かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
忙しい季節が過ぎた後のケーキってなんだか手が込んでて美味しくなっているんじゃないか?って思ったんですよ。
ははーんこれは買いに行くしかあるまいな?って。あのしっとり濃厚なチーズケーキを買いに行けと神が言っているのだろうと。
年末で行きつけのケーキ屋さん休みでした。
そこは奈良。ようやく戻ってこれた故郷の空気……病院。
第二の故郷って言っても過言じゃないよね。ほら故郷って心休まって眠ったりご飯食べたりする場所でしょ。
病院食とかも美味しいよね、うす味だけど。いや……なんというかここに来るまでに逆兵糧攻めされたせいで味覚おかしくなってる気がする。
「──はい、骨に異常ないね……それで? 結局隠してたこと無理してサッカーしてたのみんなにバレちゃったの?」
「……いえ、二人と交渉して黙っていてもらうことに」
黙っていてもらう条件は二つ、コルシアと相談しながらなんとか交渉した。
1.俺は二度と骨折しながらサッカーをしない事。痛かったら手を上げてくださいねーという歯科方式だ。守れる気がしない。
2.いくら治せるからと言ったって心は傷つくでしょう!? ということでしばらく練習参加禁止。そして全国大会二回戦……
この二つを守ることで、二人に何とか納得してもらい「部長に頼り切りだと危ないので次の試合は完全部長抜きでやる」という方針だとジミーから発表してもらった。
「悪魔の力で身体再生をしてる」こと「そのために代償……生命エネルギーを支払っている」という事実は黙秘されたという訳だ……ふはは(ソニック風)。
はい、泣き崩れるメアを何とか宥め、ジミーの「副部長」という立場を最大限に利用させていただきました……ゲスだなぁ俺。
──我を代償にしてることぐらい話しても問題はなかったよなよく考えたら
──フェルタンはナガヒサに悪さしてないよー
いやそうなんですけどね……流石にサクリファイス・ハンドの性質「手の骨と精神ぶっ壊すことでボールを止める」という事がバレたら禁断の技にされますからね。万が一の為にサクリファイスだけは死守せんといかん。
今のところ二人の認識は「サクリファイスでも止めきれないから悪魔の力無理やり引き出して骨折って、蛇の悪魔との契約で生命エネルギー支払って治してる」って感じだからね。
つまりサクリファイスで悠々止めるのは問題ないんだよ。
──その度に手の骨と我が犠牲になってるんだが?
うん。
そしてフェルタンは悪者扱い解けずにごめんね……「フェルタンがいなければ」って力説してみたんだがどうにも二人には「身体回復に依存しつつある」様に見えたらしくてさ……。
再生の代償は何!? って散々聞かれたからさ……皆の必殺技とご飯ですって言える雰囲気じゃなくて少し言い方変えたら寿命支払ってるのかと誤解されかけたよ。何とか方向修正して生命エネルギー支払ってるって事になったけど。何かそっちの方が体に悪そうだな? って思ったのは後の祭り。
──妾もただ力を貸してやってるだけで、足がおかしくなるのは貴様の努力というか資質不足じゃろ
あぁん!!?
一発目で火を消す時にそそのかされて使ったのは自分の意志だけど、三点目の時はトロアが勝手に人の体操ってましたよねぇ!?
あれなんか急に体に力が入らなくなったな、お迎えかな? って焦ったらドミネーションだからな! 正直こっちはバラしてもいいかなって思ったけどそこから他もバレると思って話さなかっただけだからな!
「そっか……それでも秘密を共有する同年代の子が出来たのはいい事だよ。辛いときはしっかり話すんだよ?」
「……善処します」
「……ははっ、頑固だなぁ君はほんと」
多分二度と人前で再生できない。ただ煙を巻き上げるだけの技とか開発しようかな。足で地面擦って砂煙とかだしてさ……。
……五里霧中って技があったな。確か地区予選で雷門と戦ってたところが使ってた。三人でそんなことして視界塞ぐ感じで。後で真似してみようかな。
「さて、診断書は用意しておくから。今日はゆっくり休むんだよ? あと、君が欲しいって言ってた包帯も痛み止めと合わせて渡すから」
「……ありがとうございます」
保険適用でお安く黒包帯ゲット……。後欲しいって言ってないのに痛み止めつけてくれるとかほんと神だよこのお医者さん。
メタボじゃなくてかつ俺が女の子なら惚れてるかもしれない。
……さて、診察室を出て待合室へ……。
──通してください、私の大切な兄さんが病気かもしれないんです。
──安心してください、ただの検査ですから!
