――この世界における決闘とは、魔術師同士の私闘を禁止した中で唯一残された魔術師同士の戦いを指し示す言葉だ。
この物語は独りの少女と少年の闘争から始まった。
魔術学園、中庭。
そこに一組の男女が向かい合っていた。
男の方は褐色肌に黒髪と銀の瞳と、この国では珍しい相貌をしており、少々細身な身体は白いインバネスコートで覆われていた。
対する少女の方は茶髪に碧眼と、
演目は決闘。魔術師同士による果し合い。
魔術を用いた私闘が禁じられた今の時代で唯一許されたものが決闘であり、二人の姿を見ようと生徒や教師が中庭に押しかけていた。
少女の唇が言葉を紡いだ。
「【世ヲ形作ルハ我ガ手ナリテ】!」
変化は迅速だった。
急速に成長したツタが男の体に絡みつき、業火が地を這い、風が炎を絡めとり吹き荒れた。
同時に展開された三つの魔術を同時に制御、単一では弱くとも、それらを組み合わせ相乗効果を与える。
その技術に観衆は沸いた。少女の勝利だともてはやそうとして――
「【
火柱が真っ二つに割れた。
歓声は止み、そしてその中から少し煤けただけの男の姿にどよめく。
「なぜ……なぜ無傷なのですか!」
少女、アルカトリ・クライスタは恐怖した。
自分は今の時代においてもっとも強力な異能を保持する魔術師。自他ともに認めるほどの異能を有している。
その異能の名は
自然界に普遍に存在する魔力、マナに直接干渉し魔術を構築することを可能とするこの世界において唯一の異能。
精神に由来する魔力、オドしか使えない魔術師に対し魔力量と言うアドバンテージを持つこともそうだが。何よりこの異能の素晴らしいのは六大元素の全てに働きかけることが可能な点だろう。
魔術師の扱える元素には得手不得手が存在し、不得手の元素にまつわる魔術を一切使えないなんてことは決して珍しいことではない。
その不得手が無いことがどれだけすごいことなのかをアルカトリはこの学園生活の2年間の中でうんざりするほどに理解させられていたのだ。
それに加え、アルカトリには知識というアドバンテージが存在した。
それも、ただの知識ではない。
誰にも真似出来ない魔術に、誰にも理解できない──しかし確実に進んでいる知識。
それはこの魔術学園において、類稀な才覚を持つ魔術師として一目置かれ――同時にその才覚を求める魔術師たちに付け狙われるようになるのに時間はかからなかった。
最初は、ただ決闘を挑まれるだけだった。その頃のアルカトリは力を振るうことに喜びを覚えていたので戦いを挑まれば快諾し、嬉々として力を振るっていた。
次は、なぜか友人が巻き込まれるようになった。
友人が人質にされ、負けることを強要されるようになったのだ。
困惑と怒りから厚顔の憂いを断つ意味も込めて殺しこそしなかったが、しかし、容赦なく叩き潰した。
最初は友人に感謝されたが、それが何度も繰り返されると友人は一人、また一人と姿を消していった。
アルカトリは自分の力が近しい者達を危険に晒すことを知った。
果てには、家族に呪詛を掛け、人質に取られてしまうこともあった。
これは明確な犯罪行為ゆえに家族の解呪を行った上で実行犯を叩き潰し、法で裁いてもらったが、これがアルカトリを追い詰めたのは想像に難くない。
故にアルカトリは魂を縛る誓約を結び、それを喧伝した。
──私に1対1で決闘を挑み、我が全力に対し真に実力で以って敗北させた者にのみ、私は従属する。これは魂の誓約であり、代償は自らが持つ全てである。
思惑は事の他、上手くいった。この誓約により彼女を従属させるためには彼女の全力を相手に真っ向勝負で勝つという条件以外で隷属させることはできない。それを破れば彼女は――
友人が必死になってやめた方がいい、とやかましかったが、手段を選べるほどアルカトリには余裕は無かった。
この頃から、アルカトリは笑うことができなくなっていた。
それからもアルカトリ・クライスタは戦い続けた。決闘を挑んできた者達は容赦なく叩き潰し、そして最後にはこの言葉を残した。
――次にこうなりたいのは誰ですか?
