かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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 ようやく「なんでこの学校にサッカー部がなかったのか」がワタリ視点で書かれるという。
 遅すぎた墓穴。

 あとソニックは男です(無慈悲)
 アルゴも男です(無印良品)

 感想でメアの男女疑惑に勝手に掛けられた花京院とアブドゥルの魂。貰ってもどうしろってんだ……


父の過去を踏襲する日

 ──私立、習合中学校。

 

 出来てから十年も経っていない、歴史も浅い学校。

 名前の由来はそのまま、多種多様な教養を取り合わせること。と父さん普段から言っているが、本当の所は違う。

 

 烏合の衆。

 この地域に建てようと下見をして空を見た時、カラスがたまたま多く飛んでいたから。

 はっきり言って、ふざけた付け方だった。

 

 その事実を隠して、父さんは今日も理事長を続けている。

 ここが、()()()()()()()()だということもひた隠しにして。

 

 

 父さんは自分と同じ年の頃、テレビで華々しくプレイをする選手たちを見て、サッカーにあこがれを抱いたらしい。

 当時クラスメイトだった母さんをマネージャーに誘って、「彼」の様に部活を作って部員をかき集めて……そう、ただかき集めた。

 

 内面も何もかも気にせず、片っ端から声を掛けた。

 

 まさしく烏合の衆。父さんのチームは、お世辞にも強いチームとは言えなかった。練習もうまくいかず、試合の日に休むものまで出る始末。

 それでも、父さんは諦めなかった。

 必死に部員たちを煽てて、やる気にさせようとして、ずっと続けて、三年目。

 

 ついに、敵チームの不祥事によるおこぼれをもらったようなものだったが、父さんのチームは地区予選突破を成し遂げた。

 

 そして──叩き潰された。

 

 今も尚無敗を誇っている帝国学園と初戦でぶつかり、父さんを含め全員が入院を余儀なくされ、部は跡形もなく消えた。

 これが、父さんのサッカー人生が終わりを告げた日だ。

 

 それからは運動することすらやめて、ただ勉学にその身をささげた。

 大企業に就職して、母さんと結婚して、私が生まれて……傍目からは恵まれている生活を送っていた。

 

 だが父さんは、ただ諦めたわけではなく……サッカーへの執着を憎しみへと変えていた。

 

 私がふとしたことからサッカーをやろうとした時、泣きながら激昂されたことを、それを止めていた母さんも泣いていたことも、決して忘れた日はない。

 

 心労で倒れた後、仕事が忙しいと行って見舞いにもろくに来なくなった父さんに対し母さんはベッドの上で嘆いていた。

 彼の夢を叶えさせてやれなかったことが心残りだと、いつかきっとサッカーが大好きだった彼に戻ってくれると。

 

 寂しげに私を撫でる母さんを見て、どうして父さんを憐れに思ったのだろうか。

 

 やがて大病を患った母さんは、迷惑を掛けたくないと離婚届けを置き、姿を消した。

 

 ……父さんはそれを受けてひとしきり泣いた後、ぐしゃぐしゃになった顔のまま、学校を建てると言い出した。

 まだ幼かった私はその意味が分からなかったけれど、こうしてその学校に在籍する歳になった今ならわかる。

 

 わざとサッカー部を最初に作らず放っておき、やがて出てくるであろう「過去の自分」に現実を見せて、心を叩き折るつもりなのだ。

 

 それは、自分の様に中学の生活全てを注ぎ込むのを止めるためか?

