かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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 仕事が休みになったりならなかったり腰痛用マットレスが駄目になってて腰が逝ったりしましたが一万円もする椅子を買ったので元気です



契約確認する日

 

 

 

 

『またまた得点! 3-0で習合大きくリード! そしてホイッスル、ここで前半終了です……!』

 

 笛と実況の声が響いていた。疲弊した雷門イレブンを後目に、皆がジミーに駆けだしていく。元気だなぁ……。

 俺? 途中で一度放たれた黒龍炎弾止めるためにダークネス・ハンドと頭突きとドミネーションして疲弊MAXだよ。

 ちなみにドミネーションはメアへのパスとして使ったから得点はしてないぞ。そんでメアもやっぱりうまく必殺技を合わせられず。

 

 つまりこの三点は全部ジミーの仕業だ。怖い。

 あとハットトリックおめでとう。

 

──ナガヒサーおかわり所望

──手はフェルに治してもらい、コルシアの力で足は怪我もないではないか。何を言うとるか怠け者め

 

 あぁん!?

 ダークネスの方は体感三回分の骨折の痛みがあるし、ドミネーションは怪我しなくなったけどそれはそれとしてかなり痛いんだからな?

 頭突きした後は意識も薄くなるし、もう体力赤ゲージなんですけどぉ!?

 

 ……いや雷門を相手にしてこれだからかなり軽傷なんだろうけど。黒龍炎弾はトールが雷鳴一喝ぶつけてくれたからかなり余裕もって防げたし。滅茶苦茶熱かったけど。

 

──衣の中の肉汁がジューシーになっていた。またたべたい

 

 さよか。

 そんでキーパーの円堂さんがゴールから離れられないから、例のイナズマブレイクも打ててない。

 これは……さては勝ち申したな?

 

「やったぜ!」

 

「ナイスシュートだぜジミー! これで3点目だ!」

 

 グラさんとジミーが肩を組み合い笑っている。ちょっと楽しそうで羨ましい……じゃなくて、いやその……活躍しているのは喜ばしい事なんだけどね?

 吹っ切れたせいか、もう本当に手が付けられなくなっているといいますか……見ろよジミー、背後に隠れているワタリとメアの顔を。

 福笑い失敗した時みたいな顔してるぞ。

 

ねぇ、僕たち……いる? これ

3点目、殆ど一人で駆け上がっていった気がするんですが……2点目の時なんてあの部長のシュート合わせてダイレクトボレーしてましたし

それだよ……僕まだ全然合わせられないんだけど

 

 仲間が吹っ切れた喜ばしい気持ちと規格外のジミーの活躍に、皺くちゃになったピカチ●ウみたいな顔をしている。うける。

 ファンクラブの奴らには見せない方がいいぞ。頑張れ。

 あとドミネーションに合わせてのボレーは本当に驚いたな。構えてた円堂さんの必殺技間に合わせずぶっ飛ばすし。

 

「よーしこのまま押しきんぞ! ジミー、ウリ坊!」

 

「だな、トール! おっ部長、どうだジミー様のご活躍ー? フッフッフッ!」

 

「いぇーい部長いぇーい!」

 

 おっどうしたトール、ジミー、ウリ坊。早く休憩を……何故こっちに来る。

 ははは、そのままの勢いで抱き着いてくるな。ウリ坊は突進の構えを取るな。お前らの身体能力のやばさなんとなく気が付いただろ──ぉお゛ぅ゛っ!

 やめろ絞めるな死ぬ、呼吸が……! 上から下まで攻められて限りある体力が消えていく……!

