地球人で転生!!~でも人間じゃないよ~   作:ねむ鯛

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お久しぶりです。遅くなって申し訳無い。
この話を投稿するに当たって、結構迷いました。がこれで出します。
批評、感想ありましたら思いっきり……いや嘘ですオブラートにお願いします。


第二十五話 不可能

歩いていくと見えてきたのは、90度に綺麗にお辞儀した緑色の物体だった。

 

「イナリ殿、誠に申し訳ありませんでした!!!」

 

「ちょっと、頭上げてよ」

 

その物体は今代の神だった。

いきなり全力で謝られても困る。

 

「誠心誠意対応させていただきます!!」

 

「そう。……でも謝って済むなら警察はいらないよね?」

 

「誠にその通りです!」

 

怒るかなと思って少しキツイ事を言って見たけど、悪の心と分離しただけはあって心底後悔しているようだ。

もともと分離する判断をしたのは悪の心があった時だ。

原作において本人は悟空に自分の悪の心はほんの僅かだなんて言っていたけれど、そんなことはないんじゃないかと思っている。

 

そもそも地球の神が完全な善人である必要はないと思われる。

 

地球の危機に、寢所に入っただけで攻撃してくる歴代の神たちや、特に審査もなく神になったテンデもいる。

悪人とは言わないが、善の心しか無いわけではないだろう。

そしてあまりに悪として強すぎるピッコロ大魔王。

 

これだけ揃えばこの神の中に巣食っていた悪の心はかなりの大きさのものだったと推測するのは簡単だ。そう思えて仕方がない。

ただ、それを追い出す努力に関しては素直に凄いとは思う。

 

「……じゃあさ、願い事を叶えてくれない?神様としてさ。被害にあった人達を全員生き返らせるの」

 

これが私の目的。ドラゴンボールによる死者の蘇生。

私では世界に散らばったドラゴンボールを集めることは難しい。

それこそ、蘇生の期限である一年を超えてしまう。

それならと作った本人に手伝わせれば良いと思い至ったのだ。

後悔している神様の償いにもなるだろうし、何もしないよりはきっと楽になるはずだ。

 

「それが……その……」

 

冷や汗をダラダラと流して目を泳がせまくる今代神。

 

「実はドラゴンボールという願いを叶えてくれる物があったんですが……もう使ってしまいましてしばらくは使えないのです」

 

「……は?」

 

何を言ってるんだ。思わず口から漏れたのはそれだけだった。

 

「本当に申し訳ない!!襲いかかってきたガーリックを一度退けた際に、神殿の防御体制を高める為に……」

 

「それはいつ使ったの?」

 

「ピッコロ大魔王が逃げ出したその日に。虐殺を始める前です」

 

……まずいな。

死者蘇生の有効期限は一年。ドラゴンボールが再使用可能になるのも一年かかる。

ピッコロ大魔王が地上に逃れて街を破壊する前に神がドラゴンボールを使ったとしても、三時間あるかないかだろう。

その三時間の間に私はドラゴンボールを使わなくてはならない。

神にドラゴンボールを回収して貰えば多分なんとかなる。

回収できなくても場所さえわかれば私が全力で集めてみせる。

 

必ず、必ずやってみせる。

 

「それでその……ドラゴンボールは三年経たなければただの石なのです」

 

「さん……ねん……?」

 

頭が真っ白になった。

言われた言葉が全く理解できなかった。

三年?三年ってなんだ。一年じゃないのか?

 

「……ねえ。それで三年後にピッコロ大魔王に殺された人を全員生き返らせる事が出来るの?」

 

「無理です……。ドラゴンボールで生き帰らせられるのは一度に一人。そして蘇生が叶う期間は死後半年です」

 

嘘だ。乾いた笑い声が漏れ出す。

 

ドラゴンボールは創造主の力を超えた願いを叶えることはできない。

今の状態では今代の神は弱すぎるんだ。だって感じる気がピッコロ大魔王よりもかなり小さい。

 

分離して弱体化したせいで、今の神は原作当時の神よりも弱いんだ。原作当時の神はある程度の修行を通して力を取り戻していたんだと思われる。

 

当然の帰結としていろいろな点で原作のドラゴンボールよりも弱体化。もしかしたら、他の部分でも弱体化しているかもしれない。

 

これじゃあ誰も助けられない。

 

――――『ドラゴンボールがあるからなんとかなる』。そんな幻想は粉々に打ち砕かれた。

 

……それなら次の手だ。

 

「ドラゴンボールが復活したら回収しておいて。使うから」

 

「……蘇生はできないんですよ?なんに使うんですか?」

 

「……魔族に殺されるとあの世にも行けず苦しみ続けるって聞いたんだけど?」

 

「はい!皆さんをあの世に送り届けるんですね!わかりました!」

 

90度の角度で平謝りする神。この姿を見たら誰もこれが神だとは思わないだろう。

神の姿に若干の哀れみを感じていると、爆音とともに神殿の結界が揺れ始めた。

 

「うはははは。神よ、そろそろ諦めてさっさと出てこい!このガーリック様こそが神になるのにふさわしいのだ!!」

 

どうやらピッコロ大魔王か世に放たれるきっかけを作ったご本人様がやってきたようだ。

感情が薄くなってしまった私は今……怒ることが出来ない。

それでもそう、感じるものはある。……少し、熱くなってきた。

 

 

 

 




神様が丁寧語なのは『ピッコロ大魔王を逃がしてしまった負い目』+『神様に着任すぐ』ということで。慣れないうちはこんなものかと。特にこだわりはないので違和感があるのならば変更します。


『早期解決によるピッコロ大魔王の被害の激減』
+『原作終了後も死後あの世に行くことが出来なかった魂(原作で救済された描写はなかったはず。実は無事あの世に送ってもらっていたのかもしれない)の救済』
+『武泰斗様とその弟子の生存』
という事でここは1つお許しを。

ちなみに、弟子が強化されていたように武泰斗様も強化されています。それに伴って魔封波の習得もかなり早くなっています。


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