かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
謎の四人目(?)さんの予想レース
・サタン,或いはルシフェル
・アクレオピスの杖に巻き付いてるやつ
・イグ(クットゥルー)
・ベルゼブブ(暴食の王) ……これ蛇じゃなくて蠅じゃね?
そうそうたる面々だぁ……
謎の女(メルカリ)の予想レース
・ヤンデレ
まさか一択とはなぁ……
きっかけは、バラまかれていたチラシを一枚拾ったところからだった。
あの習合が帝国と練習試合を組んだと書かれていて、何故こんなものが……と疑問にも思ったが、あの男の底を見るためには好機だと思った。
最初は、俺と弟だけが行く予定だった。部長に相談し休みを貰おうとしたところ、いつのまにやら一軍全員で「帝国学園の戦いを観察しよう」ということになってしまった。
それが……俺達高天原中学にとっては致命的な手であったことに気が付いたのは、試合が終わりを迎え……周りの仲間たちの顔を見た時だった。
『──ここで試合終了!! この展開を誰が予想できましたでしょうか、まさかまさかの大金星!
5-0! 習合イレブンの大勝利! 練習試合とは言え、FF40年間無敗であった帝国学園を下したぁっー!!』
「……あの帝国が、負けた?」
動揺し、焦点が合っていない目を俺とは逆サイドに位置するFWがしていた。同級生という事もあり、俺に対していつも勝負を吹っ掛けエースストライカーの座を奪って見せると言ってのけたアイツが……心を折られていた。
信じられないと、いつも強気だった発言はどこかへと隠れてしまっている。
『勅使ケ原は試合終了間際にハットトリックを達成! 凄まじいシュートを皆の目に焼き付けた事でしょう! かくいう私もこれほどのストライカーの誕生に身を震わせております』
去年は控えからの後半戦出場、源田のパワーシールドを突破することが出来ず落ち込んでいた時よりも、その顔色は悪い。
……目の前で、源田が力負けし、二点目のシュートで腕を痛め退場した姿を見送ったからだろうか。
『しかし、ここまで点が開いたのは……帝国の攻撃を完璧に防ぎ切ったDF陣、またキャプテン織部の活躍があったからこそでしょう!』
「……皇帝ペンギン2号、エンゼルブラスター改……あんなものが来たら俺は……少しの間耐える事も……」
冷や汗が止まらず、息すら止まっているのは俺達の守護神。三年の正ゴールキーパー。
天照が身を隠したとされる天岩戸を模し、鋼鉄をも想起させるほどの守りを見せていた大男が……この試合で見せられたものが理解できないと頭を振っていた。
その脳裏には、デスゾーンに対応できず吹き飛ばされていた自身の姿を思い出しているのだろうか。
……昨年の俺達の成績は、2-9。前半に光陰如箭の速さで源田の守りの隙をつけたが、結局はボロ負けだった。
そんな負けを経験してもなお、今年こそはデスゾーンを止めて見せると豪語していた男が……。
──ど、どうするよ……?
──あんなの勝てっこないぞ?
他の部員たちも口々に弱音を吐いている。
俺達の地区で生まれた化け物を相手にすることを恐れ、誰もが逃れられないかと可能性を探している。
観客席にいた中学サッカー部の中では、一番上位に居たはずの俺達が揺らいだことが、周りのサッカー部にも伝播しどよめきが広がっていくのが分かる。
──な、なぁ……棄権も考えた方がいいんじゃないか?
誰かが言った。
もはや、そいつが高天原の者かどうかは重要ではなかった。
「──ふざけるな! 始まる前から勝負を捨てるなどこの俺が許さん!」
「兄さん……」
猛り、周りをしかりつけようとする俺を弟が見る。……この中では一番マシな目をしていたが、やはりどこか怯えが見えた。
エンゼル・ブラスターをその身で受けたからこそ、源田が受けたシュートの凄さを理解していたからか。
つまるところ、高天原中学のメンバーは……俺を除き、もう戦意を喪失していた。
地区予選の一回戦が始まる前から……負けを認めていた。
「……光矢、お前の言い分は分かる。しかし……うちの柱であるお前のシュートさえも通用しないのでは……」
キャプテンが俺に諭すように言う。俺の技を作る原点になった人が、太陽の光をも操って見せた人が……。
これも全て──俺が不甲斐ないからか?