その、彼女は今、追い込まれていた。
理解できない未知の事態は、時に恐怖心を湧き上がらせるもの。アルカトリもまた例外ではなかった。
観衆も騒然とする中、アルカトリは青ざめた唇を震わせていた。
「──なぜ、と言ったか?」
ヒッ、と短く悲鳴を上げてしまった。
白いインバネスを纏う褐色肌の美青年に話しかけられ少しテンションが上がり、その上で決闘を挑まれて意気消沈して「私のトキメキを返せ」と決闘を受け入れたのもほんの一時間前のこと。
その一時間もの間、
初めての経験だった。
白いインバネスを羽織る褐色の悪魔。表情を何一つ変えないその立ち姿が不気味でしょうがない。
怪物が、言葉を続けた。
「その理由を語ることは貴様の後学のためを思えば私とて吝かではないな。だが、ここは決闘の場だ。ゆえに今はまだ語るべきではあるまい──だが、そうだな」
そこで言葉を切ると何やら顎に手を当て、目を閉じる。完全な無防備、卑怯と言われても構わなかった。
「──【世ヲ形作ルハ我ガ手ナリテ】ッ!」
紡がれるのは
それだけで周囲のマナが震え、その全てが自身に従属する。
先ほどまで周囲の被害を考えて三つの魔術を組み合わせてまでに留めていたが、一つ二つ組み合わせを増やしたところでそれが通用しないという直感に従ってマナを練り上げていく。
創造するは数多の伝承にて語られる神の怒り。神に仇名す者たちを屠る神威の具現。神のみ許されし裁きの槍。
東洋においては
射出されれば敵対者はおろか周辺もまとめて容赦なくなぎ払うだろうそれを投げ放とうとして──
静かに、目の前の怪物は言葉を紡いだ。
「【
ただ、それだけの言葉で彼女の投げ放とうとした神の怒りは霧散した。
「雷か、神の権能すら再現してみせるとは……実際に目にすると凄まじいものだな。時期が良かった」
「ま、また……消え──」
先ほどからこれだ。使った魔術は全て無力化され、形作ったものは全て形の無いマナへと霧散してしまう。
決闘を始めた当初は驚きこそあれど、それほどの魔術だ。いつか息切れを起こすだろう。それに魔術と伝承は切り離せない物であり、それ故に穴があるものだ。
自分の千変万化の魔術ならば穴を突けるはず──そう思ってどれだけの魔術を行使したことだろうか。
オド切れを起こすこともなく、目の前の
──―そんな男が化け物でなければ、なんだというのか。その恐怖が少女の判断を鈍らせた。
「【
「しま──」
しまった、と思ったときにはもう遅い。
詠唱の完了と共に顕現したのは体高80cm程の大型犬のような形をした黒い塊。
おそらく降霊の一種。
「【喰イ付ケ獣ノ牙】」
襲い掛かってきた獣に炎で以って迎撃──したが、獣は炎を突っ切り右腕に噛り付かれた。
──獣の伝承は複数存在するがそれには噛みつかれると呪われるという共通事項が存在する。
おそらくこれはそれらの伝承を元に形作った霊体を使い魔として制御しているのだろう。そして伝承から形作られた使い魔はその伝承の片鱗を再現するものだ。
「あ────―が」
呪いが、牙を剥く。
倦怠感に襲われたかと思ったら、体が痺れ、動けない──なんだ、これは。
「では、最初の話に戻ろう。貴様の『なぜ』という問いに対する答えだが──単純に貴様の研鑽不足だ」
研鑽不足。
それに同意できるわけがなかった。アルカトリはこの2年の間に何度も何度も決闘を挑まれ、その全てを返り討ちにしてきた。この平和な世の中だ、戦闘経験だけで言えば間違いなく学園内でも五指に入ってもおかしくない。それだけの苦労を研鑽不足などと言われて黙っていられるはずがなかった。
故に言葉に対し異論を唱えようとして、しかし、舌が回らず、意味の無い声へと成り果てていた。
「絶大な異能、豊富な知識に素晴らしき閃き、それらは適切に運用されてこそ意味を持つ物。慢心したなアルカトリ・クラ──」
──そこで、アルカトリの意識は堕ちたのだった。
◇◇◇
これまでに見たことが無いほどに高い天井だった。
