始まるよ♪
人物
白鷺千聖
ビクトリアと仲良くしている。
松原花音
ビクトリアと仲良くしている。
手前ビクトリア
上の二人と一緒にいるとよりブサイクに見えると専らの評判
ワキガ持ちで殺人光線のビクトリアの異名を持ち、周辺諸国を震え上がらせた
最強の格闘技は何か?
多種ある格闘技が
ルール無しで戦った時……
スポーツではなく
目突き、金的ありの喧嘩で戦った時……
最強の格闘技は何か?
──今現在、最強の格闘技は決まっていない
◆◇◆
「なんだか変わった人だったね」
帰りの支度をしていた白鷺千聖に、松原花音から同意を求めた言葉が投げ掛けられた。
「そうね、でもいつもの事よ。高校生なんて、まだ本能で生きてる子供ようなものだから」
そう、何時もと変わり無い。刺すような視線が飛んでくるのも、邪な感情を抱かれるのも慣れていた。
それというのも彼女は女優、見られて観られてナンボの人間である。
「ビクトリアに対しての態度は正直許せなかったけど」
「そうだね……ビクトリアちゃん、可哀想だよね」
先程から話しているのは今朝、転校してきた男子ことだ。
その転校生には憤りが半分、軽蔑が半分のまさにハーフアンドハーフ、呆れというトッピングも追加されて、ボリューム感に溢れている。
確かにビクトリアはナニがとは言わないが残念だ。
一年の頃なんかはいつも同情していたくらいだし、情けや甘さを捨てた気でいた自分が、彼女の昔話で思わず泣きそうになるくらい不遇な目に遭っている。
なんでも、顔がヤバくて義兄にフォークを額に刺されたり、顔が怖くて母の見合い相手にラリアットされたり、バレンタインのお返しがホウ酸団子だったり……
「……もうやめましょう」
千聖は彼女を応援する。
自らの数少ない友人の一人、強く生きて欲しいと願う。
「それより花音、貴女も佐藤君に見られてたでしょう。大丈夫だった?」
「うん……丁度黒板と直線に並ぶ席だし、たまたま見てただけだと思うよ」
件の彼は、転校前からかなり噂にはなっていた。
偏差値70を軽く上回る頭脳、整った容姿、父親は官僚、母親が県知事の裕福な家庭。
教師が漏らした情報で見たこともない人間相手に、クラス中が浮わついた雰囲気が出ていた。
実際、やって来たのは体格のいいお調子者。誰もが噂と乖離した実物に拍子抜けした。
成績に関しては授業が大した事をしていないので不明だが、見た目はそこそこ良いものではあった。ただ、育ちが良いようには見えないのだが。
「どう見ても劣情を込めた視線だったわよ。あまり関わらない方がいいんじゃない?」
「ちょっと苦手なヒトだったかも……でもこっちに来たばかりで、本当は不安でいっぱいかもしれないよ?」
「絶対に無いわ」
心の中が透けて見えるようだった、あれほど分かりやすい人間は自分で知っている内でも……意外といる。
精神を剥き出し、心を曝しながら生きてる人間が身近に結構多い。
その事に気が付くと考えるのが馬鹿らしくなり、話を切り上げる。
「私は仕事があるけど、ちゃんとライブハウスに一人で行ける?」
「うん、平気かな?」
通い慣れた道を歩くのに、何故に疑問系が必要なのか、それは仕方ない──というかやや諦めている部分がある。
彼女は極度の方向音痴だからだ。
紐で繋いでいない限り、危なっかしくて散歩にも連れ歩けない程に重度のそれである。
ギャグにしか聞こえないようだが、洒落にならない。
遅刻は言うに及ばず、危険な場所に迷い込めば命に関わる深刻な欠点だ。
「脳に機械でも埋めれば治るかしら?」
「怖いこと言わないでよ……こころちゃんも前に同じこと言ってたし……」
彼女ならやりかねない、そう思いながらも花音改造計画は惜しい。
山で遭難して餓死もしくは転落死する未来と、頭蓋を開いて異物を入れるリスクを天秤にかけてみれば、サイボーグ化も無くは無いのでは?
