マギアテイル   作:踊り虫

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遅くなりました。今回はグラムベル視点なしでございます。


第六話

「模擬戦を挑みたい」

 

 クラスのお調子者が緊張混じりの声でそんな提案をしたのは、昼休みに入った直後だった。

 

 スペルリィ・ディード。

 

 昼休みになると、マジックショーを開く奇術師。

 

 初めて彼を見たのは入学式の時。アルカトリの服装も異国情緒――そもそもこの世界の物では無いので異界情緒、というべきか――溢れる服装ではあったのだが、それを鑑みても尚、一際派手な恰好をしている人が居るな、と思った。

 

 白と黒のチェックが入ったシルクハットに、腰まである赤と青のラインのマント、水色の服には金と銀のラインの縁取り。仕立ての良さはもちろんのこと、その様々な色を取り入れた独特の衣装はとにかく目立った。

 老師が入学式で独創性の素晴らしさを説いた時に取り上げられる程度には目立っていた。さすがの彼も恥ずかしがっていた。

 

 入学当初の彼は、というと、大抵笑顔の中心に居た。口調こそ劇の演者のような、だけどそれが馴染んでいるような不可思議な雰囲気もあったが、同時に良く喋り、良く笑い、良く笑わせた――そういえばこの頃から簡単な手品でみんなを驚かせていた気がする。

 

 それが変わったのは夏休みが終わった後のこと――彼が突然、マジックショーをやり始めた。確かその頃は手組みの舞台を用意していた。

 物珍しくて、そしてどこか()()()()()、アルカトリは足を止めて見入った物だった。

 

 だから、たまにある決闘の無い時間だけは昼休みの中庭は彼の領域だった。自分が助手として手伝う羽目になり、散々絶叫させられたこともある。

 今でもあんにゃろう、と思いはするのだが、同時に楽しかったのも事実だった。絶対に言うつもりの無いアルカトリの秘密である。

 

 ――アルカトリは彼についてそれぐらいしか知らない。

 

 彼の使う魔術なんぞ知らないし、そもそもなぜ自分に模擬戦を挑んできたのかさえ不明だ。

 だけど、あのお調子者が、あんな真剣な顔をするのは初めて見た。

 

「いいよ、ディード」

 

 幸い、グラムベルは決闘こそ禁じたが、模擬戦を禁じた訳ではない。それに誓約はあくまでも決闘だけに縛られたもの。模擬戦ならなんの問題も無い。

 

「ありがとう、クライスタ」

 

 感謝とともに、スペルリィ・ディードはいつもの笑顔を作った。

 

◇◇◇

 

 場所は修練場に移る。

 修練場、とは魔術による闘争の中でももっとも原始的な闘争による鍛錬により、根源を目指す者たちの集う場所――と言えば戦闘狂だらけの巣窟に感じるかもしれないので訂正しておくと、魔術戦闘を想定して作られた施設の総称である。

 そこでは外部からの魔術干渉を撥ね退け、更に内部での魔術行使に不都合な影響の排除や、内部の魔術汚染を外部に漏らさない魔術的な機密性などなど、おおよそ魔術戦闘において一対一の力比べを実現できる施設である。

 

 そこに、二人の少女が入った。

 フィー・レ・ラー、そしてフェイ・ラドクリフだ。

 

「全く、アルカは何を考えてるの!?決闘じゃないって言ったって模擬戦だって立派な魔術戦闘でしょう!?」

 

 憤りを顕わに、フィーは中央の円形に設置された結界内で向かい合うアルカトリとスペルリィを睨んだ。

 ディーワ魔術学園において模擬戦は、審判役一名、抑止となる講師二名という三人の上位者の協力を得て初めて執り行われるものだが、この抑止の役割を務める人員をやってくれる講師、というのが居ないのが現状だ。

 その条件ゆえに模擬戦は現状では決闘科の特権であるかのように扱われている。

 そういう事情もあって、アルカトリが決闘でこの場所を使わなかったのは決闘科の学徒や講師から余計な決闘を申し込まれる可能性を嫌った結果だったのだが――どうやら今回は事情が変わったようだ。

 

