かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
あ、鬼滅の短編投稿も始めたのでもしよければそちらも読んでいただけると幸いです。
あと部長の必殺技が日本車の安全構造みたいだと指摘されてしばらく笑いました。
今回は短めです。次回は来週までに出来たらいいなって……
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
またカラスが鳴いた。
彼が守っていたゴールポストに止まり、目を離さずに彼を見守っていた。その仕草は、まるでゴールの近くにいても危なくないと分かっていたようで……この場で一番に結果を予期できたのがカラスだったのかと思えた。
『──ここでホイッスル、前半終了ぉ!
得点はお互いの守りの固さが発揮され0-0! 帝国のデスゾーンを止めて見せた織部のキャッチは誰もが驚いたことでしょう!』
その声は私の頭を通り過ぎて、通り過ぎたはずなのに残音が引っ掛かって何度も何度も反響した。
止めた、何を、父が全く敵わなかったデスゾーンを?
冗談でしょう、思わず言葉尻が弱く零れ落ちた。
『──はい、わかりました。
ただいま入りました情報によりますと雨脚がやや強くなってきたため試合を一時中止。経過を見て再開するか決めるとのことです。観客席並びに選手の方々はお体を冷やさぬよう──』
実況の子がそう伝えてくれて、初めて私は雨が強くなっていたことに気が付いた。
痛む体を冷やしてくれているのだろうかと、空を見上げるそぶりをした。
その少し後、呆気に取られていた他の仲間たちが気が付いて部長に走り寄った。
みんな、帝国との戦いで疲れダメージを負っていたというのに……すっかり元気いっぱいみたいだ。
……まぁ、私も気が付けば一緒になって走っていたのですけれど。
「ふっ、流石は我らが部長か。あれほどのシュートを左手だけで止めると──」
「──やっぱりリーダーの左手には古代の聖戦にて封印されていたサタンが封じられていたんだね!!??
ふふ、確かに僕は感じたよ一瞬増幅した闇の力と、それを制御しきって見せた君の笑顔を……!
見たところ左手を使う=それ自体が必殺技という印象なんだけれど、もしかしてまだ先があるのかな、次はもう少し力を解放して悪魔の羽とかはやしてみたりとか……ところでサクリファイス・ハンドって言ってたけど一体何を代償に──」
「メアちゃんめっちゃはしゃいでますね。ソニックさんもそんな別の生き物見るような目をしちゃ駄目ッスよ」
「だからメアちゃんはやめてくれないか!? あとソニックくんはどういうつもりなんだい?!」
特にメアさんがはしゃいでいる。目をキラキラとさせて、部長さんが手に包帯を巻いてきた時よりもうれしそうだ。
これは多分明日にはもっとひどい事になった噂が拡散されそうだ。いや確かに部長さんはすごいけれど、流石に悪魔とかは存在するはずもないし。
「……!」
「ボス、カガが何か伝えたいみたいだぜ……俺はサングラスの替え取ってくるぜ」
「僕もぉ~甘酒切れちゃってもうヘトヘトー」
腕をワタワタと動かし必死で何かを伝えようとしているカガなんて初めて見た。よほど何か言いたいことがあるのだろうか。それを彼に押し付けてグラさんとアルゴはベンチの方へと向かう。
相変わらずの様に見えるが、それでもやはりその顔は希望の色に満ち溢れていて……。
僕が予想していた絶望の顔なんて、誰一人としてしていなかった。
「……、……!」
「……早く手当をしよう? そうだな……みんなベンチに行くぞ」
「あーそういう意味だったか? わるいなカガ読み取ってやれなくて」
「……」
「……気にしていない、それよりサングラスの破片とかは目に入っていないか。だそうだ」
彼も相変わらず、少しの動作だけでカガさんが言いたいことをすべて理解していた。なんでわかるのだろうか。
……そうか、後半戦が始まるかもわからないけど……とにかく休憩しないとか。
「ふー流石にトップは中々きついもんがあんな。ワタリもお疲れさま。怪我とかしてないか?」
「え、えぇ……なんとか」
ジミーさんと当たり障りのない会話をする。
本当は少しだけ吹き飛ばされた時首筋の辺りを擦りむいていたけど。もう血は止まっていたしいいかと思って流した。
