D.C. 〔3〕    作:消雪

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~学校~

~図書室:放課後~

 

 

 

音夢に二度目の告白をしてから、ギクシャクして早3日が経過した。

俺の中では、既にこの気持ちを病気として捉えている。

 

恋の病に落ちて、どうしても抜け出す事が出来なくなってしまった……

俺自身、この気持ちから逃れたいというのに……

 

 

誰が好き好んで、これだけ苦しむかって……

 

 

自分自身ではどうしようもなくなって、本を頼り、ちょくちょく図書室に来ている。

 

しかし、人に恋するというのは本当に難しいものだ。

自分が相手に一方的な気持ちを貫くと、完全な迷惑行為になってしまう。

 

 

別れを告げるケースも、言われる側は相当ショックを受けるもので、暫く立ち直れないようだ。

 

別れを認めたがらない者は、ストーカーになったり、「別れると殺す」と脅迫者になったり、事件に発展するらしい。

こういう例は、そんな性格をしているから別れを切り出されるのだと思ってしまう。

 

 

俺のケースでは憎しみなど無いが、代わりに悲しみに苛まれる。

 

 

 

『………』

 

 

 

しかし、人はこういうツラい思いをして大人になるようだ。

今はツラいが、いつかこの経験が自分の人生においてプラスになると割り切って、今を生きていくしかない。

 

 

 

……

 

 

 

~桜公園~

~放課後~

 

 

 

図書室の帰り、ともちゃんとみっくんがクレープを食べている姿が見えた。

けど、ことりはいないようだ。

 

一応、挨拶して帰る事にした。

あと、以前から聞きたかった事も聞く事にした。

 

 

 

『あれ、朝倉君じゃない』

 

『ホントだ。クレープ食べに来たの?』

 

 

『見かけたから挨拶を、と』

 

 

 

『……疲れてないですか?』

 

『私たちの知っている朝倉君だね』

 

 

『………』

 

 

 

俺の場合、疲れていると言うより病んでいる気がする。

ことりはいないみたいだし手早く、気になっていた事を聞いてみる事にした。

 

ともちゃんの方が、まともな答えが返ってきそうなので、彼女の方を向いた。

 

 

 

『えっと、ことりの事だけど……』

 

 

『もう帰りましたよ。さっきまで居たけど』

 

『もう少し早かったら良かったのに』

 

 

『そうじゃなくて、ことりっていつも俺と接しているみたいに明るいの?』

 

『私の知る限りでは、朝倉君にだけだよ』

 

『俺、ことりを名前で呼んでるけど、他の人も同じ様に名前で呼ばせてるの?』

 

『……いいえ』

 

 

『ことりって……、その、何て言うか、好きな人が……、いるっぽい?』

 

『…、解りません』

 

 

 

この会話はちょっと話しにくいか。

レスポンスをしづらそうにしていた。

 

今、気づいたが、一体何を聞いてるんだ俺は。

どう見ても、気難しそうな表情をしていた。

 

 

 

『今はいい友達でいてあげて下さい』

 

『………』

 

『本当にいい子だから』

 

『………』

 

 

 

軽くうなづいた。

ことりから見て、俺は好印象なのか。

 

俺から見ても好印象なのだが。

 

 

しかし、俺の様な人間が、ことりと友達になっていいのか分からない。

今は、病気の様な悩みを持っているわけだし。

 

それ以上、考えるのは止めて家に帰る事にした。

 

 

 

 

~家~

~自室:夜~

 

 

 

本を読みながら、時間を過ごす事が多くなってきている。

ゲームで過ごす事が殆どなくなったから、勤勉的になったものだ。

 

これ以上、音夢に嫌われたくないし、ギクシャク感を生ませる訳にはいかない。

それは事実なんだが、本心のはずだが……

 

自分の想いを奥底にまで沈めたものが、一気に浮上してしまう。

皆はどうなんだろう。俺の様なケースは稀なのか。

 

 

 

≪コンコン≫

 

 

 

小さくドアがノックされる。

ドアを開けると、心配そうな音夢の姿が目に入った。

 

俺は心の中で、告白だけはするなと何度も心の中で復唱する。

 

 

 

『………』

 

『…どうした?』

 