「それとも、また何か――」

「模擬戦を受けた理由は後でアルカから聞きだせば良いよ」

 

 そう言ってフェイはフィーを宥めた。

 普段のフィーは冷静沈着、俯瞰して物事を見ることに長けた少女だ。故に今の取り乱す姿はらしくない、と言わざるをえない。

 それだけアルカトリを大事に思っているのか、それとも魔術戦闘に何か思うところがあるのか――両方か。

 

「もうここまで来たら無理に止める方が難しい、見守る以外の選択肢は無いよ。それよりディード、だっけ?昼休みになると中庭で見かけるけど、どんな魔術を使う訳?」

「わからない。魔導書科だって聞いてるけど、使う魔術までは……」

 

 だろうね、とフェイは諦めた。

 魔術師にとって使用する魔術の種を知られてはならない。なぜなら致命的な弱点を見破られたのと同義だからだ。

 事実、スペルリィは普段からマジックショーの演出で四つの元素を巧みに操っていたが、しかしその根底を見破った人間は誰一人としていない。そもそも四元素を操る魔術など多岐に渡るのだから予想したところで無駄だ。

 で、あれば、これ以上今の話題で話すことなど無いだろう

 ――故に、話は修練場に集まった人々に向けられる。

 

「……やっぱり人が少ないね」

 

 修練場の中にはまばらに人が確認できる程度しかいなかった。かつてのアルカトリの決闘では()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを思えばどれだけの異常か。

 しかし、その原因を二人は見てきたばかりだった。

 

「扉の向こうは人で溢れ返ってたけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あんな大掛かりな結界、よく準備したと思うよ」

 

 自分達が入ってから硬く閉ざされた扉に目を向ける。今もその奥では結界に阻まれた学徒や講師で溢れ返っているのだ。

 

 ――結界。

 界を限定し、結び、閉じることで外と内とを隔てる魔術の一種。

 人払い、厄除け、(まがつ)返し、と種類は多岐に渡る。

 異界を作る際に使われる物は最高難度の高等魔術として扱われる代物でもある。

 

 それが()()()()()()の刻まれた石版とともに、この修練場の入り口に置いてあったのだ。

 

「【(イーサ)】、【(エオロー)】、【(ユル)】……だったと思う」

「ルーン文字だね」

 

 ――ルーン。

 北方に伝わる25の記号からなる魔術文字。神秘性や汎用性の高さから、今でも使用者の多いメジャーな魔術である。

 

「氷に結界、異界?でもそれだけじゃ条件付けが足りないんじゃない?」

「解読が間違ってる。【(イーサ)】は拒絶、【(エオロー)】には友情、庇護、【(ユル)】には縁切り、なんて意味もあるから、そのあたりを基点に文章を組み上げて喚起しておけば、そうね。あとはあの二人の血が2、3滴でもあれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんてことも不可能じゃないと思う」

 

 とはいえ、一歩間違うと()()()()()()になりかねない、なんて捕捉をフィーは加えた。

 フィーは優等生である。吸収できる知識は近代古典に関わらず勤勉。弟子にならないか、と声を掛けてくる講師もいるそうだ。なお、その尽くを振ったと言うのだから驚きであるが、しかしその博識振りには目を見張る物があった。

 

「さすがだねフィー」

「今回のは文章が簡単にしてあったから解読も楽だっただけ」

 

 淡々とフィーは言うので、フェイは「ふーん」と流しておいた。頬に少し赤みを帯びているのを確認して微笑みながら、だが。

 

「にしても、人払いにした方が楽だったんじゃない?外じゃ大騒ぎだしさ」

「人払いは対策がされやすいから。あの大人数じゃ『迷いの森』の逸話でも引っ張り出して迷宮を作らなきゃ話にならないよ。そんな大儀式、模擬戦一つのために使いたくないでしょ?」

「うわ……確かに無駄すぎるわ。でもあの石版もそれなりのアーティファクトだったと思うんだよなぁ」

「そうなの?」

()()の相場で百は飛ぶね」

「獣金札?」

「いや、人銀札」

 

