かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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 いわゆるシリアス回
書類だし忘れたりインフルなったり色々あったけれど私は元気だったり元気じゃなかったりしています。


部長、呪われた男だってよ編
勝利の代償を知る日


──一回戦突破おめでとうございます監督! ずばり勝利の秘訣は!

──生徒から監督を頼まれたというのは本当なんですか!?

──今日の試合で一番気にしたことは……

 

「……えー、えーと」

 

 試合は僕たちの勝利で終わった。

 前半終了時点で向こうの監督が続行不可能と判断。フィールド上で疲れ果て、ベンチに戻るのさえ天を見上げていた代之総中のメンバーを気遣った結果だろうか。

 ただ一人、走り続けていた黒月くんのみが抗議していたけど……やがて無駄だと思ったのか、そのまま控室に戻ってしまった。

 

監督、これを……

 

「あ、ありがと帳塚君。えー……今回はお互いのトッププレイヤーのぶつかり合い。確実に勝つために、こちらの持ち味であるスタミナを重視して……?」

 

 ワタリからカンペを渡され凌いでいる僕らの監督を見ながらふと思う。

 今回は、リーダーと黒月くんのタイマンだったんじゃないかって……。本気になった彼の相手は本当に恐ろしかった。

 

 いくらボールを取ろうとしても流動する水の如く動く足とそれに付随し離れない球さばき。

 なにより必殺技の完成度……まさか僕のエンゼルブラスター改が防がれるとは思っていなかった。ドリブル技なんてまず出させることすら叶わなかった。

 

 結局僕たちがボールに触れたのは、代之総中の他の子がパスミスしたりしたのをソニックくんとかが拾ってつないでくれた時だけ。

 それもすぐに黒月くんに取られて、シュートチャンスはほとんどなかった。

 

 それでもなんとか彼の動きに慣れて来て、これから……そう思っていたけれど。

 リーダーのサクリファイス・ハンドがなければ負けていたのは確実だろう。守りどころか攻撃まで任せてしまい、3点目のロアフェル・ドミネーションに加わるのもまた失敗した。どうも近づくと力が抜けていく感覚がして上手く飛べなくなってしまうのだ。

 始めた頃からはかなり強くなったと思っていたけど……とんだお笑い種だ。

 

「……僕たちはまだまだ弱い。黒き龍に喰らい付くことさえもままならない……こんなんじゃリーダーの期待に応えられない」

 

「……だな、こりゃ帰ったらメニューを増やさなきゃだ!」

 

「俺も賛成だ……ボスは反対すっかもだが」

 

 僕のつぶやきにジミーとグラさんが反応する。

 二人も自信満々でこの試合に望んでいたからこそ、何もできなかったという無力感を感じているのだろう。

 

「……」

 

「か、カガどんまい……新技出せるチャンスは次あるって!」

 

 言葉を出さず、俯いているカガを励ますウリ坊が少し離れた場所に見える。

 速さでは上回っていたのにテクニックの差で翻弄されたソニックもその近くで苛立っていて……トールも同じ様だ。

 このままではいけない。みんなそう思い、悩み次を考えている。

 

 ……強くなろう。

 

 けど、どうすればいいだろうか。

 こういう時リーダーなら……うーん、「持ち味を伸ばせ……短所は最後だ」って言うかな? 多分言うかも。

 なら僕の長所……やっぱり必殺シュートだろうか。けどなかなか5枚目の翼を出すことはできないし、開発中の失楽園も今のままじゃリーダーのシュートに近づけないし。

 せめてもうちょっとリーダーがアレを撃ってくれたら練習できるかな……でもなんでかあまり練習中に必殺技を極力使おうとしないんだよね。

 

 ……あれ、そういえばリーダーはどこだろう?

