D.C. 〔3〕    作:消雪

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自分が10年以上前に書いた一番最初の小説。
それが、ダ・カーポの創作小説でした。

少し改変を加えて、いい創作小説になるようにしたいと思います。
……しかしあれから10年以上。時間の流れがあまりに早すぎる。

俺に小説を書くキッカケを与えてくれた、七尾さんや御影さんら、初期ダカーポの中核を担い、名作を手掛けてくれた事には今も感謝しています。




〔1〕

俺の中で、認めざるを得ない真実の想いがあった……

どうしても、自分の中にある真実には勝てず、妹の音夢に自分の想いを打ち明けた。

 

こんな事は言うべきでは無かったかも知れない。

だが、強い想いは行き場を失い、告白する以外に出来なかった。

 

 

 

ー家ー

ーリビングルーム・夜ー

 

 

 

『私たち、兄妹だよ』

 

『それは解ってる。俺……』

 

『…、それは、無理』

 

『好きじゃないからか?』

 

 

『そうじゃなくて、私たちは兄妹だよ』

 

『音夢、お前の気持ちで答えてくれ』

 

『……私にとって兄さんは大切な人だよ。お願い、それ以上は止めて』

 

『………』

 

 

『ごめんなさい』

 

 

 

そう言うと、自分の部屋に逃げてしまった。

無理もない。こんな事を言って、逃げない方がおかしい。

 

でも、俺、本気で……

 

 

 

 

~家~

~自室:1か月後~

 

 

 

『………』

 

 

 

あれから暫くして、多少のぎこちなさが残るものの、普通に話し合う位に関係が修復した。

しかし、自分の打ち明けた気持ちが前に進まず、後ろにも行かず、心の中に停滞した状態だ。

 

俺は音夢の事が、……兄妹としてではなく、本気で好きだ。

 

気持ちが抑えきれず、また告白しそうな自分自身を怖いと思っている。

そんな事を繰り返せば、いずれ音夢に嫌われて、兄弟の仲は冷え切ってしまうかもしれない。

 

 

この世界の常識として、兄が妹を好きになる事はいけない。

この気持ちを否定しなければいけないのは、厳しい現実だった。

 

どうすればいいのだろう……

 

好きな人を見つけて付き合ってしまえばいいのだろうか。

いっその事、後頭部を強打して、上手い事記憶喪失になる事ができればいいのに……

 

 

 

『兄さん、学校の準備できたの?』

 

『……居てたのか。ドアを軽くノックをしてくれ』

 

『あ、ごめん。もういいの?』

 

『いつでも行けるよ』

 

 

『じゃあ、行こー』

 

『……ああ』

 

 

 

~通学路~

 

 

 

朝はまだまだ寒い……

冷たい風は手袋でもしないと、少しずつ感覚を失っていく。

 

男は、ズボンのポケットに手を突っ込めばマシになるが、女はそうはいかない。

カバンを持つ、音夢の手はかなり冷たそうだった。

 

 

 

『………』

 

 

 

手、冷たくないか?という言葉より先に頭に横切ったのは、手を握ればいいと思っていた。

だが俺は慌てて、唾と共に言葉を飲み込む。

 

真実より、常識を押し付け必死に自分の想いを否定した。

いい加減にしないと、音夢に嫌われてしまうというのに。

 

 

 

『なんで、いきなり頭をブンブン振ってるの?』

 

『……まだ眠たくてな』

 

『歩きながら眠たくなるなんて……。夜は眠れてるの?』

 

『中々眠れなくて、漫画に時間を費やしたせいかな』

 

 

『夜はちゃんと寝て下さいね』

 

『わかってるよ』

 

 

 

適当に会話を帰していると、通学路に所狭しと生徒が登校しているのが見える。

時間にはまだ余裕があるが、外は酷寒そのもので、早歩きをしている生徒も何人かいる。

 

風が無くなるだけでも、随分マシになると思うが、そんな事を期待すべくもない。

これだけ寒いと、晴れていても関係がなかった。

 