少しして……ウリ坊さんとバングさんが少し歩くのが遅い事に気が付いた。
この二人は積極的に必殺技を使い踏ん張っていたからこそ、疲労も大きいのだろう。
それでも「帝国に潰しかけられた者達」というフィルターを通してみれば元気そうだけど……。
カガもそれに気が付いたようで、こちらに歩み寄ろうとして……それを止めた。
「──よっせいと」
「わわっ、トール!?」
「トールさんいきなり何を?!」
何も言わずにいきなりトールさんが二人を両脇に抱き上げたからだ。体格の違いも相まって、休日に悪ガキと遊んでいる大人みたいだなと思った。
「なにって……疲れてるやつ運んでやろうとしてるだけだよ。
……ま、俺は力があるからな」
「おー? トール、久しぶりにいい笑顔してるじゃん! どしたの、部長になんか言われたとか?」
なにかを掴んだのだろうか。少なくとも先ほどまでは誰よりも……絶望が近づいている顔をしていたというのに。
ウリ坊は運ばれることをさっさと受け入れ、ニヤつきながら尋ねた。
「──まだサッカー、やりたいからな」
そう言って有無を言わさず二人をベンチまで運んでいくトールさんの顔は、天候とは真逆と言っていいほどに、本当に晴れやかなものだった。
やがて、みんなベンチに歩いていき……気が付くと僕と部長さんだけ、ゴール前に残りました。
「……行かないんですか、部長さん?」
「……まだ、行けない」
そう言って左手をさする部長さんを見て、思わず笑みがこぼれました。
……きっと、僕が何か言いたことがあるのを察してくれたのでしょう。
僕も覚悟を決めて、全てを話そう。
何故か、そう思えたんです。
「──部長さん、実は……言わなきゃならないことがあるんです」
◇
──この我を生贄にするなどとふざけた真似をしてくれおって……いいかよく聞け長久、我は不滅の存在だ。例え今力を失おうと、お前の心の中の闇が消えぬ限り必ずや──
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!
なんだこれ?! この間の骨折よりずっと痛い……! 必殺技としてわざと折れやすいように手の構えを作ってたからか……! 痛みと小細工のせいで全く動けねぇ……。
マジでふざけんな、絶対お兄さんがサッカーできなくなったのこれのせいだろ……どういう発想したら体を壊すことでボールの衝撃を殺すとかいう技作り出すんだよホントに!
──……聞けよ
……あ、なんとなくだけど頭に居座られてた様な感覚が弱まった。そうか、やはりこの技を使うと人格分裂でも起こしてない限り精神がぶっ壊れるのか……多分もう一人の俺には肉体的痛みだけじゃなく精神の痛みとかも向かったのだろうか。南無南無。
ありがとう、お前の力は確かに借りたよ……。あ、下手したらまたこの技使う羽目になるかもしれんからよろしく頼む。
──もうやだこの肉体……
「──と、言う訳で……今回の試合ははっきりいって私たちを潰す目的で組まされたに違いないんです。今まで黙っていて本当に申し訳ありませんでした……」
さて、もう一人の俺ともお別れしたことだし現実に集中しなきゃだな。
大丈夫、全部聞いてたから。ワタリが理事長の息子さんで、理事長は昔に俺みたいに部活作って帝国学園にやられて、サッカー部がない学校わざと作って自分と同じような運命を辿る奴を作りたかったと。
……えぇーマジか。ワタリいつも申し訳なさそうにしてたけど、これが原因か。そりゃ親が部活潰そうとしてるなんて話したくないもんな。お疲れ様、よく話してくれたな。
まぁ話されてもやることかわらんけど。
「……問題ない。誰だって隠し事はある」
今から理事長糾弾しても状況何も変わらんからな……むしろ息子からバレたとか家庭環境が更に不味くなりそうだし……とはいえ、観客席にいるあの男の人だよなワタリお父さん。
すっごい心配そうにワタリを見てるけど、本当にワタリが言っていることが全部正しいのかな。というか、失踪したお母さんってもしかしてあの離れたところにいる……やめておこう、憶測で話してはいけない。
あ、お医者さんがこっち睨んでる。多分俺の様子を何のフィルターもなしに理解してくれる人だ。ほんとすいません……。
とにかく、隠し事なんて皆してるものだからさーと返してベンチに……あ、やばい。
"アレ"がずり落ちかけている。デスゾーン食らった衝撃で紐が切れたか!?