 

あ、いいなあれ……こうなったらなんとしてでも真エンゼル・ブラスターを完成させないとだね。あと部長との合体技も早く完成させないと……名前決めた方がやりやすいかな? うーん蛇、龍、狼に合わせる様な……違うな総称して闇の力として扱って……カオスブラスター? なんか違うなぁ」

 

「私としてはフェイントの強化と……シュート技もそろそろ考え……聞いてませんねメアさん」

 

「ブラスター・ザ・エンゼル&デビル……長いな。正負の力が合わさり零になって、ゼロブラスターいやうーん? ダークネス・レイ……悪魔と天使って感じはあるけどしっくりこないなぁ。光と影が生まれたことをなぞらえて……ビッグバン、スーパーノヴァ。ギャラクシー……ギャラクティカブラスター……。うーんそもそもこれは失楽園に進化させるための技でもあるから……」

 

 なんかラスボスとかが使いそうな名前一杯考えてないで。

 お、おいそこ和やかに談笑し始めてないで助け……助けっ、ああもう駄目だ。

 コルシア、闇の力を使うぞ! ダークネス・ハンド作って下半身に執拗にタックルを繰り返すウリ坊だけでも持ちあげる!

 唸れ俺の右手、凶暴すぎる仲間をつかみ取れ。

 

──あのなぁ……

 

「わぁっ!? あははっ、冷たい!」

 

「ボス、それサッカー関係なく出せるのか……というか出せていいのか? すっげえ禍々しいオーラを感じるんだが」

 

 クレーンアームみたいなことして摘まめばウリ坊がはしゃいでいる。……やめて叩かないで!

 上手く動かすために触覚、ひいては痛覚つながってるんだよそれ!

 

──ところで、そろそろ一週間になるが……本契約するか? 具体的な変化は、貸し出している力の量が二倍になる。勿論我の力が増すたびに総量も増える

 

 え、ああそうかもうそんな時期か。いやーどうするかと言われても、もうこれを手放す気がない。

 エマと一緒に買い物行った時、エマから目を離すとあり得ない量を持って来て……指が千切れそうなくらい重かったからつい使っちゃったけど、あれは楽だったなぁ本当に。

 他にもちょっと届かない棚裏に落ちたものとか取ったり……闇の力が便利すぎる。

 

 なるほど、お試し期間と言いつつ力の深みにはまらせるコルシアの商法にまんまとはまったわけだな。

 

──……我の力を何だと思ってるんだお前は? あと買い物の帰り道の時、小さめに作ったつもりかもしれんが……ご婦人達がひどく怯えた目で見ていたぞ

 

 言ってよ!? バレるなよーって思いながらの帰り道だったんだからな!? もう回覧板とか回しに行けないじゃねぇか!

 マジックアームとして使っている件に関してはごめん。梯子取ってくるの面倒でつい。

 それでええと、本契約はしたいんですけど……お高いんでしょう? いきなり四肢が折れたり、寿命減らしたりしそうで怖いな。

 

──ははは間抜けめ、貴様が早々に死ねばまた宿主を探す羽目になるのだ。貰っても旨味の少ない代償など要求するか

──寿命はとっちゃだめだよーナガヒサは長生きしないと―

 

 そうなの? じゃあ一体何を要求するんだ? 晩御飯に果物追加とか……喜ぶのはフェルタンだなこれ。

 疑似骨で何度もウリ坊を高い高いなどしたりしている間に話を進める。

 

「ちょ……ちょっとぶら下がってみて良いッスか?」

 

 あっこらバングも掴んで来るな。持てる量は俺の腕と同程度しかないから二人は……いやそもそもウリ坊一人でも重いけどまだ小さいから軽いのであってお前は中学生の適性体重──そんなキラキラした目で見られたら断れない。

 何も言わないのを是としたらしくバングが疑似骨に掴まり足を地面から離した。

 肩が、肩が!

 

──求めるのは当然、怨嗟と苦痛。まぁお前なら試合に出続ける限り稼げるだろう? 故に、契約内容は──だ

 

 騒ぐ現実の光景とは裏腹に、コルシアはゆっくりと口にする。

 それは……なるほど理解した。中々に重い内容だ。

 

 ──まぁ払えないわけじゃない。今後の人生に大分関わるけど……いいよ、払おう。

 

──本気か? そんな簡単に決めていいことではないと思うが……

──フェルははんたーい

──妾はさんせーい

 

 二対一なので可決だな。

 ははは、しゃーないだろ。これないと今キーパーやるのもきついくらいだし何より、世宇子中の相手ができないんだから。

 しゃーないしゃーない。ベンチに置かれたままなんて嫌だしな。

 うん……契約する。

 

 だから──早く力貸しくれ。

 ……バングがぶら下がってるせいで本当に右腕が死にそうなんだ。

 

──最後の確認だ。これは我が力を貸している限り決して破ってはいけない契約。例え貴様がもう力を要らないと突っぱねようが──

 

「に、兄さんもしよかったら私も──」

 

「リーダー! それ僕も……というか乗るね!」

 

 二人の悪魔の言葉を遮るように、断罪者が現れた。絶望しかない。

 頼む持ちこたえてくれコルシアの力。じゃないと三人分の重みが俺の本物の手に降りかかって──

 

──むぅっ!? 天使擬きが来たぞ総員防御じゃ!

