かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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ふんふーん日刊ランキングで面白いの出てないかなー

>>21位

……('Д')


たくさんの感想、評価、誤字報告誠にありがとうございます!!

今回からチームメンバーのあだ名が大量に登場しますが、覚える必要はない気がしてきた((


河川敷で殺される日

 自分は普通の人間とは違う。選ばれた、才能を持った人間なんだ。

 こんな思いを抱き始めたのいつ頃だろうか。

 

 そして、その思いが粉々に砕かれた時はいつだっただろうか。

 

 中学受験に失敗した時か、

 母の言うことに従っていたら父に奇異の目で見られた時か、

 いつの間にか友達が一人もいなくなっていて、自然と涙がこぼれた時か。

 

 それとも、いくら祈りをささげても"奇跡"を授からず、救いもなく、神も天使もいないと知った時だろうか。

 それを知った後でも、神に祈ることから抜け出せない自分を見つけてしまった時か。

 

 母がいつの間にか姿を消して、父が雇った家政婦さんからようやく"普通"を教えてもらって、つまるところ、自分は年の割には少し早熟で、ちょっとした勘違いをしていただけだった。

 それが母の教育方針と合わさり、増長してしまっていただけであったと気が付いた時か。

 

 その時にはもう手遅れで、僕はもう普通に戻れなくて、かと言って突き抜けることも出来なくて、どんな場所に行っても浮く存在となってしまっていた。最後に"友達"と遊んだのは果たしていつだったか……。

 

 そんな僕でも、必要だと言ってくれる人はいた。

 綺麗だとか、かっこいいって言ってくれて近寄ってきてくれる人もいた。

 けれど……みんな、僕を知れば知るほど辟易してしまうようだ。直ぐにいなくなる。

 結局、遠巻きに眺められるだけの存在。そんなの、外面だけを写した人形を置いといても変わらないじゃないか。

 

「サッカーしようぜ」

 

 ほら、またこうして誘蛾灯に引き寄せられてしまった憐れな人がやってきた。

 いいよ、やろうよサッカー。体を動かすことは好きだからね。へぇ救世主、僕が君の? そりゃうれしいな。

 

 言うべきことを一つ飲み込んで、僕は頷いた。

 

 せいぜい君が僕の普遍さに気が付いて、離れてしまう時まで付き合うよ。

 だから……それまでは仲良くしてほしいんだ、リーダー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 雲一つの無い天気、風は弱くも柔らかく、火照った体を適度に冷やしてくれる。

 お散歩するには絶好のコンディションだろうか。

 

 

 さて突然だが、必殺技の練習に必要な物とは何だろうか。

 

 本人の熱意、発想力、それとも地道な練習か。

 否、それら全てが必要であり、何よりもう一つ大事なものがある。

 

 練習スペースである。

 

「いやー、河川敷ってちょっと遠いんスね。なんで部長がこっちに来ようとしてないかわかりましたよ」

 

「まっ、それでもたったの10kmぐらいだがな。あんまり学校から遠ざかると面倒も出そうってこったろ。なんせセンコーは来てくれねぇしな」

 

 我ら習合サッカー部はその日、学校から離れた位置にある河川敷に来ていた。もちろん背中に重り入りカバンを背負いながらのドリブルでである。

 

 もはや彼らにとってその行為は日常生活となんら変わりないほどに溶け込んでおり、最初によくあった誰か一人のドリブル失敗による休憩時間無駄な時間も発生しないようになっていた。

 

 ちなみにこの時点で俺はこれから起こることに絶望しており、誰にも聞こえないような小さな声で「河川敷ってこんな綺麗だったんだな」と呟いている。

 

 気分は死刑囚だった。というか死刑囚だろもうこれ。

 

 幸い(ふこう)なことに、河川敷のグラウンドは今の所使用している人が居ない。どっかのおじいさんの忘れ物だろうか、ゲートボールのクラブが置いてあるぐらいで空っぽだ。

 昔に誰かが設置したのか、ご丁寧にサッカーゴールまで置いてある。やろうとすれば試合だって出来てしまいそうだ。

 

 最悪雑草だらけで、整備しなくては使い物にならないような状態だったらなぁという願望は崩れ去った。

 

