箱に残った希望の一欠けら   作:ノムリ

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パンドラ・ファミリアの実力

 フィンが呼んだ対象に撤退の準備を急ピッチで進めていた全員がそちらを向いた。

「あれってパンドラ・ファミリア…」

「本物かよ」

 

 フィンは荒い呼吸を整えて下の階層から上げったきた四人の元へ近づいた。

「レン、頼みがある」

「ん?」

 首を傾げ、辺りの見渡しロキ・ファミリアの先鋭が何とか前線を保つ事で現状を維持している状態をすぐさま理解したレン。

「手を貸せってことだろ、貸し一つで手伝ってやるよ」

「ああ、それで構わない」

「というわけだ、お前らもう一仕事だ」

 フィンに頷き。

 レンは後ろをついてきたいた三人に指示を出した。

「全く、団長は人使いが荒いぜ!」

 背中に背負っていた赤い戦斧を肩に担ぎ、

「リヴェリア様やレフィーヤもいる事だろ私も頑張らるかな」

 腰に下げていた装飾の施された二本のレイピアを鞘から抜く。

「それじゃ私は防御を担当するであります」

 全身が隠れるサイズの大盾から片手剣を抜き、盾を構える。

 

 三人は具体的な命令をされる事なく自分がやれること、やるべきことを理解して動き始めた。

 行動力と仲間への理解。これがあるからこそパンドラ・ファミリアは少人数のファミリアでありながらオラリオでの最強の一角を担うことが出来ている。

 

 

 

 

 

「フィン!貴方は皆が迷わないように指示を出してあげるであります!」

「分かっているよ、皆、パンドラ・ファミリアが抑えている間に急げ!アイズ、ティオネ、ティオナ、ベート、君たちも戻るんだ!」

 ガン!地面に突き立てられた大盾とは反対に小さな片手剣。

 

 パンドラ・ファミリア所属のLv.5

 二つ名―――小さな戦士(スモール・ウォーリア)

 種族小人(パルムゥ)のシャハル・ナハラ。

 

 小人族特有の子供のような身長とミスマッチの大盾。

 普通ならスモールシールドやバックラーなどの小型盾を持つだろうが、シャハル敢えて大盾を選択した。元サポーターの彼女には『縁下力持(アーテル・アシスト)』というスキルがあり、効果は、一定以上の重い持ち物を装備している時に、補正で軽く持てるスキル。補正は重量に比例する、つまり重量のある大盾を持てるのはこのスキルがあるからこそだ。

 

 

「守るのは私の専売特許でありますよ」

 迫りくる芋虫モンスターを大盾で押し返す。その衝撃で水風船に如く爆発を引き起こし、周りの芋虫と共に破裂していく。それも不滅属性(デュランダル)の大盾の前ではただの水流に過ぎない。

 

「相変わらずの盾使いだな」

「オラリオで盾を持たせたら彼女の右に出る者はいないからね」

 後ろで味方の回復に努めている魔導士エルフのリヴェリアの独り言にフィンは同意した。スキルと盾を使った独特な衝撃の受け流し方があるからこそ小さな体でも盾役(タンク)を熟し、味方を守る事が出来る。

 

「ふ~ふふ~♪」

 風を斬る二刀流のレイピア。

 鍔に植物の装飾を施された銀色の刀身が振るわれる度に芋虫モンスターが次々と倒されていく。踊り子のように舞うように空を飛び、地を跳ねて。

 

 パンドラ・ファミリア所属のLv.6

 二つ名は―――妖精の舞手(エルフィンダンサー)

 エルフのフェレル・ステル 。

 茶色の髪を振り。踊るように戦う姿にロキ・ファミリアの団員たちは見入っていた。

「…綺麗だね」

「ええ、妖精舞手(エルフィンダンサー)、ここまで二つ名が合ってるなんてね」

 アマゾネスのティオナと姉のティオネは踊るように戦う同性のフェレルに心奪われていた。

 

「【咲き誇るは白き百合の花】」

 空中で魔法の詠唱を歌を歌うように口ずさむ。

 

「並行詠唱!?」

 魔導士エルフであるレフィーヤはその行動に驚愕した。

 強い魔法はそれに伴い長い詠唱、長文詠唱が必須と同時に魔力の制御が必要となり、誤れば魔力の自爆「魔法暴発(イグニス・ファトゥス)」を起こしかねない。それを戦闘と同時に詠唱をする行為こそが並行詠唱。仮に仕えたならば魔導士から前線でも戦う事が出来る魔法戦士へとなることもできるだろう。それを彼女、フェレルは行っている。

 

「【散りゆく定めと知りながら、清らかに花弁を広げ】」

 敵を踏みつけ、高く舞い上がる。

「【最後の一瞬まで誇りを掲げよ】」

 シャハルの大盾とは違い、フェレルのレイピアに不滅属性はなく。代わりに使ったのが魔法。

 空中で体制を変えて、レイピアを構える。

「リリー・スカー!」

 発動されたフェレルの魔法。

 フェレルの両手に持つレイピアの刀身が白百合(しらゆり)の花弁へと姿を変えて、芋虫モンスターへと襲い掛かる。

 

 ギィキキキィィィィ!

