かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
・トロワのキャラ紹介にて寄り目でみて、と書かれていたが実際は寄って目であった。寄り目でボールを見るナガヒサはいなかった。
──あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛゛ぁ゛ぁ゛゛ぁ゛゛ぁ゛゛!!
聞き慣れた烏の声が聞こえた。
それは普段私に夕暮れを、練習の終わりが近づいていることを教えてくれるもの。彼の鳴き声が聞こえれば、ああもう今日の練習も終わりかと寂しくなるものだ。
……いや待て、ここは東京。雷門中だぞ? 普段の河川敷ではないんだぞ。あのカラスがこんなところにいるはずがない。
「……」
「……? どうしましたか、急にきょろきょろとしだして」
「いえその……烏の鳴き声がして」
夏未さんを前にしながらも私は、窓を開けあの黒く雄々しい翼を広げるカラスを探しました。
けれどどこにもその姿は見えません、幻聴だったのでしょうか。いえそもそもあの烏は奈良に居て……やたら部長の近くにいることが多い存在。
もしや、もしやですが新幹線に乗った部長すらも追いかけてこの地に来ていた? いや流石にそんなことは……そもそもあのカラス、本当にカラスなんでしょうか。
蛇の姿をした悪魔を宿している辺り、カラスの姿をした別の何かなんじゃあれも……メアさんとかに伺ったらおおよその正体とかつかめないでしょうか。ああでもメアさんがカラスに対して気にかけていないってことは悪魔関連ではない? いや、うーん……。
「烏? そんなのはどこにも……あら、お話が終わったようですね」
「いやこれからも習合中とは仲良くさせていただき……おや、ずっと待っていてくれたのかね雷門くん」
「──いやこの度はお時間を取っていただきありがとうございます。……ああすまないね望、待たせたね」
そんなことを考えている内に、理事長室の扉が開き笑顔になった二人が出てきます。
公私を分け実の娘であろうと君付けで呼ぶ雷門理事長の隣にはもはや完全に家の中での顔になっている父……少々恥ずかしいです。
とにかく、この様子であるならば不正の疑いの件は最早晴れたと思って安心していいでしょうか。委員会に視察を要求することも考えましたが、今は地区予選真っただ中でどこも人手不足です。
来るまでの間にうわさが広がってしまう前に止められるのであればそれが最善でした。こちらも笑顔で迎えます。一先ずお疲れ様です、父さん。
「さて……帰りの新幹線まで少し時間もあるか。雷門の街並みを見て帰るとしようか」
腕時計に少し目をやって、父さんはこんな提案をしてきました。
……まぁそれはいいですね。母さんにお土産を買わないといけませんし。人形焼きとかいいでしょうか。
それはそれとして、
「その前にキャプテンの事を探しに行きませんと。どこへ行ってしまったのか……」
話が長かったからと言ってうちの部長の事を忘れないでください父さん。
それとも単にトイレにでも行っているとでも思ったのでしょうか。
「え、彼は一体どこに……」
「購買に行くと言っていたのですが……携帯で呼びますか?」
普段なら携帯を持ち歩かない彼も、こう言った時には所持しているはずだ。ポケットから取り出し電話を掛けようとした時でした。
──雷が落ちたような小さな空気の振動が開いていた窓を通し伝わってきて、思わず携帯を落としてしまいました。
いけませんね。
「おっと、大丈夫かい望……おや、メールが来ているじゃないか」
「えっ……本当だ。キャプテンからです」
丁度それは父さんの足元に落ちて拾われます。そして指摘され……私はようやく、待ち受け画面にメールの通知が表示されていることに気が付きました。
……新幹線に乗った時、マナーモードにしていたのを切り忘れていました。振動にも気が付かなかったとは……不覚です。
それにしてもキャプテンから……一体どうしたんでしょうか。まさか道に迷った……なんてことはないでしょうけど。
首を傾げつつメールを開きます。