「それは……部長さんもですか?」
「……ま、まぁそうだな」
不味い不味い不味い、今落ちたら後半がやば……駄目だ体を捻って耐えようとしても上手く力が入んない。
あっ、ちょっとずつズレ落ちてる! あと少しでユニからはみ出そう。
「……そういえば、今日の部長さんは少し太って見える様な……」
──ベチャ
あ、落ちた。ぬかるんでいた地面に叩きつけられて、大きな音を立てた。
薄く小分けにして体中に巻き付けていた計四十キロの重りが。
帝国は潰す気で来るならコースとか狙わないから、耐えられるようにと巻き付けていたそれが。
「……え」
ワタリの目が点になっている。まぁそりゃそうだよな。
どうしよ。
『──あ、あれはまさか……なんとキーパー織部! 重りをつけたまま試合をしていたようです!!』
やめろ実況! 拡散するな! 周りの奴らがとうとう俺を人と思えないような目で見てくるようになってしまったじゃないか!!
あ、鬼道さん達も信じられないものを見たような目でこっち見てる。違うんです! ほら、みんな直線的にしか狙ってこなかったから重りなんてデメリットになってなかったんです!
足腰疲れたけど! ほとんど俺二人分の体重で戦ってたんです、枷じゃなくてブースターだったんです!
『……え、はい? ええとたった今匿名の情報が寄せられました。織部長久選手の左腕には闇の力が封じられており、それを制御するため普段から彼は重りをつけている……?
ダークネスの名を冠していて──』
おい誰だその情報差し入れた奴!? ダークネスの名前だけは絶対拡散させたくなかったのに!
嘘情報を拡散するなよって……メアじゃねぇか!! あいつ何ベンチ通り過ぎて実況席に走り抜けてんだ!
くそ、止めに行きたいのにまだ左手の痛みが引かないから動けねぇ!
『先ほどのサクリファイス・ハンドは悪魔の力を引き出すことの代償に精神を乗っ取られかねない必殺技で……?』
『しかしそれを彼は自分の中の悪魔を確かに鎮め、ボールの威力を犠牲に見立てて発動しているんだと思うよ』
『……だそうです!』
やめろ、誰かアイツを止めろ! こっちは骨と知らないもう一人の俺犠牲にしてんだよ! 名前の通り捧げてんだよ!
匿名とか言ってたくせに途中からマイク奪って話し出すな、お前今日どうした!?
「……ふふ」
あ、ワタリ今笑いやがったな!?
絶対許さん……あ、いやメアのほうに笑ったんじゃないの? じゃあなんだ、重りの方か?
「あぁ……いえ、みなさん……自由だなぁって」
そういうことか。親のしがらみとか色々縛られてたワタリからしたらメアの最近のはっちゃけ具合は羨ましいのかな。
励ました方がいいんじゃない?って三人目の俺が頭の中でささやいている。いやだよ、どっちかって言うと俺の方が励まされたいよ。
というかお前は誰だよ。二人目の俺はちゃんと「苦痛と怨嗟が集まりし」とかなんか自己紹介してたぞ。無視したけど。
「その……サッカー、一緒にやりましょう、キャプテン!」
どうしたいきなり。後さっきから背後でカラスが睨んできてるんだけどワタリのペットか何か?
多分死にかけにみえて狙われてる気がするんだけど。
いやそんなことはどうでもいい、早くメアを止めないと、
『学校の皆には親しみを込められてダークネス部長などと呼ばれているそうです!』
……あ、
あ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁ……終わった。
助けて。
ギ ャ グ 回
前半戦終了したからね、しょうがないね……
謎の声さんが大人気で笑いました。あんな唐突に出たのに……((
・小細工の正体
「あれ、みんな正面突破狙ってくるなら自分の体重増やせば対抗しやすくなるんじゃ」という深夜テンションの元に考えられた作戦。
体中に重りを巻き付けていた。
予想されててどうしようか三分ほど悩んだ
~オリキャラ紹介~
・もう一人の俺(自称 苦痛と怨嗟が集まりしもの)
せっかく新しい肉体に来れたのに大外れを引いた。
助けて(ノルマ二重達成)