かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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──「自分の考えを曲げてまで交際を求めない。」

 福沢諭吉(部長の財布を暖かくするものであったが、今濡れて破れた。哀しい)
 

 それと少しだけ時が巻き戻ります。
 具体的には 部長、海でアヴィを拾う→???(今回の話)→東京湾に流れ着く(直ぐ後に試合開始)
 となっております。混乱させてしまう構成で申し訳ありません。

 また、ヒロインはコルシアなのかといったメッセ―ジがもらえました。
 作者は犬が好きです。猫も好きです。男の娘も好きです。男も女も好きです。なんなら可愛けりゃみんな好きです。
 つまりはそういうことです。

 追伸:ハイドロアンカーってキーパー技だったのすっかり忘れていました。キャッチ技ですがまあ松風時空のことなので改良前のハイドロアンカーはDF技だったって事で一つどうか……


交渉決裂する日

「──」

 

 沈んでいく。

 体が重くて、空気がなくて、沈んでいく。

 ……本当に沈んでいるんだろうか、瞼が開けない。上も下も左右だって分からない。

 

──……おい、起きろ長久。死ぬぞ貴様

 

 あぁコルシア、おはよう。

 ……そっか、今死にそうなのか。

 

 ……えっ、死ぬの!?

 やば、夢とかじゃなくてマジの海のだったのこれ!!

 

──……アヴィちゃ~ん?

──ひっ! い、いやあの波はオイラじゃないでヤンス! 今分心体で碌に力もないからあんな波起こせないでヤンス! 多分誰かが意図的に……ほら早く海面に顔出せ人間!

 

 意識が覚醒する。

 瞼が開けばそこは海の中、それなりに沈んできたからか辺りは暗く、海底にはサンゴ礁が見えた。あ、フグが泳いでる。

 水深は恐らく15m以上は……そう、確か船に乗ってて……波にのまれたんだった。

 

──そんなことしてないで早く海面に浮上せぬか!

──トロアに同意だ。ここで死ぬなんてことは許さん

 

 サントロ、コル。って言ってる……場合じゃない。肺が痛い。

 やばい、早く上へ……まずい、碌に……力が入んない。空気が体に残ってないせいか……全然浮かない。

 そもそもどうやって浮けば……頭痛い。

 

──ちっ、おいフェル。顕現して引き摺り上げるぞ

──おっけ~トロアっち

 

 ……足元から白龍が、腰から黒蛇が出てくる……。

 そんでそのまま……体を……上へ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやマジで今回は死ぬかと思ったんですけどぉ!?

 死因サッカー、もあれだけど遊びに来ていた海水浴で死亡とか格好悪すぎるわ!

 

「あぁ兄さん──! いくら探しても見つからない時はこの鯨を殺してでも地獄と取引しようかと思いましたが本当に良かった!」

 

『で、デモアちゃんがそう言──』

 

「エマです」

 

『はい……でヤンス』

 

 苦しい苦しい。首が締まってるから緩めてエマ。失うのが怖いのは痛いくらい分かるけど悪魔パワーで締められたらガチで痛いから。

 

 フェルタンとトロアが海面に浮上させてくれた後、近くの海岸で俺を探し回っていたエマがそのまま救出してくれた。

 なんでも気が付いた時には砂浜に倒れていて、俺がいない事に気が付き焦っていたらしい。ごめん。

 

 いやほんと……フェルタンもトロアもエマもありがとう。

 

──……まぁ本当に死にそうになっていたら契約を持ちかけていたぞ我も。この二柱が憑りついている時点で早々死なんがな

 

 ああコルシアもありがとう。いや本当これからは迂闊にたからものとかにも触らんようにするから……。

 まさかあんな所にフェルタン、トロア級の悪魔がいるとは思わんけど……。

 

──いや勘違いするなよ契約者、肩を並べたのはもはや昔。アヴィ嬢はドジを踏み数百年の封印。更には多重契約の為か今は分心体……コルシアに負ける恐れすらあるぞ

──……トロア、我の炎の氷柱を受けてみるか?