 

 

『あっ、ほら。兄さん兄さん』

 

『どうした?』

 

『前見て。前』

 

『ん?何かあるのか』

 

 

『……全然興味無さそうですね。アイドルが前を歩いているのに』

 

『ここからだと男の後ろ姿しか見えん。男の追いかけか……』

 

『兄さんは行かないの?』

 

『アイドルがどうのこうのより、むさくるしい男の群れに入りたくない』

 

 

『でも寒さが少しマシになるかも』

 

『やめてくれ』

 

 

 

あの女の子も歩きにくい気がするが……

それとも、男が寄ってくるのをステータスの様に感じているのだろうか。

 

逆バージョンで、俺が複数の女に寄ってきたのを想像してみた。

だが、タイプでもない女が寄ってきた所で、はた迷惑でしかない。

 

そう思うと、あの子が不憫な様に思えてしまう。

当の本人は、楽しそうに愛想を振りまいているけど、内心はどうなんだろう……

 

 

 

~教室~

 

 

 

外と比べると、教室の中は本当に暖かい。

数人は、ストーブの前に陣取りながら会話をしている。

 

音夢は、同じクラスの水越眞子に挨拶をしている。

なぜか、真子が不機嫌そうにしてこちらへ歩いて来る。

 

 

 

『挨拶くらいしてから入りなさいよ』

 

『おはよ』

 

『遅いんだけど』

 

『悪いな』

 

 

 

教室の暖かさが手伝ってか、眠気が一層増してきた。

このままだと、授業の1限目から熟睡してしまいそうだ。

 

おかしいな。そこまで睡眠を削ってはいない。

……そうなると、精神の疲労になるのかな。

 

 

 

『もしかして寝不足?』

 

『ああ。俺にとっては悩み多き時かもな』

 

『うわあ、似合わないセリフ。夜は考え事をしないで、しっかり寝なさいよ』

 

『ありがと。そうするよ』

 

 

 

もうじき授業が始まるし、そろそろ脳をしっかり起こさないとな。

頬を手で軽く叩いて、授業の準備にかかる。

 

1限目は国語。あの先生は厳しいから、何とかあくびだけで乗り切りたいところだ。

 

 

 

~学校~

~授業:1限目~

 

 

 

『〔兄さん……〕』

 

『んがあああああ、zzzz、zzzz』

 

 

『誰か朝倉に課題を伝えてくれ。教科書10ページ分の書き写しをやれとな』

 

 

 

音夢と眞子を除いて、教室のクラスメイトはクスクス笑いで満ちていた。

いびきがうるさくて、途中で先生に起こされてしまった。

 

更に宿題をやっていない事もバレてしまい、20ページの書き写しとなってしまった。

その後、何とか起き続けたがあくびが止まらず、その都度手で口を押さえていた。

 

 

……

 

 

 

~屋上~

~昼休み~

 

 

 

『………』

 

 

 

既に眠気は無く、あくびは出なかったが、代わりにため息がやたらと出てしまう。

今では、大きくため息する事が、ストレスの緩和手段として行っている。

 

ある人物が頭にこびりついて、どれだけ常識という押し付けても……

 

自分の中にある、気づいてはいけない想い。

気付かなければ良かった想い。

 

 

ゲイやレズの様に、恋愛が多種多様にあるというのは、本当に厄介な問題である。

 

自分をどの様に理解すればいいのか分からなくなってくる。

自分がどの様に行動すればいいのか分からなくなってくる。

 

 

 

~桜公園~

~放課後~

 

 

 

今日はなぜか、風がやたらと強い。

地面に散ったばかりの桜の花びらが、強風で舞い散り、無数にあちこちに飛び交っている。

 

その桜吹雪の様な光景が見ていたくなり、公園のベンチに座った。

 

 

 

『………』

 

 

 

