かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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 シリアス回
そして感想返しについてなのですが……
感想は私の血となり肉となるので隙間時間を狙ってゆっくりと返していきたいです。

 それはそうと夢見りあむと砂塚あきら欲しさにデレステ始めちゃいそう


ペンギンが空を飛ぶ日

 雨雨ふれふれかあさんが~、じゃのめでお迎え嬉しいな……。

 ──雨もっと降らないかなぁ、いっそこのまま試合延期とかになってくれないかなぁ。

 

『──え~報告します。雨脚が弱まってきたため、グラウンドの整備をした後に試合が再開されることとなりました』

 

 ど畜生!! 弱まってんじゃねぇぞ雨ぇ! さっきこっそり天気予報見たけどこのまま大雨警報の流れだっただろうが! 朝の俺の全力の雨ごいも無視しやがって!

 「降れーっ!!」って祈ってたら第二の俺に「流石にテルテル坊主を逆さにしただけでは降らないだろう貴様」とか笑われたんだぞ!

 

 あれか、この会場に晴れ男さんでもいらっしゃるのか!?

 だとしたらお帰り頂こう、5nチョコあげるから帰って! チョコバットマンの方がいいかな、それともガムボールか!?

 ちなみに俺はうまかった棒のコンポタが好きだからそれはあげない。

 

「──とりあえず、出来る限りの処置はしたよ。デスゾーン……だったっけ? あんなシュートを止めて、左手の骨以外左腕に異常が見られないのは本当に……不思議としか言いようがない」

 

「……ありがとうございます」

  

 右手は潰れた豆を覆うための絆創膏だらけ、右腕は湿布だらけなのを包帯で隠している。

 左手はこっそりと包帯の下に足された添え木。左腕の中にはいまだ固定用の金属が入っている。

 さてこんなボロボロの奴の名前はなーんだ?

 

 正解は……ダークネス部長!

 

 ……いや本当にありがとうございますお医者様。非番の日なのに態々見てもらって、しかもこうして物陰に隠れてやって欲しいという要望にもこたえていただけて。

 しかし準備いいですね、おかげで後半戦も動けそうです。

 

「……これでもまだ試合に出る気か。

……どうしても、怪我をしていることは部員の子たちに知られたくないのかい?」

 

 ……いや、まぁ……帝国のデスゾーン受けて体ボロボロになりましたって言えればよかったんですけど……思いのほかサクリファイス・ハンドさんがデスゾーン相手に対して勝ってしまったというか。

 あの周りの反応的に「え、あんな余裕気に止めてたのに骨折したんですか!?」みたいに怪しまれそうだし……骨折してるのバレたら試合に出してもらえないだろうし、そんなことなったら自動的に負けになっちゃうし……。

 

 流石にこんなこと言えないけど。

 

「……こうして隠していても、既に学校の方は怪我をしてしまったことは知っているはずなんだけれど」

 

 確かに、それは気になっていた。教師陣も「いじめとか受けてない?」って聞いてきたんだけど……ああそれと、怪我したことは知ってても骨折したとは知らなかったな。

 あっ、骨折したことはまだ伏せてくれていたんですか? 助かりましたホント。手の火傷と筋挫傷だけ伝えたと。おかしいなすっごい重症っぽいぞ。

 

 ……まぁそうなんですよね。すっごい不思議で……特に、俺達を潰したがっているというワタリ談の理事長とかがそれを広めないのはおかしいはずなんですけど。

 あれかな、怪我してるはずなのに練習しまくってたから、教師の人たちはもう治ったと思ってるのかな。

 

 ……やっぱり変だよなぁ。後で理事長に聞ければいいんだけど。

 

「……医者は人を健康に、健やかにすることが仕事だ」

 

 あ、めっちゃ悩んでる。まあそりゃ自分よりも二回り以上も年が違う子供がボロボロになるのにサッカー止めないとかそりゃ止めたいよね。本当に申し訳が立たない。

 

「……今ここでサッカーを止めたら、後悔する」

 

 主に精神的な意味でな! ダークネス部長、実は怪我してたので退場! とかダサすぎるし部員たちからの落胆の視線を想像してしまう……いやアイツらいい子だからアルゴ以外は心配してくれるだろうけど。

