かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
これもひとえに皆様のおかげです。ありがとうございます。
また、連載に変えました。
ちなみにこれ、短編からなにか変わる要素あるんでしょうか……?
今回は少しシリアスです。
ですがご安心ください、今作品はコメディです。直ぐに化けの皮が剥がれます((
何を思って僕は「エンゼル・ブライト」と、それを名付けたのだろうか。
輝かしき天使を降臨させようとした。再現しようとした。自然と叫んでいた自分に説明するのであれば、そういう事なのかもしれない。
僕の理想を作るには、天からだけでは足りない。周りにも降り注ぎ、蓄積している光すらも飲み込み、成り立たせた一撃だった。
──だが、出来で言えば首をかしげる物だった。何かが違う、と。
「……驚いた、ぞ」
「ふふ、流石にこの程度じゃ崩せないか」
光が消える。
目眩い程のそれが収まった時、ボールは白煙を上げ、リーダーの両手に収まっていた。ボールは、それなりの熱だけは持っていたらしい。
だが、リーダーの足元を見るに威力は先ほどのジミーくんのものよりも弱々しかったのがわかるほど、少しも土は削れていなかった。
失敗だ。
何がいけなかったのだろうか。キック力に関しては経験者のジミーくんよりも確かに弱かったかもしれないが、必殺技としてはジミーくんのものよりも形になっていたと思ったのだけれども。
「ちなみに、ジミー君の視点からなにかアドバイスとかってあるかな?」
「ほへー……あっ、俺!? えー、っと気が付いたらボール止められてたしなぁ……」
ジミーくんはすっかり呆けていたらしい。これは頼りにならなそうだ。
そもそも彼は必殺技を単なる「強いシュート」として捉えて蹴っていた辺り、必殺技の教師には向いていないのかもしれない。とはいえ、ドリブルやパスカットといった基本的な技術はまだまだ教わることが多いんだけど。
さて、じゃあ次は真正面から受けたであろうリーダーに聞いてみようか。
首を回し、リーダーにもう一度視線を向けた。その時、自分が「誰かから必要とされる自分」ではなく、「誰かを必要としている自分」になっていた事に気が付いて、慌ててその意識を消した。
確かに今は楽しいけれど、そのうち……僕はみんなをがっかりさせなきゃならない。それを自覚しておくべきだと、肝に銘じた。
◇
(自分が生きている事に)驚いています。部長です。えー、あの、なんといいますか。すっごかったですよね。
バッと光って、目がチカチカしてたらいきなり目の前にボールがあったんですよ。あぁこのまま死ぬなって思って、最後抗う気持ちでキャッチしたら、成功しちゃったんです。
えっ、て思いましたね。ちゃんと両手でつかめたからってのが大きいと思うんですけど、ジミーの一撃に比べたら軽いなって。
もしかしてジミーがおかしかっただけで、普通の必殺シュートはこんなもんなのかなって。派手なだけで威力はないのかなって。期待しちゃいましたね。
次第にね、違和感に気が付くんですよ。
あれ、なんか焦げ臭いなって。ふと手元を見るじゃないですか。
──重ねてたはずのグローブが一枚、焼失してたんですよ……、えぇ焼失。燃えて、黒焦げになって足元に落ちてました。
そんで残った方のグローブも煙上げてるんですよ……。あ、これ手の痛覚死んだだけなんだなってわかりました。
中古で千円くらいの安物だったからかなぁ……絶対違うよなぁ。
何をどうすれば物体を燃やすほどの熱を発するんだよ。これ顔面に当たってたら大火傷で死ぬじゃないか。
ボールの勢いで相手を吹き飛ばすとか、そういうものじゃなくて、相手を焼き尽くしてゴールするとかどんだけやばい技編み出してくれてるんですかねメアさん。
エンゼル・ブライト、でしたっけ名前。こう、全てを燃やし尽くしてやるみたいな気概をアピールすべく「エンゼルファイア」とかに変えてみたらいかがかな。「ホーリーファイア」とか。
……なんかボールごと消し炭にしそうだな。やっぱやめておこう。
「リーダー、今のシュート……僕的にはなにか足りなかったと思うんだけど。何が足りないかとか分かるかな?」
ひっぱたくぞマジで貴様。片方叩かれたらその後にもう片方の頬も差し出せよ貴様。
何が足りないって? 優しさだよこんちくしょう! よく見ろよ! 俺の足元にゴミ屑になったグローブが転がってんだぞ!