「で、どうすんだボス。 もう始めちまってもいのか? なんか指示あんなら聞いておきてぇんだが」

 

 最期に眺める空がこれは悪くはないなと上を見上げていた時、グラさん(サングラスをいつもかけているからつけた)が話しかけてきた。

 というかもうすぐ日が沈み始めるけど視界的に大丈夫なんだろうか。

 

 そうやって意見を聞いてくれるのありがたいんだけど、結構今疲れているから何にも考えられないんだよなぁ。

 なんか最近背中の重りが更に重くなっている様な気がするし、本当に限界が近いのかもしれない。

 

「……指示、か?」

 

「ああ、こっちも色々と考えてはみたんだが……ボスとジミー以外はズブの素人だしな。方向性とか、伸ばすべきところとか……」

 

「つまりはアドバイスってことッスよ、ね? グラさん!」

 

「まぁ、そうだなバング」

 

 若干頬を赤くし、恥ずかし気に顔を背けたグラさん。可愛いかよ。頭金髪に染めてて完全にヤーさんな風貌してるのにギャップ萌え狙いか?

 需要はないからしなくていいよ。

 

 しかし、アドバイス……かぁ。確かグラさんはバングと一緒に練習するんだっけか。DFとMFだし、普通に攻め役と防衛役に分かれてのボールの取り合いになるんだろう。

 

 何か言う事って言われても、頑張れとしか言えないんだよなぁ……。俺も一応部長らしくあるために資料集めたりして勉強してるけど、ほんの一か月前はただのエンジョイ勢だったんだぞ。

 とはいっても、「何も言う事はない」って答えるのも雑だしな。適当に誤魔化すか。

 

「……じゃあまず、グラさん」

 

「おぅ」

 

 グラさんのいい所は……相手に対する恐怖心、違う。相手の力量を何となくだが把握できるところ(何故か俺には効かない)にある。つまりウリ坊やトール──何も浮かばなかったから下の名前からとった。ガタイがでかくて短気な奴──みたいに猪突猛進でツッコむ、といった事はしない。

 

 カガ──俺以上に無口な奴。粘りあるディフェンスが得意。苗字と一緒だから本人は気が付いてないが、カミツキガメから用いた──のようにひた向きという訳でもない。

 相手の隙を狙って一回の動きでボールを奪う、という技巧派な印象だ。

 

 また、DFの統括役でもあり三人に指示だしをしてくれる。司令塔みたいなやつだ。

 あれ、それって本来GKである俺の役目じゃね? って思ったのは秘密だ。仕事は少ない方がいい。

 

 じゃあ何を鍛えるべきかと言ったらやっぱり、

 

「……一撃で仕留めろ」

 

「──っ、了解!」

 

「いやなんか怖いんですけどっ!? 仕留めるってボールをッスよね?!!」

 

 俺の指示に対し、グラさんは口角を吊り上げた。こわい。

 

「……バング」

 

「えっはい!」

 

 次はバングか。持久力がチームの中では一番あるし、向いてるのは……走り回ることか?

 こう、ボールを持っている奴をひたすら追う……なんかMFっぽくないな。かと言って他に武器があるのかと言ったら特にないし……。

 

「……頑張れ」

 

「雑ぅっ!! なんかもっとこう、無いんですか!? 泣きますよ俺?!」

 

「よーしバング、行こうぜ。 色々準備してきたから退屈はさせねぇよ」

 

「待って、グラさんなんか懐から物騒なもん覗かせてるんッスけど明らかにサッカーに使いませんよねそれ!? ねぇ、誰か!! お巡りさん!!」

 

 そのまま、彼はグラさんに引きずられ連れていかれてしまった。

 …………がんばれ、バング。後多分グラさんが持ってるのは水鉄砲だから、死にはしないよ。多分こう、隙を見せたらその瞬間狙撃する気なんだよ。

 

 ……サッカーで狙撃?? 俺は何を言ってるんだ?