その癖灯りは必要最低限で窓には遮光カーテンのようなものが掛かっていて日の光が入ってこないようになっている。
背後を振り返れば天井にあと少しという高い棚がずらりと並び、中には書籍や用途不明の物品が所狭しと並んでいた。
ここは魔術師の工房。自分を打ち破った男が所有する研究室であり、砦。
そこに用意されたソファの上で意識を取り戻したアルカトリは、周囲の状況と、意識を失う前までの記憶からそう判断した。
そして肝心の自分を負かした男はと言うと、すぐ傍にあるこの広さに不似合いな小さな作業台で何やら物を弄くっていた。
小さな刃物で骨に手早く傷を付けると黒い粉を掛ける、するとまた隣の骨を取ってはその繰り返し。恐らく、触媒を作る工程の一つなのだろう。
──そういえば、触媒を作っている現場は見たことが無かったな。
そう思うと好奇心が沸いてきた。
アルカトリは触媒を作る必要が無い魔術師だ。触媒の製法など何一つ知らない。ただ、知識の上で触媒を作るのには長い時間が掛かることを知っているぐらいだ。そのもの珍しい光景に目を向けて観察する。
骨に傷を付けている、と思ったらどうやら何かの記号か、文字のようだった。刻まれる場所は違えど、その手の動きは規則的で全く同じ印を同じ大きさで刻み込んでいるらしい。それにどんな意味があるのかは分からないが内職をしているようだと、アルカトリは思った
しげしげと眺めていると、男がおもむろに口を開いた。
「月の無い夜に森に立ち入ってはならない。例え開けていようと夜の森には黒い獣が出て襲われてしまうからだ。森が近い家々では決まって子供にこう説く──『ブラックドックに呪われる』とね」
なんのこっちゃ、と思ったが、しかしブラックドッグという名前を聞いて思い出した。
黒い犬──自分の意識を奪ったあの使い魔のことを解説してくれるらしい。
「いわく、ブラックドッグは人の血肉を好み貪る。一度狙われれば簡単には逃げおおせない。その上、逃げおおせたとしてもブラックドックの呪いに殺されるそうだ」
男は朗々と語る。顔をこちらに向けることはせずに、作業を続けていたが、それはそれは嬉しそうに語っていた。
聞き手がいることに喜んでいる姿はまるでうんちくを傾けるおじさま方の姿を彷彿とさせた。
「まず、水を飲めなくなる。飲もうとすれば喉に酷い痛みを覚える。その上、体は気だるく熱がこもる。その後、体の痺れや発狂を経て、最後には死んでしまうらしい」
それらの
ブラックドッグの伝承の正体、呪いの症状からしておそらく
犬に限らず哺乳類であればどのような動物であれ感染する可能性のある
そんなものが医療技術を魔術に横取りされてしまったこの世界では伝承として残ってしまったらしい。
だが、なんて物騒な呪いだ。
「とはいえ、私如きでは精々人一人昏倒させるのが限界。貴様の使っていた魔術ほどの殺傷性は無いから安心したまえ」
うぐ、とアルカトリは言葉を詰まらせた。確か、最後の方は完全にこの男を殺しに掛かっていたと思う。だが、それも致し方ない話だ。
「だが、かの雷挺、神の裁きに関しては肝を冷やしたぞ。なにせ事前に情報が無かったからな」
アルカトリが悩むのを余所に、男は話を続ける。そもそも魔術以外への興味関心が薄いという感じだった。典型的な魔術師らしい魔術師だ、とアルカトリは思った。
「特に最後のは肝を冷やした。あれを防ぎえる盾を用意できる者など、それこそ魔女の国の大魔女でもなければな。多くの伝承にて神の槍に貫けぬ物なし、と書かれているだけのことはある」
「その神様の怒りをさらりと消しといて何を言ってるんですかねこの人は!」
流石にそれは聞き捨てならなかった。この男は自身が持つ最大の矛を無力化してみせたのだ。
盾すら無かった。彼の紡いだ言の葉が神の怒りすら退けたのだ。
だが、男は溜め息を一つこぼした。
「さらり、などと言えるものか。俺が持ちうる触媒の1割を消し飛ばした上で
「……はい?」
祟られた、やら、神に進言だとか、不穏なワードにアルカトリは困惑した。
