魔人の息子   作:ヒラメもち

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第4話 知識チート

参考人から容疑者に格上げ。

 

捜査官に連れられてきた場所は、王国軍の練兵場である。つまり、数十人規模の戦力が一瞬でかき集めることができる。武器を構え、詠唱魔法を準備しながら、そんな彼ら彼女らに俺たち2人は睨まれていた。父も俺もこのような面白い状況を愉しんでいた。

 

「はて、このような状況。身に覚えのない罪に問われている気がしますが?」

 

「魔人化した人間が誰か、箝口令が敷かれている状態です。リッツバーグ邸でもあくまで行方不明者が出ているだけ。だから、魔人化した者が誰かを知る人物はそう多くはないんですよ。」

 

「それで?」

 

「王都に広まっているのは『高等魔法学院で魔人が出現し、偶々居合わせた英雄の孫であるシン=ウォルフォードが魔人を討伐した』という話。しかし、討伐したという内容に貴方は疑問を抱いた。―――加えて、どこでカート=フォン=リッツバーグが魔人化したと知ったのですか?」

 

「まるで推理ドラマだな。」

 

「……君、ドラマとは?」

 

「故郷の言葉、気にしないでください。」

 

「クックク、ええ、愉しい推理でしたよ。まさかそのような内容にすり替えられていたとは。いやはや、愉しい。世俗に疎いことで、まんまと騙されましたよ。」

 

「もちろん俺たちは抵抗するぞ。」

 

俺たちは愉悦の表情を浮かべながら巨大な魔力を纏い始める。感じたことのない魔力量に彼ら彼女らは目を見開いた。冷や汗を掻き、まるで超級の魔物にでも会ったかのような顔をしている。

 

「構わん。―――放て!!」

 

「ファイヤーボール!」「ウォーターシュート!」

「ウィンドストーム!」「アースブラスト!」

 

詠唱をして準備しておいたようだ。

火、水、風、土の属性の攻撃魔法が襲い来る。

 

「いい魔法、だが無意味だ。」

 

「障壁魔法!?」

 

半透明の壁は、何もかも防いだ。これこそが障壁魔法、その強固さは魔力量や魔力制御に依存する。魔人である俺たちが使えば賢者くらいでないと破れないバリアとなる。

 

「さて。もう愉しいこともないでしょうから、帰りますよ。」

 

「了解。」

 

手を振りかざして無詠唱で魔力を放つ。

 

「無詠唱魔法か!?」

「みんな、屈むんだ!!」

 

轟音が鳴り響く。

それは、爆破の魔法で練兵場の壁を壊した音だ。

 

「絶対に逃すな!また犠牲者が出るぞ!!」

 

悠々と背中を向けて歩いていく俺たち。

魔法も剣も、強固な魔力障壁に阻まれている。

 

 

「今回の実験も最終段階ですよ。」

 

「実験だと!?どういうことだ!?」

 

「答える義理はないけれど特別に教えてやる。人工的な魔人化実験だ。幸運にも、リッツバーグはその栄えある第一号となったわけ。」

 

「き、貴様ら!?未来ある少年の命を!身勝手な目的で使ったというのか!?」

 

彼ら彼女らは激昂し、さらに魔法の威力と数が倍増した。だがしかし障壁魔法は耐魔力がより強いのだから、せめて物理で攻めてくるべきだ。

 

まったく。魔法について研究不足である。

 

「ていうか死んでないし、強くなれてあいつも本望でしょう。」

 

「貴様らァ!!」

 

「正義というやつですか。そろそろ、鬱陶しいですね」

 

父は、手を兵士たちに向けた。

愉しい時間はすでに終わりを告げた。

 

 

これから起きるのは、一方的な蹂躙である。

 

 

 

「おお!? 何の騒ぎだこりゃ!?」

 

「シン=ウォルフォードか。」

 

「ほう、彼が。」

 

偶然にも彼は通りがかったのだろう。

まるで主人公のような、トラブル遭遇率である。

 

「オーグ、あれって……」

(眼帯なのに、こっちが見えてるのか?)

 

「ああ、間違いない。先程言っていた、中等学院の胡散臭い教師オリバー=シュトロームだ。」

 

「あいつがカートを……」

(隣にいるのは日本人に見える。もしかしてこの前のあいつか?)

 

 

「お逃げ下さいアウグスト殿下!」

 

「奴こそが魔人騒動の真犯人です!!」

 

国のために人生を捧げるという、彼らは殿下に叫ぶ。

仕事熱心なことだ。

 

しかし、彼らはいまだ冷静に俺たちを見てくる。

 

「おい。お前らがカートを操っていた奴か?」

 

「操る、とは違いますがね。まあ、愉しいくらい思い通りに踊ってくれましたよ。」

 

「そうかよ、胸糞悪いな……」

 

「おや。貴方も私が赦せませんか?」

 

「ああ、許せないね。お前のお陰で皆がどんだけ迷惑を被ったと思ってんだ。」

 

水色髪美少女のことを言っているのだろう。元々恋慕していたリッツバーグの行動には拍車がかかったらしいし。今もなお魔人リッツバーグは、シシリーを欲し、ウォルフォードを憎み続けている。

 

 

「お前を放置してるとまた迷惑を掛けられそうだからな。おとなしく捕まってろよ!」

 

微細振動する剣を構え、手のひらを向けて青い炎の矢を放ってくる。酸素とか水素とか混ぜて、さらに高温した炎だろう。その温度はもし当たれば、一般人の人体にはひとたまりもない威力である。捕まえるとはよく言ったものだ。

 

「炎には、水だな。」

 

 

求めるは、より大きい水圧。

異空間の膨大な水を圧縮し、魔力を籠めて槍と化す。

 

「岩をも貫く水の槍、ウォーターレーザー!!」

 

「グッ」

(痛ぇな、ちくしょうっ!)

