内容は特にありません。
街に繰り出して、少し。
「……でそいつは何なんだ?」
「この子のこと?」
「そうだ」
私と亀の視線の先には、私よりも更に小さな狐の獣人の少女。
むすっとした顔で亀を睨み付けている。
私とは違って、金の髪にきつね色の耳と尻尾。実に王道的な狐娘だと言える。
「実は……私の妹だったり」
「マジか!?」
素で驚く亀に鋭く声が掛けられる。
「違うわよ。全然似てないでしょ。そんなこともわからないの?」
腕を組んで実に偉そうにのたまう狐耳幼女。かわいい。
「なあ……こいつホントになんなんだ?」
「あはは……」
ピクピクと頬を引きつらせる亀。思わす苦笑いが漏れる。
「この子の名前はきら。本名は綺羅星」
「ん?綺羅星ってどこかで聞いた覚えがあったような……」
「鈍いわね。さっさと気づきなさいよ。ちゃんと頭働いてるのかしら?」
「こいつ……」
二人の間の険悪なムードが流れる。なんでこの子はこんなに亀を邪険にするんだろうか。
「まあまあ。ネタばらしをするとこの子は私がいつも持ってる刀なんだけど……」
「ああ、なるほど。お前の刀ね……は?」
「はあ……、あんたモガッ!?」
悪い事言うお口はふさいじゃいましょうね~。
後ろから抱き上げて口元に手の平を当てる。恨めしそうに見てくるが気にしない。
ちょ、何で今舐めたし。
「付喪神みたいなものだと思ってくれたら良いよ。この娘のおかげで私は始解できるの」
「付喪神って事は大昔からいるのか?」
「ううん。私の三歳年下」
私が生まれた三年後に現れたからね。枕元に。
「はあ……、そんな短い時間で付喪神ってなるものなのか?だってたった三十――」
「「
「あべし!?」
私ときらのラリアットが絶妙なコンビネーションで亀に抉り込む。
特に効果はない。痛いだけ。
「女性の年齢をみだりに言う物ではありません」
「デリカシーのない。ほんとこれだから……」
「……なんて理不尽な」
冷たい目で見下ろす私たちに亀は世の不条理さを嘆いていた。
「今日の朝ね、きらが着いてきたいって伝えてきたから、ちょっと力を流し込んでね」
具象化させた。
具象化とは卍解習得時に斬魄刀の本体をこちら世界に顕現させることを言う。
まあ私の念能力が具現化系なだけあって、具象化自体は簡単なんだけどね。
ちなみにきら本来の姿は巨大な狐。メッチャ強い。屈服させるために何度死にかけたことか……。今は人間の姿に化けているだけ。
「ああ、またお前の不思議パワーか」
亀も私の力にはもうなれたのかあまり驚くことはない。
……そういえば亀って、きらを除くと私のこと一番知ってる人かもね。まあ……別に良いんだけど。
「どうかしたのか?」
「ううん。何でもないよ」
そこできらの方からギリッという音が聞こえてきた。何で奥歯噛み締めたん?
するときらが私たちの前に飛び出して、ビシッと亀に指を差し向けた。
「あんたにイナリは渡さないわ。あんたにはもったいなさ過ぎる」
「へえ、そういうことか」
二人の間にバチバチと火花が散っているのが幻視された。えっとどう言う事?
「ちょっと、二人とも落ちつ――」
「お前は黙ってろ」「あなたは黙ってて」
「あっはい」
こちらを見ることもなく切り捨てられた。いま凄く怖かったんだけど。
場所は変わってまた道場の側。
二人は決闘することになりました。ナンデ?
普通に街が巡りたかったんだけどなぁ。
「イナリ、あいつの強さは?」
「うーん。手加減なしの私が死にかけるくらい?」
あ、亀の目が死んだ。
「大丈夫よ、手加減してあげるから。この姿で相手してあげるわ」
本来の姿に関してはここに来るまでに伝えてある。まあでっかい狐に関してはあまり驚いてなかったけど。
「はぁ?それで俺に勝てるのか?」
「頭が悪いわね。できるから言ってるのよ」
再び二人の間で火花が散る。仲良くして欲しいんだけど。
「そうか、吠え面掻かせてやる」
「言ってなさい。返り討ちにしてあげるわ」
「もう良い?行くよ~、良ーいドン」
「「雑だな!!」」
ええ……、だって……ねえ?