そもそも自分の魔術は異能によって形作られたもの。呪いだのなんだのを込めたつもりは無い。
だが、アルカトリの反応からその心意を悟ったらしい男は鼻を鳴らした。
「──なるほど、無知とは困ったものだな」
「え? え? ど、どうしてあれを打ち消したのがそんなことに? 確かに私は神様の怒りをイメージの根底にしたけど、祟ったりなんか……」
「先ほど貴様自身が言ったではないか、あれは神の怒り、だと」
確かにアルカトリは言った。だがそれはあくまで比喩表現であり、それ以上の意味は無かった。
「魔術師ディーワ・クアエダム氏が書き残したとされる自伝から生まれた英雄譚『ディーワと魔法の世界』における解釈によると、魔術と伝承は切っても切り離せない関係にあるものとされている。その証拠に成立から半世紀も経っていない近代魔術であっても伝承による影響からは逃れられていない」
そうした知識をアルカトリは持ち合わせておらず、初めて聞く知識を披露する男を物知りなんだなぁ、なんて思った。
「特に貴様の異能は世界に普遍に存在し、しかし魔術師であっても自在に操ることは叶わないマナを掌握するもの。マナはかつて神が実在した名残であるという思想も存在する。貴様の異能は神の権能を再現することに掛けて頂点だろうよ。さながら現人神と言ったところか」
男の言葉は
衝撃のあまり言葉が紡げない。
マナを操れるのは便利だな、程度にしか思っていなかった。決闘を挑まれる原因だし、その所為で家族を人質に取るような奴等もいたけど、この力があれば問題ないのだと思っていた。
それが、神の権能? 現人神? 震える唇から紡げたのはただの一言。
「わ、わたしは神様なんかじゃ」
「もちろんお前は神などではない」
――さっきと言っていることが違う、聞き間違えだろうか?
「え、でも現人神って……」
「あれは貴様の異能を例えたに過ぎん」
「え、えぇ~」
脱力したアルカトリに男は語った。
そもそも神とは信仰で以って祀り上げられて始めて生まれるもの。信仰を向けられて始めて成り立つ存在なのだと。
「だが人の身で神に祀り上げられた人物がいないわけではない。参考にするならば……そうだな、少し待っていろ」
そう言って男は作業を中断して立ち上がると、後ろの棚の本が集まった場所に向かい、一冊の本を引き抜いて持ってきた。
「中央山脈地帯の隠れ里に伝わる魔術師の物語だ。私個人としては英雄譚と呼ぶべき代物だが、しかしかの魔術師は神として召し上げられている。知っておいて損はあるまい」
そう言って差し出された本をありがとうございます、と言葉を詰まらせながら受け取る。本には『ラングルの塔』と記されていた。
男は鼻を鳴らすと作業台に戻りまた作業をしながら語り始めた。
「そもそもマナは意志の無い魔力だ。貴様のイメージした『神の怒り』を核に世界に伝わる数多の伝承をかき集め忠実に再現してもおかしくは無い。故に私は守りの魔術ではなく、神に進言するための祭壇を組み、虎の子の触媒を贄として捧げた上で理由を付けてお帰り願ったのだが……人が神に進言したという伝承において進言者が生き残る例は少ない。祟られこそしたが、生き残った上で工房に逃げ込めた。存外にオレは悪運が強いらしい」
そう言って男はくつくつと笑った。
対するアルカトリは笑えない。
決闘の真っ向勝負で負けた。魂に刻んだ誓約に則るならば自分はこの男に従属しなければならない。
やけっぱちになってアルカトリは言った。
「そうですね
「――待て」
男が作業の手を止め、顔を上げた。これまで本を渡したとき以外まともに見ていなかった腹立たしいほどに整った怜悧さと美しさを併せ持つ相貌をアルカトリに向けていた。
「オレが、主人?なんの冗談だ」
「冗談でもなんでもないですよ。『私と決闘し、純粋な実力で下した者に従属する』――そういう誓約を結んでいるんです」
「馬鹿な!まさか本当に誓約を結んでいたのか貴様!」
突然のことに、アルカトリは縮こまった。
男は叫ぶように語った。
