それが、ダ・カーポの創作小説でした。
少し改変を加えて、いい創作小説になるようにしたいと思います。
……しかしあれから10年以上。時間の流れがあまりに早すぎる。
俺に小説を書くキッカケを与えてくれた、七尾さんや御影さんら、初期ダカーポの中核を担い、名作を手掛けてくれた事には今も感謝しています。
俺の中で、認めざるを得ない真実の想いがあった……
どうしても、自分の中にある真実には勝てず、妹の音夢に自分の想いを打ち明けた。
こんな事は言うべきでは無かったかも知れない。
だが、強い想いは行き場を失い、告白する以外に出来なかった。
ー家ー
ーリビングルーム・夜ー
『私たち、兄妹だよ』
『それは解ってる。俺……』
『…、それは、無理』
『好きじゃないからか?』
『そうじゃなくて、私たちは兄妹だよ』
『音夢、お前の気持ちで答えてくれ』
『……私にとって兄さんは大切な人だよ。お願い、それ以上は止めて』
『………』
『ごめんなさい』
そう言うと、自分の部屋に逃げてしまった。
無理もない。こんな事を言って、逃げない方がおかしい。
でも、俺、本気で……
~家~
~自室:1か月後~
『………』
あれから暫くして、多少のぎこちなさが残るものの、普通に話し合う位に関係が修復した。
しかし、自分の打ち明けた気持ちが前に進まず、後ろにも行かず、心の中に停滞した状態だ。
俺は音夢の事が、……兄妹としてではなく、本気で好きだ。
気持ちが抑えきれず、また告白しそうな自分自身を怖いと思っている。
そんな事を繰り返せば、いずれ音夢に嫌われて、兄弟の仲は冷え切ってしまうかもしれない。
この世界の常識として、兄が妹を好きになる事はいけない。
この気持ちを否定しなければいけないのは、厳しい現実だった。
どうすればいいのだろう……
好きな人を見つけて付き合ってしまえばいいのだろうか。
いっその事、後頭部を強打して、上手い事記憶喪失になる事ができればいいのに……
『兄さん、学校の準備できたの?』
『……居てたのか。ドアを軽くノックをしてくれ』
『あ、ごめん。もういいの?』
『いつでも行けるよ』
『じゃあ、行こー』
『……ああ』
~通学路~
朝はまだまだ寒い……
冷たい風は手袋でもしないと、少しずつ感覚を失っていく。
男は、ズボンのポケットに手を突っ込めばマシになるが、女はそうはいかない。
カバンを持つ、音夢の手はかなり冷たそうだった。
『………』
手、冷たくないか?という言葉より先に頭に横切ったのは、手を握ればいいと思っていた。
だが俺は慌てて、唾と共に言葉を飲み込む。
真実より、常識を押し付け必死に自分の想いを否定した。
いい加減にしないと、音夢に嫌われてしまうというのに。
『なんで、いきなり頭をブンブン振ってるの?』
『……まだ眠たくてな』
『歩きながら眠たくなるなんて……。夜は眠れてるの?』
『中々眠れなくて、漫画に時間を費やしたせいかな』
『夜はちゃんと寝て下さいね』
『わかってるよ』
適当に会話を帰していると、通学路に所狭しと生徒が登校しているのが見える。
時間にはまだ余裕があるが、外は酷寒そのもので、早歩きをしている生徒も何人かいる。
風が無くなるだけでも、随分マシになると思うが、そんな事を期待すべくもない。
これだけ寒いと、晴れていても関係がなかった。
『あっ、ほら。兄さん兄さん』
『どうした?』
『前見て。前』
『ん?何かあるのか』
『……全然興味無さそうですね。アイドルが前を歩いているのに』
『ここからだと男の後ろ姿しか見えん。男の追いかけか……』
『兄さんは行かないの?』
『アイドルがどうのこうのより、むさくるしい男の群れに入りたくない』
『でも寒さが少しマシになるかも』
『やめてくれ』
あの女の子も歩きにくい気がするが……
それとも、男が寄ってくるのをステータスの様に感じているのだろうか。
逆バージョンで、俺が複数の女に寄ってきたのを想像してみた。
だが、タイプでもない女が寄ってきた所で、はた迷惑でしかない。
そう思うと、あの子が不憫な様に思えてしまう。
当の本人は、楽しそうに愛想を振りまいているけど、内心はどうなんだろう……
~教室~
外と比べると、教室の中は本当に暖かい。
数人は、ストーブの前に陣取りながら会話をしている。
音夢は、同じクラスの水越眞子に挨拶をしている。
なぜか、真子が不機嫌そうにしてこちらへ歩いて来る。
『挨拶くらいしてから入りなさいよ』
『おはよ』
『遅いんだけど』
『悪いな』
教室の暖かさが手伝ってか、眠気が一層増してきた。
このままだと、授業の1限目から熟睡してしまいそうだ。
おかしいな。そこまで睡眠を削ってはいない。
……そうなると、精神の疲労になるのかな。
『もしかして寝不足?』
『ああ。俺にとっては悩み多き時かもな』
『うわあ、似合わないセリフ。夜は考え事をしないで、しっかり寝なさいよ』
『ありがと。そうするよ』
もうじき授業が始まるし、そろそろ脳をしっかり起こさないとな。
頬を手で軽く叩いて、授業の準備にかかる。