「あれ、イナリさんどうしたんですか?」
「んう?鶴?そっちこそどうしたの?」
2人の戦いを眺めていると道場の方から鶴がやってきた。なにやら箱を持っている。
「いえ、アタシはこっちから凄い音が聞こえてきたので様子を見に来たんですよ。あれは……、亀と、誰でしょうか?イナリさんに似ていますね」
遠くで戦っている亀ときらを、目の上に手の平を持ってきて眺める鶴。サングラス掛けてるからひさしは要らないんじゃ……。いや、まあいいか。
「あれはきら。私がいつも持ってる刀が人の姿になったものだよ。まあ、実質妹みたいなものかな」
「刀が人に!それは不思議な事もあるものですね」
まあ、初めて聞いたら驚くよね。普通はないからね。
「それで刀が妹とはどういう事で?」
「うーん、詳しい事情は省くけど、きらが生まれた時から私と一緒にいてね。しばらくしてから声が聞こえるようになったんだよ。それに、刀として生まれた時から元々私の力の一部が入っているから、血が繋がってない妹みたいなものかな?」
「ははあ、なるほど。血が繋がってはいないもののイナリさんの力の一部が入っていると。だから、イナリさんに似て可愛らしい娘なんですね」
そうだよね、きらは可愛いものね。
……うん?それって私もかわいいってこと?
……流石にそれは自意識過剰か。
「うんうん。妹をそう言ってくれて姉として鼻が高いよ」
「もちろんイナリさんもかわいいですよ」
「うえ!?」
びっくりして変な声出た。
……まあ、流石にお世辞だよね。
「もう、鶴ったらお世辞が上手いんだから」
「別にお世辞じゃあありませんよ?アタシはそういうのは苦手なので」
……それは本音で褒めてるってこと?
いきなり求婚してくるくらいだから本気なのかな……。
「そ、そう?なんか恥ずかしいな。ありがとう……。そんな風に言われたこと無かったから」
照れ臭くて思わず視線を逸らした。嘘じゃなさそうだし……。
「そうなんですか?……ああ、たぶんそれはイナリさんがあんまりにも綺麗だからみんな気後れしちゃってるんですよ。だからイナリさんはもっと自信を持って良いですよ。アタシが保証します」
「も、もう良いから!!恥ずかしいって!」
鶴からの誉め殺しに耐えきれず止めてしまった。
べ、べた褒めされるのなんて慣れてないから心臓がバクバク言ってる。こんなに褒められるなんて思ってもなかった。
両親の親バカを聞くよりも無性に恥ずかしいのはなんでだろうか。
声が真剣だからかな……?
「あ、そうだ!このケーキ食べませんか?同期の分を買ってきたんですけど、一個余るんですよ」
熱くなった顔を扇いで冷やしていると、鶴が箱を開けて見せてきた。
中には可愛らしいイチゴのショートケーキがたくさん。
「どうですか?お一つ」
「……良いの?ありがとう!じゃあ1つ頂くね」
一口かじってみるとクリームの解けるような甘さとイチゴのキュッとする甘酸っぱさが口の中に広がった。
「……うん、とっても美味しいよ!」
「それは良かったです。それではアタシはこれで」
「うん、またね」
手を振って去っていく鶴に手を振り返す。
ふふふ、美味しかったな。ケーキ、今度お礼しないとね。
……でももうあんなに褒めるのは勘弁してほしいな。心臓がもたないから。
あ、亀がきらのアッパーで吹き飛んだ。
2人ともやり過ぎないようにね?
まあ、結論から言うと……亀はボコボコにされました。
そもそも私の始解が素手になることからわかるように、きらは素手も得意だ。
幼女の姿になめてかかった亀はボコボコにされて、本気になってボコボコにされて、何度もボコボコにされて、それでも立ち上がって向かってったら、なんかいつの間にか認められていたようで戦いをやめていた。
熱血少年漫画かな?
結構早く終わった謎のバトル。とりあえず私が亀を回復して街に戻ってきた。
お店の中。
カウンターに座ってラーメンを啜る。うん、美味しい。
「あんたの心意気に免じてイナリの側にいることを許してあげるわ」
「はいはい、ありがとうございます」
相も変わらず偉そうにふんぞり返るきらに、ふてくされたような亀。
早く食べなよ。伸びるよ?もったいない。
あ、そうだ。
「きら?」
「なに?イナリ」
「メッ」
「いたっ!?」
振り返ったきらのおでこに私のチョップが突き刺さる。おでこを押さえてちょっと涙目のきら。
「な、なにするのよ!」
「あのね、きら。私のことを思ってくれるのは良いんだけど、私の側にいる人を決めるのはきらじゃないよ?」
「そうだけど……」
悲しげな表情をしてうつむいたきらを抱きしめる。
「ふふ、怒ってないよ。私のことを思っていってくれたんだよね?」
「……うん」
コクりと頷くきら。普段はつんけんしてるけど根っこは優しい娘なんだから。
「だったらほら……わかるでしょ?」
「うん……。辛く当たってしまってごめんなさい。イナリと仲が良いあなたを見て……その……」
「こっちこそ。お前の言うとおりだ。俺はまだイナリの横に並び立てるような男じゃない。お前に負けるくらいだ。もっと強くなってみせる」
