命(?)のピンチに、一人、映司の異変に気づいたのか映司に駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 聞こえて来たのは女性の声。声をかけてくれた女性に助けを求めようとする前に、女性の方から予想もしない言葉が発される。

 

「今、持ち上げますね。」

 

「え?」

 

 女性はありえない一言の後に、自販機の両端を掴み言葉の通り持ち上げた。

 

 

 

 

「ふん、にゅ〜!!」

 

 

 

 

 まさに、有言実行である。

 重量が、中身が空の状態でも300〜450キロもある自販機。さらに中身が入っている状態な為それ以上に重い自販機を、さらに言えば一人の女性が難なく持ち上げた。

 その光景はまさに異常だとしか言いようがなく、通りかかってた人全員が注目し全員が絶句し驚きを隠せなかった。

 と、映司はある事に気づく。

 

(あれ…?これ…前にも似たようなことがあった気がする…。)

 

 と思い、顔を上げて見ると女性の姿がハッキリと見えた。

 白のワンピースに白のハットをかぶった女性。

 その顔に見覚えがあった。

 

「比奈ちゃん!?」

 

 映司の声に気づいた比奈と呼ばれる女性は目を見開き、驚きの表情を見せながら答える。

 

「映司君!?」

 

 

 

数年前と似たような場所、展開で二人は再会した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、こんなとこで比奈ちゃんと会えるなんてね。」

 

「ほんと、映司君全然変わってない。」

 

 俺と比奈ちゃんは、無事に500円玉を取り戻した後に広場のベンチに座ってこうして会話をしている。お互い、昔から変わってない事に懐かしさを感じさせていた。

 

「あ、でも…俺じゃないけど、変わった事はあるかな…。」

 

 俺は比奈ちゃんにヤミーが復活した事、そしてメダルを使って再びグリードを復活させ、自らの悪事に利用しようとする財団Xについて伝えた。

 

「そんな…それじゃあまた、数年前みたいに人の欲望からヤミーを生み出したって事?」

 

「わからない…。だとしても、俺はヤミーやグリードをもう一度倒し、欲望に飲み込まれた人たちを助ける。そして、財団Xが何を企んでるのかわからないけど計画を阻止する。」

 

「…うん、そうだよね。いろんな人に手を差し伸べてあげる。それが映司君だもんね!」

 

 比奈ちゃんが応えた後、俺は一緒にアイツのことも伝えた。比奈ちゃんは驚きで手を口に当てる。まだ、研究が不完全な状態だから何とも言えないけど、少しでも可能性を感じられるのなら俺は信じる。アイツがまた、俺達の所に帰って来ることを。だって、俺たちはアイツのーー。

 

「火野映司様ですね?」

 

「へ?」

 

 突然、比奈ちゃんとは別ので俺の名前が聞こえて来て変な声出ちゃった…。声がした正面の方向を見てみるとサングラスをかけた黒服の人物が目の前にいた。俺は警戒し、比奈ちゃんの前に立ち守るように手を広げる。

 

「警戒なさらなくても、私たちは貴方方に気概は加えません。申し遅れました。私は、弦巻こころ様のSPをさせて貰っています。」

 

 ん?弦巻こころって昨日助けた…。俺は警戒を解いて黒服の人は淡々と言葉を発した言葉を聞く。

 

「主人より、こころ様を助けていただいた事に感謝をしたいとの事ですので、我々について来ていただけないでしょうかーー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけなの。」

 

「へ、へぇ〜そうなんですね〜……。」

 

 ひ、比奈さん…。貴女、本当に人間ですか?何、自販機持ち上げるって。完全に人を超えた領域に入っちゃってるよ。まともな人かと思ってたけど、ある意味まともじゃなかったね…。

 

 比奈さんの怪力に顔が引きつらせながら心の中でツッコミを入れる私。

 同じく顔を引きつらせて「あはは…。」と声を漏らす花音さん。

 さらに、あっちで変なことをしているこころ、はぐみ、薫さん、そして混ざっている映司さん。

 そしてただ見守るだけの黒服さん。もうわけわかんない。

 

 とカオスな状況を打破する様に、誰かの携帯の着信音がなる。映司さんの携帯だった。すぐさま取り出し耳に当てると。

 

「え…!わかりました、すぐ向かいます!」

 

 電話を切ると、焦った表情を見せながら廊下を走っていってしまった。

 

「映司君!」

 

 比奈さんも映司さんについていくように走っていく。

 

「鬼ごっこでも始めるのかしら?私もやるわー!」

 

 と言いながら、猛スピードで追いかけていった。こんな時に鬼ごっこなんかするわけないじゃん!