 

「ワタリ……は監督の補佐でつきっきりか。ジミーくん、リーダーがどこ行ったか知らないかい?」

 

「んー? ……確か包帯が取れたから巻きなおしたいとか言ってた気がすっけど」

 

「更衣室じゃあねーか? バスの時間はまだ先だが着替えない理由もないし」

 

 そうか更衣室。軽くお礼を言って僕もそちらへ向かう。

 確かに試合自体はもう終わってるし、さっさと着替えるのもアリだよね。

 包帯もいつの間にか無くなっていたし、闇を封じる必要がなくなったとしてもしておきたいんだろう。

 

 ……いや、本当にそうなのかな。なんだか不自然の様な気がする。

 リーダーならこう言った時は大抵、落ち込んでいるメンバーに声を掛けたりしてくるイメージがあるんだけど……。

 

 それだけ疲れていたのかな……それともあまりに役に立たなさ過ぎて怒ってたりは……しないよね?

 あぁ、不安だ。彼に限ってそんなことはないだろうけど無力感が嫌な妄想をさせる。

 

「あ、なら俺も! そろそろ着替えたかったしな」

 

 ジミーが後ろからついてくる。

 早く会おう、会って何か言ってもらうなりなんなりしないと不安で不安で仕方がない。

 更衣室に向かう足が少し、早まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あぁねむ。

 試合終わったしもう寝ていい? まじで今なら立ったまま眠れそうなんですけど。

 

──少なくともこれから、ホテルに戻り反省会して明日の朝には奈良に戻る準備して更に部員たちが寝静まったのを確認し、なおかつ部屋に侵入してる偽装妹をなんとかしてからだぞ貴様が眠れるのは。眠れるといいなまず

──たらふく、ねむねむ

──クハハ、妾も大満足。次はパンチングするときにドミネーションしてみるか契約者よ。なんなら正式に契約すればもう少し力を貸してやっても──

 

 ごめん、聞いたのはなんだけどあんま喋んないで……まじねむい。

 どのくらいかって言うとご飯一杯食べて日向ぼっこしてる時の百倍くらい眠い。なんならちょくちょく意識というか記憶が飛ぶ。俺どうやって更衣室まで歩いてきたっけ。

 なんで……あぁサクリファイス・ハンドのせいじゃなく、受け止め方間違えて折れた腕隠すため包帯取りに来たんだった。

 痛いなぁ……痛みが走るたびに意識が浮上するけどすぐ沈む。そのうち見た目変わってくるからさっさと巻いて隠さんと。

 

──それ本当に眠気か? 死にかけてるとかじゃないよな? 碌な契約もなしに死なせんからなナガヒサ?

 

 だいじょぶだいじょぶ。多分精神的疲労と治してない肉体の疲労とかが限界超えてきているだけだから……多分。

 こんなこと続けてると寿命縮むかもなぁ。寿命いくつぐらいあるんだろ……あれかな、そのうち試合中に寿命尽きて死んだりしそうだな俺。

 ……黒い包帯ないなやっぱ。通販で買うとして取り敢えず白い奴巻いておくか。

 

──よく食べてよく生きるのだ~

──いやサッカーで死人は出ないだろ貴様

 

 それもそうか……そうかな? この超次元具合なら出てもおかしくない気がする。

 なんならグラサンの今回出せなかった必殺技とか……ああいやデッド・スナイパーの方だったな。もう一個の方は重火器感すっごいけど当たっても黒焦げアフロで済みそう。

 ええとつまり俺がこの先生きのこるためにはギャグマンガの人間になれば……? スポーツ漫画だとあれだな、怪我とか病気とかで苦しむキャラとか多いよな。

 

「(スポーツ漫画の)人間を辞めれば……」

──思考がずれてるぞ、仮眠だけでも取るか?

 

 サンキューコルシア。

 そうだそうだ人間やめてもな。悪魔になったところで元が俺じゃ弱そうだ。……そういう問題じゃないな?