 

 白百合の花弁が芋虫モンスターの体に触れた瞬間、その体を切り刻まれた。

 耳障りな鳴き声を上げながら凄まじい速度で芋虫モンスターから紫色の体液が噴出すが、白百合の花弁が解けてなくなることなく、風に散る花弁の如く流動して芋虫モンスターを切り刻み進み続ける。

 地面に落ちるはずのフェレルは自在に操る白百合の花弁を足場にして、いまだに宙を自在に歩き、器用に魔法を操る。

 

「レフィーヤしっかり見ておけ」

「リヴェリア様…」

「オラリオにおいて魔法剣士は数が少なく、フェレルはその中でも上位に入る実力だ。例え、魔法剣士にならずとも得られることは多いだろう」

 敵を斬り、宙を舞う。

 レフィーヤの憧れる金髪の剣士アイズが戦う姿がいま目の前で戦っているフェレルの姿は、攻防一体に風の魔法を纏い戦う姿と酷く類似していた。種族も魔法も使う武器も違うはずなのに。

「……綺麗」

 レフィーヤの口から漏れたその言葉は無意識のものだった。

 

 

 

 

「あっちは随分と盛り上がってるみたいだな」

 頭には黒のヘルム、体には黒の全身甲冑を身に付け、肩に赤い戦斧を担ぐと悠々と迫りくる芋虫モンスターの前に立つ男。

 

 パンドラ・ファミリア所属Lv.6

 二つ名―――狂戦士(バーサーカー)

 ヒューマンのイグラス・レケット。

 

「ハァアアアアァァァァッ!!」

 肩に担いだ戦斧を両手に持ち、勢い地面に叩きつけた。

 怪力によって地面は容易に砕け、地割れを起こす。迫ってきたいた芋虫モンスターは飛び散った瓦礫に当たり、飛び落下してきた落石に潰され、地割れに巻き込まれて死んでいく。

 

 戦斧は芋虫モンスターの体液に触れるどころか、芋虫モンスター自体に触れることなく敵を退けた。

「ガッハッハ!ヒューマンであの怪力か」

 ドワーフのイグラスと同じ斧使いのガレスはその行動に歓喜した。

 過去に数回戦い。その度に心行くまで斧を互いに振るった。

 鈍っていないその力に、いまだ前に進み続けているライバルに。

 自分より半分の歳の小僧が強くなっていく姿と自分に迫る姿は、自身を一層高みへと上げるのに一役も二役も役立ってくれる。なにより、心躍る戦いをできるのはオラリオでも多くは居ない。

 

「ジジイが元気だな、あの野郎また強くなりやがったか」

 ガレス同様に狼人(ウェアウルフ)のベートもイグラスとは因縁があった。

 自分と同じ歳でファミリアに入り。最初は共闘もした、戦いもしたが、今では自分はただ見上げるだけとなってしまった。

 無意識に背を追いかけることになってしまった自分にイラつき、無意識に奥歯を嚙みしめる。いつか必ず追いつくと自分自身に誓って。

 

「ゴミ掃除は嫌なんだが……なんだ、あれ」

 再び、戦斧を横に薙ぎ払い芋虫モンスターを吹き飛ばす。

 

 芋虫モンスターの群れの奥からゆっくりと向かってくるそれは芋虫モンスターとは違い、女体型6M程のモンスター。その数6体。

 

「ッチ、さすがにこれはヤベぇだろ!」

「行くわよ!ティオナ」

「うん!」

「…私も」

 芋虫モンスターだけでもロキ・ファミリアの先鋭は手一杯に対して、パンドラ・ファミリアは4人でそれを食い止めていた。そこに芋虫モンスターを超える戦力が加わるとなれば、誰も手を貸そうとするだろう。だが、パンドラ・ファミリアの団長のレン・リィオラの前では無用なことだ。

 

「ロキ・ファミリアの皆さん、レンの邪魔は良くないでありますよ」

 飛び出そうとしていたアイズ、ティオネ、ティオナ、ベートに盾役を担っていたシャハルがストップを掛けた。

 四人は何故と、問いただそうとしたが、シャハルの先、イグラスの砕いた大地の先で一人立つ男がいた。

 

「最後は俺か、一撃で終わらせる」

「【焼き尽くせ】」

「【焼き尽くせ】」

「【焼き尽くせ】」

 レンは鞘から愛剣「レグリウス」を抜く。 アイズと同系統の付加魔法、炎属性『ブレイズ』。

 本来の短文詠唱の利点は、詠唱が短く一言、二言で魔法が発動できること。一秒の時間経過が、一つの行動が、生死を左右する戦いのなかでは大きい。

 ただ、利便性の反面、付加魔法は威力に乏しい。アイズの付加魔法の属性は風、攻防一体の風の鎧と剣となる。対して、レンの魔法は炎、攻撃を防ぐ鎧にもならず、敵を切り裂く剣にもならない……考えた末にレンが出した答えは”魔法の重ね掛け”「多重発動」だ。

 

「ブレイズ!」

 

 短文詠唱を連続して詠唱し、魔法を発動する。

 本来なら体に炎を纏うか、剣に炎を纏わせる程度の魔法も、三回の重ね掛けを行った付加魔法は炎の大剣へとその姿を変えた。

 

 

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