1限目は国語。あの先生は厳しいから、何とかあくびだけで乗り切りたいところだ。
~学校~
~授業:1限目~
『〔兄さん……〕』
『んがあああああ、zzzz、zzzz』
『誰か朝倉に課題を伝えてくれ。教科書10ページ分の書き写しをやれとな』
音夢と眞子を除いて、教室のクラスメイトはクスクス笑いで満ちていた。
いびきがうるさくて、途中で先生に起こされてしまった。
更に宿題をやっていない事もバレてしまい、20ページの書き写しとなってしまった。
その後、何とか起き続けたがあくびが止まらず、その都度手で口を押さえていた。
……
…
~屋上~
~昼休み~
『………』
既に眠気は無く、あくびは出なかったが、代わりにため息がやたらと出てしまう。
今では、大きくため息する事が、ストレスの緩和手段として行っている。
ある人物が頭にこびりついて、どれだけ常識という押し付けても……
自分の中にある、気づいてはいけない想い。
気付かなければ良かった想い。
ゲイやレズの様に、恋愛が多種多様にあるというのは、本当に厄介な問題である。
自分をどの様に理解すればいいのか分からなくなってくる。
自分がどの様に行動すればいいのか分からなくなってくる。
~桜公園~
~放課後~
今日はなぜか、風がやたらと強い。
地面に散ったばかりの桜の花びらが、強風で舞い散り、無数にあちこちに飛び交っている。
その桜吹雪の様な光景が見ていたくなり、公園のベンチに座った。
『………』
今は心を無に出来る事は何でもしている。
ぼんやりと大空を見ていたり、海原を見ていたり、今の桜の花びらが飛び交う珍しい姿を見ていたり。
家に居ると、考えもしたくない事ばかり考えて、ありもしない恋愛の成功ばかり夢を見る。
現実的にあり得ない事に、成功している事を想像して、優越に浸る自分が嫌いだった……
空想から帰ってきては、空虚に支配される自分しかいない。
空虚に浸るくらいなら、まだ心を無にできる方がいい。
リラックス効果があり、虚しくならないだけマシというものだ。
『……あれ』
誰かがタオルを落としたのか、何か布の様なものまで飛んでいた。
このまま道路に飛んでいって、運転を誤り、交通事故になるのを想像してしまい、慌てて取りに行った。
『……これって』
名前は知らないが、確かあの子が被っていた帽子に見えた。
今日の強風で飛ばされたのかも知れない。
周りを見渡したが、それらしき人物はいない。
よほど、遠くまで飛ばされた様だ。
『ちょっといいですか?』
不意に声をかけられて、内心ドキッとした。
振り向くと、全く知らない風見学園の女子生徒が俺に声をかけてきた。
何だか、男の俺より堂々としていて、見据えていた。
『その帽子、ことりのなんだけど』
『ことり?』
『返してもらえますか?』
『………』
『どうして黙っているんですか?』
『いや別に。じゃあ、はいこれ』
『ことりから盗ったんじゃないですよね?』
『そんな事しないよ。する訳ないだろ』
『………』
『………』
『ありがとうございます。じゃあこれで』
『………』
その子は、学校へと歩いて行った。
失礼な事を言われたが、何だか腹が立たず、変わった子だなという思いばかりが残った。
……自分が一番変わっているので、すぐにその考えは消え失せていく。
……
…
軽い眠りについていた様だ。
気付くと、夕暮れになっていて太陽が沈もうとしている。
風もだいぶと収まり、緩やかな風になっていた。
『まだ居てたの?』
『………』
さっきの……
名前を教えてもらっていないので、どう呼べばいいのか分からない。
後ろには、ことりという人物と、もう一人、自分の知らない女が居た。
学校の制服からすると、風見学園の生徒だろう。
『なんで、こんな所にずっと居るの?』
『みっくん、余計な勘ぐりをしないの。座っているだけじゃない』
『風が強かったからスカートの中を見たかったとか』
『みっくん!!』
『………』
もう一人は、礼儀の正しい人だった。
怒っていないかと、しきりに俺の顔色を伺っている。
『あの、帽子を拾ってくれてありがとうございます』
『強風で飛んでいたのを拾っただけだよ。気にしないで』
『盗った訳じゃなかったんですね』
『みっくん!!』
この子は思った事を、口に出さずにいられないようだ。
和みかけた空気が、また元へ戻ろうとしている。
こちらから見ている限り、仲良し3人組の様なので、俺が居ると場違いな様に思えてしまう。
腰を上げて、家に帰る事にした。
『俺、そろそろ帰るから。3人で居る方が話しやすいだろ』
『すいません。そうしてもらえると助かります』
『みっくん!!』
本当に3人で居る方がいいのだと思って、席を立ったが……
何だか、俺が立腹して移動した様に思われたかも知れない。
ことりという人は、俺に話しかけようとしていた様だが、みっくんが空気を変えるのでタイミングを失った様だ。
……とりあえず、家に帰る事にした。
あまり遅くに帰ると、音夢に怒られてしまう。