 本当に眠気が酷い。コルシアの言う通り……5分、いや10分だけ眠ってもいいかな。

 

「──ススメはしないネ」

 

 ……え? いやいや寝ていいでしょ。もうこれは眠らんと正直帰りのバスでガチ眠しちゃうもん。

 というか誰ですかこの私の悲惨で至福なお昼寝タイムを邪魔する人……は。

 そうやって振り返れば、先ほどまでもう帰ってくれとお願いしていた存在が腕を組んで立っていた。

 

「……黒月」

 

「名は覚えたか、織部」

 

──おーエビチリマスター

 

 えー……いや、なんで?

 なんで黒月さんいるんですか? ここ習合の更衣室なんですけど。というか私服? が黒一色なのはワタリとセンスが似通ってるからやめた方がいいぞ。シルバーペンダントとかこっそり集めてたりしない?

 ええと……駄目だ混乱と眠気で頭が回らん。と、とにかくそれっぽく振舞うんだ俺。頑張れ長久。ここを耐えなきゃ試合中泣かずに耐えた意味がないぞ。

 

「なに、一得点も出来なかった負け犬として……一つ、助言しにきただけネ。そう警戒するナ」

 

「負け犬……? いや、お前のシュートは凄まじか──」

 

 なにが負け犬じゃい! 散々人の骨と肌を焼いてくれよってからに、火葬をこの場で済ませる粋な計らいか? あぁん!?

 と言いかけた時、黒月さんがこっちに向かって迫って来ているのに気が付いた。しかも手を伸ばしてこっちの腕を……思わず退くが後ろはロッカー。逃げ場がない。

 そのまま壁に押し付けられ……壁ドンだな。俺の人生で壁ドンされるなんて思ってもいなかった。仮に俺が乙女だとしたらガチ恋する距離だぞお前。

 

 なんて冗談も虚しく、そのまま腕を掴まれる。

 激痛が走る。声も出ない、骨と骨がずれて、神経をわしづかみにされている。痛い、やめろ。やめてくださいお願いします。

 

「……なにをする」

 

「……折れた腕握られて冷や汗一つだけ、感覚も死んでるのカお前?」

 

 バリバリ生きてますね。痛すぎるのと体が疲れきってるから碌に反応してないだけですけど!? いやもう離し……あれ何でこの人に俺の骨折バレてんの?

 やばくない?

 お医者さん以外の目利きの人初めてすぎて固まるんですけど。

 

「確実に破った技で何で止められるのかと思ってたが……骨を折ってでもとめてるなんてネ。流石に驚いた。(ウォ)の見てきた人間の中でもそこまで命を捨てている奴は初めてだヨ」

 

──これは……サクリファイスが我とナガヒサを犠牲にしてるワザとはバレてはいないか。よかったな、単に必殺技破られた後に根性で骨折して止めてると思われているらしい

 

 よかねーよ!?

 あと黒月さんは俺を自暴自棄人間扱いしないでくださいます!? こう見えて夢はお嫁さんとかたくさんの家族に囲われて老衰することだからな!

 まだ家族のかの字も……いや妹はいるか。いるから、他の家族募集状態だからな!

 

「それであの蛇……悪魔との契約内容は身体の回復か? ……炎の中、ひん曲がってた腕が戻るのを見た」

 

 ゲー!? 腕治すところまで見られてたよ!!? どうやって……いや高く跳ぶもんなぁ君。高所からなら炎の壁に囲まれてる状態でもなんとか見えるかぁ。納得。

 だから自分の所の監督さんに抗議してたんだ……そりゃ腕折りまくってる奴ならその内倒れそうだもんな。分かるわ。

 

「……根負けを狙ったか」

 

「その通り……ま、そのまえにみな倒れてたから確かにウチの監督の気持ちも分かるけどネ」

 

 それは本当にすみません。なんというか黒月さんに向けて繰り出された必殺技の余波でやられてましたもんね、

 メアのエンゼルブラスターでも何人か吹っ飛んでましたし……それを黒龍棘で防がれた時は俺の心も吹っ飛びそうでしたよ。怪我してるわけじゃないから許して……一人目のゴールキーパーさんは本当に申し訳ない。