 

「ふぇぇ〜…どうしよう…。」

 

「えーくん、凄い焦ってたよ?」

 

「彼が心配だ…私達もついていこう。」

 

 このパターンは……あーもう!結局こうなるんだから!

 

「はぁ…じゃあ、早く私達も追いかけるよ!」

 

 映司さんが、焦りながら走って行った…もしかして。

 

 4人は、映司、比奈、こころの後を追う。そして美咲は、心の中で不安と悪寒を感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は後藤さんから教えてもらった場所にライドベンダーを使って、急いで向かう。さっきの電話はまた街中でヤミーが暴れ出したとのこと。だけど、昨日の時とは少し様子が違った。

 

 

 

『え…!成長したヤミーが暴れてる!?』

 

〈あぁ、しかも4体もだ。俺も急いで現場に向かってる。お前も急げ!〉

 

 

 

 昨日は白ヤミーで、今は成長したヤミーが街を襲ってる。もしかして、もうグリードは復活したのか…?考えたくもないけど、それより今はヤミーをどうにかしないと…!俺はライドベンダーをアクセル全開で動かして、ようやくその場所に着くことができた。

 

 叫び声や断末魔を響かせ、躓きながらも必死に逃げようとする人々。それを許さないヤミー達。昨日よりも、酷くそして残酷な光景が映司の眼に映った。

 

 バイクを降り、ヘルメットを脱いで一早く向かおうとすると後ろから後藤さんの声が聞こえてきて振り返ると、同じくライドベンダーに乗ってきた後藤さんの姿を確認する。

 

「火野!!」

 

「急ぎましょう!早くヤミーを止めないと!」

 

 そうして、後藤はバースバスターを構えて走りながらエネルギー弾を発射させる。ネコヤミーとサメヤミーに被弾し怯んだ隙に、映司は逃げ遅れた人の手助けをする。

 

「早く!今のうちに逃げて!!」

 

 逃している映司に気がついたカマキリヤミーは両腕に備えられている、名前の通り蟷螂の特徴である湾曲している鋭い鎌を映司に振るう。その鋭さはコンクリートやアスファルトを切り刻める程の力がある。当たってしまえば人などいとも簡単に真っ二つされるだろう。

 

 そうはさせまいと、映司は自身の身体能力の高さを見せつけるかの如く、ヤミーの攻撃を後方倒立回転(バク転)を連続で行い回避する。さらに、隙を付いた映司は上段回し蹴り、後方回し蹴りを連続で叩き込みヤミーを後ろに吹っ飛ばす。

 

「ふっ!はっ!」

 

「ウッ...ガァ…。」

 

 続いて後ろで構えていたバイソンヤミーがまさしく猛牛の如く、頭部に鉄が埋め込まれた頭を映司に向け勢いよく映司に突っ込み頭突きを喰らわせようとする。それを跳び箱と同じように軽々と飛び越して、バイソンヤミーはそのまま建物の柱に当たり、当たった柱は抉り取られる様にコンクリートが粉々に砕け散る。

 

「よっと!」

 

「グォッ...!」ドゴォォォン!!!

 

 再びカマキリヤミーが自分にかかって来るのを見て、何処からかメダジャリバーを取り出し胴体を水平方向に左、右と連続で斬る。ヤミーは、反撃する隙を与えられず、ただセルメダルを落とすだけであった。

 映司は落としたセルメダルを3枚メダジャリバーに入れて、ヤミーを切り上げるとさらにメダルを落としながら階段を転げ落ちていった。

 

 今度はバイソンヤミーに攻撃を仕掛けようと構えるが、バイソンヤミーは自身の蹄状の両腕をぶつけ合い、地面に叩きつける。

 

「ウゥゥゥ!ガァッ!!」

 

「ちょ、うおおおお!!」

 

 すると、映司が突然地面から足が離れ空中に浮遊し始めた。バイソンヤミーは『重力操作』という特殊能力を持っている。体内のセルメダルを大量消費し発動することが出来る能力で今、映司を浮かせたのもその能力のせいだ。

 浮かされた映司は、階段下に停まっているリムジンに背中を強く打ち付けた。あまりにも衝撃が強すぎて、視界が歪み少しの間起き上がれなくなってしまう。

 

「うっ...ぐあッ...。」

 

「火野ッ!!」

 