 フィーが露骨に顔を顰めたのをフェイもまた同じ気持ちだと言わんばかりに頷いて見せた。

 ある国の兵士の給料が月に大体人銀札20枚ほどだったはずだ。つまり給料5か月分が吹き飛ぶのである。

 

 そんな取り留めの無いことを話しながら、集まった人々に視線を滑らせていく。

 この修練場はルーンの結界によって入場を制限されているために思ったよりも人数は少ない。

 少ないが、無視できない人物が何人か居るのも事実だった。

 例えば、近いところに居るこの大陸では見られない黒と青を基調とした和装に身を包む青年

 例えば眠たげにまぶたを擦る傍らに枕を浮遊させている小さな少女。

 

 ――フェイは彼らが何者かを知っている。

 

「占術科の神童やら異能科の眠り姫まで観戦って、ディードの奴、どんなコネしてんのよ」

 

 このディーワ学園内ではアルカトリ以外にも優れた魔術の腕から高い知名度を持つ学徒が何人か居る。そのうちの二人が、この場所に揃い踏みしていた。 

 

「いや、あれは多分、アルカの縁」

「……は?」

 

 何を突然言い出すのか、確かにアルカトリなら素晴らしい魔術の腕前を持つ者と縁は結べるのかもしれないが、しかし、彼女は決闘に敗北するまでフィー以外を突き放すように行動していたと聞く。

 であれば、異能科の眠り姫はまだしも、()()()()()()()()()()との縁は考えられない。

 だが、フィーを見る限りそう考えるだけの根拠もあるようだった。

 

「でも、なんで?」

「だってアルカは――」

 

◇◇◇

 

 ――時はほんの少しだけ遡る。

 

 修練場入り口。

 既に人で溢れかえるその場所を一人の小柄な少女が訪れていた。

 

 白いネグリジェに星柄のナイトキャップ――彼女の傍らに浮かぶ枕に眠たげに細められた眼、と今にも眠ってしまいそうで、その様に釣られて眠気を覚えさせる姿はどこか浮世離れしていた。

 

 ――リリウム・レムナント。

 異能科においてその様と異能から『眠り姫』と渾名される少女であった。

 

 リリウムは眠り(まなこ)をごしごしと擦りながら修練場の扉を見ていた。

 その奥でアルカトリ・クライスタ――()()()()()()()()()()()()が模擬戦を行うと聞き、駆けつけたのだが――

 

(これは……ダメ……だね……)

 

 ルーンの結界が張られているらしく入れるのはアルカトリ・クライスタとスペルリィ・ディードと友誼を結んだ相手のみ、なのだとか。

 お陰で修練場の前に人の波で溢れており、通る隙間も無い。中には諦めて帰ろうにも、人の波に揉まれて戻れない者までいる始末だった。

 

 少しの間、それを眺め、そして帰るか、と結論付けた。そもそもここに来たのは友人からの頼まれ事があったからなのだが、『無理の無い範囲で』という念押しもされていた。なら無理である今回は大丈夫だろう。

 

 そう結論付けて帰ろうとした時、ざわめきが止んだ。

 何事か、と見てみると、集まっていた群集の視線が全てこちらを向いている。

 ――いや、リリウムの身長は140少しと非常に小柄だ。故に自分を見ていたならその視線は自分を見下ろしていなければならない。それにその表情は恐怖と忌避が混ぜられたような表情だった。

 

「はぁ……ここか。やれやれ、流石にここを覗くのは骨が折れるが……かといって歩き回るのも、私の趣味、ではない――そうは思わんか?眠り姫」

 

 背後からの声で、すぐに理解した。

 人に不快感を覚えさせる、気だるげで、嘲るようなその声。多くの学徒達に恐れられるその声の持ち主をリリウムは知っていた。どうせなら会いたくないと思う相手だった。

 

 振り返ると、黒を基調とした東洋の装束が目に付いた。視線を上に上げていくとたらり、と垂れ下がる藍色の髪が目に入った。

 顔立ちは端整だが、薄ら笑いを貼り付けた口元と、水底のように澱んだ目がそれを台無しにしていた。

 