 

 その後は、まぁ各自それっぽい事を言って誤魔化しておいた。ウリ坊とトールは何かを言う前に二人でぶつかり稽古を始めていた。

 すごいな、なんか金属がぶつかり合ってるような音がするんだけど。あいつら実はサイボーグだったりしないかな。

 というか何で身長が三倍近く違うのに成立してんだろあれ。え、足元に来るからやりづらい? なるほど……いやそういう問題か?

 

 

 

 

 

 全員への指示がいきわたって、ゴール周りには俺とメア、ジミーだけが残っていた。

 当然、二人はボールを持っていて、俺はゴール前で構えている。

 

 刑の執行は、目前だ。

 

「よーし、まずは俺からなー?」はジミー、頼む。地味の名にふさわしい普通なシュートをしてくれ頼む。君が所属していたサッカーチームもかなりエンジョイ系だったって聞いたぞ。

 お前だって若くして殺人犯になりたくないだろう。必死に目で訴えかけた。

 

「ドリャー!」

 

 彼の右足から放たれた一撃は、俺の目には普通のシュートに見えた。

 確かに速いけど、年相応なものだった。

 

 ──それを見た瞬間、俺は歓喜に打ち震えた。

 

 やった! 俺は賭けに勝ったんだ、信じていたよジミー君! そうだよね、流石に君たちがいくら才能マンだったとしても、いきなり必殺技なんてできないよね!

 よーしこれなら耐えられそうだ、何発だって撃ち込んでもらおう。

 

 そう思い、緩やかなカーブを描いて飛んでくるボールをしっかりと両手で受け止めようとした瞬間──

 

「──っ!!?」

 

 何が起きたか理解するまで時間を要した。

 航空機のタイヤ、例えるならまさしくそれだった。明らかに見た目と質量が合っていない一撃が、抑えきれなかった両手をすり抜け、腹部を襲った。

 

 声にならない悲鳴が出た。 

 空気が肺から消え去っていた。胃の中のモノが激しく揺れた。吐き気がする。

 

「あちゃー、簡単に止められちまったなー。やっぱまだ全然駄目かー」

 

 冗談だろ、お前には俺がどういう風に見えてるんだ? もしかして節穴?

 正直皆に指示出してるうちに回復した微量な体力ゲージが既にお亡くなりになっているんだけど。

 今の速度でこれは、しかもジミー全然疲労してないし……つまりまだ何十発と撃てるのってことだよな。 

 

 死ぬじゃん? 何が地味なんだよお前! 裏切ったな!?

 

「よーしもう一発──」

 

「いやジミーくん、僕のこと忘れてないかい?」

 

「あっすまんすまん」

 

 追撃しようとしているジミーをメアが止める。次はメアの番。

 

 そう、俺の目からしても派手な、超次元的な才能と釣り合った見た目をしている奴の番だ。

 つまり死ぬ。確定的に明らかだ。

 

「じゃあいくよ、リーダー?

 

──()()

 

 ほらぁ

 なんかいきなりボールが宙に浮きだしたんですがそれは……あ、なんか光り出してる。LEDかな。

 

救いを求める人々へ

 

 急に風が強くなって、ボールの中心に吸い込まれていくのが見て分かる。

 ダイソンだってあそこまですごくないよ。というか詠唱は意味あるのかな。

 何か唱えて超次元的になれるなら俺もしようかな。あっ、ついに蹴るみたいだ。さっさと唱えなきゃ。

 

「──エンゼル・ブライトォッ!!

 

 南無阿弥陀仏。

 

 

 光は、全てを飲み込んだ。

 

 




エンゼル・ブライト
 天から光をかき集め相手の周囲事吹き飛ばす。
部長は死ぬ。


主人公はタフネスブロックを習得した(大嘘)
ちなみにフットボールフロンティアの地区予選開催時期は5月の第三週辺りと勝手に変えました((

次回は練習試合予定、ただ日曜は忙しいので月曜とかになりそう。


~選手紹介~


・メア FW 11番
 厨二系、アフロディ系ストライカー。
何やら秘密を抱えているらしいよ。才能ないとか皆言ってるけど、部長は喧嘩を売られているのかもしれない。
 銀髪は生まれつきらしく、キリスト教圏の国の人とのハーフだってさ。
 エンゼル・ブライトという必殺技をさっそく編み出したけど……?

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