 

 アルゴは完全に甘酒のつまみに参加した人だし……なんか俺の苦労が最高の肴とか言ってたし、がっかりするだろうなぁ。

 

「君だってわかっているはずだ。今の今まで、取り返しのつかない怪我をしてこなかったのは本当に運が良かったということを。

……この試合で君の選手生命が絶たれるかもしれない」

 

 ……い、いやでも! ほら、後半戦からは多分帝国の動きに慣れたうちの超次元な部員たちが更に活躍してくれて多分シュートの危機も減りますし、デスゾーンが効かないと誤解してくれているならあっちもそんなポンポンデスゾーン撃たないで何か対策……そう、コース狙って俺が取れない! みたいなことしてくれるかも。

 

「いや、例えこの試合を乗り越えることが出来たとしても、FF優勝を目標に掲げる限り苦難は免れない……分かっているのかい?

怪我どころの話じゃない……この目で見てはっきりとわかったよ。あんな無茶を続けていたら……

 

──君は、君はサッカーで死んでしまうかもしれないんだよ?」

 

 その……。

 

 あの…………。

 

「…………絶対、生き残ってやります」

 

 ……もう、後戻りできる状況でも、性格でもないんです。

 お願いします。

 そりゃ、最初の目的は女の子にモテる事だったから、だいぶ話がずれちゃったけど……みんなFF優勝目指して頑張ってるんです。

 

 ……優勝したら、ダークネスとか異名があっても、モテると……思う、多分。うん。

 いやモテないかもしれないけど、ここでサッカー止めたら「ほらあの人、腕故障して辞めたダークネスさんよ」って事になるのが目に見えてる。それだけはやだ。

 

 だから、最初は勘違いで始まった目標を自分のものにする。自分を引っ張り上げてくれる鎖が多ければ多いほど、俺は二の足を踏まないで済む。

 

「……FF、優勝して、カップをこの手で持ち上げます」

 

 そう強く言い切って、建物の影から出ようとする。

 雨は放送の通り、弱まっている。

 

 

 

「……君は、嘘をつかないと信じている」

 

 ──その言葉を受けて、俺を探している皆の元へ走り出した。

 

 ……すっごいヒロインっぽいムーブしてくれるなこのお医者さん。

 これで二十代前半の女性とかだったら告白してたかもしれん。危ない危ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 続く雨の中、仮設テントに叩きつけられる水の粒が時間の進みを教えてくれる。

 その中で鬼道を中心に囲み、立っていた俺達は──帝国サッカー部は……窮地に立たされていた。

 

「……くそっ、重りだと……ふざけやがって!? 俺達との試合じゃ本気を出す価値もないというのか!! どうすればアイツを崩すことができるんだ!?」

 

「落ち着けって佐久間」

 

「しかしなぁ……どうするんだこれは」

 

 その原因はゲームスコア。

 

 0-0というまるで試合が始まってもいないような何も刻まれていないそれが、自分たちは何もできていないという事実を突きつけている。

 少し視線をずらせば、反対側のベンチでは元気そうに軽い怪我に対して手当を施したりして騒いでいる。後半戦が始まっても、まったく問題はなさそうだ。

 

 ……自分たちはどうだ?

 少なくとも、万全ではない。習合のマークを振りほどき離し、ダメージを与えるために無理に動いてきたツケが出始めている。

 

 GKとしてそれがなかったはずの俺自身も、フルパワーシールドを使ったことによる腕のしびれがまだ残っているのを感じる。パワーシールドならともかく、フルパワーシールドは使えて後一回が限度……。

 

 無理に使えば……恐らく、俺の腕が壊れるかもしれん。

 ──例えそうなってしまっても、このゴールは守り通す。そう硬く心に誓う。

  

「……寺門、足の調子はどうだ?」

 

「へっ、問題ないぜ鬼道さん……いっ!」

 

「無茶をするな……デスゾーンは、撃ててもあと二回と言ったところか」

 

 そう弱く返す……FW、寺門……「織部に遊ばれ」必殺技を休まず連続で放ったことにより、両足が震え始めている。

 無理もない、百烈ショットは目にもとまらぬ速さで数十回もボールを両足で蹴り出す技だ。

 

 更に途中からは技のキレが上がったことで負担も大きく……いや、今にして思えばそれも奴の術中だったのだろう。

 

「……こうなったら」

 

 進化させたところで脅威にならないのであれば、ワザと進化させて疲弊させる。そうすれば寺門が参加するデスゾーンも……いや、待て?

