かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
そしてこちらはしゅう様に依頼し描いていただけた、FW10番、一時はひねくれていたクソカネモチ坊ちゃん。
帳塚 望くんです!
→
【挿絵表示】
モテます(血涙)
「くっ、下がれみんな! 豪炎寺たちもだ!」
鬼道の掛け声が響いた。
攻勢に出ようとしていた俺たちの足を止めた、加賀という選手の必殺技のすぐ後の事。
鬼道を相手にも互角どころか優勢であった一之瀬が、成す術もなく止められた。水中へと引きずり込まれたかと思えば、次に出てきたのは……獰猛な獣を思わせるように息を吐き出して走り出す敵の五番。両眼を隠すその前髪は、まるで牙の様。
ディープバイト、そう誰かが呟いていたが……一体どんな必殺技なんだと考えている時間もない。
刻一刻と、戦況は変化していく。ただ立っている何て選択を取れるわけがない。
『加賀はそのままサイドを駆け上がっていくぅ!』
「おい豪炎寺!」
「っ、すまない!」
反対側で上がって来ていた染岡に声をかけられ、すぐ走り出した。
だが、
『雷門イレブン、直ぐに取り戻そうとするも追いつけないか!?』
差は縮まらない。
俺達が遅いというわけではない。
少なくとも、忍者を養成する「戦国伊賀島中」の時よりも特訓を重ね、25kgの重りでランニングを重ねた今、かつて木戸川清修で走っていた時よりも格段に動きがよくなっているはずだった。
それでも追いつけない。ボールを持っているはずだというのに碌に減速するそぶりもない。
「これが習合か……!」
彼らの動きははっきり言って、異様だった。
鍛え上げたのだろう足腰から来る、地に根付いた重さを感じる、揺るがない足さばき。けれど一度走り出せば俺達を置き去りにしていく。
最高速はあまり変わりがない、では何が違いを産むかと言えば……加速度だ。
瞬発力が段違いで、一瞬のうちに彼らは最高速に達する。ボールを蹴っていようがお構いなし。
「通さん!」
「一之瀬の敵討ちだぜ……!」
だからこそ、追いつくには風丸の様な俊足か……土門の様にあらかじめ進行方向を塞いでおくしかない。
フィールドベンチ側サイドで二人が道を遮り、加賀の行く手を阻んだ。その後ろからは俺達が走ってきている。
逃げ場はない、はずだった。
「……っ」
「なっ!?」
何を考えたか、カガはボールをその場に残し後ろに飛んだ。
また新たな必殺技か、そう体が強張った隙を、一陣の風がかっさらう。
一瞬のうちに、置いてあったはずの場所からボールが消えた。
「──フッ、いいパスだカガ!」
数秒の内、土門たちの背後を走り抜けている蒼が見えた。
……7番、自分の事をソニックと呼称していた男の背中が見えた。
『……!? な、なんという速さ!? 7番、
「くっ……アイツ、怪我はもう完全に治ってるって訳か!」
置いてかれた風丸がすぐに追いかけるが、それでも最高速に乗った奴には追い付けない。
……迅
その姿を見た風丸がひとり、知っている人間がいることに驚いていたのを思い出す。
栗松たちに尋ねられ、返ってきた答え。じっと迅から目を離さずに零した答えを思い出すのは容易だった。
──小学生記録をいくつも塗り替えて、将来は陸上の期待の星と噂されていた人間だ。……でも、怪我をしてそれっきり。話も聞かなくなった
風丸も元は陸上部の人間。その速さは先ほど思い出した戦国伊賀島にも通用したほどに鋭い。
だが、それでも……たとえ風丸が直ぐに最高速を出せたとしても追いつけない。スピードの限界の差がそこにあった。
「あわ、あわわわでヤンス~!」
「は、はやすぎっス、どうすればいいんですかー!?」
「落ち着け壁山、栗松! コースを塞ぐように立つんだ!」
栗松と壁山では到底追いつけない。待ち構えようにも、縦横無尽にフィールドを走り回られては防ぎようもなかった。
円堂の指示も虚しく防御の陣形がかき乱され……やがて、ゴール付近まで近づくと奴は大きく左足を振り上げた。
決して立ち止まらず、左足を軸とし、誰も追いつけない速さを乗せたシュートが放たれた。
「これで、どうだ!」
