かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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部長、反転した神を討ち滅ぼすってよ編
ミーティングする日


──何度眠っても何度太陽を見ても、あの日の光景が脳裏から離れない。

 

 

 私と兄の関係は、あまり良好な物とは言えなかった。

 ……というより、私一人が勝手に嫌っていたのだけど。

 

 運動も勉強も人付き合いも、兄は少しの努力でものに出来ていた。いわゆる秀才の類だったんだろう。

 こちらはへとへとになって、ようやく勉強だけは追いつける程度。

 

 兄は凄いという憧れがいつしか、心を締め付ける縄となっていった。

 

 兄は家を出た。

 大学を出て、就職をして、ほどなくして結婚をした。出ない理由がないので結婚式に出た。

 兄の友達は多く、会場には私が知らない人がたくさんいた。両親は涙ぐんていた。

 みんなが兄を祝福していた。

 

 私は、祝いの言葉が書かれた手紙をただ読んだ。

 

 人の不幸を願う訳でもない。ただ、羨ましいものだと僻む嫉妬心を飼っていた。

 はたしてその内はバレなかっただろうか。

 ……きっとバレていない、昔から表面を取り繕うのは得意だったから。

 

 それから一年もたたずして、子供が生まれたと聞いた。

 両親は早くも孫が見れた事にまた泣いていた。病院で泣いている二人を見て、よく泣く親だと思った。

 

 生まれてこの方、彼女も出来たことがない私には無理だろうと思っていたからこそ、気になったのかもしれない。

 

 長く生きて欲しい。二人の願いからその子は……長久、と名付けられた。

 年に一度、正月に実家に集まっては大きくなるその子を見た。

 

「おじちゃん、おとしだまありがとー」

「ん、わかんない~! たすけておじさん!」

「かっこいい? ……ありがとう!!」

「おてつだい? しゃーない、やるよー!」

 

 兄によく似て、隠し事一つ出来ない分かりやすい子だった。

 ヒーローにでも憧れていたのか……格好つけて、意地を張る時もあった。けど、全然隠せてなくて。

 

 次第に、幼いころの兄を見ているような気分になり……締め付けていた縄は緩んでいった。

 

 だが就職してすぐのこと。

 元々体調を悪くしていた父が亡くなり、母はショックから立ち直れず、私たち兄弟の事を忘れ次第に弱り、息を引き取った。

 

 そこでようやく、兄弟二人して泣いた。

 長久君も。死んだってことを理解していなかったけど……悲しいという事だけは分かったようで、寂しそうな顔をしていた。

 

 まだ、親を失うという事の覚悟が出来ず、立ち直ることも出来なかった私は……私は、仕事に没頭するようになった。

 仕事をしている内は自分を忘れられるような気がして……無茶なスケジュールをこなして身を削っていった。

 

『もしもし織部さんのお電話ですか? 私──』

──正気に戻ったのは、兄が死んだという一報を受けた時だった。

 

 子供の誕生日プレゼントを夫婦そろって買いに出かけ、事故で吹き飛んで来た車に潰されたらしい。

 神などいないのだと、何故兄が死ななければならなかったと叫びたかった。

 

「──」

 

 私の前には、泣いている子供がいた。

 いつもの彼はいなかった。私を見て一瞬顔を明るくして、すぐにまた顔をクシャクシャにする。

 格好付けに拘る彼なんてどこにもいなかった。ただ外面も気にせず、ずっと泣いていた。

 

 葬式に集まった親類達はやれ可哀想だ、これからどうするのだなどと囁くばかりで近寄ろうとしない。

 ただ遠巻きに眺めていた。

 

 理由は単純で、祖父母を亡くし、一年もたたない間に今度は誕生日に両親を亡くす。

 そんな彼を見て……不吉だと、心のどこかで思ったのだろう。

 

 いつの間にか、私は彼を引き取っていた。

 職場からは遠くなってしまったが……兄が残した家で、彼の面倒を見ようと思った。

 

 ……実に甘い考えだったと、今でも思っている。

 私に子供の世話というのは、ましてや親を亡くし、心に深い傷を負った子を相手にするには……甘すぎた。

 

 長久君は起きている時、前触れもなく泣き出してしまうようになった。

 本人すら止めようがなく、学校に行っている間も授業が碌に受けられないほどだった。

 

「────!」

「落ち着いて長久君、大丈夫だから、大丈夫だから……!」

 