「なになに、ワタリへ……河川敷で雷門,御影専農とPKをすることになりました。これを読んだら加勢しに来てくれると助かります。
──えぇ?」
「なんですって?」
何をしてるんだあの人は。大方部員集めをしていた時の様に「サッカーしようぜ」と誘ったんでしょうが……今のあなたの風評的にそんなことしたら喧嘩吹っ掛けに来たと思われてもおかしく……喧嘩しに行った? いやそんな血気盛んではありませんし。多分巻き込まれたんでしょうね。
……まさか雷門たちの力量を測るため? いやでもなぁ……少し納得いかない。そんなことしなくても多分あの人なら見てるだけで大丈夫でしょうし……そもそも何で外に行ったんでしたっけ。
確かフェルタンさんがお腹を空かしたらしいとか……フェルタンさんって、帝国の必殺技を食べていましたよね。ペンギンをごっくんと。
……雷門にも今確か──あっ。御影専農はよく知りませんが、そっちも恐らく。
「……父さん、直ぐに河川敷に向かいましょ──」
いや想像でしかないけれど、これが確かなら少々相手がかわいそうです。
そう思い促そうとした時……私は自分の行動が遅かったことを悟りました。
『────ッ!!』
遠くの、きっと河川敷があるのであろう方角に見えたのです。
確かに……天すら喰らい付くさんと顎を開き牙を剥く白竜が産声を上げているのを。
◆
誰よりも高く飛び跳ね、一人では到達できない高さよりのオーバーヘッドシュート。
そのためには空中で壁山を足場にし、
だからこそ、本来のイナズマ落としである「土台の肩を踏む」という行為を進化させ「土台の強靭な腹を踏む」ことで更に高く飛ぶことが出来るようになったイナズマ落とし。
……それを、片手で止められるとは思わなかったと言えば嘘になる。
むしろドラゴントルネードを真正面から止めてしまう腕力を持つ相手ならば……角度をつけたこの一撃をどうにかしてしまうんじゃないかと心のどこかで思っていた。
「──雷が落ちたと間違うな」
上から降るボールを相手に、奴はパトリオットシュートの時と同じように叩き潰し対処して見せた。
如何にボールの勢いが殺されなくとも、地面に突き刺さってしまえば……そう判断されたのだろう。埋まりながらも反射し跳ねてゴールに向かおうとするシュートにもう一撃、奴の右拳が叩き込まれボールは完全に殺された。
──どたっ、ドンッ……
そうしてしばらくした後に、彼の体のどこに隠されていたのか滑り落ちるのは……大量の重り。
紐で一つにつながれていたそれがフィールドに着いて、大きな音を鳴らした。
目と耳で感じて軽く10キロは超えている。
「……なっ、あのキーパー
「あの量……あんなの付けていたらまともに動けないぞ……!?」
土門と風丸がいち早く反応し、言葉を紡いだ。……また、という言葉に引っかかりを覚え……しばらくして帝国戦との記事に一行、彼が重りを付けながら前半帝国を相手取っていたことを思い出す。
しかしPKが決まった時、彼が重りを付けているような動作は見られなかったという事を考えれば……彼はどんな時でも重りを付けているという事になるが……。
これが、それが……帝国の猛攻を防いで見せた男か。
──円堂、何も強くなるためには必殺技だけじゃない。
パス回しを含めた連携、ドリブルやブロックなどのテクニック。それらを磨き上げることも、勝利に向かうためには必要なんだ。
数日前、偵察の多さに必殺技練習ができないことに悩む円堂に言い聞かせた言葉を思い出した。
この言葉は間違っていないはずだ。木戸川清修に居た時も俺だけじゃない、他のメンバーが強くなければ勝ち抜くことは出来なかった。……それでも、木戸川の皆は俺に頼っていた面もあったが。決して弱かったわけじゃない。
必死で特訓して、体を鍛えて、そうして技に結びついたりもして……サッカーの強さとはそういうものなんだ。
この男の強さは、そういったものが大きいのだろう。
一見すると背後に見える悪魔に気を取られはするが……包帯が巻かれ如実にわかる腕の形、踏み込みの強さが分かるグラウンドに残る足跡。必殺技に頼らず、己の身でシュートを止めて見せるその姿。
