かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
1人でダメなら手を合わせればいい。心配をかけさせてしまったら今度は自分が心配する。
人と人が時に支えあって人の字をなす。
俺はどうだっただろうか。高天原の時はエースとして引っ張っていたつもりだったが、結局のところ独りよがりだった。
だからいざと言う時にみんなの心が折れてしまった。
今はどうだ? 己の力が通じず光速の矢も天使の息吹も悪魔の腹に消えていった今は。
「ハイドロセーリング!! オレたチはトメランネぇ!! ギャぎゃギャッ!」
『開幕早々にまたもや護送船団陣形、これには習合なす術なしか──いえ違いました! 五人組の集団へソニックとトールが向かっていきます!』
少なくとも過去とは違う。
「ストーム・ブリンガー!」
ソニックの起こす竜巻が、五人の船出を阻む。
普段よりも広く回り、誰一人逃すものかと走り続けていた。
しかし、転覆しようが溺れようが気にすることない亡者たち。竜巻を抜け出ようともがく。
「キクか! ハイドロ──」
「──雷鳴一喝!」
それを、雷が仕留める。
暗雲に溜まり、空気を揺らすほどの一撃が竜巻の中に落ちる。さながら台風。
痺れた体では暴風に耐えられず巻き上げられた。
船出は失敗し、散り散りになって船員たちは海から追い出され大地に転ぶ。
『こ、これは見事な連携必殺技! 5人が使う必殺技をまとめて粉砕いたしました! さぁ反撃開始です!』
「ナイスッストール!」
バングが走る。お手柄だと褒めたたえ、選手と同じように転がったボールをすかさず拾う。
その間ゾンビたちはどうかといえば……流石に必殺技の二連発は効いたようだ。絶え間なく放出していた瘴気が途切れているのが見えた。
「グラさんっ! 一発景気がいいのお願いッス!」
「任せな……奴らの度肝をぶっこぬいてやらぁ!」
すぐ近くにいたグラさんにボールが渡る。
──作戦通りだ。近くにいたメアに目配せをした。
軽く頷くと共に、すぐさま奴は奴の準備を始める。
僅かながら光始めそれが天へ飛び立つための翼を作り出す。
「デッド・アーテナリー!」
その後ろで少し、火薬の臭いがした。
破裂音と共に飛び出たボールはロケット弾のごとく、煙を噴射し空へと飛んでいく。
後ろを少し見れば、しゃがんでバズーカを構えているグラさんがこちらに親指を立てていた。
『な、なんとこれはDFグラさんによるロングシュートォ! しかし軌道がやや上すぎるか!?』
それは違う。
見上げれば、瘴気の曇天の中で二対の翼をはためかす奴がいる。
今ここにある誰よりも強い光を放ち、会場を照らしている。
『……違う! あの天使擬きへのパス……何をしているさっさと盾になれ愚図ども!』
「ゲヒ! はっ、ハイドロアンカー!」
またも底冷えする声がする。DFたちに指示を出し錨をあげさせる準備を急がせた。
グラさんが編み出していたロングシュートはそのまま、天へと昇っていく。
「──
『ほら、保険だやれ』
「グヒヒ……メルビレイ・ザ・ホール!」
錨のカーテンが敷かれる。鯨の大口が開かれる。
このままいけば、前半の焼き直しだ。
だから、
「──
『なっ!?』