 夜寝ている時は更にひどかった。深夜に突然暴れ出し泣き叫ぶ。怖いと、置いてかないでと、呂律も回らずに繰り返す。

 いくらなだめようとしても彼自身の意識はないらしく、ただ落ち着くまで抑え込む。

 

 次の日の朝、起きてくれば……そんなことは覚えておらず、疲れている私を心配してくる。

 だからこそ何も言えなかった。

 

 こんな日が続き、仕事もあり……疲れは減ることなく、次第に溜まっていく。

 自分自身もうまく眠れなくなり、ボーっとすることも増えた。そんな風になれば仕事でミスをして、また学校から電話が来て、夜は眠れず。

 

 ……限界が来ていた。

 当然、言い訳だ。

 

 

 ある日のこと。

 町内の祭りがあると話す、久々に楽しそうな顔を浮かべる長久君がいた。

 出し物の地図がかかれたチラシを握り、こちらを何度も見ては何かを期待するような目をしていた。

 

 一体なんだろうと、碌に回らなくなった頭で考えて……ああそういう事かと気が付いた。

 

 だから私は──()()()()()()()()

 これで友達と遊んでらっしゃいと、私は何も考えずふざけたことをしでかした。

 財布から雑に出した札を握らせた。

 

「……うん」

 

──あの時の、彼の目を忘れられない。

 

 私に少しずつ頼ろうとしてくれていた、弱々しい手を振り払ったのだと気が付いたのは……随分後の事。

 

 その日から、彼は一切泣かなくなった。

 

 私は、保護者と名乗ることも出来ない人間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーダー、僕もっともっと強くなって見せるから……!」

 

「天照の調整を頼む、帰ったらキーパー役を頼むぞ織部」

 

 泣くよ?

 もう全開で泣き叫びますよお前ら。なんで俺が格上みたいな態度で来るんですか。

 

 いくら見た目派手になってても出力はサクリファイス・ハンドとほぼ変わらないからな! 天照なんぞぶち込まれ日には吹っ飛ぶわ! せめてコルシアグローブとかエマがくれた"元"曰く付き装備をさせてくれ……。

 

 あれと、重りがあればまぁなんとか……いやそもそも天照は動物系じゃないからフェルタンの回復見込めないし受け止めたくないけど!

 

「ダークネスさ~んのいいとこちょっとみたい~へへへーん」

 

「アルゴさん、上機嫌ッスね」

 

「いやぁ、やっぱ彼がいないと始まらないからね~」

 

 ここはホテルの一室。

 今日の反省会をするため集まった16人。エマは少し離れて座っているけど。

 いやー久々に皆と一緒に居られて楽しいけど、相変わらず騒がしい。

 

 こらそこアルゴ、反省中はおつまみ仕舞いなさい。バングに勧めて共犯にしようとするな。食べるなバング。NOと言えない人になるな。

 ……エマはちゃんと座ってるよねトロア、コルシア?

 

──妾の目は欺けん。そんなに確証が欲しければ……もう片方の目もいくか?

──あそこで「私は悪さをしました」と張り紙を張られ正座をしているのは間違いなくエマ本人だ。みろあの赤面具合を、ざまぁみろ

 

 そうか……角とか尻尾生えてる子が正座してるのはちょっと絵面が面白いな。

 

に、にいさーん! ちょっと足がしびれてきたのでそろそろ……

 

 ……まあ、叔父さんに変な術を勝手に掛けたお仕置きなのでもう少しだけね。

 あの後叔父さんにすっげえ目で見られたからな……「いも、妹……???」って。

 あんなに頭にハテナマーク浮かんでる叔父さん初めて見たわ。

 

──途中で魅了を打ち切らせたせいで変に掛かってたな。多分だが「変な子だなぁ」程度で収まるぐらいには認識阻害は機能してるぞ

──エマっちの先手ひっしょー

 

 ううぅ、かと言って解いても面倒なことになるからしょうがないけどさ……せめてもう少し躊躇してねエマ。

 というかもう完全に悪魔だって隠す気が無くなってるよな。悪魔らしさは妹に合わないからってことでその様にふるまっていたと思っていたんだが……。

 

──悪魔のキーパーとかダークネス織部とか呼ばれてる奴の妹なら問題ないかもってとこだろう

 

 さよか。

 

「よし、準備はいいな。──ジミー」

 

「おう、任せとけって! ……えーでは今より、本日の反省会、そんで周りの状況と……これからの目標を立てていくぞ!」

──オーウ!