 違う。

 

 万が一、自分と同じようなことをして、成功させてしまうものが出てしまうのを防ぐため。或いは、失敗する様を自分の目で見て、心の慰めにするため。

 自分は悪くない、そもそもが無理なことだったんだと、自分を納得させるためだけに作られた学校。

 

 わざとらしく周りの期待を集めさせ、そして惨憺たる有様を見せ……、

 決してサッカー部が二度と誕生しない学校を作るつもりなんだ。

 

 

 その犠牲者が今……僕たちの後ろで、ゴールを守っている。

 

 あなたのまともな顔を見られるのも今日で最後だろう。ふと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全力で心の中にて雨ごいしてたけど効果がなかった。もう二度と天気の神様とかは信じない。

 

 ついに始まってしまった。

 試合は、メアがタッチしたボールをジミーの軽快なドリブルで幕を開ける。

 

「よしっ、いくぜメアちゃん、ワタリ!」

 

「ちゃん付けはやめてくれないかな!?」

 

「……はい」

 

 うちの陣形はやや攻撃的な4-3-3、対して帝国は堅実な守りとも言える5-3-2。

 逆に言えば、あちらは前の層が薄いという事。

 

 そのまま、三人はV字の陣形を崩さず、敵陣地に切り込んでいく。三人とも重りを外しているおかげか、普段と比べとてつもないスピードだ。

 ……三人とも陸上に行けば記録残せるんじゃないかな。転向する?

 

『さぁキックオフ! まずは習合中学のFWが機敏な動きを見せつけ帝国学園を翻弄していくー!』

 

 実況さんも興奮気味に、メアたちの活躍を…………あの、さりげなく実況始めてますけどどなたですか?

 制服的に、うちの中学どころか近くの学校の子でもないよね? みんな普通に受け入れてますけど。

 

『紹介が遅れました。実況解説はたまたま将棋の試合で奈良にまで来ていた雷門中将棋部、角馬 圭太(かくま けいた)が務めさせていただきます!』

 

 あぁ、そうですか……雷門? 雷門中学……関東の学校だな。

 えっと、確かこの間帝国が練習試合をして「20対1」っていう有利な状況なのに棄権して、勝ちをもぎ取ったところだっけか。

 なんでも木戸川清修の元エースの「炎のストライカー」が雷門に転校してて……ってそこはどうでもいい。

 

『おおっとそんなことを言っている内に習合の副キャプテンジミー、帝国キーパーの目の前まで上がってきている!

これは帝国、早くもピンチかぁ~っ!?』

 

 しかし……奇妙な光景だ。帝国学園のFWはそんな状況下でもゆっくりと、ジミー達を観察しながらこちら側に殆ど歩くのと変わらない速度でやってきている。

 MFは一度、ジミー達に軽くブロックを仕掛けたがそれだけで、抜かれるとFWと同じようになってしまった。

 

 どう考えても、これは攻撃を誘っている。

 

 大方、弱小校の全力はどんなものか、こちらの動きを知るついでに試しているのだ。

 その余裕は、帝国学園のGKにあるのだろうという推測も出来る。

 

「いくぜ、帝国のキーパー!」

 

「……さぁ、どれほどのものか見せて見ろ……!」

 

 たった今、硬く握りこぶしを作りジミーに挑発を飛ばした男。

 奴こそが帝国の正GK。つまり超次元サッカーの頂点、数多くの必殺技を受け凌いできた者、源田 幸次郎(げんだ こうじろう)

 その異名は「K O G(キング・オブ・ゴールキーパー)」、キーパーの中のキーパー。決して伊達ではないことは、彼の経歴とその拳が証明している。

 

「おりゃぁ!」

 

 ジミーが高く足を振り上げるのとほぼ同時に、彼は右腕を構え跳びはねた。その高さは優にゴールを越えている。

 間違いない、必殺技の予備動作だ。

 

 やがて、重力に従い、隕石をも思わせるその風格を纏い落ちる体。

 構えていた拳を地上に向け、勢いよく叩きつけられた。

 

 その瞬間、彼の前には強靭な壁が、橙色のやや不透明なそれは、ゴールを守るため曲線状に展開された。

 

「──パワーシールド!