 織部は、デスゾーンをサクリファイス・ハンド……ただ左手を使うだけ、俺の様に衝撃を伝え壁を作り出したりなどといった派手なことをせず……ただボールの威力を殺してキャッチして見せた。

 

 そんな男が態々疲労など狙う理由があったのだろうか。正直言って、奴に何度デスゾーンを撃ち込めたとしても、全てが止められてしまうように思えてしまう。

 では……狙いは、デスゾーンでは無い? あるいは、こうして俺達を追い込んで……何かを引きずり出す事こそが──、

 

「──皆、一人でのシュートは狙わなくていい。デスゾーンを止めたというのに……碌に消耗もしていない男だ。それこそ、練習にすらならないだろう」

 

 鬼道が攻撃陣に説く。きっとそれは正しい、奴は重りがありながらも寺門のシュートを四度も弾き返している。並のシュートでは経験値にすらならない。悔しいが……。

 後半戦では動きも素早くなり、いくらコースを狙おうとも意味すらないだろう。

 

 ではどうする、答えは決まっている……。

 

「……あのシュートを──」

 

『──そうだ、鬼道。()()()()()()を使え

 

 それは、用意されていた中継カメラの脇に置かれた、スピーカーから流れていた。

 

 重く、冷たい言葉。この場の誰のものではない、けれどこの場の誰よりも力を持つ男の声。姿は見えなくとも、確かにその存在の感情の動きを感じる。

 ──影山総帥、我らのトップであり、帝国学園の輝かしき歴史を作ってきた男。

 

 そんな御方が、()()()()()()

 

 たったそれだけで、俺達の身は竦んだ。もはやここは窮地どころか、今にも崩れそうな崖の上。

 仮に失敗すれば……声の主は容赦なく俺達を切り捨てるだろう。そうすれば、俺達はどうなる? 今の今まで、血のにじむような特訓で他者を蹴落とし、頂点に君臨していたというのに、そこに投げ捨てられればどうなる。

 

 不安、不安で仕方がない。

 より強力なシュートを、皇帝ペンギンを使うしかない。

 動揺が広がっていた帝国の考えは固まる。これしかないはずだと、他の考えを弱いと切り捨てる。

 

『……鬼道、わかっているな……? 以前の20対1(雷門との試合)からの棄権負けとは訳が違う。帝国が0-0で引き分けなどあってはならない……』

 

 しかし、どこか迷っている俺がいたのも事実だ。

 これこそが──皇帝ペンギン2号を出させることこそが、あの男の狙いなんじゃないか、そう言いだせるはずもなく、やがて試合は再開のホイッスルを鳴らす事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『──はじまりました後半戦、ボールは帝国からのキックオフ! 早速ボールは鬼道へと渡り、警戒しながらのドリブルというスタート!』

 

 そうかやばい、後半のキックオフだから最初帝国ボールやん。これ早速一点はいるかもしれない。

 

 いや頼む帝国さん、手当してもらって両腕今包帯巻いてるから「部長、とうとう闇の力が両腕に……!?」って部員に慄かれたんだ。今なら闇の力が暴れ出してるムーブでコース狙われて動けない感じに決まるから。

 メアちゃんくんなんて「そうか、デスゾーンに込められた闇の力を吸収したのか……!!」みたいにそっかぁな顔してたからね。その理論だと俺いくらデスゾーン食らっても問題ない事になるけど、そんなわけないからね。

 

 ……で、どうすっかな。鬼道さんの目を見るに確実に強力なシュートで俺を吹き飛ばしてやる! みたいな意思を感じ取れるんだが。

 デスゾーン連発とかやめてくれよ本当に……。

 

「…ウリ坊とトールは下がってくれ。ラインは気にしなくていい!」

 

 どうせ帝国の優秀な人たちならオフサイドとか引っ掛からんからな!

