かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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 ここしばらくTSしたり眼鏡をお墓を作ったりしながら日本の行く末を案じていました。
 私の様なものが生きているのであれば多分平和です。


【挿絵表示】


 そしてこちらはしゅう様に描いていただきました、織部長久くんです。
 お願いしてイナイレのゲームの作画に近づけてもらったりと苦労させてしまいましたが本当に素晴らしい…


超次元排球する日※

「ナハハハ、ここが正念場だぞ羅針盤長!」

 

「……上等」

 

 照りつける太陽。熱く燃える砂浜から熱が伝わり空を昇れと後押しする。

 ここに今普段の装備はない。吹き飛ばされないようつける重りも手を守ってくれるグローブもない。

 パンツ一丁、着の身着のまま戦いに身を投じている。

 

 ──一撃が迫る。

 回転、加わっている力、全てを両目で見極めコースを予測する。

 このままでは届かない。そう察した時、すでに行動は終えていた。

 

「っ!」

 

 跳んだ。砂を蹴り空を切り重力に逆らって前へ。

 僅かに揺れた視界その端、落ちるボールへと手を伸ばし……打ち上げた。

 

「ナイスです兄さん!」

 

 ふわり浮かぶは……()()()()()()

 強烈にかかっていた回転は反転、僅かに動くだけとなりネット際へと戻っていく。

 絶好のアタックチャンスだ。船長の動きは見るまでもなく予想できた。

 

「っ!」

 

 先ほどよりも強く高く、砂を蹴る音がする。

 カラカラガラゴラと、乾いてるはずの砂浜から何かがこみ上げてきている。飛び散る砂がしずくとなり、やがて奴の周辺は深い深い……光も届かない暗い海が広がった。

 

 深い青は波となり渦となり逆巻き宙に集まる。

 瞬間、天地が逆さになっている男と目が合った。

 

「──ディプシーバースト!!

 

 渦と波がひしめく強大で巨大な水球。そこへ突き刺さるオーバーヘッドキック。

 人一人分は優に超えた高さから放たれた一撃は、作り出された深海よりも深く相手コートに突き刺さった。

 二秒、点が入ったホイッスルとともに奴らはようやくボールが自身の横を通り過ぎていたという事を悟った。

 完璧だ。

 

「これで11-3……兄さん・船長さんチームの勝ちでーす!」

 

 近くではボードを更新し喜びはねるエマ。

 船長はニヤリと笑い、観衆も手を叩く。すばらしい試合だった。最初こそ慣れずサーブミスなどで失点してしまったが、ここまで勝てば誤差の様なものか。

 意外と才能があるんじゃないだろうか俺。特にさっきの反射とか生かせばいいところ狙えそうだ。

 

──……おい長久

 

 ……いやわかってるよコルシア、俺はサッカー部の部長、織部長久です。

 でも仕方がないんだ、生きていくためには人は時として道を外さねばならないんだ。時にはサッカー以外の球技をしてもいい、そうだろう?

 

──くっ、まだだやっぱハーフじゃなくてフルポイントで……!

──はーいそれではクソ雑魚なお二人さんはさっさとお財布を出してくださいねぇ……ほら早く出して? 出しなさいよ

 

──あれ止めんでいいのか? エマの奴かなりあくどい顔しておるぞ?

──契約とはいえ喜々として毟ってるなあいつ……

 

 ……いやうん。本来なら妹が悪魔な顔して敗者二人から財布奪い取ってる光景なんて見たくないんだけどね。

 でも……哀しい事にパンツ一丁の我々がどうにかして会場に行くためにはこうして策を講じなくてはいけない訳で……服もなしに町中走り回ったらタイーホですよはい。

 

 イカダをこぎ続けやっとのことで海岸にたどり着いた俺達。近くにはショッピングモールや駅もあり間違いなく好条件だった。

 だがしかし、何をするにも金がない。

 

 警察? 頼ったら確実に健康を気遣ってくれて検査のため病院に連れていかれる。というか行方不明になっていた人間が見つかったら大騒ぎになる。それはまずいよなぁと二人で話していた。

 

 しばらくして、お花摘みに行ってくるといったエマがなかなか戻ってこない事に気が付いた。

 エマはほうっておくと魅了の力を使い、その辺の人からお金を巻き上げてきそうだったので探しはじめたのだが……。

 

『ウェ~い君一人? もしよかったらこっちで遊ばない?』

『二人……カモセットが来ましたね』

『え、なんかいった?』

 

 若干遅かった。既に日サロ通い、ピアスが見えたりタトゥーがあったりと完全にナンパ目的の二人組に声をかけられてしまっていた。

 慌てて間に挟まり、普段の恐怖される部長を演じようとしたが相手も難敵。よほどエマに惚れたのか退こうとしない、勇者かお前ら。

 

──かと言ってエマも流石に貴様の目の前では金を奪い取る様な真似はしにくい。奴らが高校生のバレー部だったことからビーチバレー対決をして勝ったら賞金を渡し、負けたらエマがついてくる。……というなんともまあ他人から見たら悪逆非道な契約をエマが言いだしたわけだが

 

 説明ありがとうコルシア。いや言い出した時のチャラ男君たち凄い顔してたよね。「えっ、いいの……えっ?」みたいな。妹を賞品にとかする訳ねーだろって反論してもエマ引かないし。

 

──仮に負けてたら少し目を離した隙に魅了を多重に掛けてその辺に捨てて帰って来てたじゃろうな。……契約に嘘はついてないから問題ないな!

