かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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 いきなり空から三億円振って来て受け取ったことにより美少女やら悪の組織と関わることになるストーリー始まんないかな


陽炎に誰かの背中を見た日

 

 揺蕩う、漂う。

 風鈴の音、誰かの笛の音。太鼓も轟けばまったくもって夏の夕暮れは寂しくない。

 

 寂しくなんて、ない。

 

「……」

 

 夏祭り。くじを引いて、チョコバナナを食べて、わたあめを食べようかどうか迷って、射的で落ちないことに憤慨したりして。

 楽しむつもりだったんだ。お小遣いだって溜めていたんだ。

 楽しまなきゃ損なんだ。

 

「……」

 

 電気の提灯に照らされる出店。

 遠くでデート中のカップル、孫に引っ張られ困りつつも楽しそうにしているおじいさん、家族で浴衣を着て楽しむ家族連れ。

 

 いつもと違う神社が眩しすぎて、俺は逃げ出した。

 

「……グス」

 

 下を向いて石段を駆け上がり、人混みを走りぬけ神社の隅っこへ。

 けれどまだ五月蠅くて……暗い暗い森の中へと自然と足が向いた。

 

 叔父さんからもらった、多すぎるお小遣いがポケットの中でクシャクシャになる感覚がする。

 申し訳ないので止まり、取り出して伸ばした。これがあればお絵かきせんべいが何枚買えるだろうか、くじ紐が何回引けるだろうか?

 

 ふと考えて、どうせ今日はしないだろうにと愚痴る自分がいた。

 

 しゃーないしゃーない。

 叔父さんは仕事が忙しいから仕方がない。友達は妙に気を使ってくるようになって話していても楽しくない。

 それならクーラーが効いた部屋で()()、テレビでも見て過ごしていればよかったのに。

 

 どうしてか、祭りに行く人たちの中に……二人を見てしまったから……最近知った、陽炎だってなんとなく気がついていたのに俺はここに来てしまっていた。

 

「……さびしいよ」

 

 涙が出てくる。哀しくなんてない。過去は変えられないし散々泣いた後だ。

 今更泣く意味なんてないのに……どうも涙が止まらない。駄目だ、こんなんじゃ()()()()

 夜遅く帰って来て疲れている叔父さんを困らせるし、何より俺が許せない。

 

 止まれ! 止まれ、とまれ……駄目だ。

 止まるどころか鼻水が出て来てさらに絵面が酷い事になる。ハンカチは持ってない。ティッシュもない。

 

 どうしよう、このままじゃ帰れない。

 この顔じゃ誰かに見られたら恥ずかしすぎる。祭りが終わるまで、人が居なくなるまで……暗い森の中でじっとしていなければいけないのだろうか。

 

「──な~に泣いてんの~?」

 

 そんな風に困っていると最悪なことに……誰かに見つかってしまった。俺と同じくらいの子供の声。からかいの感情が混ざっている声。

 誰だ、顔だけは見られたくない。慌てて背中を向け、うずくまる。

 

「……泣いて、ない」

 

「うっそだぁめちゃくちゃ泣いてるって~。ん……ぷはぁっ、迷子とか~? 探してきてあげよっか」

 

「泣いてない!」

 

 腕を組み顔を隠しソイツの視線からとにかく隠れる。何か飲んでいるような喉を鳴らす音。気楽な奴だと思った。

 知り合いではないはずだ。だが違うクラスの同学年という可能性もある。決して顔を見られてはいけない。

 早く何処かへに行けと、丸まった背中で意思を示した。

 

「あ、わかった~! お小遣い全部くじに使って外したとか……女の子に振られたとか?」

 

「違う! 関係ないからどっか行け!」 

 

 視界を塞いだからか、それとも焦りでおかしくなってきたのか少しばかり体がふわふわしてきた。

 犬の声も聞こえてくる。散歩がてら祭りに来た人でもいるのだろうか。

 

 それでもなお、後ろの奴は帰らない。飲食の音は依然と聞こえるし、愉快気な声も響く。

 本当に分からない奴だと思った。

 

「え~だって泣いてる子を一人には出来ないし~……あ、この焼き鳥美味しい! 君も食べる?」

 

 焼けた肉の匂い。腹が鳴る。

 恥ずかしい。

 

「いらない!」

 

 だが腹の音のせいでこいつは俺が腹をすかして泣いていると思ったのか次々と手持ちの食べ物を出してきた。

 わたあめ、焼きそば、イカ焼き、甘酒、枝豆。

 その度に拒否して腹の音を鳴らして……何度も繰り返されるうちに俺は疲れ果てた。

 

「……どうすればいなくなるんだよお前……」

 

 だからそう、聞いた。

 

「ん~そうだな……じゃあ──」

 

 

 