 なら誘導係のソニックとカガを残して二人はシュートブロック用に近くに置いておいた方がいい。頼りにしてるぞ二人ともぉ!

 マジで頼んだぞ、サクリファイス・ハンドは在庫切れだ! 右手が余っている? うるせぇ、百烈ショット四発とか防いだせいでヒビが入りかけてるって感覚でわかるんだよ!

 

「任せてよ部長!」

 

「前半の借りはここで返してやるぜ!」

 

 ははは、ウリ坊もトールもすっかり上機嫌だな。やっぱみんな笑ってると気持ちがいいな。

 この二人ならデスゾーンもきっとかなり力を弱めてくれるに違いな……、

 

『習合DF陣は二人一組になって堅実に帝国の攻撃のルートを潰していく動きか!』

 

 ──ん?

 なんか、あの……デスゾーンの動きじゃなくない? 鬼道さんと佐久間と寺門さんが中心になって……え、デスゾーンならあと一人誰か来るよね?

 あ、やばいこれデスゾーンじゃねぇ!? 鬼道さん達の目で分かるわ、なんか「デスゾーンが効かない今これしかない!」みたいに覚悟決まった目で見てくる! 鬼道さんゴーグル越しだけど!

 

 嘘でしょう?! デスゾーンを超える必殺技ってなんだよ!?

 少なくとも聞いたことも……いや、北海道にいるとかいう熊殺しの異名を持った人は調べててめっちゃすごいっぽいけど、今は関係ないな!

 

「気をつけろ──デスゾーンじゃない!」

 

 言葉で警戒促すけど間に合うか!?

 あ、鬼道さんがいきなり立ち止まった? なんだろ、やっぱり「こいつにこのシュート使っていいのかな」って悩んでてくれないかな! くれてないなこん畜生!

 佐久間と寺門さんが定位置っぽい場所に走っていくもんね!

 

──ピューッイ!

 

 突如としてなる笛の音、発信源は鬼道さんの口元。

 ……つまり口笛、いきなり? 激マブな子でも見つけたんですか?

 うん……? なんか鬼道さんの周りの土が動いてるような……。

 

 え、ペンギンが……生えた? 五匹。わぁかわいい……水族館結局連れて行ってもらえなかったなそういえば、約束してたのに。

 って違う、哀しい思い出に浸るのは後だ。ペンギン見れたし忘れろ忘れろ。で、何でペンギンが生えてきたんですか?

 

皇帝ペンギン──」

 

 あ、これ必殺技? うそでしょ? さっきから頭の中ハテナマークだらけなんですけど。

 鬼道さんが、ボールを思いっきり蹴り上げて……え、ペンギンが空を飛んだ? ボールに並ぶように飛んでいくペンギン五匹……。えなにこれは。

 あと鬼道さん、この時点でツインブーストに匹敵する威力があるような気がするんですがどんだけ力込めて蹴ってるんです?

 

 そのまま、ボールはペンギンと一緒に佐久間と寺門達の元へと飛んで行って……ツインシュートの態勢? 漫画で見たことあるぞその動き。

 

「──2号!!」

 

 息ピッタリに二人で最後蹴り出したボールに追従するようにペンギンも更に勢いを増してこっちに向かって……どうみてもデスゾーンより強そうなんですけどこれ。見た目ギャグなのに。

 どうしよ、サクリファイス・ハンドを右手でやっても、技の性質的にひびが入りかけてる右手だと全力を発揮できないよな!? そもそも犠牲にする人格がまだ復活してないし……あ、そういえば三人目の俺がいたな。おい、どこ行った! さっさと出てこい!

 

 あああぁぁぁ、やばいやばい早くしないとボールが来る……!!

 

 拝啓お医者様、ペンギンに殺された場合は死因は何と書くのでしょうか。

 

 

 助けて!!




曇 り 時 々 雨 後 ペ ン ギ ン





・5nチョコ
 5の倍数ごとにcmの大きさの種類がある。ただ甘い。

・チョコバットマン
 金で強くなれ

・うまかった坊
 湿気てる

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