──エマちゃん相変わらずぅ~

 

 主に相手のために勝たねばならない。

 絶対に負けられない戦いが始まった。勝てたのは良かったよマジで……。

 しっかし、高校生が中学生ナンパするなよ。俺達が小学生に声かけるみたいなもんだぞ……いやあんま変わらんな。そんなもんか。

 

「はい、確かに。随分多いですけどこの日のために貯金でも崩してきたんですかね。まぁ関係ありませんが」

──契約成立したおかげかかなり機嫌がいいな。普段なら小銭も残らず奪い取るだろうが

 

 家計に優しい妹をもって幸せ……幸せです。

 少し譲る姿勢を見せたようだがそれでも二万円毟ったね。高校生にしたって大金だ。あ、エマの推測が当たってたみたいでシクシク泣いてる。可哀想。

 ……よく見りゃあのピアスも穴開けないでくっつくタイプか。タトゥーもシールっぽいな。イメチェンしてこの夏はモテモテに! って思ってたみたいだな。可哀想。

 

 ……まぁあれだ、夏休みの宿題とかで作文とかあったらいいネタが出来たじゃないか。

 

「で、どうだ会計士。会場までは辿り着けそうか?」

 

「それ私の事ですか船長さん? ……はぁ、シャワーを浴びて服を買って交通機関を使って……となると少し厳しいですね。あと一万円は欲しいです……」

 

 持ってないのか、妹は視線をチャラ男たちに向け暗にそう尋ねた。

 瞬時に理解し首を全力で横に振られる。まあそうだろうね。

 

「……コルシア、服を作り出せるか?」

──全身黒タイツみたいな見た目でいいなら契約してやっていいぞ

「駄目か……」

 

 流石にダサいのでやめてくださいお願いします。

 ああいったタイツは袖の下とかにあるからいいのであって、タイツオンリーは変態の所業だからね。

 

 じゃあどうするか、また悩むことになるのかと思っていた時、誰か二人が観衆から抜けこちらに歩いてくるのが視界の端に見えた。

 

「──まったく、どこに行っているのかと思ったら……子供を相手に何をしている」

 

「うっ、先輩……」

 

 どうやらこの二人の関係者らしい。

 二人のチャラ男君よりも膨らみ、なおかつ引き締まった肉体。決して一夜足らずではない、色素が沈着し落ち着いた日焼け肌。

 チャラ男君たちがトランククスタイプの海パンを履いていたことに対し彼ら二人はブーメランパンツ。正直みたくない。

 

「ナハハッ、貴様がこいつらの長か!」

 

「……いかにも、後輩が不躾なことをしたようなので詫びさせていただく」

 

 先輩コンビの片方のスキンヘッド、意外に素直。

 船長の問いかけにも真摯に答え、深く一度頭を下げた。

 いやいや、金奪い取った身なのでそこまで丁寧にされると……チョウチンアンコウに食われそうになってたのよお宅の後輩たち……。

 

 え、それはいい? 息抜きとは言えナンパをしに行ったコイツらが悪い? さいですか。

 

 んじゃあ僕ぅ、はここでお暇させていただいて金策考えますんでぇ……えっ、なに? それでもうちの部活としての意地は見せたい? へぇ今年は大会でいいところ行けそうだからこのまま負けて終わってしまうと士気に関わると。

 

 また、バレーをするものがさっきのような腑抜けた試合をするとは思われたくない。

 こっちが勝ったらお金、負けても特にない事を条件に再度勝負を受け入れてくれないか……? 

 

 えぇ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 照りつける太陽。熱く燃える砂浜から熱が伝わり空を昇れと後押しする。

 ここに今普段の装備はない。吹き飛ばされないようつける重りも、手を守ってくれるグローブもない。

 パンツ一丁、着の身着のまま戦いに身を投じている。

 

──勝負は先ほどと同じく11点先取。だが、明らかに相手は先ほどよりも強い。覚悟しておけよ長久

──お金余ったらブドウとか買ってこうよナガナガー!

 

 本日二度目のバレーです。今度はレギュラーらしい二人組。あとナガナガはちょっと青果店行く予定はないので……フェルタン、かき氷とかじゃダメ?