──起きろナガヒサ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……コルシアの声で覚醒する。

 

 硝子の様にどこか歪んでいて、砂の様に崩さり落ちた……夢、過去の記憶。

 ああそうだ、こんなことあったっけか。懐かしすぎて忘れていた。あの後から……ええと、どうしたんだっけか。

 結構大事な"()()"をした覚えがあるんだけどな。結局アイツの名前を聞かずに別れちゃってそのまま。神社にもう何度か行ってもアイツは現れなかった。

 

 借りたハンカチを返せてないんだよな。今も洗ってタンスの中にしまってある。

 クリーム色の下地にデフォルメしたスルメがプリントされているなんとも子供らしくないもの。

 

 

 ……そういやあの神社、結構御利益があるとか何かで家族でいつも参拝しに行ってたっけ。案外その神様が出てきて声をかけてきたとか……いやないない。悪魔はもうその辺うろちょろしてるけど神様なんて一度も見たことないしいるならもっとこう神様っぽいことしてほしいわ。

 例えばそう……

 

『な、なんと凄まじき爆炎……! こちらにまで熱が伝わってくるかと思えるほどの威力!

これが世界の力か!?』

 

「部長ー!!」

 

 試合開始五分未満で相手チームの必殺シュートに焼き殺されかけた時とかかなぁ。

 黒龍炎弾……サクリファイスハンドでも少し威力殺して止めることしかできないとか世界パネェ。必殺技の格の違い……いや地力が違いすぎるのか?

 久々に手が燃える感覚しましたよホント。エンゼルブライトみたいな白熱電球を触った時の熱ではなくヒリヒリと焼き焦がす炎の恐ろしさを味わいました。

 

 で、止められたのかって? ハハハ、俺じゃ100本やっても無理だよこんなの。これで本業はMFだってんだから泣きたいね。

 

──なかなかの辛味、その中に旨味……! あぁ、もう無くなる……かなしい

──龍の形さえしていれば炎を纏っていても食うのか貴様……

──クハハハハハ! よい、よかったぞ今の一撃は!! よぅし契約者、ドミネーションしようではないか!

 

 まぁ……フェルタンが食べてくれたからなんとかね。フェルタンが内側から黒龍を喰らう光景は絶対テレビで流せないなって思いましたまる。

 サクった右手と頭突き、左手で一撃加えてなんとか……生物系の技ってフェルタンが喰らいきるまでのタイムラグ中はせき止めてないといけないのがつらい。これが非生物ならそれすら使えないのが怖い。

 

──スパイシーなマグマがミルフィーユ状になって作り上げられた鱗……よく泳いで締まっている身……さいこう

 

 お腹減るようなこと言わないでフェルタン。

 後ドミネーションはする訳ないからな? いまだって火傷して骨折してる右手をフェルタンに治してもらっている最中なんだからな。

 いやほんと助かります。痛覚そろそろ死ぬんじゃないかなってぐらいお世話になっている。

 

「よ、よっしゃぁ! よくやったブラック、これで同点だ!」

 

「……そう、ネ……?」

 

 もう殆どなくなって視界を遮る効果ぐらいしかなくなった炎の壁(でも熱い)の中、黒月さんはこちらをじっと見ている。フェルタンが殆ど平らげたの勘づいたか?

 出来ればもう少しだけこの中で息整えたりしたかったんですけど……ダメ?

 ……しゃーない、出るか。手も治ったし。

 

──あ、ついでにお礼言っといて美味しかったから

 

 えぇ……シュート撃った相手から味の感想ってなんだよ。

 絶対変人の目で見られるじゃん。

 

──いやもう貴様は完全変人の類だしなんなら代表格だぞ

 

 コルシアハウス! ああそうだよ、この爆炎の中で無傷で出てきたら絶対また変なあだ名着くなこん畜生!

 せっかく今は悪魔のキーパーとかまだそれらしい異名なのに……インフェルノ部長とかつくんだよしってる。

 つらい……。

 

 …………。

 

 ……あれ、なんか焦げ臭いな。グローブかな……うん、焦げてるけどまだ大丈夫。流石元コルシアのハウス。臭いの元は……これじゃないな。

 でも腕の方から臭うんだよな……あれ、なんか燃えてる。

 

──包帯だな、お前の

 

 そうだねうん。白い包帯が燃えてる。

 ……で、包帯は俺の腕に巻き付いているわけだが。

 

 ──肉が焼けるにおいがする。

 

 あ、そっかぁあの夢の中で漂って来ていた匂いやけにリアルだなぁって思ったら自家製って訳か。

 ハハハ……。

 

 

 ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!"!"