──ぐぇぁぁ! 浄化されている!? こいつまた天使に近づいて──ひっぺがせ長久!

──うぇー……いやな記憶おもいだすぅ……

 

 あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!

 

 シュワシュワしている! メアの体に秘められた光が疑似骨を溶かしている! 酸とかに手を突っ込んだらこんな感じになるのかな!?

 消えていく、闇の手がぁ!! 徐々に筋肉に負荷が増していく……あぁぁっ!

 重い、痛い、痛い、重い、痛重い!

 

 

 

 助けて!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マジン・ザ・ハンド……!」

 

 その手は未完成だ。けれど知っている、その手が完成した暁には……我の炎龍の一撃だろうと防いでしまう。それほどポテンシャルを感じさせたものだということを。

 だから天使小僧の一撃を弾いたのも頷けたし、むしろそうでなければ困ると思ったくらいだ。

 雷神が進化することこそが、雷門の守りを盤石にする最短であり最良の結果だと思っていた。

 

「その技はもう何度も見たぜ……!」

 

 思い出す。

 入ったばかりの我に対し、暑苦しい程の笑顔で自慢をしていた奴を。亡き祖父が残したという秘密ノート。

 字が汚すぎて碌に読むことのできないページを開き興奮していた奴を。

 

 我の必殺シュートを五本ほど打ち込んだ後だから頭でもおかしくしたかと思った。

 ついでにもう三本ほど打ち込んでやった。随分と丈夫なバカだった。

 

『爺ちゃんの特訓ノートによると、ゴッドハンドを越える最強のキーパー技……!

手を掲げ……とか腰を落とす。()()()()()()()ってところしかわからないけど』

 

 そう言って奴は、心臓の辺りを汚れたグローブで軽く叩く。ノートには、左胸の辺りには鉛筆で汚く何重にもぐるぐると書かれた円が。

 ここがポイント、その見開きの中で唯一読める字で大きく書かれたそれが重要だというのは分かったが……。

 

 肺活量のことだろうかとプールに重り付きで沈めたみたり、

 胸筋のことだろうかと円堂の両手を五人五人で左右に引っ張り地獄の鬼のごとき所業をしてみたり、

 心臓のことだろうかと灼熱サウナと氷風呂を行き来させてみたり、

 

 せいぜいこのキャプテンは不死身か何かか? と疑問に思う結果しか出なかった。

 

 結局のところそれはどういう意味だと誰も理解できず、故に手を天に掲げ腰を落としといった他のことしか奴はマスターできなかった。

 それが今の不完全な必殺技。

 

「ぐっ、重い……!?」

 

『え、円堂なんとか上条のシュートを弾いた! ボールは高く宙へ!』

 

 だからといって、何も発現していないただのシュートと相打ちになるとはどういうことだ。

 ジミーと呼ばれた選手を、上条のことを見ていた。はたから見ても異常性は見受けられない。

 強者ゆえのオーラも、怪しい力の存在も、賢きものが使う技術の匂いもしない。

 

 だが恐らくは習合の中で一番のストライカーは奴だ。

 

 悪魔も天使も抑えて、ただの人間が一番だ。

 本当に同じ人間かと疑いたくなる。

 

 ……ともかく仕事をしなければならない。空にボールが飛んだという事は天使小僧の可能性が高い。目の前にいる銀髪からマークを外さないようにする。

 

 だが違ったらしい。

 視界の端、シュートをした後だというのにすぐさま高く跳んだ奴の背中が見えた。

 

「むっマズ──!」

 

「一回これ、やってみたかったんだよ……ねっ!」

 