──ならばなおさら妹である私を通さないのはなぜですか
──相変わらずアイツはアホだな
暴れてるエマを宥めて一緒に帰るだけだな。
……追跡をかいくぐったというのにもうこの病院にたどり着いたのか。なんでだろう。まさか虱潰しに病院探し回ったとかじゃないよね。
ほんと暴れ……いや一般人に対して認識阻害の魔術とか使わない辺り抑制してるんだろうけど。
「……女性には効きが悪いですがここは魅了──兄さん!」
「エマ……部活はどうした?」
いや間一髪だっただけだこれ。なんか右手の人差し指に怪しい光集まってたよ!?
マジで止めて……なんかしわ寄せとか来そうだし。
というかまだ部活の時間の筈なのになんでここに……。
「……兄さんがいない部活に何故参加する意味があるのですか?」
真顔で返されましたね。いやーそっかぁ、確かに部活出れなくて寂しいとは思ってたけどなぁうーん喜ぶべきか否か。
いや喜んじゃだめだよ。
──天秤が喜ぶ方に傾いてる時点でおかしいからな、叱れ叱れ
そうだなコルシア。ここは部長としてしっかり指示しないと。
「……いやエマ、俺がいない間の部活を支えて欲しい」
マネージャーとしての能力高いエマは本当に必要なんだ。
メアファンの人はちょくちょく妄想の世界に入り込むし、トールファンの子は小声で「大腿筋の山脈……!」とか「仕上がりのその先の仕上がり!」とか鼻血出しつつ評論してるからね。むしろこの二人の方こそ病院行った方がいいんじゃないかな。
「……兄さんがいないと部活も楽しくありません。だからどうか……、私が
おおぅ上目遣いで言われても揺らぐほどちょろくないんだぜ……?
あれ、なんか一瞬許してもいいような気がしたんだが。まだ喜び派の息の根が残ってるのか?
──エマの奴今こっそり魅了の目にならんかったかえ?
──だねー、まぁコルちゃんが防いだっぽいけど
──……油断も隙も無いなコイツ
え、なんか悪魔さん達今なんか攻防あったの?
魅了されかけたの俺? 怖い。あ、されかけたっぽい。影響受けてない俺見て一瞬エマ動揺したな。
サンキューコルシア、サンコル。
次何かされる前にさっさと言いくるめなきゃやばいかもしれん。
エマが喜びそうな言葉を考えよう。
「……エマ、頼む。お前しかいないんだ……アイツらを支えてやってくれ」
「兄さん……でも──」
「──次の休みに、エマの好きなところへ行こう……
「学校戻ります!!」
次の瞬間にはもうエマは背を向け病院から去っていった。あんな足速かったっけ。
……ふっ、チョロいな。
──今お前は身投げと同然の事したという自覚はあるのか?
なーに流石のエマだってデートならそれっぽい場所選ぶし。「妹」である以上きっと可愛いところを選ぶさ。
……多分、きっと、なんとなく。
やっばいすっごい不安になってきた。気が付いたらエマの親御さんとかに挨拶する羽目とかにならないよね。
……いや悪魔って親いるのか?
──そっちか……そっちなのか?
え、どっちなの?
──下手したらホテル連れてかれるぞ
ホテル? 宿泊とかは確かに困るけど……なんで?
──えっ
えっ?
……えっ?
◇
織部がスタメンどころか補欠にすら入らない。更には練習もしばらく参加しない。
その発表を受け、ジミーとメアの二人以外の部員はみんな一様に驚いていた。あり得ない、この俺自身も奴が試合に出ないなんて想像が出来なかった。
……それほどに奴の強さ、雰囲気が強烈だったからだろうか?