『雷門ピーンチ! 迅のシュートが迫るがどうする円堂ー!?』
「っ!? なにくそうっ」
サイドから逆サイド、ゴールの角を目いっぱいを狙った一陣の風。
スピード任せではない、テクニカルな一面を備えた一撃が……ソニックを正面に構えることが出来た円堂の反応を一瞬遅らせた。両手を、体全体を大きく伸ばし斜めに飛んだが……。
「遅い!」
一手、遅かった。
ボールがグローブを擦れて過ぎていくのが見えた。
「やべっ──」
『これは……残念そして雷門にとっては幸運! ポストに助けられました!!』
見えて……数瞬後、強く音を立て、ゴールポストに当たり跳ね返る。
間一髪、狙いが逸れたらしい。栗松たちはほっと胸をなでおろしていた。
だからこそ、
「……ふっ」
「……? (笑って、いる?)」
悔しがっていない、迅たち習合の姿が酷く不気味に思えて……跳ね返ったボールを目で追う。
ボールは高く、高く撃ちあがり……天へと吸い込まれるように昇っていき……やがて、発光する。
直視するのが難しい程の光量を放つボールは、力の主人の元へと飛んでいく。
そこには、
『い、いや違います……なんとこれは、ポストへの当たり方を計算して放たれたパスだー!?』
「──光よ、我が身から溢れよ……助けを求め、天仰ぐ人々へ!」
光り輝く、11番の姿が見えた。
羽ばたき風を起こす二対、神々しく輝く翼。薄く形を取りなしている一対、頭上に円を成そうとしている光。
それは何度も映像で見た、習合のエースストライカー、勅使ケ原の……。
「エンゼル・ブラスター……改!」
天使の名を持つ必殺シュート!
華麗な踵落としと共に落とされた光弾は、円堂を貫かんと迫っていた。
あれはゴッドハンドでは防げない。例え両手でも。
「……すげぇ──ならこっちも!」
だから、
その直感は円堂も同じだったようだ。
腰を落とし、右手を構えるその姿は以前と変わらないように思えるが……違う。
「じいちゃん、やってみるよ」
『対する円堂はゴッドハンド……ではない!? 新必殺技かぁ!!?』
かつてよりも広く足幅を開き、歯を食いしばり右手を……突き出すというよりかは、ボールに向かい掌底打ちするという方が正しいだろう荒々しさ。
神々しく誰かを救う光ではない。敵を打ち倒し叩き潰す雷だ。
力強さを感じさせるその技は……まだ
かつて円堂のお祖父さんが編み出したという、幻の必殺技。
名は……。
「──
神を越える、魔神の手。
天使も悪魔も神さえも相手取るにふさわしいだろう。そう思えた。
◆
歩く。一歩、また一歩進むたびに体が揺れて、声が響く。
静かな世界にただ、絶対者の言葉が存在する。
それが、ひどく心地がいい。
空っぽの心に潤いを与えてくれるオアシス。それさえあれば何処へだってすすんでいけるだろうとも思えた。
──聞こう、FFで頂点に立つ者は誰か
当然、我々
神の力を得た僕たちに、敵うものなどいるはずもない。
例えなにびとであっても、人である限りは意味がない。
──私に栄光と、完璧な勝利をもたらすのは誰か
当然、我々世宇子中だ。
腑抜けた帝国を見限り、僕たちを選び力を与えてくれたお方、影山総帥を裏切るなどあり得ない。
期待された通り……いや、それ以上の成果をこなして見せると思うのはごく自然なことだった。
──完璧な勝利とは、一切の泥臭さも、何もかもがない事だ。僅か0.1%の負けもない事だ。戦いとは、始まる前から決められている
総帥は語る。
戦いとは、いや神と人との間に戦いなど成立しない。ただ力で、威光で全てを押しつぶし、草の根一つ残さずに君臨するのだと謳う。
その為の絶対的な力、指導者。
当然だ、この力があれば何ら難しくない。僕ら十一人、なにがあろうと負けるはずがない。
だから……だから。
『……ふふふ、とーってもいい子たちですね。それじゃあ~あ、こちらをどーぞ? マネージャーからのドリンクです』
『……私の考えに共感するものにのみ、神のアクアを……、それを更に精製した……
青髪の子が注ぎ入れたグラスが渡される。我慢せず奪い取りたい気持ちを抑え、ゆっくりと手を伸ばす。
あぁ、ようやくだ……!
