かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
思いついたネタを消化するために投稿……続けるかも不明
ここは、日本一の中学サッカーを決めるための戦場。各地方から集まった精鋭たちが競り競う場所である。
手入れが行き届いた芝と、埋まる観客席。彼らの視線は試合が始まるのはまだかまだかとフィールドに注がれている。
会場のボルテージは間違いなく上がっていた。
「────!」
キックオフを知らせるホイッスルが鳴った。
ファーストボールは敵チームから、豪快なドリブルでこちらに向かってきていた。
その進みからして、生半可なブロックではこちらが吹き飛ばされてしまうだろう。
──次の瞬間には、相手が吹き飛んでいた。
比喩ではない、本当に相手は空を飛んでいた、飛ばされていた。
そして、いつのまにかボールは味方のDFが確保していた。こちらに笑顔を向けてくるから、とりあえず頷いておいた。
すごいね、一体全体どうすれば「触れもせず」相手を吹き飛ばせるんだろうか。
ボールはそのままMFにパスされるかと思いきや、DFは何を考えたのか、思いっきり蹴って敵陣地へと上げた。
クリアにしたって強すぎて、高すぎた。
このままだとゴールの頭上を通ってそのまま相手ボールだ。
ミスか?
違う、パスだった。
FWが天高く舞っていた。すごいな、軽く10メートルは飛んでいるんじゃなかろうか。背中に翼とか生えている気がする。気のせいだと思いたい。
そのまま、カカト落としの要領で蹴り落とされたシュートは、キーパーごとゴールを吹き飛ばした。
わずか一分で先制点だ。解説の人が引いている。俺も引いている。
キーパーはそのあと、担架で運ばれていった……。
これは、ただのサッカーの試合ではなかった。打ち震え一歩も動かない俺に、仲間が声をかけてくる。
「どうしました『部長』」
「……(普通の)サッカー、したいな」
「……? はい、(超次元)サッカーやりましょう!」
眩暈がした。
超次元は序の口だぞと教えてくれている、そんな気がした。
◇
──俺はきっと、あの日の行動をずっと後悔し続けるだろう。
きっかけは本当に、単純なことだったんだ。
俺が通うこととなった『習合中学校』は平凡なところだった。
別段、廃校になるってレベルでもない程度には人が居て、
校庭がやけに広く、たまに近くで見かけるのは健康目的に走る爺さんぐらいな、閑散とした場所に存在する母校。
特にスポーツが強いと聞いたこともなく、勉強もそんなに力を入れていない普通の中学校だった。
そう、ある一点を除き……普通の中学校だったんだ。本当なんだ。
入学してから一週間が過ぎようとしていたある日の事。教室の片隅で一人、部活動に励む同校生達を見ていた時の事。
たまたま、本当にたまたま気が付いてしまったのだ。
「──うちの学校は、サッカー部がないのか?」
奇異であった。
なんだかんだ言ってサッカーというのは世界でもメジャーである野球と競り合う、もしくは勝てさえすると考えていたスポーツであり、それなりの規模の学校には当然サッカー部が存在すると俺は考えていたからだった。
なんならサッカーは少し好きの部類に入るものだったし、「モテる中学生デビュー」をひそかに考えていた俺にとってはサッカー部への入部は規定事項になっていた。
それなのに、
それだというのに──!
荒れた。どれくらいかというと数か月後、或いは数年後でも思い出したらのたうち回り苦しむ程度にはイタい荒れ方をしてしまった。
具体的に言えば、勘という名の適当で選んだ生徒に片っ端から声をかけ、勧誘したのだ。
「サッカーやろうぜ」と
体格だけは同級生と比べても一回りは育ちが早く、逆に口回りは幼稚園デビューしたばかりですか?と吐き捨てられるようなコミュ障野郎が良くやったものだ。
そんなんだから一緒に部活見学しにいく友達もいなかったんだが……この話は一旦別の所に置いておこう。俺の口下手さとやらかしは関係ない、関係ない筈なんだ……。
とにかく、とにかく、そんなふざけた勧誘だったというのに面白いように人は集まってしまった。
僅か一週間で十人、俺も含めて見事に一チーム分集まってしまったのだ。正直俺としてはチームとしては成り立たない、五,六人程度で校庭の隅で遊ぼうと考えていたのだから驚きの成果と言っていいだろう。
そして、幽霊部員が多かった将棋部の顧問を説得し、特に指示出しなどをしてもらわなくてもいいことを材料に、兼業させることに成功。
入学してから三週間、思い立って二週間目、それが我ら『習合サッカー部』が誕生しためでたき日である。
実に、実にめでたかった。なんて言ったって一年生にして部長就任だ。自分がすごい人物なんだと誤解するのもしょうがなくて、浮かれに浮かれた。
そして、部結成祝いとしてみんなで教室を借り、仮部室として騒いでいた時のことだった。
「部長部長、せっかくですし抱負とか決めちゃいましょうよ!」
「……いるか?」
「いりますって! ほら、夢はでかけりゃでかいほどいいって言うじゃないですか! さぁどうぞ!」
勧誘した中では一番背が低く、人懐っこいのがウリな部員(あだ名はウリ坊)にそそのかされ、俺は後先も考えずまた適当に浮かんだ言葉を口にしてしまったのだ。
サッカーで、目標。なら……
「──フットボールフロンティア」
野球でいう甲子園。地区予選を勝ち上がったチーム同士がぶつかり合う、日本中学サッカーの王者決定戦。
確か話では、ある中学が40年間無敗、優勝し続けているという魔境だ。
ノリだった、完全に。俺みたいなのが部長で、かき集めたのはその殆どが未経験の素人ばかり。
幸いにしてうちの地区は強豪校がいない。数年頑張って、ちゃんとした経験者が揃えば「出場だけ」は狙えるかもしれないが、少なくとも自分の代では無理だ。
それぐらい、到底無理な話だった。
「……」
案の定、壮大すぎる俺の言葉に部屋は鎮まりかえる。慌てた俺は、すぐに言葉を取り消すか冗談だと言って笑われようと思った。
「……すまん、言いすぎ──」
「やろう!」「いいな!」「もえるぜ部長!」
「そう来なくっちゃな!」「僕たちならいけますよ!」「……フッ、悪くない」
俺の言葉を遮り、闘志をたぎらせ俺を見てくる部員たち。
困惑し考えが追い付かない俺を他所に、ウリ坊は目をキラキラと輝かせ飛び跳ねながらこう言った。
「フットボールフロンティア、優勝目指して頑張りましょう!!」
──おぉーーーっ!!!
「……え?」
これは、超次元な才能の塊ばかりの部員たちに囲まれた、ただの凡人である俺が、引きずられるように超次元サッカー蔓延る戦場に連れていかれる話である。
助けて。