かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
かと言って大人になった織部をわざわざ線上に出す理由も中々ないのよね。
つまりは……わかるな?
欲望は第二部を求める、アーマードコアの新作は出たりでなかったりしろ
高みを知った、ひたすら遠い遠い。道のりすらも見渡せない。
歩き方は知っているけれど、かかる時間もわからない。走るにはどうしたらいいかも知っているけれど、この体が耐えられるとは思えない。
けれど、弱音を吐いていては……この両肩に、背中に、真経津 鏡介に掛けられる期待に応えることができない。
いつだって信じてくれる兄さんに、どう考えたってばれてるだろう変装を見逃してくれている奴らに、置いてきた高天原のみんなを見返すために。
ここは地獄の一丁目、通常の五倍の重力が体を蝕む部室棟。
本気で走ろうとするだけで心肺機能が悲鳴を上げる。
「──八咫鏡!」
ようやくこの状態でも必殺技を使えるようになった。
まだまだ安定しないけど、時に失敗するけど。
突き出した両手で、全てを映し跳ね返す鏡を支える。
この地区で天狗になっていたころよりも強大で、厚く。またそれを支える腕も太くなった。
けれど、
「エンゼルッ……ブラスター!」
「くそっ!!」
ボールが、砕け散る鏡と共にゴールに突き刺さる。五倍の重力下で進化後が使えなくなった状態でさえこれだ。
天より注がれる光弾を止めることは敵わない。
ただ数秒のつばぜり合いが己の進歩を確認させるとともに、目標までの長さを自覚させる。
……改になったこれをアイツは弾いて見せたはずだ。
「いくぜぇーっ!」
揺れる頭を押さえ立ち上がり前を向けば、もう次弾を装填しているジミーがいる。
そうだこれしきでへこたれるわけにはいかない。
迫ってくるのは強烈な縦回転が掛かったシュート。
風切り音が耳に届き、自身の危機を教えてくれる。
「ぐっ!?」
煙を上げるグローブで叩き掴もうとする。沈む……っ重い重い一撃が肉に、皮膚に、骨にしみて響く。
抱えようとして心臓に当たり一瞬、力が抜けた。すると勢いのまま、体がゴールに引きずられる。
芝生が切れて口に入った。苦い。抜けた力が入らず立てない……あぁ駄目なのか。
アイツなら腹で受け止めて軽くボールを返すだろうに。
「ちょっ、ちょっストップ!? メアチャージストップ! 二号が倒れたぞ!」
「光よ──ってわっ本当だ!? 大丈夫かい二号君!」
二人が……いやゴール付近にいた者がみんな集まってくる振動が地面から伝わってくる。
「……!」
「早く救急ば──おぉカガサンキュッ! よしいま──」
「やめろ……っ!」
差し伸べられた手を掴み抗議する。
こんな所で一々練習を止めてなんていられない。もう試合は目前に迫っている。
あの……試合を見て感じた、狩火庵中を前に生半可な傷や疲労で動きを鈍らせてはいけない。
──うしコツがつかめそうだ。一号、まだいけっかァ!?
──とう……ぜん!
──よいぞよいぞ、その根性は実に俺好みだ!
ようやく作れた握りこぶしで弱音を吐く膝を叩いてたたき起こす。
……あぁ、反対側で兄さんが同じ様に肩で息をしている。その前にはソニック、トール……速い一撃に対しての特訓。その度に光陰如箭を放つ。
この重力下では力を集めるのもままならないというのに……。
「メア、ジミー……再開する」
「いやいやいや、無茶はやめとけって……」
「そうだよ! ここで怪我したら元も子もないよ!?」
……なんでか、この二人が以前よりも怪我に対して過敏になった気がする。少しだし、その割には特訓の難易度が頭おかしいが……その気づかいが今は邪魔だ。
どうしても僕は、無茶をしてでも強くなりたいんだ。
「……
「……っ」
そう歯ぎしりをしていえば、なにか思うところがあるのか二人の目に映っていた心配の念を押しのけ火が付いた。
なんだかわからないが押し切るチャンスだった。
「お願い……せめてあと1セット! 僕は、強くなるんだ……!!」
◆
後悔した。
「お、おーい……生きてっか?」
いやほんとうに。最後ようやく必殺技を進化させる糸口が見つかったのはいいけど……なんで重力五倍の状態でメアはエンゼル・ブラスター改を発動できるのか。
マスクが破けて替えを取りに行ってもらう羽目になったどころか髪が焦げた気がする、焦げた。
……血が頭に上ってないせいかしゃべり方がおかしくなってる。
「はーいみなさん、休憩時間は15分。キリキリ休んでくださいね……船の手配はok、あとはどうにかしてフェルタンさんたちを眠らせられれば」
「うーん……駄目だ。重力が元に戻ってるのに翼が4枚から増えない」
「め、メア様……一応部長さんからアドバイスと言いますか、一助になるやもしれない言葉をメモに記しましたのでよろしければ……! ふひっ」
「ぅ……よ、読みたい……けど頼らないって言いきっちゃったしなぁ…………す、少しだけ」
「……この天使小僧の力を使えばあるいは……?」
近くでエマとメアが話し合っている様で話していない。何の話だ。
まだ翼増やすつもりなのかメアは、休憩中なんだから発光していないでもっと休め。
「なになに……『体から放つ力が多すぎて操り切れなくなっている可能性がある。光で翼だけでなく、管理するための器官……天使の輪などを作ってみるといいかもしれない』?