「弦巻家なら何でも可能だと思わない?」
「……冗談だよね?」
「いくらなんでも冗談よ」
通信機器が発達した現代において大概の場所ならば電波が届く。
歩ける範囲であるならば迷っても大丈夫であろう。
……おそらくは。
「またバンドの誰かと一緒に行きなさい。また明日ね」
「うん、また明日」
親友と教室で別れ、スケジュールを再確認しながら玄関へと向かう。
今回は一度近くのレストランでロケがあり、それから車で移動して局内での練習だ。この場所ならば電車の乗り継ぎが必要ない、安心して目的地に向かえる。
玄関に着いて靴を履きかえ、外に出ると、
「あ、居ました! アイツです! あのでかいツンツン頭が十兵衛です」
白鷺千聖にとって、今一番聞きたくない名前を耳にした。
何事だろうか、嫌な予感しかしないが立ち止まる生徒に阻まれ校門を潜れそうにない為、様子を窺うことにする。
「オラァ、十兵衛! わざわざ来てやったぞ!」
「積年の恨み、今日こそ晴らしてやんよ!」
十兵衛の周囲に群がるように、ガラの悪い男達が屯していた。
事情を知らずとも、目的は明白だ。
恨みを晴らす、つまり集団での
思考が短絡的なら、やり方も原始的になるのも想像に難くない。
奥にいた柄物のスーツを着た男が、近くのガードレールに腰掛け、遠巻きに話し出す。
「お前ら、やるなら半端は許されんぞ? 俺たちはナメられたら終わりだからな」
「モチロンですよ──オイ! 見せもんじゃねーぞ!」
他の輩とは違う雰囲気、スーツの男は明らかに尋常な人間ではない。どう前向きに捉えてもヤクザ者にしか見えず、身なりから察するにそれなりの地位がある可能性もある。
そんな人間を前にして、当事者の少年はおどけたような口調で対応している。
本人は下手に出る気が無いのはよく分かった、ムカツクくらいに理解した。
周囲をみれば、誰も動いておらず先生が気づいている様子はない。
事態は何もしなければこのまま、ならば自分がやるしかない。
ここで取れる選択肢は、いくつかある。
一つ、この場から離れ、ほとぼりが冷めるのを待つ。
一つ、間に割って入り、説得を試みる。自分のリスクが非常に大きい手段である。
そして最後、一旦見えない所に移動し、そこから警察への通報を行う無難な方法。
三番目の選択肢しかない。そのせいで仕事に遅れたとしても、同級生を見捨てたとなれば後で後悔をするだろう。
まずは校舎に向かう為、勘づかれないように慎重に後ろに下がろうとした時だった。
鈍い音と共に、男の一人が吹き飛ばされた。
受け身もろくにとれず、背中から地面に勢いよく倒れ込む。
突然の出来事に認識が追い付かないが、顔面から血を流して動かなくなった男を見下ろす少年、佐藤十兵衛がいきなり殴りかかったのだと理解する。
なんで、事態をややこしくさせるのか、なんで、そもそも転校初日にチンピラに絡まれてるのか、なんで、こんなのがやって来たのか──千聖の頭は、パンク寸前であった。
あんな大人数を相手に勝つつもりなのかと、正気を疑う。
そんな思いとは裏腹に、あのガラの悪い男達は無惨にも叩きのめされた仲間を末路を目撃し、目の前の悪魔に戦慄を覚えていた。
殺される、そう直感して思わず後退りする。
「一人やられたぐらいでビビってんじゃねえ! 囲んで掴んで殴ればやれるだろ! 逃げるなら俺が殺すぞ!」
怯える背中に叱責と脅しを叩き付け、戦意を無理矢理引き摺り出そうとする。
だが、怒鳴り散らす男は、直ぐに高校生の恐ろしさを思い知らされることになる。