 

 とにかく悪魔の力に頼ってることバレたらやばい、吹聴されたら社会的に終わる。

 

「使えるものは何でも使う……止められるのであれば全力を尽くす。それは称賛に値する」

 

 ……あれ、意外と好反応? ドンびいてるわけじゃない? よかった~。

 そう思ったのもつかの間、「けど」と一呼吸置いて腕から手を放す。

 更に顔と顔の距離が狭まる。二つの眼が俺の一挙一動を逃さんと動く。トロアより迫力がある。

 

──おいこら

 

「その契約の代償はなんダ? 人間を止めるとか言ってたが……軽いものじゃないのは確実か。

そんなことをしてまで()()は「中学サッカー日本一」になりたいのか? 負けたら……どうなるんだお前は」

 

「……」

 

「そうやって何ともないように振舞える気力は本当に褒めてやる。……だが確実にお前は今弱っている、触れて分かった。

 

──サッカーで死にたいのか?」

 

 それだけ言って、答えを待つように口を閉じる。

 そこにあるのは……ただ純粋な疑問か。こいつは何を考えているんだ? 多分そんな感情だ。

 いや俺も目の前で骨折りながらプレイする奴いたら絶対精神疑うからその気持ちわかる。

 

 わかる、けど……。

 

()()は、日本一になる。そう決めた。決めたことはやり通す」

 

 逃げるわけにはいかないんだよホント今更……。気が付いてくれたのはありがたいんだけど。

 気が付くならもっと早く……帝国戦より前あたりに来て欲しかった。少しは軌道修正できたかもしんないし。

 

「気遣い、感謝する。いつかまた会おう……俺は死なない」

 

 強引に会話を打ち切り、黒月さんにどいてもらって更衣室を出ようとする。

 これ以上話してたら身体回復のこと以外もバレるかもしれん。いやマジで……かなり鋭い人な気がする。

 

「……またすぐに会うことになるだろうネ、我は負けず嫌いだってこと……その無茶に引導を渡してやるから覚悟してるとよい」

 

 あの、その不吉な言葉を後ろから掛けるのやめてもらっていいですか?

 再戦フラグとか嫌な予感しかしないんですよ……二度とやりたくないです。

 なんというか、決勝戦とかの相手チームにこっそり紛れてたりする気がし始めたぞ……うん。

 

 さーて!! さっさとみんなの元に戻らないと心配されてるかなー!!

 特にメアとかゴールキーパー吹き飛ばしたこと気にしてたら今後苦しいだろうからフォローしないとな!

 あいつが憂鬱な顔すると心臓に悪いからうん。

 

 はーいドアガチャ!

 

「──リーダー」

 

「部長……今のマジ?」

 

 うーん何でか知んないけどジミーとメアの顔が見えるな―! 眠すぎて幻覚まで見えるようになったかな?

 うん、違うな。メアがすぐに俺の腕を確かめるように掴んできたもん。激痛走るけど我慢我慢。一瞬顔歪んだかな? ははっ。

 やばいね、折れてる場所触られたから一瞬で察されたね。すっごい眼が小さくなってるもん。人間って驚くときあそこまで瞳孔小っちゃくなるんだね。

 

「……メア」

 

「……ごめん、リーダー……全然分かってなくて……ごめん」

 

 ああやばいです、とうとうバレました。

 しかも想像できる中でかなり最悪なパターンのバレ方です。

 

「と、とりあえず病院行こうぜ部長……」

 

 泣かないでメア……軽口叩いてジミー……えっと、そのえーと……。

 

 

 

 助けて!!

 

 

 




見栄っ張りの罪

勘違いものなら一度は勘違いを解かねーとなぁ!?(なお勘違いした要素はまだまだある模様)



~オリキャラ紹介~

・将棋部の顧問 監督
 拉致された。今回の話の中で一番の被害者。
 しばらくマスコミ対応に追われるだろう。南無三。
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