「という事で二号、次の狩火庵中との試合ではお前がゴールキーパーだ!」
「う、うん分かった」
「頑張れよ……!」
ビシっと指をさされ、任命された鏡介はマスクを着けたまま両こぶしを握り締める。
それはやってやるという意気込みではなく……緊張から。
……織部の代わりとして。その意識が弟の心の重しになった気がした。
弟の自信に満ち溢れていた立ち姿は既に消えて久しく、今はこの部の中でどこか弱者として振舞う事も増えていた。
「きょ──弟よ」
思い出すのは、体調を崩した弟の横。テレビ越しに見たあの黒龍のシュート。圧倒的威力と共に、映像だというのになぜか熱風を感じ取ったアレ。
……あれを止めるのは鏡介では到底無理だっただろう。当然、それは弟も思っていたはずだ。
「……何? 兄さん」
その織部の代わりなんて……そう思っているに違いない。
このままではいけない。思わず声を掛けた。
「……織部の代わりになる必要はない。お前にはお前の守り方がある……それを忘れるな」
「そうだな……安心しな! 前回の試合じゃ役立たずだったが、俺達も全力でゴールを守るからよ!」
俺の言葉に追随しグラさんが肩を組んでくる。
……習合のこいつらが仲間というのは、改めて心強いと感じた。少なくとも世界級の選手が紛れ込んでいる様なイレギュラーが起きない限り、十全に戦えるだろう。
一発、敵のシュートをとめさえすれば弟の緊張も解きほぐれるだろう。
「それでは早速次の試合のための対策を立てていきましょう。狩火庵中は……」
話もよくなったと判断したのか、部長がいなくなりジミーの補佐としてついたワタリが指揮を執る。
その手には資料と思わしき紙束……けれど、代之総中の時の物と比べるとなぜか薄い気がした。
「四国ブロックより参戦した瀬戸内海に面する中高一貫校。なんでもカリキュラムの中には帆船を操ったりするのもあり正しく海の男たちって感じですね。
一回戦では大巨人中を相手に前半は1-0で普通に進めておりましたが……後半が終わる頃には6-0と大差をつけ勝利しました」
説明のため紙の資料が配られ全員にいきわたる。学校の成り立ちやこれまでの戦歴。チームメンバーの名前など……手当たり次第に手に入った情報を入れているといった感想だ。
……試合の動画とかはないのか? 写真とかでもいいんだが。
「試合を見たものの感想では不死身の狩火庵などと称されており……どうやら無尽蔵のスタミナ勝負を仕掛けてくるようです。スタミナに関してはこちらの領分ではありますので少し様子見をしつつ、対策としてはパス回し等でぶつかり合いを避けるべきでしょう。
もしくはソニックさんなどの速さで相手を引き離すというのも手ですね」
「質問だワタリ、要注意選手とかはいんのか?」
「あ、グラさんそれ俺も気になってましたッス!」
もう読み終えたのか、グラさんが手を上げ質問をする。
守りの要である奴からしたら当然気になる所だろう。
……それを受け、ワタリは少し困った顔をした。一体なんだ?
「えー……一人、帝国学園の鬼道さんに比べられる程のゲームメイカー、船長と呼ばれる選手がいました」
……そうか、ゲームメイカーか。
ああいった手合いがいるといつの間にか相手の流れに飲まれてしまう。こちらも策を練り思い通りにならないようにしないといけないか。
……過去形?
「ですが……一回戦の数日前から行方不明なんです。チームメンバーの誰も行方を知らないそうで……恐らく出てこないかと」
「なんだと? それはいったい──」
「──みなさんすみません遅れました。織部エマがたった今兄さんから頼まれ対戦校の詳細なデータをまとめて持ってきたのでさっさと見て下さい私は兄さんとこの夏海に行くんですそのまま波打ち際で水をかけあって転ぶフリして兄さんの水着を」
詳しく聞き出そうとする俺を突き飛ばし、突如としてエマがやってきた。
そのままプロジェクターを設置、パソコンをつないで上映会の準備を始める。
……ほんと自由人だなコイツ、奴の妹とは思えんほど傍若無人……いや奴の妹だからこそ周りに気遣う力を養う必要がないのか?
まあいい。情報が不足していたのは……いつも情報を持ってくる織部とエマがいなかったからか。
とにかく作戦を練ろう……ポジションが空いていない俺はスタートメンバーになるためには次の試合での有用さをアピールする必要がある。
弟だけに苦しい気持ちを味合わせてる気分はない……弟が戦場に立つというなら、俺も立って支える。
……見ていろ織部、貴様抜きでも勝てるという事を教えてやる。
「それでは……狩火庵中の不死身と言われるサッカーがこちらです……無人島……遭難……アダムとイブ……ふふふふふふ」
……逃げろ織部、戻ってこない方がいい気がする。
~オリキャラ紹介~
・メタボの医者 医者
織部がトールの時から骨を折りつつサッカーを続けていることを知っている唯一の人間。
けど流石に格好つけの為に無理してることまでは気が付いてない。気がつけなんて無理じゃ
腕は普通の次元より上、超次元レベルではない
・エマ
本性現した……元からか
魅了の力は精神判定で失敗したり成功したりする。コルシアみたいなやつがいると防げる。
万能ではないけどチート。
・二号
えっ、悪魔のキーパーの代わりやるんですか!?
とりあえず必殺技進化かつ重力5倍からはじめてみよっか(処刑)
パワーレベリングよりひどいものが待っている