 予想が的中していたことを確認して、眠って現実逃避してしまおうかなんて思ってしまうほどに、嫌な相手でもあった。

 ――スイゲツ・カガミ。

 自称。極東の陰陽術士を名乗る魔術師であり。未来予知レベルの占術を行使する『占術科の神童』と呼ばれる人物だ。

 しかし、その性格は陰気であり、自分で勝手に占い、突然悪い未来に関わるであろう相手に嫌みったらしく教えてうろたえる様を見て薄ら笑みを零し、楽しむ他。困難に直面する者たちをこの陰陽師が持つ秘奥の魔術で遠くから見て楽しむというまったく人に自慢できない趣味を持っている。

 おかげで腕こそ確かなのに学徒たちから蛇蝎のごとく嫌われ、忌避される人物でもあった。

 

 そして、リリウムとは()()()()()()()()間柄でもあった。

 

「……スイゲツ、その呼び方やめてよ」

「くくくっ、あまりにも似合っているのでつい、な。だがこれは私が名付けた訳ではないだろう?私に文句を言うのはお門違いというもの……」

「……留守にしてるから無理」

「では奴が帰ってくるまで取っておくといい――では行くとしよう」

 

 スイゲツが一歩前に踏み出した。リリウムは首を傾げた。

 

「私たち、入れないよね?」

「安心しろ、私もお前も無駄足を踏むことはない。何せ――」

 

 スイゲツは歩みを止めず、しかし顔だけリリウムに向けて言いながら。

 

「――()()()()()姿()()()()()()()()()

 

 ――白線を容易く通り抜けたのである。

 

「――!」

「簡単なことだろう?なんせ私達は()()()()だそうだ」

 

 スイゲツの言う理屈は、要するに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というとんでも理論であった。

 

「……屁理屈」

 

 そう言いつつ、リリウムもまた、白線を乗り越えて修練場に入った。

 入れるのならば使わない手は無い。開けた入り口で待ち構えるスイゲツの姿こそ嫌なものだが。

 

「適用されているならば理屈なのだろうよ。いや、屁理屈を理屈にしてしまう誓約の強制力を恐れるべきか、くくくっ……自ら困難を選び抜く精神性は正気こそ疑うが、賞賛に値する」

「その『他人の不幸は蜜の味』みたいな感性はどうにかならないの?」

「茨道こそ人生の華。故に眺め甲斐が有るというものだろう?それを不幸と嘆き諦めるのは興醒めだがね」

「……はいはい」

 

 よくこんなのと仲良く出来るよねぇ、と遠い目をして友人を思い浮かべ、その友人も変わり者だったな、と溜め息を零しつつ、リリウムは修練場の中へと歩を進めるのだった。

 

 

◇◇◇

 

 ――修練場中央。

 そこに一組の男女が立っていた。

 

 魔導書科所属の奇術師、スペルリィ・ディード。

 異能科所属のマナ使い、アルカトリ・クライスタ。

 

 お互い黙していたが、しかしその様相は全くの真逆で、アルカトリが黙してただ立っているのに対し、スペルリィは何やら思案顔でくるりくるり、とまるで踊るように回って観衆を見渡していた。

 彼が回る度にカツカツ、と金属の叩く音が鳴っていた。

 音を鳴らしている靴に目を遣りつつ、アルカトリは問う。

 

「……何を見てるの?」

 

 ぱたり、と靴音が止んだ。スペルリィは愉快げに少女へと返す。

 

「たまには会員制のショーというのも悪くない、と思ってね」

「そう考えられるディードが羨ましいよ、ホント」

 

 呆れたとばかりにアルカトリは返すが、スペルリィは笑った。

 

「ハハハ!それは褒め言葉として受け取って置こう!……いや、何、君とこうして魔術で競い合えることに高揚していてね」

 

 呆れた話だった。これから模擬戦とはいえ、一歩間違えれば死が待つ魔術戦闘を行うのだ。しかも相手は()()()まで全戦無敗を誇ったこのアルカトリ・クライスタである。

 

「私相手に少しは怖気づくかと思ってたんだけどね」

「私の憧れとこうやって魔術を競えるんだ!昂らずにいられる訳が無いだろう!」

「……憧れ?」

Exactly(その通り)!」

 

