かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
累計210位、またUA50万突破、本当に感謝してもしきれません。大変ありがとうございます!!
ちなみにですが仮に全国大会出場した後の雷門だともっと混乱が大きくなると思います。ついでに鬼道さんと雷門マネージャー音無さんの絆も戻ってないので
──過半数の賛成を得た、故……我ら高天原中は今年のFFを棄権することになった
屈辱だった。項垂れる俺を他所に、話は進む。
──……光矢、お前には悪いとは思っている……しかし、どう考えても勝ち目のない試合だ
何も変えられない己が憎かった。
夢を見せられない弱さが嫌いになった。
──兄さん……その、来年もあるよ
誰もいなくなった部室で一人荒れる俺を慰めようとする弟に救われて、情けなくなった。来年こそは、俺達は挑戦できるのか? 舞台に立つことは許されるのか?
……俺が、俺達が強くなれば高天原の皆はやる気になってくれるだろうか。
……いや、それではだめだ。また同じように習合よりも強い奴らが現れた時に心が折れてしまう。
必要なのは、全員が強くなるための方法だ。心も、体も、成長しなくては駄目だ。
「……鏡介、兄に……ついてきてくれるか?」
今からやるのは、神が在する場所という肩書をつけた者からすれば遠く離れた、愚かしい行為だ。
けれど、もはや俺にはこれしか残っていない。だからこそ、弟の後押しが欲しかった。なんて弱いエースだと自嘲した。
答えが分かっている問というのは何とも無駄で非生産的な行為だろうか。
──も、もちろんだよ兄さん! 来年こそは習合の奴らに一泡吹かせてやろう!
ああ、本当に出来た弟だ。俺にはもったいない程だ。
……今度は途中で折らせなどしない。俺たちの挑戦は今この時より、始まるのだ。
膝に力をため、ゆっくりと立ち上がる。
「じゃあ、このマスクをつけてくれ」
──えっ
俺は確固たる意志の元、手元にあったヒーローマスクを弟に差し出した。
待っていろ習合、織部長久!
この俺は貴様を打ち倒し、再びエースストライカーとしての輝きを取り戻して見せる!
高天原中二年、
◆
「──フゥーッ、フゥーッ!! はぁっ……」
俺達はすぐさま習合に転入、習合サッカー部に潜入することにした。
敵を超えるために敵の教えを受けるというのは酷く屈辱的であったが、これも全ては「如何にして習合が帝国を超えたのか」を知るためにしようのない事であった。
教えを物にした後はさっさと高天原に戻り、仲間にも伝授。強い高天原を取り戻す作戦だ。
だが、俺達は奴らに喧嘩を売っている。そんなのが来ても受け入れてもらえないかもしれないという問題を
しかしやはり、マスクだけでは隠し切れないものがあったのだろうか。一度、正体が疑われてしまう事態が起きたが……何とか隠し通すことが出来た。
今は真経津 光矢という名を捨て、ただの謎のサッカーマスク一号だ。ちなみに、付いてきてくれた弟を気遣い一号ではなく二号に甘んじようとしたが、心優しい弟は「兄さんが一号だよ、言い出しっぺなんだから。うん、絶対……うん」と譲ってくれた。
本当にできた弟だ。
「……その、大丈夫っスか? 生まれたての小鹿みたいな震え方してまスけど」
「甘酒飲む~? それか新しいマネージャーが用意してくれたプロテインドリンクがあるけど~」
「……スポーツドリンクで頼む」
やはりというべきか、習合の訓練は常軌を逸していた。特訓二日目にして、俺は今までの鍛え方がぬるすぎたことを痛感する。これが全国に悠々と進んでいく者達の努力なのか。
走り込みに加えパス、ドリブル、ブロックをゲーム形式で実施、罰ゲームとしての筋トレ。
いたって普通の様に見えるメニューの羅列だが……その細部、行う数値の全てがおかしい。
明らかに粉が溶け切っていないドリンクを流し込み、息をなおす。喉にべたつく粉の感覚が気持ち悪い。
というかこれプロテインか、普通のドリンクはないのか?