 

『止めたー! キーパー源田、ジミー選手のシュートを自慢のパワーシールドで弾き飛ばしましたぁ!』

 

 ジミーが放った渾身の一撃。もはやまともに受け止めただけで骨に深刻なダメージを与えるであろう凄まじき回転の掛かった一撃を、彼はいともたやすくはじき返した。

 

 ただのシュート相手でも技を使わないという選択肢を無くし、あえて全力で挑む。その姿勢はすばらしく、確かな帝国の守りというものを感じさせた。

 

 なるほど、散々動画や写真では見たが……これを突破するのは並大抵の選手では無理だろう。

 ましてや、必殺技を持たないものでは絶対に不可能だ。

 

 

 ──知ったことではない。

 大きく、息を吸う。

 

「メア!」

 

「──光よ」

 

 既に、作戦はほぼ完了している。

 帝国は初戦、データが少ない者を相手にするとき今回と同じような対応を取ることが多い。気が付いていた。

 その後は力の差を見せつけるように蹂躙し、自分たちが上に立つ者なのだと誇示する。酷く分かりやすい、帝国のサッカーだ。

 

 だからこそ、ある程度の油断を誘えるファーストボールこそが、俺達の得点チャンス。

 ジミーの一撃は重く、受け止めるのは至難のもの。相手が凄腕のキーパーだからこそ、触れる時間を最小限にして弾いてくると踏んでいた。

 

 弾き飛ばした空には、メアが既に待機している。

 

「……これは」

 

「我が身から……」

 

 全身からあふれ出す光を束ね翼と、ボールへと集めているメア。

 思わず歴戦のキーパーすら唸る神々しさ。一対の翼から零れ落ちた羽すらも目を逸らしたくなるほどの光量を放つ。

 

「助けを求める人々へ」

 

『す、凄まじい力の流れをフィールドの外にいても感じられます! これは一体!?』

 

 己が天使となり、全てを貫く光弾を地へと蹴り落とす。

 この距離ならば、この技ならば、叩き下ろした衝撃波による堅固な()()()()を作り出す「パワーシールド」を打ち破れる。

 

 眠たい頭を叩きながら導き出した唯一の、勝利への方程式だった。

 

「──エンゼル・ブラスター!!」 

 

 確信していた。

 

 

 

 

「──舐めるなと、言ったはずだ

 

 事実、相手が「普段の源田」であれば貫けていたはずだった。

 最悪の現実が、俺の前に現れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鬼道から言われていた通り、警戒を怠らずに正解だった。

 

 深呼吸を一つ。 

 気を充填させ、両腕を交差させる。

 

 ──弾ける、何が?

 

 この両手にたまった力が、火花となって弾けている。

 明らかな許容限界、普段であればこれほど力をためたりはしない。

 下手をすれば、両腕がお釈迦になってもおかしくはない。

 

 けれど、止めはしない。そのまま漏れ出している力を全て、右手に宿す。

 更に火花が酷くなる。

 

 これこそが俺の全力だと、天からの一撃に吠えた。

 

 膝に力を入れ高く、高く跳び上がる。

 ボールを蹴り落とし、上空で静観の姿勢になっていた相手と目が合った。

 

「……なっ!?」

 

「認めてやる、お前のシュートは凄まじいものだった」

 

 だが、今回は俺の勝ちだ。

 そう言い切って、地上に向かって墜ちる。いや、進む!

 

 

 爆発寸前になっている右拳を、地上へと突き立て叫んだ。

 

 

「──フルパワーシールド!!」

 

 広がる衝撃波は先ほどの比ではない。

 既に全国が相手でも不足などしないパワーシールドを超えるフルパワー。

 その一撃を俺は放つ。決して一点もやらぬために。

 

 シュートはしばし俺のフルパワーシールドと競った後、大きく、習合のFW達を越え大きく飛ばされていく。

 一先ず、仕事は終えた。後は頼んだぞ鬼道、そう思い痛みを発する腕をさする。

 

 ──帝国の守護神であらねばならない。

 その責務が、俺を強くする。

 

 お前はどうなんだと、俺と真逆の位置に立つ"奴"の姿を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エンゼル・ブラスターが弾かれた? 冗談でしょ!?

 ふざけんなよ! なんで弱小相手に新技とか出してきてくれてるんですかあのGK!! ファンサービスがすごいな!?

 

『なんと、本当にこれは練習試合なのか!? 序盤からFF決勝と見間違う様な攻防が起きました!!