「魂に刻まれる誓約の強制力はお前が持つありとあらゆる自由意志に反し命令を実行してしまう、貴様はそれも覚悟の上か、答えろ」
「――いいえ」
アルカトリは自身の唇が勝手に動いたことに驚いた。これが誓約の強制力なのか。
「……なぜ、誓約を刻むなどという蛮行に出たのだ」
「親しい人たちを、守るため」
「何?――詳しく話せ」
そう言われたアルカトリの口は、彼女の制御下を離れ、言葉を紡いだ。
自分の力を欲して決闘を挑まれていたこと、自分に勝てないと悟ると、その矛先が友人や家族に向いたこと。
そこで誓約によって真っ向勝負で勝つ以外に従属させられないという決まりを作り、戦い続けたこと。
――おそらく、誓約による強制力はそこで終わっていたのだろうが、アルカトリの口は止まらなかった。
挑まれ続ける日々の苦しみに始まって。
下手に巻き込まないために突き放した友人達や家族のこと。
負けた先に待ち受ける恐怖を想像してしまって泣いた夜。
いっそのこと消えてしまいたいとさえ願った日。
自分に宿った力を恨んだこと。
「――そして、あなたに負けてしまった。私の今までって、なんだったんだろうな、って考えちゃいますよ」
「なるほど、張り詰めていた糸が切れた、ということか」
「ええ、なんというか、負けて良かったのかもしれません。負けた相手があなたでよかった」
その言葉に、男は顔を顰めた。
「……どういう意味だ?」
「私、負けたらどんな目に遭うのか想像してた、って言ったじゃないですか。でも、あなたは私の心配をしてくれた。そういう風に思えるの久しぶりなんです。まぁ、私の勘違いかもしれませんけど――うん、諦めもつきました」
そういってアルカトリはソファから立ち上がり、そして恭しく一礼した。
「誓約に則り、私、アルカトリ・クライスタはあなたの下僕となりました。つきましてはご主人様のお名前をお教えください」
「……名乗っていなかったか?」
ええ、と答えると男は淡白に「そうか」と言うと同じく淡白な声で名乗った。
「グラムベル・アーカストだ。それと――」
そして、顔を顰めさせると
「――その呼び方はやめろ」
と言った。
これが、二人の出会い。
神に魅入られた娘と伝承に憑かれた男の始まりの物語である。
と、プロローグはここまで。ここから先、二人の物語が始まります。
二人のデータはキャラ募集の際に一例の代わりに公開します。
以下解説と言う名の茶番。
アルカトリ(以下アルカ)「そういえばご主人さま」
グラムベル(以下グラム)「それはやめろ、と言ったはずなのだが……なぜ呼べる、それとなんだ?」
アルカ「私の雷の魔術を無力化した時、理由を付けてお帰り願った、なんて言ってましたけど、どんな理由で帰ってもらったんですか?」
グラム「『まだ雷の鳴る季節ではない』と言って付き返したんだ」
アルカ「…え?それだけ?」
グラム「それだけだ。貴様は『イナヅマ』という言葉を知っているか?」
アルカ「え、ええ、日(咳払い)――極東の島国では雷のことをそう言いますね」
グラム「その言葉の成り立ちも理解しているか?」
アルカ「ええ、極東の島国で生産される穀物、『稲』が実るのは雷が多くなる雨期の後で、それを理由に雷を稲の配偶者、『妻』なんて考えて付けられて……え?え?まさか『今は雨季じゃないから』なんて理由で私の雷は霧散したんですか!?」
グラム「簡単に言えばその通りだ」
アルカ「それですごすご帰っていく雷様とかすっごくシュールですね」
グラム「そのためだけに触媒の多くを費やした上にオレも祟られてしまったがな。笑い話にもならん」
※捕捉1
今回、稲妻の言葉の成り立ちを曲解する形で無力化しましたが、主人公はそれを自身の才の無さも含め触媒の数による力技でどうにかしていました。
主人公と同程度の被害に留めるだけなら他の魔術師であれば触媒が1万~2万もあればどうにかなりますが……それほどの触媒を雷を消すためだけに使うのは無駄使いにもほどがあり、まず思いついてもやる人がいません。