『……もう、元の兄妹に戻れないのかな』

 

『………』

 

 

 

できるなら、俺も元の兄妹の仲に戻りたい。

何も意識しなかった、ただ純粋で親しかった兄妹の仲に戻りたい。

 

音夢もこれ以上、ギクシャクした関係に耐える事が出来ないのだろう。

今までは、ずっと親しかったのだから。

 

 

 

『音夢、一つ頼みがある』

 

『……何?』

 

『俺を嫌いだと言ってくれ。忌み嫌っていると言ってくれ』

 

『……どうして?』

 

 

『俺の心の中では、今も……あるんだ。お前への想いが消えない』

 

『………』

 

『お前がそう言ってくれたら、想いが少しは無くなるかも知れない』

 

『………』

 

 

『音夢、頼むよ』

 

『そんな事言えない。そんなひどい事言えない』

 

『本気で言わなくてもいい。そう言ってくれるだけでいいんだ』

 

『ごめん。ごめんね』

 

 

 

そう言うと、会話を切り上げ自分の部屋に戻っていった。

……もっとギクシャク感が増してしまった。

 

こんな事を言うべきではなかったか。

後には後悔しか残らなかった。

 

 

俺は読んでいた本を、ベッドの上に叩きつけた。

これが、壊れているというのかも知れない。

 

どうしようも……、どうしようもなくなって、きた……

 

 

 

~学校~

~図書室:放課後~

 

 

 

4日が過ぎ、土日は部屋に篭って読書三昧だ。

 

 

深く息を吸い込んで、思いっきり吐き出す。

今は深呼吸だけが、自分のわずかな癒しだ。

 

人生の中で、人はいつか試練に出会う。

その試練はいつ終わるか分からない。

 

 

だが、それを終えた時、幸せが待っているかも知れない。心身を鍛える事ができるかもしれない。

それらは、あくまで可能性の一つに過ぎない。

 

人の人生は非情なもので、確約されるものは何一つ無い。

幸せな日々を送っていたのに、俺の様にいきなり病む事もある。別の形の不幸に出会う事もある。

 

 

その苦しみには、誰も入る余地などない。所詮、自分は自分、他人は他人だ。

自分なりの納得の出来る答えを見つけ出し、幸せを探り当てないといけない。

 

 

しかし、試練が宿命付けられているなら、逃げようがない。

堂々と戦い抜き、やり抜くしかないのだ。

 

俺にとって今は、しっかり悩む時かも知れない。

いつかは、この問題が来たのかも知れないのだから。

 

精神が許せる範囲で……

 

 

 

『………』

 

 

 

こんな所にいるから、余計にネガティブ思考になって抜け出せない自分が居るんじゃ……

 

 

 

 

~学校~

~桜公園:放課後~

 

 

 

やっぱり、こっちの方がいい。

桜の花、人の往来、心地いいそよ風。

 

無機質な図書室で時間を過ごすより、外に出て読書をした方がはるかにいいのかも知れない。

今の俺のこんな調子だと、特に。

 

 

 

『あ、朝倉君。何だか久しぶり』

 

『久しぶり』

 

『学校に居るよね?あんまり見かけないかも』

 

『最近は、サボりが多発気味なんで』

 

 

『それはダメですよ』

 

 

 

ことりのスマイルに癒される……

やっぱ、人は会話だ。笑顔だ。

 

今の俺にとって、会話と笑顔が一番癒しを覚える。

失恋地獄から逃れる為に本の虫になっていたが、解決方法が間違っていた。

 

余計に自分を奥へと追いやっていた様だ。

知識を付けた事が、全く間違っていた訳でもないが……

 

 

 

『……ことり』

 

『どうしたんですか?』

 

『ことりの笑顔が眩しくて……』

 

『いくら何でもいきなり過ぎですよ』

 

 

『ここ最近、色々あってな』

 

『ほー、イロイロねー』

 

 

 

なぜか、小馬鹿にされたかの様に返される。

だが、今の自分は何を返されても、癒ししか感じないのかも知れない。

 

人の笑顔に、これほどの力があったとは思いもしなかった……

ブ男や不細工でも、同じ様に感じるかは解らないが……

 

 

 

『私もイロイロ悩む事があるからね。その気持ちは分かるつもり』

 