メアのエンゼル・ブラスターも素晴らしかったのですが、それさえ弾き飛ばして見せる源田の新技、フルパワーシールド!

そしてボールはそのままセンターラインを越え帝国FW、9番寺門(ジモン)へ!』

 

 ああぁぁぁぁ! ボーっとしてる場合じゃねぇ、敵ゴールから弾き飛ばしてこっち陣地まで一直線とかまじでチート技だなおい!

 しかも寺門!? 帝国のエースストライカーじゃねぇかふざけんなよ!

 まずい、「アレ」を打たれたら確実に終わる。絶対にそれだけは阻止しないと!

 

「グラさん」

 

「任せなボス!」

 

 その一声だけで察してくれたグラさん、周りのDFに指示を飛ばし寺門に近寄ろうとする他選手を止める。

 相手のちっちゃい子にはウリ坊が、佐久間にはトールが、口元を布で隠している子にはカガが、鬼道にはグラさん自身がついた。

 

 よし、これで「アレ」の発動は無理だ!

 

「……ちっ、こっちの情報は流石に知られてっか」

 

 ……ん? グラさん、DF全員使っちゃってるからキーパー補佐する人いなくない?

 確かに「アレ」の発動は阻止しようとは言ったけど、それでがら空きになったら意味なくない?

 

「けどよ、俺を一人にして大丈夫かよ習合のキーパーさん?」

 

 その通りだよ!

 この人確か単体で必殺シュート持ってるからね!? エースストライカーだからやばいんだぞ脚力!?

 

「……」

 

「けっ、ダンマリか!」

 

 混乱して声すら出ねーんだよ!!

 どうする、弾く? 無理だろ!?

 

 あの技はこの間の奴と違っていろんな方向から力が加わってるから弾きにく──やめて! ボールと一緒に跳び上がらないで! 必殺技の体勢ストップ!

 

 よせ、作戦決まってどや顔してたらそのままカウンター決められるとか格好悪すぎるわ!!

 

 そのままボールに対して蹴りを、一、二三,四五六──……どんどんと加えていく。

 その度にボールは赤いオーラを纏い、濃くなっていき……

 

「──百烈ショット!」

 

 真っ赤に染まった凶弾が、俺へと迫って来ていた。

 ははは、せいぜい二十発くらいしか蹴ってないように見えたのに百烈とは笑止。

 

『一瞬のスキを突かれた形になった習合キャプテン! これは防げるか!?』

 

 ……現実から逃げても何も変わらないので、右拳に力を込める。

 それだけではない。足腰の体重移動を意識し、ブレるボールの中心を意識する。

 

 振りかぶり、全力の右ストレートを叩き込んだ。

 足が地面に食い込む感覚がする。小細工が生きている証拠。

 

……そんなに、言うほどの威力はなかったな。メアのとかと比較してだけど。

 しばしの時間の後、手からボールが離れる。止めた、止められた。

 

『お~っと!? 習合キーパー織部、必殺技をただのパンチングで弾いて見せました!! そしてボールは転がり……』

 

 でも……すっげぇ痛い! 右手がシューッと摩擦熱で白煙あげてる。

 まだ開始五分経ってないのにこれ……?

 あれ、そういえばボールはどこに……あ、寺門の方に転がっちゃってる。やばい。

 

『なんとキーパー、これはミスか? 弾いたボールはそのまま寺門の足元へ!』

 

「……挑発のつもりか、上等だ! そっちの手がイカれるまで叩き込んでやる!」

 

 やめて!?

 二十烈ショットとか馬鹿にしてごめんなさい、もう一発でだいぶいかれ始めてるからぁ!?

 

 

 

 助けて。




2 0 × 5 烈 ショット

 やめて(城之内コピペ以下省略)


・以下、書くこともないのでなんか予告っぽく

 僕たちの全力が聞かない帝国学園を相手に、メンバーはじわじわと追い詰められていく。
 そして部長さんは重点的に……この試合、もう結果は見えているはずなのに……

 次回習合イレブン「イナズマチャレンジャー」


 嘘です

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