うんうん、どうやら仲直りしたみたいだね。よかったよかった。
「あっ」
ご飯を食べ終えて店から出る段階で、亀が声を上げた。
手元にはほぼ空っぽのお財布。
「うん、なあに?お金ないの?仕方ないなあ、私が払っておくよ」
ボソッと亀の耳元でそう伝える。
「……すまん」
「いいって。いつもお世話になってるお礼だよ」
仲よさげな二人を見るきらからギリッという歯ぎしりの音。
「やっぱり潰そうかしら」
お金を払って貰う情けない亀を見て、認めたのをちょっと後悔したきらだった。
そして――
エイジ460 トレインシティ
「イナリさん!タオルです」
「おお、ありがとうポールくん」
「わぁ、僕の名前覚えててくれたんですね!!」
「もちろん。一度顔と名前がわかれば忘れることはないよ」
最近入ってきた新人がイナリに名前を覚えて貰っている事に感激して目を輝かせている。
「チッ……」
気に入らない。思わず舌打ちが漏れる。カリン塔から出てくるまでは、イナリがいるときはほとんど俺と話していたのに。
イナリは良い奴だ。誰にでも分け隔てなく接する。例外は鶴くらいか。暴走した時のあの押しには流石のイナリも少し引き気味だ。だがそれでも邪険にすることはない。……ボコボコにすることはあるが。あと、照れた末に吹き飛ばす事もある。
そして誰もが振り向くほど美人だ。街で何度もナンパに合っているのを見かけた。本人は鈍すぎてそれがナンパだとはつゆほども思っていなかったが。逆にナンパ野郎が浄化されていた。お前一体何したんだ。
そんなイナリだからこそ、道場の皆はこぞって話したがった。たまにやってくるだけで、いつもは旅をしている。
常に会えるわけじゃない。しかし、それすらも彼女の魅力に映る。
いつも会えないからこそ、会えた時の感動はひとしおなのだ。
彼女は一躍道場内で、憧れの的になった。
強くて、かわいくて、優しくて、ふらりとやってくる。女っ気に飢えた道場で惚れない奴がいるだろうか。いやいない。
そして下心満載で近づき――修行に心が折られる。
一言で言えばあいつの修行は鬼だ。重量を増して負荷を掛け、いつも通りの訓練をする。
少しずつ重量を増していき、少しずつ訓練をキツくしている。楽になることはない。常にキツい。
そうして下心満載で近づいた奴は心が折られる。まあその頃には確実に強くなってるんだが。
ついでに酷い奴はきらがしばき倒す。
あれこれ実は苛立つ必要ないんじゃ……。
まあそれでもあわよくばという奴はいるのだが。
「じゃあ一緒に修行する?」
「良いんですか?是非!!」
「じゃあはいこのリストバンド付けてね」
「おそろいですね!!……重ォ!!?」
「じゃあ、ランニングからね。ほら行くよ」
「待ってください!!これ重すぎません!?」
「大丈夫大丈夫ほら男の子でしょ。頑張って。まずは外二十周ね。その次は――」
「だ、だれか……助けて!!」
……ああ、犠牲者が一人増えたな。誰もが見て見ぬふりをする。なぜなら巻き添えにはなりたくないから。
それはともかく最近鶴が強くなってきた。
カリン塔で修行した俺がうかうかしていられないくらいには。
なにせ初期にイナリに近づいて、その頃からずっと修行について行っている猛者だ。あいつの執念はどこから来るんだ。
……わかってるさ、あいつもイナリを狙っている1人だ。負けられない。
武泰斗様もたまに時たまイナリと手合わせしている。この前はイナリに勝ったと静かに喜んでいた。
イナリは死ぬほど悔しがっていたが。それもそれでかわいかったが、おかげで修行や当たりが厳しくなったのは勘弁して欲しかった。死ぬわ。
「ほら、亀も行くよ!!」
「俺もか!?」
「当たり前でしょ。いずれ私に勝つんでしょう?」
「クソッ!行ってやるよ!!」
こうなりゃやけくそだ。
「アタシも着いていきます!!」
お前は来んな。
ピッコロ大魔王がやってくるまで、後一年。
取れるだけの対策は立ててみた。
料理店を基点に分身をいろんな街に配置して、やってくればすぐにわかるようにした。
自分の故郷に関しても、街全体を感知結界で覆って、敵対者が足を踏み入れた瞬間にわかるようにした。
防御型の結界は、人の出入りが出来なくなるし、チャクラも霊力も足りないので張れなかったけど。
でもそれが全く役に立たなかったなんて、この時は思いもしなかった。
鶴仙人の生存報告でもありますw
なんかこの人も勝手に動き出したんです。
道場の門下生ってお金持ってなさそうだと勝手に思ってます。
だってバイトしながら修行って大変そう。道場で時間使ってるはずだから正社員ではないだろうし……。
受講料がただで衣食住全部負担してくれるんだったら武泰斗様を神と崇めてもいい。スポンサーがいたのかな?
原作の亀仙人もどうやって稼いでいるのかわからないし。
ドラゴンボールの世界って強さが稼ぎにつながらないから、ふとした拍子に現実に引き戻されると感じるのは私だけでしょうか?
悟空が農業やってる時とか。世知辛い。
働きたくないでござる。
ポールくんの再登場は……特にありませんw
さて、次の年は……