まだ口にしていないにもかかわらず体は快感に打ち震え、渇きを知らせていた喉は歓喜する。
目の前のグラスには半透明な液体が注がれている。
凡人にとっては単なる濁り水にしか見えない、至高の飲み物がそこにある。
以前飲んでいた神のアクアとは比べ物にならない程の絶対的力を与えてくれる力の源がそこにある。
志を同じとする者達と目を合わせるという考えすらなかった。
容器を手に取り、ただ一滴も零してなるものかと傾けた。
──反転する。
生死が、万物が、ぐるぐる回って雲の中を飛んでいるようだった。
燃料が切れていた体に流れ染みて、動悸が激しくなる。血を送り出すはずの臓器が神の力を流す器官となって、全身に流れていく。
溶ける、溶ける、体の中の凡俗だった少ない部分が溶けだして消えていく。
アフロディと言う神の力を得たものへとなり変わって行く。
『……ふふふ』
誰か、女性の声が聞こえる。あぁマネージャーだった、気を付けなければ直ぐに意識から消えてしまうような儚い女性だ。
彼女が来てから、超神のアクアが渡されるようになった。偶然だろうか。
それと、彼女が持つボールは少々カラフルというか、なにかおかしいような……、
──まぁ……どうでもいいか。
酷く、心地が良かった。
ずっと続けばいいのにと思っていたのに。
「……?」
覚めてしまった。冷めてしまった。
気が付けば僕はどこかの町並みの花を眺めていたのだと気が付く。
……ええと、そうだ。
今日は確か習合と、雷門の練習試合があるから、丁度いいだろうと思ってお話しに……うんそんな感じだった。
参ったな、その途中で道草を食ってしまったか。
「……まぁいいか、間に合わない訳でもないだろうし」
これは任務ではない。単に僕たちと戦おうと無駄に足掻く者達を救おうと思っているだけ。
神としての力を得た者にのみ許される慈悲。
この慈悲から零れてしまうものが居たとしても、それは仕方がない事……おや?
そんな風に考えていると、道の先に……うん。何やら奇妙な三つ子が歩いてきた。
「──はぁ……どうするよ。俺達のトライアングルZが全く通じなかったー……みたいなぁ?」
「僕の計算ではあそこまで力の差があるようには……」
「監督に呼び出し食らっちゃったし、一先ず学校に……」
制服からして……えーと? 木戸川清修、だったかな。
……彼らも可能性として決勝に来るかもしれない所だったはず。
「……ん、おいあそこにいるのって」
「世宇子中の……?」
うん、じゃあ彼らも──救済の対象だ。
いやあ本当に丁度良かった良かった。
一歩、跳ぶ。
「なっ、消え──」
何故か固まっている彼らに近寄り、話しかけた。
「──
憐れな人たちに手を差し伸べるのも、神の仕事だからね。
土下座の準備は出来ている。
アフロディ、世宇子中ファンの皆様に申し訳ないと思う気持ちは確かにある。
けれど、まあいいかと思い決行する自分がいた。
~オリキャラ紹介~
・迅 颯(じんはやて):ソニック MF7番
陸上期待の星が悪魔のサッカー部の一人になっていた。きっと陸上協会は泣いている。
名前がようやく付いた。
めちゃ早い。未来人による強化前世宇子相手ならヘブンズタイム(超高速移動)にも喰らい付ける。
~原作知らない人へのサポート~
・マジン・ザ・ハンドって?
アニメではFF編最後に完成した、神をも越える魔神を出す技。
エイリア学園相手ではスピード不足で使えなくなってしまったが、その力は絶大。
鍛え上げた足腰ととあることを行う事で完成する。
現在、円堂は重り特訓でアニメより鍛えられていたため木戸川を前に「あと一歩足りないマジン・ザ・ハンド」を使用できる。
その力は未完成ながら、自分を抜いた監督、鬼道、豪炎寺による「イナズマブレイク」と同等。
つまり強い。
フェルタンステイ。
・青髪の世宇子マネージャー
世宇子のマネージャーって夢小説の主人公とかでいそうですよね(無知)
未来製のボール型多機能・時空コントロールユニット「スフィアデバイス」で洗脳、コスプレなどなどいろいろできる。
また、未来技術を使い神のアクアを改造したようだがその目的は……?
・神のアクア
製法とかゲーム見ても何もなかったので、今世界観では「宇宙より降り注いだ不思議な紫色の石に長時間浸した美味しい富士のお水」ということにしています。
一体ナニリア石なんだ……!