 

 え、えーとつまり今アヴィは弱体化してるのね。確かになんとなくだけどサクリファイス出来そうな気がする。

 トロアとかだとやろうとしても無理だからな。

 

──ほーぅ、それは妾の鱗一枚でも焼けるのか? まあ今の顕現も出来ないお前では無理だろうがなぁ

──ふん、力の貯蓄は既に済ませている。サクリファイスしても関係ない場所にな……長久と顕現の契約を済ませれば直ぐにでも使いその減らず口を閉じてやろう

 

 そこ喧嘩しないで。あと貯蓄って……あぁ前言ってたね。

 人の体の中に口座作らないでよ……せめて手数料とか頂戴。

 

 ……さて、海岸にまでたどり着いたけどここどこだよ。

 エマが最初連れて行こうとしていた島でもないし、周りにこの島以外の陸地見えないし。

 

──お前がいつも溜まった力を魂ごと砕くからだろうが……貯金ならぬ貯闇だ。これを使えばサクリファイスされるまでは全盛期と言わずともそれなりに力を出せる……力が欲しくなったのならばいつでも言うと良い。

まぁ、それなりに代償は頂くがな!

 

 うん、そりゃ心強い。ちなみにメアのエンゼル・ブラスター改は止められそうか?

 前の時は満身創痍だと皇帝ペンギン2号は止められない感じだったけど。

 

 ……お、海面で魚が跳ねた。南国っぽい見た目じゃないのが心の救いか。

 どこまで流されたんだろうか。

 

──……改良前の方ならなんとか

──海鮮食べたくなってきた

 

 ……いやすごいんだけど、すごいけどさ……。

 そうか、それでも改は止められないか……。

 

──いやお前の体を強化する方針でこれはかなりの成果だからな!? ゴールポストに当てるとか重りの小細工なしでだからな!

 

 え、例の炎の氷柱とやら使うんじゃなくて? わざわざ俺を強化するんですか?

 

──天界との戦争に使う様なアレをサッカーで使う訳がないだろうが……超次元なアヤツらなら耐えるかもしれんが余波でお前が死ぬわ。

しかし内側から強化しても確かに効率が悪いかもな……どうせ契約して顕現した後も犠牲にされるし、少ない力でも出来る様な強化法を……少し考えておこう

 

 ええこわ……やっぱ余程の時でもない限り契約はやめておこう。それはそれとしてちゃんと色々考えてくれるのは流石だぜコルシア。

 ……で、ここは何処なんですかねホント。帰れるの?

 

「で、ここはどこなんですかアヴィさん」

 

『え、えーと……多分太平洋のどっかの無人島でヤンスね』

 

「雑ですね……船は失うしどうしましょうか」

 

 ……う、転覆した時に船まで失ってたのか。

 エマ、携帯は……電源は入るけど電波が入らない? 食料も服もないし……ガチ目にやばい気がするというかやばい。

 

「……うーんいくら兄さんと二人きりだからと言ってもイチャイチャできる状況じゃありませんね……アヴィさん、海と嫉妬の悪魔なんですから海操ったりして帰れないんですか?」

 

『い、いやー……流石に今の力だと軽い波作るぐらいしか無理でヤンス。面目ない』

 

 

「──そうか、それは残念だ。折角楽が出来るかと思ったんだがな! 」

 

 

 とりあえずここで生き残るためになんとか食料を……コルシアと契約したら釣り竿出せたりする?

 ……うん?

 

──出来なくもないがそれなら顕現して直接魚取りした方が早いな……うん?

 

「まったく……警戒して損しました。だいぶ力が削れているようですね……え?」

 

『ははは……デモ──エマちゃんはすっかり体維持したまま現代馴染んでるでヤンスね……あぁ?』

 

 ……皆一様に後ろを向く。

 そこには生い茂る木々……が切り倒され作られた小さなログハウス。

 気が付かなかったぞ……よく見たら葉っぱとか散らしてカモフラージュされてるのか?

 

 そしてその前には仁王立ちしている……海賊帽子をかぶった男が一人。年齢的に同い年か一個上か。

 ボロボロのシャツをスカーフ代わりに腰に巻き上半身裸、背中には先端に尖った石が付いた槍をツタで巻いている。

 

 ……いやなんだこの人!?

 いや顔見て分かったけど、数日前に調べた人だから分かるけど!

 

「──狩火庵中のキャプテン」

 

「ナハハハハ! そういう貴様は確か……誰だ! まぁいい、俺様を知っているというのであればそれでいい!

この──東船道 尊(ひがしふなみち たける)様をな!」

 

 ……開会式前に難破して行方不明になっていた人。なんだってこの島に……。

 いや一先ず生きていたことに安心すべきだなうん。……そういえば狩火庵中はなんだってか「悪魔に憑りつかれた」様なプレイというか雰囲気醸しだしてたな。

 あれ見る限り呪いの品手に入れて悪霊に憑りつかれたんだろうなって感じだったけど……海で手に入った呪いの品?