 スペルリィはまるで好きな物を語る子供のように、熱く、熱く語った。

 

「私はね、実は君のファンでもあるんだ。毎回、毎回君の決闘は楽しみにしていたよ!六元素を巧みに、そして堂々と操るその立ち姿!あの時の君には確かな華があったのだよ!」

 

 驚きだった。

 まず、自分にファンがいたと言う事実に驚き、次いで自分が度々見ていたマジックショーのマジシャンがファンであったことに驚いた。

 だが、よくよく考えれば自分が決闘をする段になると彼は特に盛り上げていた。

 フィーはその行為が酷薄に見えたのかいつも眉を顰めていたが、アルカトリとしてはどうでもよかった。

 しかし、まさかファン、なんて物だとは思っていなかった。

 

「――まさか、私の戦う姿を見るために模擬戦を?」

「さて、どうだろうね?」

 

 ふと思いついた理由を口にしたが、しかしスペルリィは不敵な笑みではぐらかした。

 

「……まぁいいや、たまには戦わないとこっちも鈍るって思ってたからちょうど良かったし」

「――だからといって私を呼び出すことはないだろうミス・クライスタ」

 

 そこに、老人の声が割り込んだ。

 学園長、ロー・アンク。

 やれやれ、と疲れたように溜め息を零す老師に、アルカトリは努めて明るく言う。

 

「良いじゃないですか、変に大事になった所為でみんな私が模擬戦するって言うと嫌がりますし」

 

 そもそも模擬戦が中々行われないという点は前にも述べた通りだが、現状、アルカトリ・クライスタの名前を含めるともっと行われる可能性は低くなる。

 学園長がわざわざ出てきたのはそういう事情があってのことだった。

 

「私だって息抜きしたいです」

「確かに星詠にその案件を持ち込んだのは私だがね……」

 

 事務仕事が一段落してようやく昼食だ、と思っていた矢先にアルカトリとスペルリィが飛び込んできたのだ。

 お陰でお昼も片手間に二人の要望を受けて元教え子である講師を二人が嫌がるのを説き伏せてどうにか模擬戦が出来るようにと手引きしたのである。

 やれやれと頭を振り、老師は溜め息を零すと、それぞれ広場の両端で待つ講師二名に目配せする。

 両方が頷いたのを確認して、最後に

 

「両者、準備は良いかね?」

 

 と確認した。

 

「ええ」

Sure(もちろん)!」

 

 アルカトリは淡々と、スペルリィは不敵にそれぞれ応じた。

 

「よろしい、では――」

 

 ――模擬戦を始める。

 

「【【世ヲ形作ルハー―」

「【開演(スタート)!――】」

 

 同時に、二人は詠唱を開始した。




※ルーンについて
 今作ではルーン文字をフサルク(ルーンのアルファベット表記)にて表記させていただきます。

※この世界における通貨事情。
 この世界での通貨は紙幣中心に移り変わっており、それぞれ金、銀、銅と紙幣に描かれる神、竜、人、獣で価値が変わる。
 低い方から獣銅、獣銀、獣金、人銅、人銀、人金、竜銅、竜銀、竜金、神銅、神銀、神金の順に価値がある。
 日本円換算で一、十、百、千、万……と桁が上がっていくが、竜銅以降の紙幣は桁が大きすぎて普段使いに向かないことや絶対数の少なさもあって目にすることは稀。

 もちろん旧時代の銅貨や銀貨、金貨も存在するのだが、貴金属ごとの相場や含有量などで価格が大きく変動するためあまり使われなくなっているが、銀は特に魔除けの触媒やアーティファクトの材料として重宝されることから金よりも相場が高くなることもあるとか。

 ちなみに紙幣の偽装、つまり偽札を見分けられるように特殊な練金術による施術が施されているそうで、やり方さえわかっていれば素人であっても見抜けてしまうのだとか。

※石版について(2019/09/16追記)
 結界を発生させていた石版は学園の備品であるアーティファクトです。
 元は北方に伝わる『選定の剣』の伝承において剣が突き刺さっていた石のレプリカ。
 そこにルーンを刻むことで選定する結界として機能させています。
 (伝承の元ネタはわかりやすいかと……)
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