 

 

 

 助けて!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冷え切った会場はお返しとばかりに放たれた黒龍の一撃で盛り上がりを見せた。

 そうか、これは一回戦目にして決勝戦並みの盛り上がりになるのだと誰もが予感したからだ。

 ゴジラの出現には驚いたが、相手にモスラが出て来て怪獣大決戦になると……。

 

「──?」

 

 その動きに最初に気が付いたのは黒月ただ一人。

 揺らめく炎の中、ボールがゴールを揺らさない違和感から注視していた我だけが気が付けた。

 

 まだキーパーは……織部は倒れていない。

 それどころか、ボールを足もとに落とし、何かしようとしていると。

 

「っ、全員さが──!」

 

──あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!

 

 その声は烏の汚い声で潰される。

 同時に、黒龍の炎が払われ……()()の織部がドリブルをして出てくるではないか。

 

 ボールは止められた。その光景を見て万人が理解した。

 

 ありえない、自分の力をよく理解していた我だからこそ、目の前の光景が理解できなかった。

 自慢のサクリファイス・ハンドは簡単に打ち破った、奴の手はグローブ、包帯の上から焼けていくのを確かに見た。

 包帯は未だに燃えている、織部から大きく両腕を振るうものだから火の粉が散る。元気だ。疲弊していない。

 

 ありえない。

 

 万が一、億が一に踏ん張って止めたとしてもダメージはあるはず。

 それなのに……どうして全力で走れる!?

 

『炎の渦からキーパー織部飛び出しました! シュートは決まっていません! 代之総中惜しくも得点ならず!』

 

 ああ違う、今はそんなことを考えている暇はない!

 いくら奴が元気でも我を抜けるわけがない、ここでボールを奪取すれば例えこいつがどれだけ守りが堅かろうとゴールはがら空き!

 

黒龍炎棘(ヘインヤッジ)!

 

 腰を落とし、片足で地面に弧を描く。

 芝生に火花が散り、赤く発熱し燃える。溢れ飛び散った溶岩が形を成し、黒龍の鱗となり外殻……炎を纏う棘を顕現させる。

 前方、走り寄ってくる織部に向け棘が突き刺し燃やす様に飛び出る。

 

 これもまた世界を相手するために磨かれた必殺技。例え止めきれなくても、一瞬体勢を崩した相手からボールを低姿勢のまま奪い取る。

 始動は短く、隙も無し。

 

「これで──」

 

 問題ない。そう言いかけて……ペナルティエリアから出てきた奴が構えを変えたのを見て、気が付く。

 右足を大きく振りかぶり、我よりも後ろを見据えている。

 

 これは……シュート、それもゴール付近から反対側へと届ける超ロングシュート! 

 

 我は……選択肢を間違えた。

 

「──()()()()()

 

 その言葉をつぶやいただけであった。

 黒龍の外殻の前に現れるは……とても美しい白龍と、何もかも飲み込んでしまうかのような黒を持つ蛇。これが、奴を悪魔のキーパー足らしめている存在だとどうしてか見た瞬間に解った。

 

「──()()()()()()()!」 

 

 耳を塞ぎたくなるほどの咆哮。白龍のそれは我が吹き飛ばされるのではないかと思うほどの風。辺りの炎すらかき消し、龍声が会場内に轟いた。

 ついで迫る黒蛇が煎餅のように棘をかみ砕き飲み干し横を通り過ぎて行く。

 

 技が完全に叩き潰され、低姿勢のまま動けないでいるとシュートを終えた奴がこちらを漸く見て言った。

 

「……言い遅れた」

 

 さっきまでとは違い、獲物を見るかのように見開かれた二つの眼が我の体の動きを一瞬、完全に止める。

 時間にして数秒。

 

 けれど、その瞬間に我の人生の全てを見透かされた気分になる。

 

「いい、シュートだった」

 

 我に対し、奴はただ……ごちそう様と告げてきた。

 我の、今の今まで積んできた鍛錬を奴は……喰らったのか?

 

「──!!」

 

 声にならない咆哮。上手く動かせない体は……シュートが決まったことを知らせる笛の音と共に、フィールドに叩きつけられた。





 超次元サッカーのルールはみんなしっているな?
 基本キーパーは控え入れて二人ぐらいしかいないから両方退場させるか戦意喪失させて、敵チームのエースも心を折るのが正攻法だぞ

 まあそのな……シリアス入れたらもう圧倒的展開の速さで全てぶっ壊すしかないかなって

~オリキャラ紹介~
・謎の子供A
 ~ を多用する
 甘酒を所持。からかい上手

 一体誰ルゴくんなんだ……
 それなりに重要人物

・織部 長久 GK 1番
 かちかち山の狸さん
 
~オリ必殺技~
・黒龍棘 DF技
 シュートブロック可能、短い時間で発動できて仕事を確実にする有能技。
 パリパリおせんべいなのが悪い。

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