『そっか。ことりもイロイロとツライんだな』

 

『私自身の悩みならともかく、相手が持ち込んでくる悩みはとにかく面倒……』

 

『もしかして、追っかけの類い?』

 

 

『はい。あれは何なんでしょうね』

 

『いい男は居なさそう?』

 

『そういう問題じゃないです』

 

『視界に、幾つもこっちを向いている男がいるから?』

 

 

『…、そういう風に分析されても。普通に考えて下さい』

 

『ブ男が多いから?』

 

『………』

 

『ち、違った?じゃあ、一人になりたい時があるのになれないとか』

 

 

『…、単純に嫌なんです。ああいうのが』

 

『なるほど。好き嫌いってやつか』

 

『……もうそれでいいです』

 

 

 

頭をひねって考えたつもりだったが、うまく答える事ができなかった。

 

口調は厳しくないが、言葉に熱を感じた。

どうやら、本気で嫌ってそうだ。

 

 

 

『いつも愛想を振りまく自分自身に疲れる時がある。私は普通に学校生活を楽しみたいのに……』

 

『………』

 

『皆と同じ様に学校生活を送りたいのに……』

 

『じゃあ、はっきりと嫌だと言えば?』

 

 

『……難しいんです。はっきり伝えるのも』

 

『そんなに迷惑してるなら、俺が何とかしようか』

 

『ほー、どうやってですか?』

 

『俺とことりが付き合ったフリをすれば済むだろ。追いかけは、彼氏がいるのに追いかけても虚しいだけで、その内解散だ』

 

 

『………』

 

『あ……、ごめん。今のは忘れて』

 

 

 

真顔で見られたので慌てた。

言ってはいけなかったのかも知れない。

 

案としては、一番無難な方法だったと思うが、表情が緩まないのでちょっと怖かった。

念の為、もう一度、頭を深く下げて謝る事にした。

 

 

 

『ご……、ごめん。気を悪くしたみたいだな』

 

『………』

 

『ちょっと怖い。何かレスポンス返してくれると助かる』

 

『………』

 

 

 

全くレスポンスを返そうとしないので、とにかく失言を探す俺。

怒ったというより、意外すぎる言葉に固まった感じがする。

 

 

 

『いいアイデアだよ。やってくれるの朝倉君』

 

『レスポンス遅すぎ。内心、怒らせたと滅茶苦茶不安になったぞ』

 

『ちょっとの間にイロイロ考えてしまいました』

 

『せめて、表情くらい変えてくれ。ずっっっと真顔だったぞ』

 

 

『普通の学園生活を送れると思ったら、すごく嬉しくて……』

 

『……た、大変だったんだな』

 

 

 

その追いかけに、俺自身を鑑みる。

やっぱり、一方的な行動は滅茶苦茶迷惑をかけるようだ。

 

……違う。俺は追いかけの様な人間では、人間ではない。

さっさと振ってほしいんだ。嫌ってほしいんだ。

 

 

あきらめの付く事なら、俺は何でも受け入れる。

俺は追いかけとは違う。

 

 

 

『もっと早く朝倉君に相談すれば良かったなー』

 

『俺は追いかけの人間とは違うからな!!』

 

『……いきなりどうしたの?』

 

『あ、ごめん。何でもない』

 

 

『……びっくりした。いきなり怒るんだもん』

 

『ことりだっていきなり真顔になるだろ?俺だっていきなり怒る事がある』

 

 

 

滅茶苦茶な事を言ってごまかした。

考えすぎて、妙な行動をする様にまでなった。

 

悩みから抜け出せない。

こういうのを中二病と揶揄されるのだが、医学的にうつ病と言ってくれた方が有難い。

 

 

 

『でわでわ』

 

『ん、帰るの?』

 

『近いうちに宜しくお願いしますね』

 

『ああ、そっちか。了解』

 

 

 

何気なく言った自分の案だったが、ちょっとプレッシャーを感じてきた。

ことりも、どこか落ち着かない様子だった。

 

追いかけを無くすだけなら、実はレズでしたと明かして、ともちゃんかみっくんと一緒に過ごす手もあったかも。

……さすがにそんな案は却下されるか。

 

 

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