俺の光陰如箭が頭突きで防がれたという話を聞いて、不安がりながらも冗談だと思い込もうとしていた一軍。今にして思えば、そこできちんと説得してでも意識改革を行うべきだったのだろうか。
エースストライカーなどともてはやされ、去年から技の進化もしていなかった俺の声では……もはや誰も奮起しないのか。
無力感が俺を支配する。
「……こんなこと。この場で決めるべきではないでしょう……一度、学校に戻りましょうキャプテン」
「……あぁ」
肩の力は抜け……絞り出せた言葉は、酷く情けなかった。
敗者となった俺達は……フィールドに背を向け、ただ歩き帰ることしかできなかった。
──だが織部、俺は必ず……。
それを言葉にできるだけの力すらも、失っていた。
◆
帝国に……5-0? 何これ、夢? 全身痛いから夢じゃないか。
……勝っちゃったよ。生き残っちゃったよ。
「……やった、やったよ部長! 僕たち……帝国に勝てたよ!」
「……!! ッ!!」
お、おうウリ坊……嬉しいの分かったから腹部に何度も突進するのやめて……君それがツインブーストにも通用した頭だって理解してる?
カガも「やったね! すっごい嬉しいッ!」って感じではしゃぐ気持ちは分かるけど肩掴むのやめて、そこは折れてないけど酷使したから筋肉痛がもう来てるんだ。
お願いトール助け……グラさん達と談笑中か。ジミーが飛びついてるし楽しそうだなあっち。
「ふへへ~おツマミいっぱい……5本目あけちゃお~」
「そ、そろそろ飲み過ぎじゃないッスかアルゴさん……?」
「甘酒は永遠に飲めるのだ~」
アルゴなんて帝国のメンツ見ながら甘酒がぶ飲みしてる。趣味が悪いとか言われそうだから仲間内以外はほどほどにしておけよ……。
バングは今近寄らん方がいいぞ、甘酒取り上げようとすると泣くからなアルゴ。
──キャーッ! メア様~~ッ!!
「あ、あはは……応援ありがとうね」
「相変わらずの女子人気ですが……この分だとファンクラブが出来ていそうですねメアさん」
「う~ん……今回はワタリくんもだいぶ活躍してたし、そっちもファンが出来るんじゃないかな?」
たたくぞ貴様。 その辺の商店街のおばちゃんすらお前に頬赤くして手振ってるじゃねぇか。なにあんまり知らない人からの好意には困るなぁ……みたいな顔してんだ!
そしてその通りだな、ワタリの事を見てる女子もちらほらいるもんな! 畜生……。なんで皆ばっかり……俺だって……。
──ま、まぁお前にもそのうちいい人が出来るだろう……爬虫類好きの厨二病の奴とか
いるわけねぇだろそんなの!? メアか!? メアは男だろうが貴様なめてんのか!
というかさっきの蛇どこ行ったマジで?! 二回目の皇帝ペンギンが撃たれた後、猪突猛進と雷鳴一喝でなんとか威力殺した奴頭で受け止めたらまた出て来てたけど!?
──叩かれて柔らかくなったお肉はジューシーだった
──うっ、貴様また……せめて名乗れ貴様
おお急に出てきたな……相変わらず何て言ってるか分かりづらいな。ペンギンの味の感想を言ってる感じは分かるんだが。
そしてなんか頭の中で常識人ぶるな第二の俺。お前も怨念とかそっちの類だろうが。……マジでこの蛇はなんなんだ。
──名……? うーん……フェルタン?
──何と言っているのか全然わからんなこいつ。まぁいいどうせお前も第四の俺とか呼ばれ──
……フェルタンって言うのか、そうかそうか。
なんか錆止めできそうな名前だな。よろしくなフェルタン。
──理解できているのか貴様?! そしてなぜいつもの呼び方をしない! 順番的に第四の俺でいいだろうこいつは!
えっ、こうなんかニュアンスで……フェルタンかなって。
……流石に俺は蛇じゃないし。明らかに異質だろこの子。晩ご飯の時とかに愚痴を聞いてくれるような奴とは一線を画すというか……。
──晩ご飯……? たくさん、いっぱいがいい
──わ、我だって力を取り戻せば地獄の番犬をも震え上がらせるほどの狼へ……
そうかワンコなのかお前……俺の第二人格が犬か……。
──……ワンコ
──ッ!? おいこいつ我狙ってないか!? 助けろ長久、今すぐサクリファイスしてこいつを爆散させろ!