 

 まさか……アヴィ?

 

『げげっ、まだ生きてたでヤンスかお前……』

 

 答え合わせしてくれたよ……お前かよ。何してんの。

 

──えぇー……強制的に契約結ぼうとしたら弾かれたんで。契約も出来ない人間なんて邪魔なだけでヤンス

 

 悪魔かお前。しかも今の言い分から察するに狩火庵中の奴らも強制的に結んだな?! じゃないとあんなゾンビみたいな事になんないよな!

 トロアの時も思ったけど強制的に契約するのほんと極悪だからやめろよ……。

 お前もしかしなくてもフェルタンたちいなかったら同じようなことしてたんじゃないだろうな。

 

「ふっ、当たり前だ鯨下郎が! 貴様がこの俺様から奪った船員を取り返すまでは死ねんわ!

……して、その金貨を持っても意思を失わないという事は貴様もそれなりにやるようだが……名を聞いてやろう!」

 

 すっごい元気ですね貴方。少なくとも二週間近くはこの島で生き抜いていると思えるんですが。

 流石に超次元なサッカー部のリーダーやってるのは伊達じゃないって訳だな。羨ましい。

 

「……習合中、キャプテン。織部長久」

 

「……ほう、そうか貴様が習合の長か! 俺様たちが勝ち進めば二回戦で当たる可能性があったところだが……」

 

「あぁ、明日その試合がある」

 

「そうか!」

 

 そう言うと……いろいろと含みを込めた笑い声を一つ。ああそりゃ不安だよね。

 部員が変な悪魔にとられて自分は島から出れずにどんどん日が過ぎていくんだから。少なくとも負けてはいないという事で安心してもらえたか。

 ……いや、でもなぁ……あれは無事と言っていいか分かんないよな。

 

「あぁなるほど、狩火庵中の選手の様子が変だとは思っていましたが……アヴィさんの仕業だとすればさっさと解呪しないと面倒ですね。そうですよね兄さん?」

 

「……あぁ」

 

 大巨人中との試合中、連中は大巨人中の必殺技をもろに受けてはその度に、痛がるそぶりも見せずすぐにまた動き出していた。

 一見不死身、の様に見えてはいたけど……多分あれってフェルタンの様に再生してもらえてるわけでもないよな。

 

──ぎくっ

──あぁあれは……ナいなさすがに。妾もドン引き

 

「……どういう訳だ織部」

 

「……恐らく──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グラさんのデッド・スナイパーを受け、宙を舞った直後の事。

 奴は確かに着地に失敗し……足首があり得ない方へ捻ったように見えた。

 

「ゲヒヒヒ! ハイドロセーリング!」

 

「ぐぅ!? マジで不死身かこいつら……!?」

 

 それは出航。奴の眼前の芝生へレールの様に敷かれ広がる海の道を一直線に突き進む船が一隻。

 勢いのまま、引き金を引いて無防備になっていたグラサンを轢き飛ばしゴールへと進む。

 

 ……否、断じて不死身などではないはずだ。

 俺はその後姿を追いつつも確かに、具現化した船に乗る奴の足首が捻ったままなのが見えたから。

 よく見ればそれだけではない、意気揚々と振る腕にも多数の擦り傷や痣がある。

 

「こ、こいつらまさか……」

 

「──ハイドロバースト!!」

 

 そのまま……奴は足を捻ったままシュートの態勢に入った。

 周囲のどこから湧いたかもわからない蒼き水がボールを包み込む。荒れ狂う海流の水球に、痛みで力など入れようもない筈の足がぶつかる。

 

 瞬間に起こるは圧縮され行き場を求めていた水流の奔出。

 そこに技の曇りはないどころか……あり得ない。

 

「くっ八咫鏡!」

 

 対するは弟の鏡。確かに強力な一撃だが……メアのアレを受け続けていた弟にとっては軽い一撃の筈だ。

 激突し、鏡の曲線に合わせ水が飛ぶ。しばし押し合いをした後、鏡がボールを跳ね返す。

 

『狩火庵中の突撃も二号、危うげなく防ぎました! キーパーが変われど習合の守りは盤石か!』

 

 そのまま跳ね返る位置は……シュートを決めた相手の位置。鏡に映った場所へ、真実を正しく返す技だからこそ。

 この特性から下手をすれば連続シュートを決められかねないが……流石にそこは全員承知している。

 