「(……なぜ、一日だけでこいつらは最低40kmも走るんだ……? しかも重り付き……)……はぁっ」
パスは針孔を通す様にコースが絞られ、ドリブルは曲線などが加えられた平均台擬きの上で行われ、ブロックはそんな猛者たちを連続で止めることを強いられる。
当然、失敗すれば罰ゲームとして筋トレが待っている……。これら全てが、重り付きだ。
ではクリアすれば筋トレはしなくていいのかと言えば、全員最低数が設けられている。逃げ場はない。
「はぁ〜リーダーは今頃ワタリくんと東京か……。一緒に行きたかったんだけどな……」
「どうせまたすぐ行くことになるんだからいいじゃねーか!」
「ふへへ……憂いを帯びたメア様。その考えの先には……時代の最先端は天使×悪魔……」
「……その、兄さんでそういう妄想しないでもらえますか」
新入りの俺達は20kg。既にかなりの重量を持たされているが……他のメンバーは織部とトールを除き全員この倍、40kgだ。頭がおかしい。
そして例外の二人は60kg、もはや人一人を背負っているのと同義だ。何がしたいんだこいつらは。本当にサッカーのためなんだよなこの訓練。
気が付いたら立派な兵士にされているとかないよな。
「……おっとウリ坊、サポーターまき忘れてるぞ。ボスが見たら怒るぜ?」
「わわっいけないいけない、サンキューグラさん!」
いやもうこれサポーターあるかないかとか変わらないだろ。その微妙に体労わってます感はなんなんだ!?
くっ……いかん、この程度で弱音を吐いていては。俺は高天原のエース、真経津 光矢なんだ……誇りはいらない、ただ高みを目指すんだ。
ここで倒れては、今年が最後のチャンスだったというのに諦めてしまった先輩方にも顔が向けられない。
「よーし次は……そうだ、こう── 一号! DFの訓練の為に必殺技を頼む! ウリ坊たちはライン形成、きょう──二号もファイトだぜ!」
「……は、はい……死ぬ」
副部長……確かジミーと言ったか。そいつの掛け声とともに、DF陣がさっさとゴール前に……弟はふら付きながらもゴール前に歩いていく。
そうだ弟も頑張っているんだ、兄である俺は立ち続けねばならない。
「……? あぁ……速いシュートへの対処法か。いいだろう……何本程撃てばいい?」
これは前のチームでもやったことがある。俺の光陰如箭は速度に特化した一撃、逆に言えばこれに見慣れてしまえば他の技に対してのシュートブロックに入りやすくなる。
目を慣らすためにも必要なことだ。……織部には頭突きで弾かれるほどに見切られていたが。
とはいえ、必殺技はそうホイホイ撃てるものでもない。大体五本も連続で打てば疲弊してしまうから、練習と言えど最大十本程度にしてほしいのだが……。
もしかして重りをつけたままなのか? だとしたら五本でも、あれそういえばいつ光陰如箭使えることを話したか俺──、
「三十本くらいだな、頼むぜ一号!!」
……助けてくれ。
◇
「──みなさん、大変です!」
その情報を持ってきたのは、いつもいろんな情報を調べあげてくる元新聞部のマネージャー──音無だった。
その手には握られたのは地方紙の写しが数枚。少なくとも地元のものではないなと思った。
「どうしたってんだ音無、そんなに慌てて……」
「明日が雨で試合が出来ないとかでヤンスかね」
「い、いいからこれを見てください! この記事!」
大きなバンダナが目印のキャプテン……円堂がその慌てようを問うと、傍にいた栗松が能天気に呟いた。それをまた隣にいたソリ込みが入った男、染岡が「ンなわけねーだろっ!」と叱りつけているのを他所に、話は進む。
音無が持って来ていた写しが皆に配られると……部室は異様な空気に包まれた。ある者は目を丸くし、ある者は震え、ある者は信じられないと声を漏らす。
当然、それは俺も……紙面に書かれたことすべてが、信じられないでいた。
──完全勝利! 習合イレブン、無敗の帝国を相手に5-0!!