日々鍛え上げる、真に迫る強さ。それが織部長久を構築しているのだと分かった。
……だからこそ、それを超えようと思えば思うほど、圧倒される自分の底から力が湧いてくる。
それはきっと、ベンチから立ち上がりこっちに歩いてきていた円堂も同じことだったのだろう。両手を握りしめ、気合十分とした表情をしている。
「……キャプテン、俺達の必殺技が……」
「ナイスファイトだったぞ壁山! すっげーなアイツ、ぜんっぜん底が見えねぇ! 全国に行けばアイツみたいなのがいっぱい出てくるんだとしたらもっと強くなんなきゃな!!」
「……いや流石に。それはどうなんっすかねぇ」
……俺もいっぱいは出てこないと思うぞ円堂。
キャプテンの世間知らずと言うべきか、恐れを知らぬ態度に緩和され、壁山もゆっくりとベンチに戻っていく。その後姿を見送り、円堂に話しかけた。
「……円堂、例の秘伝書の通りなら……とんでもない脚力が必要となる。一発勝負、覚悟はいいな?」
「あぁ! 習合のキーパーに、俺達の全力をぶつけてやろうぜ!」
……敵わない、なんて気持ちはないのだろう。
だからこそ、俺の湧いてくる力も更に強くなるというものだ。重りを左手で軽々と持ち上げ、ゴール端に寄せている織部を見……終えて構えるのを見届けた。彼方も準備万端のようだ。
ふと、今奴はどんなことを考えているのだろうかと思った。
その白黒の双眼は、こちらの動きを一挙一動見逃さないと少しもズレることがない。構えられた足は体重をしっかりと地面におろしており、どんなボールが来ても対応して見せるのであろう俊敏さを伺わせる。
油断など一つもない。見下しているという感情も見て取れない。今まさに、織部は俺達を「相手」として捉えている。
……先ほど言われた褒め言葉も、決して傲慢から来るものではなかったのか? 不意に前の自分の考えを訂正しようとする感情が生まれた。
「……行くぞ、織部!」
「──これが最後だ」
だから、最高の一撃にしろということか。
……当然だ、ボールを挟み円堂と並び立つ。そして、視線を合わせ両足に力を込めた。
力強い頷きと共に、並び立っていた位置を交換。横に体を回しつつ軸を右足にして体重を乗せる。
軸足に全体重を込め切った次に、その全てを左足に注ぐ。
「ぐっ……!」
──瞬間に分かった。これではまだ足りない。今の自分たちのキック力では、この必殺技を成しうるには届かない。
「ぐ、うおおぉぉぉっっ!!」
だからどうした。足りないというのなら、今ここで足せばいい!
今の今までの自分の限界を、超える……この一瞬で進化する!
これは、強力なキック力を持つ二人で放つツインドライブシュート。
イナズマ落とし、ドラゴントルネードを超える、必殺技!
辿り着かなければ、いや辿り着く!!
「イナズマ──
二つのスパイクが一つのボールに集約するとき、イナズマ落としよりも更に強い雷が生まれた。
血管が浮き出るかと思えたほど力を込めたシュートは今確かに、長き眠りから覚めて産声を上げる。
そしてそのまま、ボールは風を切りゴールに一直線に向かっていく。
「いっ、けぇーっ!!」
「……そうか、ならば」
叫ぶ円堂を、シュートの余韻で倒れようとする俺……自分に向かってくる必殺シュートを見てアイツは……笑った。
嘲るものではない、どこかワクワクを隠せずにいる……円堂の様な笑み。
「俺も、
──悪魔のキーパーと言われた男の真価が今、発揮されようとしていた。
その内に秘める、蛇とは別のナニカと共に。
◆
……泣いていいかな。いや泣けないけども。
イナズマ落としとかいう知らない技で右手にとどめ入れられて、唯一頼れる重りさんもバレて……この上さらに新必殺技とかなんなの。
あと豪炎寺君たち、蹴っている瞬間に力増しました? 実は二回目のファイアトルネードの時から段々脚力強くなっている気がするなぁって思ってましたけども。一分一秒で強くなっていくとか漫画の主人公かよって思っちゃいますね。
えーとそれで、これが俺達の全力だぞ! って言われちゃいましたね。
「俺も、全力だ」
とっくにな!! 一発目の染岡さんの時から全身全霊だったわ!!