 頭を地に向けたオーバーヘッドシュートが落雷の様に叩きつけられた。

 マジン・ザ・ハンドを使ったばかりで消耗している円堂の足元を通り抜ける。

 

「あぁっ!?」

 

『またまた得点! 3-0で習合大きくリード! そしてホイッスル、ここで前半終了です……!』

 

 ゴールを決め気持ちよさげに腕を振り上げるストライカー。

 着地もいつの間にか済ませ、高く跳んだ後だというのに何も気にせずフィールドを駆けまわり喜びをあらわにしていた。

 

 そして奴を囲む習合の者ども。

 副部長という肩書が、天使小僧と両翼の位置に置かれたFWという意味が、今ここで漸く理解できた。

 奴は化け物だ。部長が人の身を止め悪魔の力に手を染めようとしているからこそ余計に際立つ。

 恐らくは数年後、プロの世界を大手を振って歩く姿を幻視する。

 

 ──だからと言って、折れるわけでもない。

 

 我は誰だ?

 このままおめおめ祖国に帰り、敗北から何もを得ずに戦うつもりはない。

 

 我は「助っ人外国人」だ。

 そんな肩書を持つ我の心の炎が燃え上がる。

 全体を見回し、何かできることは無いかと頭は回り始めていた。

 

「……やはり正攻法の力押ししかない、カ」

 

 我一人でコースを狙ったところで対処されて終わりだ。鬼道などに任せても習合のDFに食われる……我一人では少し厳しくなっているほどに成長している。前提として「我を含む複数人が切り込む」必要がある。

 

 現段階で、雷門の最高火力は我の黒龍炎弾。準じてトライペガサス、イナズマブレイク。だが後者二つは円堂がゴールから離れないと行けないから駄目だ。こんなのは試合終了間際にしか使えない。

 我が円堂の代役をしても、結局は三人で一斉に蹴る技ではバランスを考えねば崩れるのみ。

 

「技の進化……簡単に出来るのはアイツラ習合くらいなもんネ」

 

 考える。

 我の必殺技は意地で防がれる可能性が高い。しかし、裏を返せばその意地を越えさえすれば到達できるということ。

 黒龍炎弾を改良すれば成る……が、ぱっと思いつくようなものでもない。

 

 なにかないか。

 

 フィールドを味わう様に一つ一つ考えていく。

 鬼道のツインブーストに合わせるか? いや鬼道の足が持つか分からない。世宇子中からの傷は完治しているが、古傷をえぐる真似はしたくない。

 一之瀬は巧みだが一人では威力に欠ける。どちらかというとボールを回す、習合で言えば帳塚のようなタイプだ。

 

「……」

 

「……どうしたブラック」

 

 肩で息をしているメンバーを見つめていき、豪炎寺がこちらの視線に気が付き近づいてきた。

 ……豪炎寺は気づきがよく調整もいい。いざとなった時に合わせやすい人材だ。ファイアトルネード、イナズマ落とし、イナズマ一号に炎の風見鶏。イナズマブレイクと多々ある合体技に参加している経験もある。

 本人のキック力という点においても優秀だ。

 

「足りない、カ」

 

「……? 何の話だ」

 

 だが、それでも我が合わせるにしてももう一歩欲しい。

 くっ、やはり数打って奴が悲鳴を上げるのを待つべきか。そう考えていた。

 

「おい、なにしてんだ二人とも。さっさと位置に……」

 

 悩んでいる我と戸惑っている豪炎寺の間に、染岡が割り込んできた。イタリアンマフィアみたいな見た目をしていかつい奴だがこう見えてサポートも上手い人物だが……さて。

 ……こいつのドラゴンは未だ未熟。キック力とコントロールはある程度両立しているが……求める水準ではない。それなりに頑丈なのは認めるが。

 

 最低ラインとしてでも……豪炎寺と染岡、この二人のいいところを併せ持ったような人物が──。

 

「……ふむ? おい染岡、豪炎寺──」

 

 ふと、我に良案ありだと言いたくなった。

 

「我とお前らで、双龙(ダブルドラゴン)としゃれこむネ」

 




イナイレのゲームがしたいです

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