「……じょ、冗談でしょこれ……? ほ、ほらこの部まだ作られてから一月も経ってないって」
「あの帝国が、一点も取れなかったどころか五点も……」
俺達、雷門中学サッカー部は……あいつらの恐ろしさを知っている。どれだけ非道なサッカーをできるのか、その裏に、どれだけ研鑽された技術があるのかを。身をもって痛感させられたばかりで、その記憶はまだ新しい。
故、地区予選では勝ち進んだらその先に帝国とぶつかると知り、どれだけ彼らの高みへと追いつけるのかと不安を覚えていた部員だっていた。
それだというのに。
そこに書かれていたのは、とある奈良県にあるサッカー部についての事。その殆どがずぶの素人であるという彼らが、帝国を相手にいかに勝利したかが強く書かれていた。
帝国最優のキーパーの、源田の新技すら真正面から打ち破って退場させるほどに追い込み、ハットトリックすら決めたストライカー。
どれだけ攻められようと、決して倒れることはなく後半はむしろ圧倒した習合メンバー。
……そして、帝国のエースストライカーであった寺門を退場させ、あのデスゾーンを簡単に止め……その後放たれた帝国の新たなる必殺シュートさえも喰らったと比喩?されているGK。新聞記者は記事の中で彼の事をダークネス、また
ありえない、つい俺もそう言ってしまうほどの事態だった。
「お、俺達だって一応帝国に勝ってるでヤンス!」
「……1-20で、豪炎寺さんのシュートが見れたから帝国が棄権して帰っただけだけどね」
栗松の強がりを、猫耳ニット帽を深く被った少年が打ち消した。
……帝国は、鬼道達はこの中学に転校した俺の事を追い、円堂達に練習試合を申し込んだ。
元々数人だけだった寂れたサッカー部。円堂がなんとか人を集め、ようやく11人に届いたばかりだった雷門では帝国の相手は荷が重すぎた。次々と部員たちは倒れていき……とうとう一人、メガネという部員が恐れをなして逃げ出してしまった。
その後、ただ点を入れようともせず甚振られ続けて……それでも、決して諦めようとしなかった円堂を見た俺は、再びフィールドに立った。
あの源田から一点を取れたのは運が良かった。奴が準備を終え、パワーシールドを発動さえできていれば……俺のファイアトルネードはゴールに突き刺さることはなかった。
そんな男の新必殺技すら破った者は、一体どんなシュートを……。
「……その、習合の何人かの必殺技の動画があるんですけど」
「──見せてくれ」
「あ、俺も!」
思わず円堂の前に入り、音無に詰め寄る。その後直ぐに円堂も俺の横に立ち、音無に求めた。
答えは、彼女が持って来ていたノートパソコンにあった。
『ドライブアウト!』
バンダナを二枚巻いていた選手が、豪快な回転で屈強な鬼道を吹き飛ばす姿があった。
『ツインブーストォ!!』
『──猪突猛進!』
巨大な猪を思わせる一撃が、強烈なシュートとぶつかり合う。
俺達の中では一番背の小さい少林。彼とほぼ同じ体躯の人間が、鬼道と佐久間の合体技を防いだのを見た。
『皇帝ペンギン二号!!』
『──雷鳴一喝!』
空を飛んだペンギンに、天罰だと言わんばかりの雷撃が降り注ぐ。
これまで見てきたどのシュートよりも凄まじい、映像越しでも分かる激しいシュートを、焼き尽くさんと雷を落とす男を見た。
『フェイク・フェザー』
烏の羽が散らばり、いつのまにかボールは消える。
途中まで見事に全員が騙された、巧みなフェイントを仕掛ける選手がいた。
『フルパワー……シールドォ!!』
俺の知っているパワーシールドを遥かに上回る、堅牢な衝撃波の壁を見た。
そして……、
『エンゼル・ブラスター──改!!』
壁など知ったことかと、ありとあらゆるものを貫いていくような光弾を見た。
俺が知っている誰よりも高く飛ぶ、天使と見間違う様な翼を2対携えた選手を見た。
そいつが習合のエースストライカーだということは、声に出すこともなくわかる。
……これが、本当に始めて一月経っていない人間の動きなのか? 彼らの経歴を疑わずにはいられなかった。
「……これで、動画は以上です」
静まり切った部室で、音無はパソコンを畳みそう言い切った。短い時間の中で何度も常識が覆され、頭は疲れ切ったと泣いてた。
……だが、引っ掛かることがあった。まだ一人、いるはずの男がいない。
「……いや、習合のGKがまだだ」
「染岡の言う通りだ。……動画はないのか?」
そうだ、帝国を相手にパーフェクトゲームを達成した、習合のキャプテンが映っていない。
彼の動画はないのか、そう染岡たちが尋ねると音無は申し訳なさそうに眉をひそめた。
「す、すいません……それが、習合のキャプテンが映っている動画は一個も無くて……なんでも、見ると『悪魔に呪われる』って怖がられて貼られないんです」
「──悪魔!? ヒィー! またオカルトっすかぁ!?」
狭い部室が揺れ、埃が落ちる。
悪魔という単語にいち早く反応した男、壁山の仕業だ。
今回の野生中を相手に、重要な役目を任されている男でもあるが……その巨体に見合わぬ臆病さがあり、そういった話題にめっぽう弱い人間でもあった。
「落ち着けって壁山! 悪魔なんて存在するわけないだろ……」
「そうだぞ、呪いを使うとか言ってた
「ででででも、帝国相手に守り切るキーパーならももしかして……!」
オカルト、と言えば帝国との練習試合の後にやってきた尾刈斗中の存在がちらつく。
練習試合に応じなければ呪う、そんな脅しの手紙を送ってきた酷く怪しい連中だった。確かに試合が始まればいきなり足が動かなくなったり、染岡や俺の必殺シュートすらも止めてしまう恐ろしい実力を秘めていたが……。
……その実態は、監督すら巻き込んだ暗示を刷り込む戦法。決して呪いの類ではなかった。
またそれなのか、と壁山を除き疑うメンバー達の前に、音無が一枚の写真を提示した。
やや浅黒い肌に、立ち上がりバラけた黒髪。両腕に巻かれた黒い包帯がその存在感を誇示しているが……見た限りではまだ普通。それこそ、尾刈斗中に混ざっていても違和感のない男だ。ユニフォームやシューズの色合いがやや明るい事を除けばだが。
これが、帝国を下したキーパーなのか?