今粉々になって風に飛ばされたけどな!
「……お前は、何を目指しているんだ?」
お茶濁すしかねぇな畜生。そもそもシュートなんて点さえはいればなんでもいいだろ。
あっ、やっぱり今の無し。キーパーに少しも触れず決められるような、キーパーに優しい技がいいと思う!
「……そうだね、どんな守りも通用しない。貫き通す力を持った一撃、かな」
「そうか」
なるほど、熱を持って全てを溶かし突き進む気か貴様。ドラゴンボ〇ルの悟空だってそんな惨い技使わねぇ──いや龍拳があったな。あんな感じで腹突き破られるのかな。
贓物まき散らさない為に次からサラシ巻いておこ……。
で、何言えばいいんだ。正直熱量高めればもう完成だろこの技。そもそもボールにどうやって熱量持たせてるかも見て分からんかったけど。
「……勘だが、いいか?」
「うん、お願いするよ」
俺の返しに、特に考えもせず答えたメア。なんか適当なこと言えば勝手に昇華しそうだこいつ……。
技の工程を並べて試行してみることにする。
~簡単! エンゼル・ブライトのやり方~
1.ボールを浮かして(この時点でおかしい)力をためる?
2.蹴った瞬間にボールに溜めておいた光で目つぶしする。
3.トドメに極熱になったボールで全てを溶かしまっすぐ進む。
結果:俺は死ぬ。
だよな。どう見ても全部理解しがたいんだけど。
貫き通す、という事だけ特化するのであれば……2の目つぶしがいらないのか?
仮にだけど、そのせいで納得のいく技になってないとしたら……。
「……蹴った衝撃で、せっかく溜めた光が漏れてしまっている」
「──っそうか、通りで威力が出ないはずだ!」
どうやら、お眼鏡にかなう答えは出せたらしい。すっきりしたといった表情でメアは自分の手をポンっと叩いた。
ほんとにやる奴いるんだなそのリアクション。
「となると、蹴っても壊れない程にボールの外側を強化すべきなのかな……? いやでもそうすると結局溜まった力を使ってしまっているしな」
「……いっそ、ずっと光ってればキーパーも反応し辛いんじゃね?」
お、いいぞジミー。そのままメアの必殺技を、光らせてキーパーを素通りする技に修正してくれ!
なんかこのままだと物騒な必殺技が誕生しそうだ。
「……いや、それはちょっと僕の趣味じゃないな」
畜生!
駄目だってよジミー、せめてお前は俺を労ってくれるような技を開発してくれ。くれぐれもメアと同じ方向に行くなよ!?
「そっか、まぁそうだよなー。さてとっと、次は俺の番だな! 今度こそぶち抜いて見せるぜ部長!」
やめてくれよ……。お前多分チームの中で一番キック力あるんだからな。
メアにその提案できたならお前もそっち目指せしてくれよ。頼むから。
「技名くらいは考えた方がいいよな……うーん、ん?」
「──!!」「──!」
そうして、ジミーが俺をどう殺すかの技のイメージを育んでいた時であった。
遠くの方の騒ぎが耳に入ってきて、思わず三人ともそちらを向いた。
グラウンドの反対側でトール達と誰か──恐らく俺たちと同じ中学生が話しているようだが……少し、穏やかではない。
一触即発、トールのほうなど今にも相手に対してつかみかかりそうな雰囲気だ。
俺たちは顔を見合わせ、直ぐにそちらの方へと走りだした。
◇
今にもはちきれんばかりの怒りに震え、何とか抑えているトールを庇い、ウリ坊は立っていた。
その小さな体でもひるまず、「練習中にいきなりボールを蹴り込んできた」集団に対し、吠える。
「なんなんですかあなた達は、僕たちの練習をいきなり邪魔してきて!」
「──はっ、我々『高天原中学サッカー部』の第二練習場を勝手に使っているから注意してやったのだろうが。ありがたく思え」
「高天原中学、フットボールフロンティアの常連校じゃないッスか!?」
騒ぎを聞きつけて早期に駆けつけてきていたバングは唸る。確かにこの河川敷の近くに学校は存在するが、まさかここを拠点にしていたとは。
怯む彼を見て、高天原中の面々は顎を撫でる。しかし、それに待ったをかけたものが居た。
グラさんだ。