やだよ。今両手折れてんだぞ。というかなんかフェルタンは犠牲にできる気がしない。存在的に格上感がすごい。やろうとしたらいつのまにか自分が犠牲になってそうだ。
……まぁ頑張れ。
多分、何となくだけど大丈夫な感じがするから。
──貴様今どき天使ですらそんな曖昧な言葉授け──
「リーダー! さっきの蛇について詳しく聞きたいことがあるんだけどいいかな!? いいよね!」
──手羽先……甘辛く? 否サッパリ目も……
あ、ごめんメアが来たから現実に集中させてもらう。
メア、人の応答を待たず会話を始めようとするでない。フェルタンはメアの翼を食べようと考えないで……味付けか?
あれか、蛇だから鳥とか好きなのかな。
「サタン或いはルシフェルは神話の世界においては蛇となり人の前に現れたりしたとは聞いたけどまさしくあれは……!
それとも……デスゾーンをわざと受けることで力を取り戻し顕現、皇帝ペンギンをも食らいつくす姿からもしや──暴食の王、ベルゼブブ……!? けどあっちは蠅のような姿とされていることが多いけれど……一説によると豹の姿を取ったともされているし、姿が違っても問題はないのかな……。
それより何かさっきの蛇とは違うような力をまだリーダーの中から感じ取れるんだけどもしかして他にも何か宿していたり──」
──……こいつ何気に我の存在を感知してないか?
やだ怖いこの子。
流石源田を退場に追い込んだだけはある……。大丈夫かな、FF地区予選には間に合うといいのだけれど……。
まあ帝国は昨年優勝校だから地区予選で負けても出場決まってるけれど。
──お前は寺門を退場させたではないか。二発目の皇帝ペンギンの時、あれは完全に足首を痛めていたぞ
あれ俺のせいじゃないよ!? その、確かに撃つ瞬間疲れからか足がもつれて、タイミングがズレて……そのせいで負担が増えてやっちゃったっぽかったけどさ!
その、確かに百烈ショット四回も撃たせたせいで疲れ溜めさせたのかもしれないけどさ!
だ、大丈夫……俺の見立てだと二週間もあれば復帰出来るだろうし……。
こう、本当に練習試合なのに帝国はなんでここまで全力で……単に部室欲しさで組まれた試合なのに。申し訳が──
「もしかしてどんどん何か食べさせれば更に力を……試しに僕の強くなったエンゼル・ブラスターを──」
そんなこと言ってる場合じゃねぇ!? 逃げなきゃ……!
助けて。
◆
帰宅。いや、本当に死ぬかと思った。
なんとかメアの暴走はメアのお姉さんを挟み食い止めさせることに成功したが、その後もどんどんと部員たちの保護者がやって来てもまれ死ぬかと思った。
というかメアのお姉さんめっちゃいい匂いしたんですけど。柔軟剤とかいいものにするとああなるのかな。すっごい笑顔で「弟を誘ってくれてありがとうね」って言ってきてもう癒されましたよ。メアすっごいぶーたれた顔してたけど。
他の人たちはこう、うちの子とっても明るくなったのよ~とかうちの悪ガキがいつもご迷惑をとか色々……バングとトールすっごい恥ずかしそうにしてたなホント。
アルゴの所の家族はなぜか酔っていた。まさか観客席で飲んでいたのか……?
いろんな人の家族がやって来てて、ワタリがどこか寂しそうにしてたから「校庭のあの杉の木の後ろにこっそりと忍び寄ってみろ」と助言しておいた。
しばらくしたらすっごい泣きじゃくってるワタリが遠くから見えたのでよしとする。それをすっごい羨ましそうに端から見ている理事長もいたがそっちは無視した。今は親子の感動の再会の時間だったから、しゃーないね。
…………しゃーないね。
「ただいま……」
ドアノブを右腕で押し開ければ、誰もいない家に声がこだまする。叔父さんが単身赴任中で助かったな、帰ってきたら子供が両手骨折とかシチュエーションがやばすぎる。
しかし、中学生にして一人暮らしというのも中々に格好いいポイントがあるな?
……さて今日は本当に疲れたな……。両手怪我してるけどシャワーとか飯とかどうすんべかな。
……足で出来るか?