「これも、ネット上で見つけた彼のファンクラブに連絡を取ることでやっと手に入れた一枚でして……。話によると、彼はこの試合で自分に宿る悪魔を見せ、他校を威圧。帝国との圧倒的試合と合わせる事で戦う前からその心を折ったそうなんです!」
あぁ、それでまだ地区予選が始まってないのに全国大会出場とか書かれてるのか。
どんな情報もお手の物、と普段なら自信満々に豪語する彼女がこれしかないという辺り、どれほど彼、織部というキーパーの情報が少ないかが分かる。
しかし、そんな男がいるとは……。
帝国どころか一回戦目も厳しい試合になる自分達は、仮に全国に行けたとして、敵うのか?
言外の不安が、部室の中に漂うのを感じる。よくない事だ。どうにかして打開できないか、と一瞬思考を巡らせようとする。
「……す」
しかし、そんな必要はないと気が付いた。
そんな不安な声が漏れる部室に、灯りその勢いを増そうとしている火が一つ。
「──すっげぇな! こんなチームが出てくるなんて……俺たちも負けずに特訓頑張ろうぜ!」
今までの話を受け、身を震わし、まだ見ぬ強敵の出現にワクワクを隠しきれていない男が一人。
サッカーバカの男、円堂守だ。竦むどころか、「出来立てのサッカー部が帝国に勝利した」という事実が、彼の熱意に燃料を注いでいる。
「きゃ、キャプテン……」
「そのためにはまず目の前の野生中からだな! ぃよしっ壁山、今日も
怯え身を縮こませる壁山の背中をバシバシと叩き、笑顔で励ます彼を見ていれば、不思議と何とかなる気がしてしまう。
……いや、何とかするんだ。円堂の様に諦めず、練習を続けなければ見えない景色と言うものがある。
思わず自分の口元も緩み、笑う。
「そうだな……俺一人の力ではこのストライカーの様に飛べないかもしれない……お前の力が必要だ壁山」
野生中に対してのキーとなるだろうイナズマ落としは、高く飛びあがり雷を落としたかと見間違うかのような強烈なシュートを叩き込む技。
一人では成しえない、壁山を空中の足場とし更に飛ぶ必要がある。俺も頑張るから頼んだぞ、そう肩を叩き同じように励ました。
「ご、豪炎寺さん……うぅ……まだ怖いっすけど、頑張るっす!」
俺達の声を受け、まだ小さいながらも壁山の瞳の中には確かな炎が宿ったのを感じた。
きっとこれなら大丈夫だ。思わず円堂と目を合わせ頷いた。
「その意気だぜ壁山! ──それじゃあみんな、地区予選一回戦今日も全力で練習だ!!」
──オゥ!
今度は全員の揃った声で部室が揺れた。
◆
あの時は……そんな俺達の元へ、
「──サッカー、しようぜ」
まさか、習合のキャプテン……織部長久がやってくるなど。
ラ ス ボ ス 登 場
嘘です((
50万突破記念として部長のキャラデザを作ろうと思い、依頼中。ふへへ楽しみだ
~オリキャラ紹介~
・謎のサッカーマスク一号 FW
光陰如箭を巧みに操るマスクマン。高天原を抜け、今一度地獄より天を目指す。
非道な技訓練に駆り出され既に死にかけ。
・謎のサッカーマスク二号
少なくとも一号になり、まるで自分が主導して行ったかのように思われるのだけは避けたかった。
実力が近く、必殺技を使えるキーパーとして主にFWたちから歓迎された。シヌゥ
・トールファンのマネージャー
ダンベルとサッカーボール何キロモテる?
・メアファンのマネージャー
推しシチュは誘い受けからの逆転シチュ。
実は方向性の違いからメアファンクラブから追放された剛の者。
・部長ファンのマネージャー
悪魔の筈なのに腐海を前にたじろいでいる。
メアファンの子にカプの中に混ざるならアリと抜かしたら怒られた。