……これだ! 流石だよリーダー!!」
よせ。
「ふぅーつっかれるー……、足が痛いや」
「俺もまだ目が回ってる気がしますッス……でももっと回転力を上げなきゃスよね」
体力自慢の二人、ウリ坊とバングが近くで芝生に寝そべっている様だ。
この二人が疲労を口にするのは珍しい……けどまだ俺に比べたら余裕がありそうだ。……死にかけの僕より余裕があるというのは、おおよそ部活でしていい疲労なんだろうか。
……そもそもここは本当に部活なのか最近疑いを持ってきた。
「……、……!」
「おうそうだな、ボスに頼らねぇようにもっと強くだな。 そんでボスが左団扇のまま優勝だ!」
……グラさんの声が聞こえる。
そうだ、僕達は優勝してみせる。
何なら最後の試合だって織部をベンチに押し込んで、僕が守り切って見せる……。今日ももう一息だと、立ち上がる。
「──そういえば、なんで部長って習合に来たんだろ?」
そんな時、ウリ坊がふと思いついた疑問を口にした。
「ん……?」
「どういうこったよウリ坊?」
その疑問にグラさんたちが首をかしげる。ついでにドリンクを浴びるように飲んでいた兄さんがこちらに意識を向ける。
「いやだってさ、部長ってば入学早々部活作ったわけだどさ……サッカーしたかったなら普通部活あるところに行かない? 部長の家の近くに別の中学もあるっちゃあるし……なんならそっちにサッカー部あるはずだし」
「あれじゃねぇか? ここの学食とか美味いし校舎も新しいしな」
「案外、部長は部長やりたかったから部がないところに来た……とか? 」
他愛もない、明日には忘れているかもしれない程度の話題。
それでもみんなが参加しだしたのは……あまりに不思議なアイツが気になっていたからかもしれない。今にして思えば、みんなが知っているのは部長としてのアイツで。
なんなら私服を着ている時でさえ部長だ。食べ物は何が好きなのかとか、何でサッカーを始めたとか、悪魔と契約なんてイカレたことをした契機はとか。
聞きたいことが思えば思うほど出てくる。
「……いつも家の前で集まってたけど、家の中に入ったこともなかったな。なんならエマちゃん以外の家族にも……ってどうしたワタリ?」
「エマさんはストーカーで……家に出入りどころか住んでても何も言われない。特待生……いや、まさか? いえ、少し父さんに確認したいことができただけです」
「……それも無理していたのかい、リーダー……?」
ただどうしてか、この話が彼のなにかを崩してしまいそうな危うさを孕んでいる気がして……僕は口をはさむことが出来なかった。
「エマちゃんはなんか知らないの?」
「知ってても教えません♡」
えぇ……。
◇
「あーちょっと生命線が短いですね。これじゃあと10年ちょっとしか生きられませんねぇ」
──10年後に死ぬということはそれまでに何をしても死なないということだ。よかったな
ウケる。いや受けない。いやなんだよこの占い結果! 享年20代前半とか
100日後に死ぬワニだってその間に超次元サッカーしまくれば運命捻じ曲げて死ぬかも知んねぇからな!?
……いやこの占い師の人ズバズバいうなほんと。まあ女性というか女の子だからなすがまま受けてるけど男の占い師だったらこんな失礼なこと言われたら即刻帰るからね。
──そこの方、明日浜辺に行きませんか? と聞かれ心臓が飛び出るほど内心驚いて見せたくせに何を言う
──いや、コルシアも驚いていたではないか? まっ妾らの存在に気が付けない辺りなんらかのイカサマを働いているのじゃろう。温かい目で見てやろうではないか
……いやほんとにね。この子なんか俺のストーカーなのかってぐらいやたら個人情報とか当ててくるんだよね。
家族構成とかストーカーがいるとか、後今度の試合出ないことまで知られてるし。でも前診てもらった占い師の方はコルシアたちに驚いて逃げたけど……見る感じ悪魔が憑りついていることは知ってても見えてないのか?