「待ちな。こっちが調べた限り、ここは早い者勝ちの公共の場だ。予約も占有もないはずだぜ?」
何の情報もなしに来たわけではない。今回は先にやってきていた自分たちに使う権利があるはずだ。
そう、グラさんには武器があった。
だがしかし、それを聞く相手ではないようである。
「それがどうした? ここはずっと我々が使っていたんだ。新参者が使っていいわけがないだろう」
ルールとは自分である。そう高らかに宣言した彼に対し、ウリ坊の怒りは更に高まった。
「横暴だっ! そんなんで邪魔していいわけないだろう!」
「知ったことか……これ以上俺たちの邪魔をするなら、力づくでどいてもらうほかないがな」
そう言ってリーダー格、集団の中で1人だけユニフォームが違う男が他のメンバーに目配せすると、それに従い部員たち──主力格を除いた、雑用などをさせられているのだろう、いわゆる二軍連中と推測できる──が習合サッカー部に近づいてくる。
それが、彼の怒りを最高潮に達する原因となった。
「──やってみせろよ……アァ!?」
「おいよせトール! 暴力沙汰なんて起こしたら地区予選にも出れなくなるぞ!」
トール。身長はその年齢にして180を超え、横幅も大きい。巨漢と評するに値する男。
また厳つい風貌が故か、頭に血が上りやすく喧嘩っぱやいとも言える男であった。そんな彼がボールを当てられて、今までもっていただけでも奇跡に等しかった。
前にいたウリ坊を避け、彼は構えを取った。
溜まりに溜まった怒りが今、拳によって解き放たれようとしてる。その様を見て、一番慌てたのはグラさんだ。
相手は恐らく暴行に値しない程度、つまり体を抱えるなどして強制的に排除しようとしている。
その行為を写真等取って、バラまいてしまえば十分な材料になるかもしれないが、逆にその際「暴行を振るわれた」なんてことになったら目も当てられない。
相手側は嬉々としてその情報を広め、最悪自分たちに待っているのは廃部という終わりだ。だからこそ、止めなければならない。
だが、高天原のリーダー格の男もそれに気が付いてしまったらしい。わかりやすすぎるほどに、態度に現れた。
「っふん、随分と血気盛んな奴もいるもんだな……そんな奴が部員だなんて、碌でもない部だな」
「ぐっ……」
トールだって分かっている。殴ればただでは済まない。
昔とは違う、今の自分には責任を同じにする仲間がいる。だから食いしばって耐えようとしている。
「習合中学校だったか? サッカー部もなかったはずの所の奴が何を勘違いしているんだか。
お前らは……その辺の隅っこでボール遊びしているのがお似合いなんだよ」
「……ハァ……ハァ……ッ!」
だが、どうにも衝動を抑えきれない。血が頭に上る。
思考がおかしくなる。目の前の奴はムカつく、だから殴りたい。ぶん殴って分からせたい。欲望が頭を支配する。
握りしめた拳から何かが、液体の様なものが垂れるのを感じた。
「学校が学校、部が部なら……お前らの部長とかもくっだらないやつなんだろうなぁ!!」
「──ッ!!」
リーダー格の男の最後の言葉に、トールの拳が振り下ろされた。
雷が落ちたと思わせるような轟音が、響いた。
◇
「……何の、騒ぎだ」
──そして、
「部長……」
トールがすごい申し訳なさそうな顔で見てくる。
ただでさえ火傷して感覚死んでる手だと腕にもろに衝撃が来るからやばい、折れたかもしんない。でも言ったら絶対引きずるよなこいつ……え、てことはその状態隠して練習続けなきゃいけないって事?
やばすぎない?
助けて。
ノ ル マ 達 成
なお特にノルマではない模様。
試合するはずが上手くいかなかった、提訴。
次回は予定を変更して「泣くな部長! 炎のPK対決」が始まります。
今度こそ死ぬかもしれません。
~選手紹介~
・トール DF 3番
いわゆるいろんなチームにいるガタイのいい奴。
昔は喧嘩ばかりしてきた一匹狼だったそうで、鍛え抜かれた筋肉は鋼の如く。
その腕力は部長の骨に甚大なダメージを与えられるほどだぞ。
短気だし騙されやすいけど、最近は割と我慢を心掛けていた。