──いや無理だろ、貴様ビックリ人間コンテストにでも出場……優勝しそうだな
第二の俺よ、人間死ぬ気でやれば大抵不可能ではないのだ。不可能な時は死ぬからな。
……超次元なサッカーは不可能だと思いますはい。
時間かけて服脱いで、洗濯機の中に放り込んで……明日は日曜だしゆっくりしよう。あと病院の予約しとかないとな……先生、今度は手の中に鋼線とか言ってたな。
──ごはん、ごはん!
……あぁご飯か。そうだな……おかゆ作ろうにも米研ぎできんし、備えておいた栄養食品食べようか。
羊羹タイプの奴って腐りにくいし便利だなホント。あとは二本満足バーとか……飲み物がないか。まぁ、水道水でいいか。
……歯で包装かみ切るのすっごい難しいな。
──まあメーカーも両手使えない人向けに作ってるわけないからな……
──ごはんまだ?
…………やっと切れた。
うん、うまい。……もう一個の方開けるの面倒だな。今日はこれだけで寝ちゃうか。明日になれば少しは気力が回復してることでしょう……明日の自分に期待です。
──甘い……でも足りない! オリベ、もっともっと!
──はは、今のは何となくわかるぞ。腹を空かせているからもっと食わせろ! だな。 ……待て、何気に長久が食べている物を共有してないか貴様
うー確かに腹は減っているが……ごめんなフェルタン。この通り両手が折れてるせいで何もできないんだ。
せめて右手さえ治れば……冷蔵庫の食糧とかも使えるんだけど。
──……治れば食べられる?
うん。だからせめて辛うじて腕が使えるようになるように早めに病院に行くから……それまでなんとか我慢してくれ。
それかさっきの試合の時みたいに出て来て冷蔵庫の中とか漁ってくれれば……。
──寒いの嫌い……じゃあ
そうそう、そうやって出て来てもらって……痛い痛い!? やめてフェルタン! 右腕に巻き付かないで!? 手も痛いけど右腕もペンギンに噛みつかれたせいでもうアウトなんだよ!!
助けて、誰か助けて!
──治す
痛い痛い痛い……! なんか腕がベキベキ音なってるんですけれども!?
なにこれ! 皮膚の下の骨とか筋肉がすっごい動き回ってる感じがする、怖い!!
──まさかこいつ……?
…………あ、収まった、フェルタン消えた? もう何なんだよ本当に……ようやく言葉が分かるようになったのに、見てよ赤黒く変色していた俺の右腕がこんなに……普通になっている?
あれ? 痛みがない……右手も動かせる。……まさか痛覚死んだ!?
試しに歯で噛みついてみて……うん、痛覚あるな。
……えっ、治った? なんで?
フェルタンが巻き付いたから?
──お腹減ったからはやくはやく、鶏肉所望。葡萄があるとなおよし
えっ……はいご飯作るけど……鶏肉? 確か買い置きしておいたのがあるからそれを焼くか。
ブドウはないから、貰い物のイチゴで……。
──苦しゅうない
……えぇ、本当にこの子なんなの。
ベ ル ゼ ブ 部 長
超次元が進むにつれ、主人公の回復力不足が目立つようになってきた。
それゆえの蛇だった。後悔はしていない。
ちなみにフェルタンの喋りはコピペ、もしくは誤字修正機能などを使うと見れたりもします。文脈で読み取って見せるぜ! な方できになったらどうぞ……
~オリキャラ紹介~
・真経津 光矢(まふつの こうや) 2年 FW 9番
高天原中学のエースストライカー。傲慢な喋りとそれを裏付ける強さをもっていた……けれど。
帝国との試合を見ても尚心が折れないほどに保っていたが、仲間たちの弱り様を見て落ち込む。
何気に帝国相手に二得点できているので普通に優秀。
・フェルタン
黒い体色と白い眼を持つ蛇。
食いしん坊万歳。
皇帝ペンギン二号二回分のエネルギーで右腕を治してくれた。
……一見チート回復できるやんと思うかもしれないが、その分のエネルギーを集めるのに結局死にかける気がする。謎。
住処は背中の腰部分。普段はタトゥーみたいに擬態している。
※追記 フェルタンはファイアトルネード、百烈ショットみたいなのは食べられないよ
タイガードライブ、皇帝ペンギン1号、トライペガサスとかはいける