フードとか取ってもらえればもう少し読めるんだけど。
──貴様も何気に占い師モドキになってるな、その相手の心推しはかる力は何なんだ
いやこう……勘で。特に試合している時とかだと反応が見て分かりやすいから。
後性格知っている人だと分かりやすいし……意外と注意すればみんなできるんじゃないかな。
「そ、れ、でぇ……今なら長生きできちゃうヒケツとかお教えできますけどどうですかぁ? せっかくであったのも何かの縁、初回サービスとしてタダでやってあげますよぉ」
タダ、タダかぁ……タダより高いものはないっていうけどどうだろうか。
しかしやたらぶりっこなしゃべり方するなこの子?
まあ口元から見るに美人さんだから許されるのかもしれないが、仮に俺がこんな喋り方をしていたらメアが泣きながら病院に連れていくことは間違いない
「……それは?」
──答え、サッカー止める。とか言いそうだな
「──サッカーから距離を置くと、いいことありますよぉきっと」
コルシアも占い師になれそうだな。怨嗟を糧にするってことは人の恨みつらみに一番詳しいわけだし案外間違っていないのかもしれない。
……で、占い結果はうーん。こう当たり前のこと言われてる感凄い。いや占い的にはサッカーで死にかけてる感じじゃなくて悪魔の代償で死にかけてるって思われてるっぽいけど。
その力を使う場所のサッカーから距離置けってのはすっごい自然なアドバイスだよね。
アドバイスと言えば、メアファンの子からメアが伸び悩んでいるからなにか助言くださいって頼まれたっけか。もう翼増やすぐらいだろうよと思ったけど天使になりたいならわっかでも生やせば? って軽い感じで言ったなぁ。
それぐらい意味のないアドバイスだった。
つまりはだ、
「……占い感謝する。だが、俺は少なくとも……優勝するまでサッカーをやめない。さらばだ」
じゃあねまたねバイバイ。
……可愛い女の子相手によく頑張ったよ俺。顔隠されてなかったらきょどってたかもしれない。
「……それはざーんねん」
──……? 何か悪寒が
どうしたコルシア。もう顔背けて帰りたいんだけど。
変に何か気づくとその正体をはらしたくなるじゃないか。
「ああでは最後に、是非とも織部さんの未来をこの水晶に映して見せましょう。何かお役に立てるように……ふふふ」
おおっとまだサービスを続けてくるかこのお嬢さん。商売熱心だな。
……そう言って占い台の上に球体を出してくるけど……これ水晶じゃなくてサッカーボールじゃない? いや全体的に黒いしなにやらハイテクな感じがするけれど。
最近の水晶ってこんなんなの? まぁいいか……どれどれ。
…………、
……? 一瞬ボールが光ったようだけど何も起こらないな。
──おい長久、こやつ球体を通して精神干渉をしかけてきてるぞ。大方悪魔関係者だ、とんずらこけ
えぇ……最近エマといい人の心操ろうとしてる人多いっすね。
占い師って精神干渉スキルまで必須なの? こわ、近づかんとこ……。
「……何も映らないようだな、失礼する」
「……はい、どうぞ」
すっごい睨まれてる気がする!! フード越しだけど、絶対なんで効いてないんだよコイツ? みたいな思惑されてる!
逃げよ逃げよ! さっさと帰って晩御飯作ってエマの相手して明日の海に備えよう!
──ナガヒサー、今日は油淋鶏がいい
「……ちっ!」
ひぃ舌打ちされたよ!? 怖いよこの子、僕もうおうち帰ります!
やっぱり重り無しとは言え体が鈍るからってランニングしてたのがいけなかったんだ。約束破ったから罰が当たったんだ!
お願いします二度と約束破りませんから……助けて!!
崩壊の序曲と見せかけて更に深刻な過去持ちと疑われる織部な回
そして二号くんはイキロ
~オリ技紹介~
・八咫鏡 パンチング技
技名だけならラスボス系。ラスボス系チームにいるから問題ないな!
使い手の二号が成長しているので初登場時よりはずっと強くなっている。今回で技進化の兆しが見えたのでそれもクリアすれば織部の100倍は怪我せずに守れるキーパーになれるに違いない。
成功時、蹴った場所にまでボールを跳ね返すので周りが注意しないとまたボールが取られる。
~オリキャラ紹介~
・10年とちょっと後に死ぬ織部 GK 1番
むしろ10年も生きられるのか?
生命線ってホント指針になるんですかね。織部とか怪我して治しまくってるからえげつない手相してそう