メアはいたずらが成功した子供のように笑った。
エンゼルブラスターが、ゴール向かって走る俺に向かい打ち出されたのを見て俺もそうした。
これこそが昔の俺との違いだと奴に吠えるために。
周囲に散らばり照らす光は砂のようなものだ。簡単に舞う軽さを持ち合わせながら、水を含ませた時のように一つの物質として凝固させることが出来る。
光を集め、束ねる。一本の矢を作り、一張の弓を作る。
──だが、集める光はそれだけではない。
上空から俺目掛けて落ちてくる天使の息吹は、今の今まで集めて来た光よりも更に強い。
作り出していた矢を形変え弓に加え頑丈にする。誰にも壊されることはない、神秘の弓。
そうして……降り注いできたエンゼルブラスターを受けつがえた。
「ぐっ……ううぅぅ!!」
ミシり、きしみ光の弓が悲鳴を上げる、
矢を引く、尋常ではない光の奔流がそれを阻み逃げようとする。
ここまで来たんだ、どうなろうが撃てれば勝ちだと、抑え込んだ。
ただただ以前の矢は光の速さを、何人も追いつくことのできない領域を目指したものだった。
あちらこちらの糸が緩みたわんだ操り人形のように動く亡者たちには手が届かないはずの速さ。
そこに更に貫通力を上乗せしたこの一撃を、世界の暗闇をあまなく照らして見せるような輝きを込めた一矢を、
「──天照」
名付け、解き放つ。
光は──全てを射抜き、吹き飛ばした。
笛がなったのは、ボールがネットを突き破ったしばらく後のことだった。
◆
ぶっつけ本番だったけど上手くいってよかった。
本当にそう思えた。
『ご、ゴール!! 12番一号とメアの合体技が突き刺さりました!
目も眩むほどのシュート……強大な鯨をも穿ち抜き……これで1-0! 遂に習合、得点です!!』
マイクを握りしめ叫ぶ解説席、未だ目をパチクリとさせ僕と一号、ゴールを見る観客たち。
これが威力と素早さを兼ね備えた必殺技……個人的には光を掛け合わせるから、シャイニング・ブラスターって名付けたかったなぁ。
「よっしゃあ!よくやったなオメェら!」
「すごいね全然見えなかった、もっかいやろうよ!」
「……! ……」
──こ、ここに来て三角関係……? ふひ萌え、いや燃える!
──トール様……みなさんやったー!
みんな祝ってくれて、頭をがしがし撫でてきたり突進してきたり。
カガは……俺も必殺技を! って感じなのかな。よくわかんないけど興奮している。
ようやく取れた一点を噛みしめれば噛み締めるほど楽しい気分になってしょうがなかった。
「……ぁ、あれここは…?」
「いでで!? ……頭がスッキリしたと思ったら急に痛みが!」
……嬉しい誤算もあった。
あの鯨を撃ち抜いたおかげだろうか? フィールドにいた狩火庵中の選手が次々倒れたかと思うと、纏っていた瘴気が晴れ正気に戻っていった。
全てうまくいった。リーダーの助言を生かすことはできなかったけど、みんなで考えて成功させた。やったよ!
喜びのままに、天を仰いだ。
『──巫山戯るな、巫山戯るな巫山戯るな!!』
唖然とした。
空に浮かぶ鯨の群れを見た。一体一体は鯨にしては小さいながらも、数にしておよそ十六体。
瘴気の海を泳ぎ、牙を覗かせ怒りのままに叫んでいる。
『こ、これは一体……空に無数の魚が浮かんでおります!?