 

 司会進行は相変わらずジミー。副部長にはいつも助けられております。

 用意されたボードに背番号がかかれたマグネットを張り、今日の試合の流れを確認していく。

 

 開幕、ボールを奪取しエンゼルブラスターを仕掛ける。

 いい流れだが、決まったと思い込み下がろうとも、ボールを弾かれた時のためカバーできる位置にいなかった所とか。

 前半は少し走りも弱かったとか、マネージャー達が撮っていた映像(やたらメアとトールが映ってるけど)を使い分析していく。

 

「で全体的な話だが、個人技……必殺技だけに頼っちまってパスがあまり出せなかった。元々速いパスでって話だったけどうまくいかなかった」

 

「あーそうだったな……どうにも試合になると焦っちまうな」

 

「駄目だーって分かってるんだけど……全体的に見れないんだよね」

 

 ジミーの指摘を受けて頭を悩ませるウリ坊、グラサンのDFコンビ。

 ……やはり経験不足。グラさん自身も周りを見て指示を出そうとしてくれるが、こればっかりは場数踏まないときついのかもな。

 

 今回キーパーだった二号も一年だから試合経験は少ないし……かと言って俺も出せているかと言ったら別だ。

 要望こそ出せるが戦術ではないし。なんなら忖度されて捻じ曲がる。

 

──ただでさえ対人が少ないというのに、規格外エース、サッカーゾンビと普通ではない相手をしているせいもあるだろうな

──……エビチリ食べたい

 

 フェルタン、奴はもう敗退したんだよ……いや、なんかまた会いそうな気がする。怖い。

 

 で、そうだな。特殊な試合が多すぎてまともな経験が詰めていない。

 ただでさえFFをフルタイムで戦いきってないからな。KO勝ち多くない?

 

 ……うーん、練習試合とか組めたらいいんだが。今残っている所で受けてくれそうなところ探そうかな。

 

「意識を変える為、普段の基礎も集団に。あとは重力の倍率も上げて動きを俊敏に、だな!」

 

「さんせーい! 今回あまり活躍できなかったし、次はもうバリバリ止めちゃおう。ねっ、トール!」

 

「そうだな……もっと鍛え上げてどんな奴も吹っ飛ばせるくらいにしねぇとな! ……そうだろ部長!」

 

 やめてくれよ……人には限度があるんだぞ。

 トールの目標は心強いけど、お前とウリ坊に任せると際限なく特訓の難易度が上がっていくからな……。

 せいぜい俺としては怪我をしないようにと忠告するぐらいしかできません。

 

「じゃあ次は……ライバルたちの動向だな! 今日勝ち上がったのは俺達と……何て名前だっけ?」

 

「……木戸川清修中、昨年の準優勝校だぞジミー」

 

「そーそーそれだよ一号! トライアングルなんちゃらって技で大量得点してきたチーム!」

 

「……トライアングルZですよジミーさん」

 

 ……ジミーの記憶力が心配だが、今はスルーしよう。一号とワタリというツッコミ属性の補助もあることだしな。

 零式中を下し、勝ち上がりを進めたのは……以前雷門の豪炎寺さんが属していたところ。

 去年は帝国学園に敗れてしまったが、やはり強者か。

 

 豪炎寺さんが出場しなかったから破れた、という経験を糧に、エース一人に頼り切りだった戦術を見直したのだろう。

 

「そうそう、やぁー格好いいよな! 特にZってところ! 俺もあーんなシュートを撃ってみたいぜ」

 

 珍しい事にこのチーム、三つ子でサッカーをしている者がおり、武方三兄弟という三人が豪炎寺さんが抜けた穴を埋め、強力なシュート技を開発。

 

 ……映像見た感じ、皇帝ペンギン二号より強そうなんだよなトライアングルZ。

 これの相手をするのは……明日決まるが守りの王者「千羽山中」か、それとも脅威の成長率でグングンと力を伸ばしてきたイナズマチャレンジャー「雷門中」か。

 

「で明日は午前に雷門と千羽山が試合だな!」

 

「あぁ……明日は会場に行こう」

 

 ……多分雷門中かな。

 千羽山は確かに守りが硬い……守備二人と協力し発動する、無限の壁という必殺技。

 メアのエンゼルブラスター改なら撃ち抜けるだろうが、今の雷門にはちょっときつい。

 

 しかし、逆に千羽山側はどうしても攻め手に欠ける。

 初見殺しの技として、メアのエンゼル・ブライトの如く、光を放つシュートで目つぶしをする……シャインドライブという技があるが、それが上手くいかなければ対策を取られ千日手だ。

 