今は心を無に出来る事は何でもしている。

ぼんやりと大空を見ていたり、海原を見ていたり、今の桜の花びらが飛び交う珍しい姿を見ていたり。

 

家に居ると、考えもしたくない事ばかり考えて、ありもしない恋愛の成功ばかり夢を見る。

現実的にあり得ない事に、成功している事を想像して、優越に浸る自分が嫌いだった……

 

空想から帰ってきては、空虚に支配される自分しかいない。

 

空虚に浸るくらいなら、まだ心を無にできる方がいい。

リラックス効果があり、虚しくならないだけマシというものだ。

 

 

 

『……あれ』

 

 

 

 

誰かがタオルを落としたのか、何か布の様なものまで飛んでいた。

このまま道路に飛んでいって、運転を誤り、交通事故になるのを想像してしまい、慌てて取りに行った。

 

 

 

『……これって』

 

 

 

名前は知らないが、確かあの子が被っていた帽子に見えた。

今日の強風で飛ばされたのかも知れない。

 

周りを見渡したが、それらしき人物はいない。

よほど、遠くまで飛ばされた様だ。

 

 

 

『ちょっといいですか?』

 

 

 

不意に声をかけられて、内心ドキッとした。

振り向くと、全く知らない風見学園の女子生徒が俺に声をかけてきた。

 

何だか、男の俺より堂々としていて、見据えていた。

 

 

 

『その帽子、ことりのなんだけど』

 

『ことり?』

 

『返してもらえますか?』

 

『………』

 

 

『どうして黙っているんですか?』

 

『いや別に。じゃあ、はいこれ』

 

『ことりから盗ったんじゃないですよね?』

 

『そんな事しないよ。する訳ないだろ』

 

 

『………』

 

『………』

 

『ありがとうございます。じゃあこれで』

 

『………』

 

 

 

その子は、学校へと歩いて行った。

失礼な事を言われたが、何だか腹が立たず、変わった子だなという思いばかりが残った。

 

……自分が一番変わっているので、すぐにその考えは消え失せていく。

 

 

 

……

 

 

 

軽い眠りについていた様だ。

気付くと、夕暮れになっていて太陽が沈もうとしている。

 

風もだいぶと収まり、緩やかな風になっていた。

 

 

 

『まだ居てたの?』

 

『………』

 

 

 

さっきの……

名前を教えてもらっていないので、どう呼べばいいのか分からない。

 

後ろには、ことりという人物と、もう一人、自分の知らない女が居た。

学校の制服からすると、風見学園の生徒だろう。

 

 

 

『なんで、こんな所にずっと居るの?』

 

『みっくん、余計な勘ぐりをしないの。座っているだけじゃない』

 

『風が強かったからスカートの中を見たかったとか』

 

『みっくん!!』

 

 

『………』

 

 

 

もう一人は、礼儀の正しい人だった。

怒っていないかと、しきりに俺の顔色を伺っている。

 

 

 

『あの、帽子を拾ってくれてありがとうございます』

 

『強風で飛んでいたのを拾っただけだよ。気にしないで』

 

 

『盗った訳じゃなかったんですね』

 

 

『みっくん!!』

 

 

 

この子は思った事を、口に出さずにいられないようだ。

和みかけた空気が、また元へ戻ろうとしている。

 

こちらから見ている限り、仲良し3人組の様なので、俺が居ると場違いな様に思えてしまう。

腰を上げて、家に帰る事にした。

 

 

 

『俺、そろそろ帰るから。3人で居る方が話しやすいだろ』

 

『すいません。そうしてもらえると助かります』

 

 

『みっくん!!』

 

 

 

本当に3人で居る方がいいのだと思って、席を立ったが……

何だか、俺が立腹して移動した様に思われたかも知れない。

 

ことりという人は、俺に話しかけようとしていた様だが、みっくんが空気を変えるのでタイミングを失った様だ。

 

……とりあえず、家に帰る事にした。

あまり遅くに帰ると、音夢に怒られてしまう。

 

 

 

 

 

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