いったい試合はどうなってしまうのか!?』
そう、見える。
今の今まで怪しい煙、声だけならまだしも向こうは完全に姿を見せていた。
サッカーが見せた幻覚? 違う。確かにそこにいる。
『たかが人間風情がこの大海の王に盾突きおって……! 貴様ら纏めて呪いにかけてやろう、喜ぶといい!』
どよめく観衆を他所に、こちらを見下ろす。その目には確かな怒気が宿っていた。
僕は、唖然とした。
『まずはそこの天使擬きからだ! 生まれてきたことを後か──』
「──随分と、調子に乗っているな」
『……あぁん?』
だって、見上げたスタジアムの……解説席よりも更に上の屋上に、君がいたんだから。
腕を組み普段している包帯もユニフォームも着ていない彼は新鮮で、だからこそ「僕たちが知らない織部長久」がいる気がして。
「リーダー!」
思わず叫んでいた。
『誰だ? 貴様』
「……食事の時間だ。フェルタン、トロア……コルシア」
普段とどこか違う、雄々しい雰囲気を持った彼。
リーダーは、怪訝に声を曇らす鯨達を前にただそう言い放った。
次の瞬間だった。
蛇が、龍が、そして……今まで見たことのない、翼の生えた黒狼が彼の体から現れ……瘴気の海へと潜って行った。
『なっ!? なぜ貴様らがここに……よせ、止めろ!』
瘴気の海をドリンクのように飲み込めば、次は群れていた鯨達を締め付け飲み込み噛り付く。
瘴気の海を削られうまく動けなくなった鯨達は抵抗もうまくいかず次々と喰らわれていく。
『……わ、我々は今、何を見ているのでしょうか』
悪魔対悪魔。リーダーの中にいるという三柱の悪魔を操り、同じ悪魔を食わせるその姿はまさしく魔王。
悲鳴を上げる鯨に対し眉一つ顰めることなく、ただその様子を見ていた。
『ぐっ……訳が! くそ!』
十五、あれだけいた鯨が消えて最後。一回り大きいものが残った。
いや残されたというべきだろうか? 先ほどまで暴れていた三柱も少しおとなしくなり、じっとする。
『どうなっている! なぜ人間に悪魔が三柱もいて正気を保っている、何故この海の王が喰われなければならん!?』
「……食い物にされた気分はどうだ、アヴィ」
そこまで見て、ようやく悟った。
リーダーは怒っていた。先ほどまでこちらを見て憤慨していた鯨よりも静かに深く。
だって、あんな顔……帝国を相手にみんなが傷ついた時だってしてなかったから。
『ふ、巫山戯るなっ人間ごときが!!』
激昂し牙を剥いて迫る鯨を見ても、もうリーダーをどうこうできるとは思えなかった。
「……」
彼は一度目をつむり、三柱がその姿を消す。
そしてまた目を開き、右腕を引いた。
その行動はサクリファイス・ハンドの前兆のように見えたけど、そうじゃなかった。
「──」
それは、彼一人を覆い隠すほど大きく、僕たちに聞こえないほどの声で唱えられた。
漆黒の骨で作られた手が、鯨を握りつぶそうと手を広げる。
ようやく追いつけそうだと思えた君がまた遠くへ行ってしまう、寂しい思いがした。
◆
時が止まったと思えるほど一瞬の出来事であった。
流動、ぐつぐつと煮え滾り異物を吐き出し純化する。
血管、皮膚の裏、あるはずもない隙間を通り抜け溜まっていく。同時に、そこから力が発され自分の体が作り替えられていくような感覚がする。
少しの痛みと痒み、成長痛にも近い骨同士の結合部分に点在する違和感。
やがて……反転、全てが「強くなった」と自己を支える声援に代わる。
──……どうだ長久よ、一時的だが身体能力の強化を施してやったが。あぁそれと、この力は我の魂を砕いてる時は使えん。
よほど使いたい時は……あの鯨を完全に取り込めば犠牲にできうる分身体を作り出せるやもしれん。それまで待つがいい
止まったように感じる時の中で、悪魔の声は変わらず響く。俺の意思と体感時間は似ているのかも知れない。
今ならそう、エンゼルブラスターを一人でなんとか弾くことも出来るかもしれない。
……いやダメだなグローブ無いし。あっても改は無理だし腕を折るなりなんなりする気がする。
では目の前の波動球はどうだろう。
トロアに底上げされてよく見えるようになった目で考える。回転、威力、どれとっても一級品だろうか。高校生のバレーの一撃としての質は……考える必要がない。
今は自分に対しての脅威を測ることが大事だ。
──しょっぼいのおコルシア
──……所詮仮契約だ。本契約になれば素手であの天使もどきの一撃を……改ではない方を安全に弾くことは保証する
──いやマジでしょぼいの
グローブがない、手の滑りを抑えられない。方向を逸らせる可能性は高いが、二発も受けたら異常をきたす可能性がある。
ダメだ、このままレシーブするには足りない。
じゃあ足掻こう、出来ることはないか考えよう。いやしっかしあの田石って人の腕ツヤツヤしてて硬そうだ。
まるで、そう……硬く身を守る甲虫の甲殻のようだ。
…………サクリファイス・ハンドは、魂を砕き燃やし対象の勢いを殺す。骨を砕くのはそのための着火剤。まあ骨を折ることでも勢いを殺せるけど、頑張ってドラゴンクラッシュレベル。その上をいくドラゴントルネードやイナズマ一号は無理だろう。
手の骨がもっと硬く強大だったら出力は上がっただろうか?