 

炎の矢をかき消し、魔道具である制服にぶち当たる。

しかし、自動障壁を貫くまでには至らなかったようだ。

 

 

「シン君!?」

「シン、大丈夫か!?」

 

「あっ、ああ。」

(というか詠唱魔法かよ。お前も中二病かよ!?)

 

 

「そうか。お前は何者だ?」

 

「その質問は2度目だな、殿下サマ」

 

「まさか、あの時の?」

 

「ジン=シュトロームだ。ていうか、このまま帰らせてくれないか?」

 

「馬鹿にするな!」

(ずっと同じ所にいる訳ねえだろうが!)

 

防がれると予想していたウォルフォードは魔法を放った後、俺の後ろに回っていた。その見事な剣捌きで、微細振動する剣を振り抜く。視えている剣の軌道を妨げるように、俺は右腕を盾とする。

 

 

バキッという音が鳴り響き、剣は折れる。

 

「なっ!?」

 

「微細振動によって切断力はあるが、耐久性のない魔道具だな。いつまでも気を抜かずに、刃を取替えろよ。まさか進撃の巨人を見ていないのか?」

 

「……お前に言われなくても、今日はそれを作ろうしていたんだよ。それと、その腕は何だ?」

 

「ドラゴンの遺伝子を移植した。どうだ、龍人っぽいだろ。」

 

グローブを外せば、赤い鱗と爪が特徴的な手が現れる。ドラゴンは幻獣種として扱われ、最強種として数十体だけ秘境に生存している。決して弱くなどはない。再生能力のある魔人のままでは防御力が心もとなかった。

 

「無茶苦茶な強化、だな。」

 

「どうせ知識チートをするからにはベストを尽くさないとな。」

 

「人体改造なんてイかれてるな、お前。」

 

「そうか?自分が強くなるためなら手段は選ばない。これもな。」

 

異空間収納から取り出すのは、銃。

今回は実弾を籠めている。

 

「さて。魔法耐性のある障壁魔法に対して。物理攻撃は通用するのかどうか、自動障壁は反射的に発動するのか。実験開始だ。」

 

「おい、待て。一体なんでこんなことを!?」

 

「だって、愉しいだろ。」

―――なぁ、転生者?

 

バンッという音。

制服の肩を撃てば、苦痛に歪んだ。

 

もし避ければ、背後の殿下サマたちにその凶器が向かう。誰かを守るということは、そう簡単なことではない。

 

バンッバンッバンッ

 

腕をクロスさせて、顔や頭を守っている。

つまり、魔力付与制服も万能ではないということ。

 

「シン君!?」

「ねぇ、大丈夫なの!?」

「一体、あれはどんな武器なのでござるか!?」

 

「はぁはぁ、残念だったな。」

 

「実験は成功だけが全てじゃないぞ。失敗は成功の母って言うだろ。さて、次なる実験だ。もし銃弾に魔力を籠めたのなら、威力は増す。つまり、魔力付与同士で同条件。」

 

バンッ

 

「いてぇ、な……」

 

「シン!?」

「シン君!?」

 

肩からは紅い血が流れ出るが、たちまち治癒していく。

銃弾が貫通したのは運がよかったな。

 

水色髪美少女たちが走ってこようとするのを、ウォルフォードは手で制した。

 

「今度は……、こっちの番だ!!」

 

「なんかまぶしい……!?」

 

上空から太陽光を収束すれば、それは熱線と化す。

 

「グウオアアァァァァ!!!」

 

熱く、焼かれる。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い

 

「「「やったか!?」」」

 

「まさかジンが傷を負うことになるとは。実に愉しい相手ですね、賢者の孫。」

 

「………ああ、怖かったなぁ。」

 

服は全て焼け焦げ、龍の皮膚以外は焼け爛れる。

見るにも耐えない見た目だろう。

 

「怖かったぞ。俺を殺す気か?」

 

全裸にされたので、異空間から取り出したローブを着る。そんな俺の身体はハイペースで治癒していた。

 

「修復、しているのか? まさか、お前は。」

 

「そう、魔人だ。天然もののな。」

 

「馬鹿な!?3人目の魔人だと!?」

「最初の魔人並みってことじゃないの!?」

「シン君……」

 

父が3人目であって、俺は4人目である。しかし教える義理はない。ていうか時々、口を挟んでくる殿下サマたちは足手纏いであることに気づいているのだろうか。さっさと逃げた方がウォルフォードも戦いやすいだろう。

 

「どうする、お爺様とお婆様に助けてもらうか?」

 

「俺だけでなんとかなるさ。」

(マズい、もしこいつを倒してもシュトロームがいる。ここは一旦退くか?)

 

「そうそう、ラッキーなことを教えてやる。」

「私たちはもうこの国に用はないんですよ。」

 

「なんだって?」

「俺たちは眼中にないということか。」

「じゃあ、どんな目的があるのよ?」

 

最後まで上から目線だ。

しかし憤りや不満、そういう感情を抱くことはない。

 

「1つだけ言うなら、別に俺たちは殺人鬼じゃない。先に武器を向けてきたのはお前らからだからな。リッツバーグが無事に魔人化できたのはウォルフォードに対する憎悪が原因。」

―――だから俺は悪くない。

 

ゲートを開き、去る。

こんなところで油を売っている暇はないのだ。

 

 

父の復讐は、もう我慢できないだろう。

 

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