「……!」

 

『浮いたボールを取ったのはカガ、すぐさま中央へパス!』

 

「っ!? おぅ待て!」

 

 すかさず間に入ったカガがフォローし……ボールが追って来ていた俺に渡された。

 それを見るや否や、周囲にいた狩火庵中の者どもが目をぎらつかせこちらへ駆けてくる。

 

 注視すれば、その走り方が不格好だとかそんなものではない……異常の中に隠れる異常が見える。

 ……こいつらもか。

 

「これは、惨いな」

 

 激痛で碌に動けないだろう、そう思える体のまま……笑い叫び走り寄ってくる男たちに対し、

 俺は何故か……恐怖ではなく、憐れみを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛覚をなくしている……!?」

 

──疲労感もだろうな。ついでに身体能力を少し上げ……疲れ知らずの兵隊に作り替えたというわけか。

……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ、いずれ限界が来るぞ?

 

──悪魔に倫理観求めるとはずいぶんお人よしの悪魔でヤンスね。そん時はそん時、代償として賭けにした魂頂いて別の所行くだけでヤンス。

ま、FF優勝しても代償はもらうでヤンスが

 

 ……。

 ほんと悪魔だなお前。

 

「あぁ、チームの中に呪いをどうこうできるのは……一人だけ心当たりがあるが、有効かも不明。はやく止めるべきだ」

 

 ……とは言ったものの、脱出の手段もない。ただ俺は今東船道を不安にさせただけだ。

 教えるべきじゃなかったか? 考えなしにもほどがある……馬鹿か俺は。

 

「よく知らせてくれた」

 

 けど、そんな俺の心を知ってか知らずか目の前の彼はただ俺の手を握り、笑顔を見せた。

 ……見て分かる、こいつだって仲間の事が心配でたまらない癖に。それを露も見せず功を労うか……船長と呼ばれているだけある。

 

「そうと決まれば──出航だ!」

 

「……なんだと?」

 

「出航、船を出すと言ったのだ!」

 

 立ち上がり、深く海賊帽をかぶりなおす。

 そのまま海岸とは真逆……奴のログハウスの方へと歩いていく。

 

 ……まさか、このときの為に船をこの島の中で作り上げていたというのか?

 

 すごいな船長、流石だ船長!

 なるほど、考えてみれば先ほど背中に担いでいた槍、近くで見て気が付いたが石のナイフもあった。船を作るのも可能なのかもしれない。

 

「……なんとかなりそうでよかったですね兄さん」

 

「あぁ……凄い漢だ」

 

 しかしそれでも……方位は日の出日の入りで分かっても、どこに向かえば陸地があるのかが分からない。太平洋なら北に進めば……難しいか?

 例え辿り着いても明日の試合までに間に合わないと色々と不味いだろうし。

 どうにか東京までの行き方が分かれば……待てよ?

 

 アヴィ、分心体と言えど……本体たちがいる場所はなんとなくわかるんじゃないか?

 狩火庵中に憑りついてるんだろ?

 

──あ、妾も思った。流石に距離が離れたら伝心は難しいかもしれんが、自分の体の一部がどこにあるかぐらいは分かるじゃろうて

──ぎくっ

 

 明日にはもう試合だ。時間的にまだ四国の方にいるとは考えづらい……そろそろ東京のホテルにたどり着いていてもおかしくない。

 その場所の方角さえ分かれば、後は船で向かえば問題ないよな。それこそさっき言ってた軽い波で補助してもらえれば早く着くし。

 ……今の反応的に、ワザと言わなかった?

 

──い、いやー……まさかそんなことする訳ないじゃないでヤンスかー

 

 本当?

 実は狩火庵中との契約邪魔されたくないからしばらくここに滞在させようとしてない?

 

──……ケケケ、バレちまったからにはしょうがないでヤンス!! いくらフェルタン様たちと言えど海ではオイラの領分……!

ただしい方向の情報が欲しければオイラと契約するでヤンス……当然、代償は魂!

 

 ……。

 そうか。

 

──ふふふ、やはり強欲なのが運の尽きだったでヤンスね。

フェルタン様達もこんな海のちっぽけな島で依り代が死んだら面倒でしょう? ここはオイラに協力しなきゃだめでヤンス

 

 ……コルシア、いや苦痛と怨嗟の集まりしものさん。

 あとフェルタン。

 

──なんだ?

──……なにー?