もう足がガクガクし始めている気がするもん。重り外れたから楽になったけど、その分僕を地に縛り付けてくれる重みが消えましたもん。
──これも食べたくないー
──いいぞ、いいぞ! 妾の力がたまっていくのを感じる……!
あ、トロアさん標準語喋れるようになったんすね。一人称妾はこの時代中々挑戦的。
……力溜まっているんでしたら今この場を何とかする力とか貸してくれたりとか。
──あぁん? まぁ待て……顕現まであと一歩なのだ。力を貸すのはその後でもよかろう。それよりいいのか、早く止めんでも
今欲しいんですよその力……。もらえないの薄々分かっていたんですけどね。
よーしよーしお兄さん、頑張って止めちゃうぞー。右手はヒビの後気にせず振ったからもう完全に折れましたけど。まだ頭と左手と両足残ってるからね。
きっと力を込めて四撃それぞれのパーツで打ち込めばなんとかなるかもしれない。
……俺そんな曲芸師みたいなマネできないし、やっても吹き飛ばされて終わるな、うん。
しゃーない、ここまで来て「く、ここまでとは……」みたいなムーブできないもんね。重り外れる前だったらそれ受けて、ゴールされた後に外して見せて「次は本気でお相手する時を待っているぞ」みたいなこと言い残して去れたかもね。
いやダサいか? IF語ってもしゃーない……
──左手で構えを作り、折られまいとする力を抜く。肉体の犠牲の方は準備完了だ。
出番だぞコルシア。
「サクリファイス──」
──断固として反対する! まだ貯金が十分ではないのだ!
貯金ってなんのだよ。なに人の体の中に口座開設してくれてんだお前。そもそも悪魔が口座って何に使うんだよ、振り込め詐欺とかか?
ちなみになんだけど定期預金とかシステムあるの?
……違うそうじゃない。
無駄だぞ隠れようとしても、今この体の中には俺とトロアとフェルタンとコルシアしかいないからな。気配ですぐ分かる。
……いや結構いるけどさ。それとなんか微妙に違う気配がもう一つ混ざってるけどさ。さぁ覚悟を決めるんだ。相手が限界超えてきたんだからこっちもこれ使わないとやばいんだよ。
後でまた地獄みたいな特訓の苦痛あげるから……また会えるよきっと。だから寂しくなるけど……しばらくさようなら。
……コルシアの魂を心の中に作り上げた台座に乗せ……迫るボールに対し、左手を突き出した。
「──ハンド!」
──たすけっ──
ごめ──あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛゛ぁ゛ぁ゛!!
──あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛゛ぁ゛!!
──ぃょし、それでは華々しい顕現をお見せしてやろ……えぇ……何しとるんじゃこ奴ら
助けて。
一人阿鼻叫喚
UA50万突破記念として依頼させて戴ていた物がついに完成しましたのでお披露目いたします。
【挿絵表示】
・題名「死地」
ちょっと未来、具体的にはFF本戦一回戦の時の長久君。
・制作者
眞田居間様。ご依頼引き受けて下さり誠にありがとうございました。
・備考
とある選手から見たキーパー。フィルターが無いような目で見ているため、ほぼほぼ真実の長久。
普通にしてればモテたろうに