 そうなれば、試合の最中も進化していく雷門中が勝つだろう。……今の時点で無限の壁を打ち破る技があるなら、もっと簡単に決まりそうだけど。

 流石に、流石にないと信じたい……。

 

「雷門はキャプテンがかなり前から目を付けておりましたが……順調に勝ち進んでますね。これなら決勝にもやってくるでしょうか」

 

「リーダーが前、東京に来た時にPK対決したところだよね。神の手を名乗る必殺技……ちょっと相手してみたいかな」

 

──お、メアに同意。また打ち破ってやりたいのぅ

──オレンジグミ食べたい

 

 俺が注目しているとか言ったせいか、みんなも千羽山が勝つとは思っていないようだ。

 すまない千羽山。大穴だったら心の中でもう一度謝っておく。

 

 ……そうだ、後で雷門にお願いしたいことを思いついたな。明日試合見に行くついでに話しかけよう。無理だったらワタリを通してお願いしよう。

 

「……で、午後の試合。決まった方が俺達の相手な訳だが……」

 

 トーナメントも進み、残り六校。

 俺達が準決勝で競う相手……そこまで言って、ジミーは言葉に詰まる。

 それが伝染し、先ほどまで騒がしくしていたチームのみんなも静かになった。

 

「──()()()()、が来るだろうぜ。確実に……ありゃやべぇ」

 

「だよなー……やーすっげぇところだなあそこ」

 

 推薦枠、という怪しげな枠よりやって来た集団。

 あの帝国学園の殆どを病院送りにしたという存在。

 

 なにより……グラウンドをえぐり、ゴールポストを大きく飛ばした……エースストライカー兼キャプテン、亜風炉(あふろ) 照美(てるみ)の放つ必殺シュート。

 ゴッドノウズの存在がプレッシャーになっている。ブラックの一撃でみんな身に染みたから余計だ。

 

「……」

 

 更に辛いのが、世宇子中はエース一人だけが強いというわけではない。全員が異様な身体能力、必殺技を持っているからこの間の代之総中のようにはいかない。

 

 そして生物系必殺技じゃないからフェルタンに食べてもらうのも無理だから……止められる気がしない。

 つまりあれだぞ、例え奇跡的に一発止めても回復分を補充出来ないというわけだ。今日の貯蓄分を使っても何度耐えられるか……。

 

 

「──でも、負ける気はさらさらない。そうだよねみんな?」

 

 憂鬱とした空気を吹き飛ばしたのは、メアだった。

 意外だった。こんな時は少し落ち込むのがメアらしかったんだけど……どうやらなんかあったらしい。

 

「……よし、神の力だか何だか知らねーけど……がんばればなんとかなんだろ!」

 

 そうっすねジミー。

 ……うん、ここで止められなくて死ぬかもとか言えません。頑張りましょ、出来たらDF陣で馬鹿強いシュートブロック技とか開発してもらえませんか。

 尽力しますので……。

 

「あ、部長。なら提案! 重力室の特訓、重力10倍ぐらいにしよう!」

 

 やめてウリ坊。

 それ多分君たちは耐えても俺とサッカーマスクズぶっ倒れるから……!

 

 

 助けて?

 

 

  

 




 カラダもってくれよ!! 10倍重力だっ!!!(野沢雅子)

 次回は雷門視点と、いい加減どんなことになってるかの世宇子中視点ですかね。
 まあ書き終わったら変貌してそうなのであまり信用しないで……。

・ゴッドノウズの強さについて
 アニメの描写など考えて色々と判断した結果かなりのつよ技認定してます。
 また、神のアクアを飲みやばやば人間になったアフロディたちのスペックの高さも考え、
威力だけなら
 エンゼルブラスター改・天照<<ゴッドノウズ≦黒龍炎弾<<時間渡航者がやらかした結果のゴッドノウズ
としています。え、メアが神のアクアが飲んだら? そりゃパない事になる。
 また今作品ではマジン・ザ・ハンド、トリプルディフェンスのパワーバランスをアニメと変えたりしています。


~オリキャラ紹介~
・織部叔父さん
 兄の忘れ形見を引き取って育てようとするが、色々と限界が来てしまった人。
 ついでにお祭りの日からちょっとキャラチェンした長久に後悔を覚え、今では育児放棄気味になっている。
 長久は普通に遠慮してるだけなので強く押せば行けると思う。

 妹とか名乗る子が同棲しはじめた……? へぇ、最近の子ってすごいアクティブだなぁ。ぐらいの暗示がかかってしまっている。

 下の名前は必要になったら付けます(土下座)
 

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