──へへーん、トロアのクソガキたちも随分と生ぬるくなりやがりましたでヤンスね。悪魔なんて基本相手を追い詰めて契約させて骨の髄までしゃぶりつくすものだというのに

 

 つかぬことを聞くけどさ……食べたら、追える?

 

──ああそういうことか……ああ、このままだと取り込めんから砕いて弱らせてくれると助かる

──オッケーオッケー、任せてーって言いたいけど、性質が似てるコルちゃんの方が追いやすいかな? 譲るよー

 

 ……オーケーオーケー。なら、しゃーないな。

 しゃーないしゃーない。俺もこんなことはしたくはないけど……船長のためにもな。

 アヴィ、ちょっと見てもらいたいものがあるんだけどいいかな。

 

──……何でヤンス? 悪いけど値引きしたりはしないでヤンスよ。オイラはさっさと力取り戻してあのクソッたれな神共に復讐しなきゃなんないんでヤンスから

 

 いや、すぐに済むことなんだ。

 ほら砂浜に手ごろな岩が落ちているだろう?

 

 これに向けてだな? 拳を構えて……いつもの手の形を作る。

 誰にだってマネできる、「手の骨だけが折れやすい構え」を。

 

「……兄さん? 一体どうしましたか?」

 

──……あの? なんかオイラの周りに鎖みたいなのがまとわりつき始めたんでヤンスが? ちょっと苦しいのでやめてもらっていいでヤンス?

 

 息を整え……サクリファイス・ハンド!!

 

──? なにを──ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ!?

 

 あぁアァあぁあ゛!! 痛い! でもこれが生きてるって言う証!!

 ……いけコルシア! このくそ野郎を取り込むんだ! 双方の合意ならまだしも、一方的に魂奪おうとしている奴なんて悪魔の風上にも置けねぇ!

 せめて今協力してくれるんだったら水に流そうと思ったが交渉決裂だボケぇ!!

 

──視点が悪魔になってるが大丈夫か? まぁお前にとっては許せん行為だろうからなんも言わんが……さて、分心体とはいえ第一階位の悪魔だ。力を蓄えるには十分だろう

──ぐぅぅぅ……許さんぞ貴様ら……!!

 

 視点が悪魔!? 左目がトロアが強制契約して悪魔目になってるからな!!

 それと語尾が抜けたな、ヤンス口調わざとだな!

 

──それがどうした! 覚えていろ……本体の前にやってきたら最後、この海の王に楯突いたことを末代まで後悔させてやろう……!

 

 ……いいのか最後の言葉がそれで、もう方針としては狩火庵中に憑りついている分心体全部コルシアかフェルタンに食わせるぞ。

 それが遺言でいいんだな。

 

──相手を追い詰め、骨の髄までか……まぁそうだな。我もそうさせてもらうとしようか、リヴァイアサン殿

──よせ、この犬風情が……やめ──

 

 

 

『──助けて!!』

 

「っ、アヴィさん!?」

 

 パクるな。




新しい住人の予定でしたが、大家の査定に通りませんでした。
そんな話です。



~オリ技紹介~

・ハイドロアンカー ディフェンス技
 同名で海王学園のキーパーが使っていた技。
 前回書くときにうろ覚えで使用した結果、DF技になった。まあ時間が経てば技のポジションも変わるやろ!!(適当)
 海中から錨を取り出し、ボールにぶつける。
 エンゼル・ブラスター改に大量にぶち破られた。

・ハイドロセーリング ドリブル技
 一直線に海のレールを引き、ついで出した小型の船で突撃する。
 道上に人が居たら撥ねる。そこそこ強い。

・ハイドロバースト
 ハイドロで統一しているのはアヴィの力という事を強調したいだけであり、決して作者が技名を考えるのを手を抜いたわけではない。
 ボールを水で包み荒れ狂わせ、蹴りの衝撃で間欠泉のごとく噴き出す。


~オリキャラ紹介~

・アヴィ
 コルシアに取り込まれた鯨。
 数百年眠ってたせいか倫理観が一切更新されていなかった。中世の気分でやってたら現代を生きる悪魔と部長から不平を喰らって食われた。
 分心体とはいえ一応不死の特性を持ち合わせているため、コルシアにとってかなりの栄養源になったことは間違いない。
 鯨食べたくなってきたな。

・船長:東船道 尊 MF
 よい子なので無人島生活余裕でしたが仲間がピンチと聞いて海に出ない船長はいない。
 

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