 駄目と。せめてぶどうジュースか。売ってるかな。

 

 羅針盤長は気合万全、これに勝てばみんなの元へ行けるからね。船長も張り切っている。俺はともかく船長は超次元サッカーの技をこっちに持ち込んでるからなんとかなるかな。

 バレーボールで足使って戦うとかなんなん? って感じだが彼のフィジカル化け物。

 

「……勝負を引き受けてくれて感謝する。そして──」

 

 サーブはあちらから。さっきの試合でもサーブを受けるのは大変だったが、流石にジミーのシュートと比べたら温い。

 さてどうしてくる……そう思いネット越しに相手を見据えて……嫌な予感がした。

 ゾクリと、暑さによるものではない汗がほおを伝った。

 

「──さらばだ」

 

 ボールを構える彼の背後に……仁王が立った。

 

 俺がよく知る木造のものではなく、生命力を感じる……阿行と吽形がこちらをにらみ落としているとさえも思ってしまう迫力。

 思わず息を呑む。その力が腕にたまっていき……やがて、黒光りする金剛力士の腕が作り上げられた。

 

 ──軽く上げられたトスはまるで罪人の首の如く、ただ裁かれる時を待って……、

 

波動球っ!

 

 放たれた。

 車が衝突したかと聞き間違うほどの轟音。それとともに吹っ飛んでくるはまるで砲弾。

 仏敵を滅ぼそうとする仁王の拳を安易に受け止めれば、相応の報いが降りかかるだろうことが見て分かった。

 

 ……あの、これ本当にバレーボールですか?

 

 それなりに楽しいスポーツが始まったなと思ったら途端に普段の奴に、次元が切り替わったんだけど。

 波動球ってお前……テニス●王子様じゃないんだぞ。確かに坊主頭だけど……もしかしてこれあと108式あるとか言い出さないよね!?

 

 というか怒ってないとか言ってたけど少し怒ってませんか!? さらばとか言ってたし殺す気満々すよね!

 

──これが超次元バレーボールか……

──しっかり見とけよ契約者。いい栄養じゃ

──ウケる

 

 フェルタン!? ウケてないで止めるの手伝って……正確には仏さん系だから多分食べられるよね。

 サクリファイスしてなんとか止めるしかないってこれ、せっかく力復活しつつあり申し訳ないけどまたコルシア犠牲頼むぞ!

 

──いや長久よ……それはやめた方がいいんじゃないか?

 

 えっ、なんで?

 大丈夫だよ手が折れてもばれないよう涼しい顔しておく心構えあるよ。

 

──いや、お前の(サクリファイス・ハンド)は……キャッチするための技だろ。バレーって止めたら駄目だろ

 

 あ、そうだね。うっかりうっかり。

 普段のように止めきれずその後パンチングしたら……ツータッチでアウトか。

 

 …………え、これどうしろと? 仮にドミネーションしようにもネット超えて相手陣地に入れるなんて無理だぞ、あれ一直線に進むだけだし。

 やばくない? 素で弾けと? いつものグローブもないのに?

 

「で、出た! 田石さんの波動球! 数々の相手をノックアウトしてきた悪魔の技だ!」

 

 やめろ解説になったチャラ男! 実績紹介するな!

 

 多分これ止めなきゃ勝てないよね、見た感じ打った後の疲れとか見えないしサーブの度にポイント落としてたら終わりだよ。あ

 あそろそろ対処しないとボールが俺の顔に着弾するぅ! かと言って避けたらカッコ悪い!

 なんか手はないかなんか手はないか……! 

 

 

 助けて!!

 

 

 

 

 

──……お試しコースで我と契約してみるというのはどうだ? クーリングオフも効くぞ

 

 じゃあそれで!

 助けてコルシア!!

 




「かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について」は日本男子バレーボールを応援しています。

 ほら、主人公の強化イベントだよ。
 燃えるだろ? 私もなんでバレーで覚醒してんだって思いだよ。


~オリキャラ紹介~
・田石(たいし) バレー部
 スキンヘッドであり対戦相手を戦闘不能にするバレーをする男。
 波動球は零式ぐらいまではあると思う。
 高校生なのでパワーもある。

・コルシア
 今なら入会してから二週間以内に返品手続きをしていただければ全額返金、送料はお客様負担ですが同棲しているので問題ありませんね。
 強化イベントが最近多いので多分作者は犬が好き。 

~オリ技紹介~
・ディプシーバースト シュート技
 実の所狩火庵中の「ハイドロ」シリーズの技は全て船長の技の劣化・変化版であり船員の記憶からアヴィが与えたコピー必殺技という使う予定もない設定の産物。
 当然ハイドロより技としての完成度、威力は上。

・波動球 シュート技
 テニヌ

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