 後藤が映司の元に駆け寄ろうとするが、サメヤミーに行く手を阻まれる。

 映司は、少し時間をかけて立ち上がると後ろから声をかけられる。比奈の声だ。

 

「映司君!!」

 

「比奈ちゃん...っ。」

 

「映司さん!?だ、大丈夫ですか!?」

 

 同時に美咲からも声をかけられる。どうやら、映司が叩きつけられたリムジンはこころ達が乗ってきたリムジンであった。

 

「俺は大丈夫…。それより、後藤さんが…!」

 

「な、何あれ...!変なのがいっぱい居る!」

 

「ふ、ふぇぇ...!」

 

「……。」

 

「どうしたの薫?顔が真っ青になってるわよ?」

 

 こころ達はヤミーと交戦中の後藤の方を見て驚きの声をそれぞれ挙げる中、映司は懐から鴻上に渡されたバックルを取り出す。それを見た比奈は、心配そうに映司に声をかける。

 

「…!映司君…。」

 

「…大丈夫、無理はしないよ。それに、ヤミーと戦うのは俺の専門だからね。」

 

 そう言って、映司は一歩ずつ前へ歩き出し先程映司が階段から落としたカマキリヤミーの方を見据える。

 カマキリヤミーも映司を見据え、ジリジリと映司達に近寄る。映司は比奈に逃げるよう声を掛けるのと同時に手に持っていたバックルを腰に取り付ける。

 

「比奈ちゃん、皆を連れて隠れてて。」

 

 腰に取り付けたバックルは一瞬にして銀色のベルトが巻かれ、右腰部分には金と銀の装飾がされた黒の装置、左腰にはベルトと同色の小さな箱が出現し特殊なベルトが完成する。

 

 映司は、備え付けられた銀の箱を開くとその中には金色に縁取られ生物の紋章が描かれたメダル。通称『コアメダル』が収納されており、そのうちの3枚を取り出す。

 取り出されたメダルは全て異なる色で赤、黄、緑の三色。そのうち赤と緑のコアメダルをバックルの左右に装填、続いて中央に黄色のメダルを装填しバックルを傾けると、波紋の様に装填したメダルの色に発光する。映司は右腰に備えられた装置を手に取る。

 

 すると、手にした装置から不思議な機械音が鳴り出す。映司はベルトに装填したコアメダルを読み込ませるように、勢いよく機械を(かざ)す。

 

 

 

 

〈キン!キン!キン!〉

 

 

 

 

 音が鳴り、ベルトから3色の二重の円が浮かび上がり、そして静寂が訪れる。映司が次に放つ言葉を待つかの様に。

 

 

 

 

 

 

 

 皆を助ける為に。

 

 

 

 

 目の前の敵を倒す為に。

 

 

 

 

 二度と同じ出来事を繰り返させない為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 己の欲望を叶える為に映司は告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変身!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放たれた言葉と同時に映司は機械を胸に翳す。すると映司の頭部、胴体、脚部に5色5枚のメダルが出現し、頭部は縦、胴体脚部は横に回転し始める。

 

 

 そして、映司が装填した赤、黄、緑のメダルが選ばれ、三体の動物が描かれたレリーフが組み合わさって一つの円となり、映司の胸部と合体すると映司の周囲に三色の閃光が交互に出現し、同時に脳内に歌が流れ出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるで王の再誕を祝うかの様に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タカトラバッタ!》

 

 

 

 

 

!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 映司の変化を見ていたこころ達は感銘を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤の頭部には、優れた飛翔能力で大空を飛び交い、鋭い爪、嘴を使い狙った獲物を狩る『

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄の胴体には、別名「密林の王者」、優れた身体能力を持ち単独の戦闘能力ではライオンを凌駕する『

 

 

 

 

 

 

 

 

 緑の脚部には、大地を蹴り、体長の十倍の距離を移動可能な力強く長い脚を持つ『飛蝗

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三体の動物の力を体内に宿し、無限を超えた進化をし強大な力を発揮させるその姿はこう呼ばれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Happy Birthday!!!!!!!!!仮面ライダーOOO(オーズ)

 

 

 

 

 

 

 






ようやく登場致しました、仮面ライダーオーズ。
いよいよ、物語は動き出します。

映司は己の欲望を叶えるため、財団Xの野望を止めるため、彼との明日のために進みだします。

次回、オーズ対各属性ヤミーとの戦闘から始まります。
少しお時間はいただくかと思いますが気長に待っていただけたらと思います。(現時点で半分ぐらい書き終えてます。)

感想等良ければよろしくお願いします。
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