一人倒したことで包囲網に穴が開き、そこを十兵衛が突破してきたのだ。一瞬、逃走を図ったのだと思ったが、それは間違いだと気付くのに時間は要らなかった。
狙いは自分だと。
十兵衛は慌てて構えを取るヤクザを見て、格闘技に関して素人であると推測する。
そんな人間が冷静でない状態で行う初手は、利き腕でのモーションの大きい殴打。
ヤクザは右腕を引いて拳を振るおうとするが、先に打たれた左ストレートに動きを止められた。
さらに、無防備な鳩尾に右の拳がめり込み、頭が下がった所へ肘打ちが入る。
「お……前、ヤクザに……手出して……どうなると思って」
膝から崩れ、蹲りながらも十兵衛を睨み付けた男の頭部に、加減の無い回し蹴りが入った。
衝撃で地べたに転がり、土と流血が服を汚す。
恐怖に駆られてアスファルトを這い、痛みに堪えかねて助けを求める。
「早く……そいつを…………佐藤を……」
しかし、誰も動かない。ただ見ているだけの観客と何も変わらず、先程から一歩たりとも動いていない。
当てにならない救援を待つのはやめて、僅かでも進もうと手を伸ばし、この場から逃げようと足掻く。
幸いにも、高校生は自分から離れていっている。背後を見せて遠ざかっていく。
標的を変えたのか、心に少しだけ安堵がもたらされた。
だが悪魔は、自分に歯向かってきた者を逃すつもりは毛頭無い。
十兵衛は無法者たちが乗ってきた一台のバイクを物色し、何やら調べている。
そして、抱え込むように持ち上げて、再びヤクザの所へ戻ってきた。
「まさかあいつ……」
所有者である青年が呟いた。
冷や汗が背中から下半身にまで流れる、愛車がどう使われるかというよりは、それによってどうなるかを想像しての事だ。
必死になって這いずるスーツに追い付いた十兵衛は、バイクをベッドにシーツでも掛けるよう無造作に投げ捨てた。
排気量の少なく、比較的軽い車体ではあったがそれでも金属の塊である。
下敷きになったそれにとって充分すぎる圧力が襲い掛かり、潰れた蛙のように手足を投げ出し完全に気絶した。
あまりにも苛烈な所業を目の当たりにしてチンピラは勿論、野次馬たちすら恐怖し、泣き出す女子まで現れる始末。
そんなことはお構い無しに、ジリジリと残った獲物と距離を詰める十兵衛。
「早くかかってこい、まとめて潰してやる」
「あ、悪魔だ……」
「人殺しだ……」
「さっさとかかってこいオラァッ!」
「うわぁぁっぁぁ!? 殺される!!」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
「ゴメンナサイ! ゴメンナサイ! ゴメンナサイ!」
見事なまでの怯えぶりに、誰もが憐れ、と心の中で合掌する。
ヤクザとそれに重なるバイクを置き去りにして、あっという間にインベーダー達は去っていた。
「増田ァ、まだいるか?」
ここで先ほど親しくなった同級生の名前を呼び始める悪魔。
名前の主は出ていく事を迷ったが周囲の視線は自分に集まっていく。さっさと生け贄になってこい、と目が言っていた。
「……なんだい、十兵衛君」
「今、ヤクザがバイクで事故ったよな?」
「え? いや……どう見ても」
「ウィリーに失敗して事故ってたよな?」
「僕は事故だと思います!」
「よろしい、君には期待しているよ。馬鹿な真似はしないとね」
増田の返答にに満足した十兵衛は、他の目撃者全員にも同じような
まるで、刑事の取り調べだな、そんなことを言いながら笑う悪魔を玄関から覗いていた千聖は、これからの学園生活に大きな不安を覚えたのだった。
地球の重力が重くて連載が遅れる…冗談です。
三国志読んでたら時間が過ぎてました。