いま問題なのが、たった一発止めればいいだけのサクリファイスが使えない? 違う、それはフェルタンに任せれば解決出来る可能性がある。
キャッチしてしまう、止めてしまうのが問題だ。
……いやこれはあまり深くとらえないでいいな。殴り飛ばせばいい。
バレーとして、ボールをただ飛ばすわけではない。威力を殺しきり、けれど狙った場所に跳ね返す力を与える。
ある程度、注ぐ力を調節すればいい。コップの大きさに注視して注ぐジュースだ。
かき集める、いまこの場に対していらない部位の力は全て右手に集中させる。
かき集める。かき集める。光も何も通すことのない闇を集める。
かき集めて……──内より外側に出して束ね、形成する。
親、人差、中、薬、小指骨を作る。それら5本を支える土台の骨を作る。
大きさは……円堂さんのゴッドハンドの如く子供1人掴めるほどがいいか。先端に行くにつれ折れやすく、土台は硬く。
作って、操るために手に突き刺す。元々体の内側からあったものだ、痛みも傷もない。
感覚とリンクし、何十倍にもなった手は握るも開くも自由自在になる。
これなるは亡者の手。
肉を無くしただ相手を殺すためだけに作り出されたもの。
黒い骨をいかに効率よく折るか考え構える。
──必殺技の完成だ。
魂の犠牲をなくし、擬似骨と自己骨の犠牲だけでサクリファイスハンドに追いついた。
故に、これをサクリファイス・ハンドとは呼べない、呼ばない。
真なる闇で作り出したこの手を使った必殺技に、俺は新たな名をつけた。
あぁ、出来上がった今考えてみればみんなに心配させない、いい技ができたぞ。
名付けて──
「
……もっといい名前あったかもしれない。
あだ名の方と被ったのは多分……アルゴが最近そっちで呼んでくるからだろうか。
ふとそんなことを思って、笑った。
ダ ー ク ネ ス 部 長 再誕!!
~オリ技紹介~
・ダークネス・ハンド パンチング技
織部長久がサクリファイス・ハンドを改造し辿り着いたもの。
闇の力で作られた疑似骨と自分の骨二つで二段階骨折することで魂の犠牲無しで止める安全な技。
疑似骨でまず勢いを弱め、己の骨でパンチングする。
ゴッドハンドはエネルギーで作り出されたあの黄色い手をクッション代わりにするので発想は似ているね!
ちなみに、疑似骨の感覚もリンクしているため骨折の痛みも二回分ある。
見た目はでっかい骨の手が砕け最後黒くなった手がパンチング
その派手さゆえまさか骨折してるとは誰も思うまい
・デッド・アーテナリー シュート技
デッド・スナイパーに続いてグラサンの技。
作り出したバズーカ砲に弾を詰めて発射するシンプルなロングシュート技。
威力はそれなり。パトリオットシュートのロング版みたいなもんだな。
・天照 シュート技
パワー×スピード は最強だって誰かが言ってた。
エンゼルブラスターを矢にして放つ一撃。
使う度に腕に負担がかかるため連発は出来ないが使えばまず対処は難しい。
名前に負けない、高天原のエースが習得するにふさわしい技だ。